「こんにちは、ベーグルサンド買ってこさせられたフェイスマンです。でも、注文通りに作ってもらえたか定かではありません。みんないろいろ言ってたんだけど、紙に書くのが面倒で、口頭で店員さんに伝えたんですが、嫌な予感で一杯です。あ、だけどみんなの希望はちゃんと伝えたよ、多分。きっと。その、覚えてる限りで。ってわけで、これはハンニバルの。このでっかいのはコング。この変な……何この突き出てんの……は、モンキー。で、俺の分、と。」
「おっ、フェイス帰ったのか。ベーグル買いに行ったっきり２時間も帰ってこないから、家出でもしたのかと思ってたぞ。どれどれ、あたしの注文したシナモンベーグルのアップルクリームは買ってきてくれただろうな。」
　と、ハンニバル。
「お帰り、フェイス。オイラの頼んだサバサンドは？」
　と、マードック。
「おう、それが俺んだな。とにかく肉のやつ。」
　と、コング。
「え、そうだっけ……？　シナモンアップルに、サバに……肉？　あれ……？」
　フェイスマンは、何か間違っているようないないような、嫌な予感を背筋に感じつつ、テーブルの上を見た。
「……それに、俺が頼んだサーモンとアボカドとクリームチーズ……。」
　フェイスマンは指差し確認した。確かにテーブルの上には４つのベーグルサンドの包みが並んでいる。数は合っている。数は。
「では、いただきましょうか。」
　包みを開けてかぶりつくハンニバル。
「ぶおっ、何だこりゃ？」
　と、もぐもぐしつつも言い、ごくんと飲み込む。断面を見れば、シナモンで茶色くなったリンゴのスライス（生）＆塩サバ。クリームなし。
「フェイス、これ、クリームが入ってないぞ。アップルクリームと言ったはずだが。」
「えっ、店の人が間違えたの……かな？（て言うか、サバは入っててＯＫなの!?）」
「いっただっきまーす！」
　自分の持ったベーグルサンドの形状に全く不安を抱かない様子で、マードックもガサゴソと包みを開ける。突き出たものをぱくり。
「ん？　これ、ケバブ？」
　よーく味わい、笑顔になるマードック。
「これ、サバのケバブだ。カレー風味の。」
　ベーグル部分にもがぶりと噛みつく。
「おー、サバのフライ！ ……と、塩サバとサーモン。何かちょっち余計だね、サーモンの辺りがさ。」
　それでも、さして問題はないようで、がぶがぶと食べ進んでいく。
「サバづくしかよ！　俺のにゃ、ちゃんと肉が入ってるんだろうな？」
　と、一際大きいベーグルにかぶりつくコング。
「ん、ちゃんと肉だな。」
　虚空を見つめて数回咀嚼し、手元のベーグルに目を落とす。そして、ウッ、と一瞬詰まった後、上の生地をそっと捲った。
「何だこりゃ、分厚いハムと塩サバと……このオレンジのはスモークサーモンか？　その上にシナモン風味のホイップクリームだと!?　どんな味覚してるんだ、これ作った奴は！」
「えっ、店の人が間違えたの……かな？」
　冷や汗だらだらのフェイスマン。そして手元に残るベーグルの包み。恐る恐る開いて、齧りつく。ここまでの結果から推測すると、これに入っているのは塩サバとアボカドとクリームチーズのはず。だが、しかし。
「塩サバだけだ……。」
　アボカドとクリームチーズはどこへ？　恐らく、次に並んでいた客のベーグルへ。
「フェイス。」
　と、真面目な顔でハンニバル。
「わかったよ、皆まで言うな。」
　と、フェイスマン。
「確かに、買いに行ったのは俺だよ？　でも、俺も被害者だし！　こんなサバまみれになるとは思わなかったし！　モンキーの分、忘れそうになって最後に注文したくらいだし！」
「何て注文したんだ？」
「あとサバもね、って。」
「店の人は何て？」
「サバですね、わかりました、って」
「「「それだ！！！」」」
　かくして全員塩サバ食べて青魚臭くなったＡチーム。
「ん？　包みに何か書いてあるぜ。」
　目敏くマードックが発見した。
「えー、何々、今週はトルコフェア！　ご希望のお客様に、サバ増量いたしますので、お気軽にお申しつけ下さい。」
　むしろ、これが原因だ。
　フェイスマンも包みを読み上げる。
「来週はブルガリアフェア！　ヨーグルト増量!!　さらに再来週は毎回大好評のジャパンフェア！　テリヤキソースのトッピング無料となっております。スタッフ一同ご来店をお待ちしております。」
「こっちのは違うぞ。」
　ハンニバルが包みを見る。
「次回のＡチームは、『モンキー、サバ食べすぎて蕁麻疹』、『怒りのコング、ベーグル屋でアルバイト?!』、『トースターからベーグルを救出せよ！』の３本だ――だそうだ。」
「ふんがっふっふ。」
　ベーグルの最後の一口（一般的には二口分。ベーグルのみ。具は先に食べちゃった）を喉に詰め、マードックが倒れた。

さて、ここで問題です。ぶっちゃけ、ベーグルって言うほど美味いと思う？