54号 おわりの挨拶

The A'-Team


 お楽しみいただけましたでしょうか。
 それではまた、冬にお会いしましょう。


【おしまい】






次回予告

「フェイスです。これからカメダとかいう人が来るとか、カメラ? ガメラ? パメラ? うん、パメラならいいんだけどね。可愛い名前だし。何でもハンニバルの知り合いだとか何とか。それで、何だか知らないけど、20人前のディナーを用意しろってハンニバルに言われてます。来るのはパメラ1人のはずなのに。おまけにデザートも用意しろって言われてます。21人分。何で? 数、違ってない?」
 眉をハの字にして首を傾げるフェイスマン。袖からコングが登場。
「コングだ。俺が思うに、ハンニバルの知り合いのパメラが20人来るんじゃねえか? そんでもって、ハンニバルはデザートだけ食おうって寸法だろう。」
「ただいまー。」
 と、そこにマードック帰宅。両手にはスーパーの袋を提げている。
「モンキー、お帰り。アレ買ってきてくれた?」
 と、フェイスマン。
「買えたよ。ちゃんと21個。」
「いやぁ、よかった。何しろ今日の今日で急な話だろ? アレがないと今からディナーの他にデザートなんてとても用意できないよねぇ。」
「はいよ。」
 と、スーパーの袋をテーブルに乗せるマードック。袋の中を覗き込むフェイスマン。そこには、フルーチェ21箱が。
「デザートだけじゃん? ディナーの方は?」
「取ってくる。」
 一旦ドアの外に出たマードックが台車を押して入ってきた。その上には、冷凍の(割と融けてる)TVディナー21箱が。
「おい、ハンニバルのお客なのに、レンチンでいいのかよ。それに、フルーチェ21箱って、それに見合った牛乳がねえじゃねえか!」
「もちろん牛乳も頼んださ!」
 フェイスマンはTVディナーの箱の後ろから牛乳パックを取り上げ、カッと目を見開いた。
「これは……加工乳じゃないか!」
「それ、異様に安かったんだよねー。何、加工乳じゃいけなかったん?」
「いけない。プルプルにならないかもしれない。」
「かもしれない、だろ? もしかしたらプルプルになるかもしんねえぜ。」
 そう言ってマードックはフルーチェの箱を開け出した。すかさずガラスのボウル(大)を取り出すフェイスマン。注がれるフルーチェ液(イチゴ)と加工乳。それを、一気に杓文字で掻き混ぜるフェイスマン。
「よし、そこだ、固まれ!」
 マードックが液体に声をかけた。
「ちょっと待て!」
 緊迫した雰囲気の中、コングがさらに緊迫した声を上げる。
「そいつはディナーのデザートだよな? 今から作ってどうすんだ!」
 フルーチェは出来立てフルフルを食べたい派のコングである。
「それに、だ。こいつァ1箱で2〜3人前って書いてある。10箱もありゃ十分じゃねえか。なのに、何で21箱も買ってくるんだ?」
 1人でフルーチェ1箱食べるコングのくせに、その点に気づいたか。
「あ、ほら、ちょっと固まったよ……緩いけど。」
 フェイスマンが、出来上がったフルーチェをお玉で掬ってみた。確かに、何となくあんかけ程度に固まっている。
「じゃあ、これは俺たちが試食ということで。」
 と、スプーンを渡されるコングとマードック。
 しばし無言で3人は緩いフルーチェ(イチゴ)を口に運んだ。そしてコングが徐に言った。
「確かにちっと緩いが、こりゃあこれで悪くねえ。」
「じゃ、デザートはこれで。それじゃあTVディナー温めようか。で、パメラたちが来てからフルーチェを10箱分作って、残りはストック。」
 フェイスマンが仕切る。マードックもコングも異存なし。だがここで問題が。TVディナーは平均して1箱5分間の加熱。それが21箱あるから、単純計算で105分。
「せっかく来てくれるお客様に、5分ずつズレてディナーを供するってこと? これ(ハングリーマンのミートローフ)、冷めたら食えたもんじゃないよ? それに、2分くらいで一旦取り出して、ブラウニーだけ箱から出して、あとまた3分くらいでしょ? どうすんの、これ。」
 頭を抱えるフェイスマン。コングが、飛び出しかけたモンキーの襟首を引っ掴んで止めた。
「おい、どこへ行こうってんだ、このスットコドッコイ。」
「ちょっと電子レンジ買ってくる!」
 いや、それ間に合わないでしょ。
「よし、TVディナーの中身、全部出す! で、ミックスベジタブルだけ集めて温めて出す。次に、マッシュポテトだけ温めて出す。それからミートローフを温めて出す。ブラウニーは、って、デザートついてるじゃん、これ。まあいいや、ブラウニーを集めて温めて出して、それからフルーチェ作る!」
 フェイスマンの号令を待たず、既にコングとマードックはTVディナーの箱を開けにかかっている。そして大鍋が取り出され、TVディナーの中身が、それぞれの大鍋に移されていく。箱の開封作業だけでも結構な手間。
「畜生、何で俺たちが、こんな手間のかかることやらされてんだ!?」
「仕方ないよ。ハンニバルの知り合いのパメラとその仲間たち……きっと美女軍団(推定16人)に違いない。今が面倒でも、楽しいディナーになるさ……。」
「もうこうなったら味も調えちゃうもんね。」
 マードックの案外常識的な発案により、ミックスベジタブルの鍋にバターと塩胡椒が足された。マッシュポテトにもバターと加工乳を加え、盛りつけた上にはパプリカパウダーも。ミートローフにはケチャップをチョイ足し。
 と、その時。
「帰ったぞ。」
 ハンニバルがドアを開けた。パメラたちは……いない。
「パメラは?」
 怪訝な表情でフェイスマンが尋ねる。
「パメラ? カメダのことか? 奴さん、大食いなもんで、20人前のディナーを用意してあるって言ったんだが、それは申し訳ないってハンバーガー買いに走ってった。」
「カメダ!?」
「……だと?」
「カメダって、苗字? 名前、パメラじゃないよね?」
「名前……何だったかな? 少なくともパメラじゃないぞ。奴さん、男だからな。」
「うえええ……美女軍団との楽しいディナーは……?」
 呆然と呟くフェイスマン。
 デザートに向けてフルーチェの箱を開けていたマードックが、箱の中から1枚の紙を取り出した。
「何だこれ……来週の予告だ! 何々、来週のAチームは、『カメダ、20人前TVディナーに感涙!』、『カメダ、20人前フルーチェに故郷を思う』、『カメダ、フルネームを明かす!』の3本だってよ。オイラたち、出番なさそ。ふんがっふっふ。」
 うっかりフルーチェ原液をくーっと飲んでしまったマードックが、その濃さに噎せた。


さて、ここで問題です。好きなフルーチェの味は?  



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