57号 おわりの挨拶

The A'-Team


 お楽しみいただけましたでしょうか。
 それではまた、春にお会いしましょう。


【おしまい】






次回予告

「こんにちは、フェイスです。今日はウォーズとかいうところに来ています。蜃気楼が見えるとか、魚が美味しいとか。ところでみんなはどこに行ったのかな……? ま、いいや、あの海の向こうに蜃気楼が現れるはずなので、もう少し待ってみましょう。……蜃気楼見たがってたのはモンキーのはずなんだけどなあ……ま、鯖だか鱒だかの寿司も食べたがってたし。」
「いやあ、済まねえな。喉渇いて水飲み場で水飲んでたら、あまりの美味さに止まらなくなっちまってよ。」
 口周りと金のジャラジャラをウォータリーにして、ドスドスとコングが現れた。
「1ガロンくらい飲んだぜ。これでタダだってんだから、ウォーズってのはすげえ太っ腹な町だな。」
「あーあ、そんなに水飲んで大丈夫なの? トイレ近くなっても知らないからね。」
「俺様の膀胱を甘く見んなよ。1ガロンくらい屁でもねえぜ。……で、ハンニバルたちはどうしたんでい。」
「それが、さっきから姿が見えないんだ。」
「俺が水飲みに行く前まではその辺にいたぜ。観光案内マップを開いてたな。」
「2人で勝手に観光しに行っちゃったってこと? あの2人で?」
「そりゃあちっとまずいかもな。あの2人にゃあ常識が1ミリくらいしかねえ。」
 常識の単位は何なのだろう? J・sか?
「そもそも、こんな田舎町に観光するところなんてあるの?」
「知るか。そもそも俺ァ、アメリカにウォーズなんて町があることすら知らなかったぜ。」
「確かに……って、ちょっと待って。ここ、アメリカなの? 行きの飛行機、随分遠かったけど……。」
「飛行機だと!?」
 コングの額に青筋が浮き上がったのを目にして、フェイスマンがひらひらと指先を振る。
「あ、嫌だなあ、車で来ただろ? というわけで、ここはアメリカ。多分。」
「お待たせー!」
 と両手にオレンジ色のものを持って走ってきたのはマードック。その後ろからゆったりとハンニバルも登場。マードックと同じように、両手にオレンジ色のものを持っている。
「これこそ、ウォーズ名物、マーシュ・ノース・シーだ!」
 と、オレンジ色の物体を掲げる。てらりと光ったそれは、掲げられてもしっかりと形を保っている。
「マーシュ・ノース・シーだって!?」
「だと!? うわっ!」
 ブンっ! と投げられ、くるくる回りながら飛んでくるその物体を、パン! と両手で上下から挟んでキャッチしたコング。
「何だこりゃ? 食い物か?」
「スイーツ?」
 興味津々に覗き込むフェイスマンと、何とも言えない感触に眉間の皺を深めるコング。
「菓子じゃねえ。濃厚な魚のニオイがするぜ。……サーモンか?」
 コングはそのオレンジ色の物体にがぶりと噛みついた。その様子を心配そうに見つめるフェイスマン。もっもっもっと噛んで、ごくりと飲み込み、ふーっと鼻から息をついてコングは言った。
「……超絶美味え。お前も食ってみろ。」
 と、マーシュを差し出すコング。フェイスマンも、恐る恐る一口。
「……美味い。一見サーモンのようだけど、サーモンほど脂っぽくなく、さっぱり、かつしっとりしている。そして、それを受け止めるライスのビネガーが、濃くもなく薄くもなく、ちょうどいい。何て言うんだろう、こう……何もかもがちょうどいいんだ。」
「名物に美味いものなしって言うけどよ、これは試食したら美味かったから、その場で大佐と1つずつ食べて、そんで4つテイクアウトしてきた。」
 胸を張るマードックに、コングが唸る。
「何で後で食べる分もテイクアウトしてこなかったんでい。」
「あ、それはね、買う時に食べる時間を申告するシステムだったから。」
「むう……。」
 黙ってしまったコングちゃん。確かに、ここにあるマーシュを食べ終えた後、次にいつ食べたい気持ちを抑えられなくなるかは現時点では見当がつかない。あまり間食するのも体によくないし。
「そこで、だ。作戦会議と行こうじゃないか。」
 ハンニバルがニパッと笑った。


〈Aチームのテーマ曲、始まる。〉
 埋没林博物館の中で、説明係のおじさんの説明(超ウザい)を聞こえない振りでやり過ごし、古の木の根っこを眺める4人。水族館のトーヤム・ガルフ大水槽で、鰤の群れを指差すハンニバル。ホタルイカに興味津々のマードック。
〈Aチームのテーマ曲、終わる。〉


「よし、ほどよく腹もこなれたな。ついでに、この町で見るべきものは一通り見た。」
 重々しく腕を組み、ハンニバルが宣言する。
「大佐、まだミラージュランドが残ってるぜ。」
 観光案内マップを指差してマードックが言う。
「それは明日でもいいだろう。」
 明日もいるのか、と思ったフェイスマンだったが、それは口に出さないでおいた。コングは、作戦会議するんじゃなかったのか、とずっと思っているんだが、口に出さないでいる。マードックは、ホタルイカの沖漬(買ってもらった)を手掴みでちゅるりもぐもぐと食べては、ホタルイカの目を口から出している。安い沖漬を買ったと見た。
「さて、これであと2枚ずつくらいマーシュが食えるだろう。さ、行くか。」
「おう!」
 楽しげに車に乗り込む4人。この時、誰一人として知る者はいなかった――マーシュ・ノース・シーは売り切れ御免であることを。


 画面がしゅるんと変わり、蜃気楼をバックにマードックのバストショット。狂気を宿した眼は、瞬きもせず真っ直ぐにカメラを見つめているが、ホタルイカの沖漬を口に運ぶ手は止まっていない。もう、手、べったべた。
「さ〜て来週のAチームは、『マーシュを探せ! 何なら作れ! Aチーム』、『フェイスマン、ミラージュランドで苦笑い』、『コング、帰りの飛行機に乗る?!』の3本です。ふんがっふっふ。」
 一際大きなホタルイカがマードックの喉に詰まった。イカの脚を口から垂らして、ばったりと倒れるマードック。その上にはマードックの蜃気楼(あるいは幽体)がぼんやりと揺らいでいた。


さて、ここで問題です。ウォーズってどこでしょう?
  カンザスシティの下の方
  フェニックスのちょっと横
  ニューヨークの端っこ
  富山市の横
  次元の彼方
  太陽の彼方



上へ
The A'-Team, all rights reserved