60号 おわりの挨拶

The A'-Team


 お楽しみいただけましたでしょうか。
 それではまた、冬にお会いしましょう。


【おしまい】






次回予告

「こんにちは、フェイスです。さっき町を歩いてたら、『砕け散るところてんを見せてあげる』ってタッパー持って近づいてきた女の子がいたんだけど、ハハッ、モンキーのお仲間かな?」
「もしかしてそいつ、タッパー振ってなかったか? シャカシャカと。俺もさっき寄ってこられたから、うるせえ、どっか行きやがれ! って追っ払ったんだが、てめェんとこに行ったのか。」
「タッパー持った子なら俺っちも見たぜ。話しかけられなかったけどよ。あの中身が気になってたんだよなー。」
「ほら、やっぱモンキーのお仲間なんだよ。同類には砕け散るところてんを見せても面白くないからさ。」
「ってことは、あのタッパーの中身はところてん?」
「それしか考えらんねえだろ。タッパーん中にダンゴムシ入れて『砕け散るところてんを見せてやる』なんて言うわきゃねえ。」
「やあ、みんなお疲れ。」
 と、そこにハンニバル登場。手には、なぜかタッパーを持っている。
「ハンニバル、そのタッパー、何?」
 と、目敏く指摘するフェイスマン。
「これか? これはさっき、知らない女の子が来てな、何かぐちゃぐちゃ言いながらこれを差し出してきたから、くれるの? お嬢ちゃんありがとう、って受け取ってきた。中身は知らん。」
「うわっ、貰ってきちゃったの!? 砕け散るところてん。」
 露骨に嫌な顔をするフェイスマンの隣で、マードックが目を輝かせる。
「やった! 中身が見れる。」
「中、見たいのか? ほれ。」
 ハンニバルがマードックにタッパーを渡した。
「やだなあ、何か呪われそう……。」
 根拠のない不安を覚えるフェイスマン。
「そん中入ってんの、ところてんに決まってんだろうが。」
 鼻の穴を膨らませるコング。
「それじゃあ開けまーす。デレレレレ(ドラムロール)……ジャジャーン!」
 カパッとタッパーの蓋を開けるマードック。果たしてそこには……砕け散ったところてん。砕け散り済み。万遍なく。余すところなく。
「うわ、何これ?」
 と、フェイスマン。
「だから、ところてんだよ、砕け散ったところてん。」
 なぜか得意気なマードック。
「ほう、砕け散ったところてんか。実に興味深い。……ところで、ところてんって何だ? 見たところ、グズグズになったゼリーのようだが。」
 と、ハンニバル。そう、普通のアメリカ人は、ところてんを知らない。そして、知ったかぶりをしていたフェイスマンもコングも、そしてマードックさえも、ところてんが何なのか、実際のところは何も知っちゃあいないのである。
「色は透明だな。匂いは特にねえ。手触りは――。」
 タッパーに指を突っ込もうとするコングをフェイスマンが止める。
「ちょっと待って、有害物質だったらどうするんだよ。」
「そりゃねえだろ、タッパーに入ってるんだし。」
 と、マードックが首を傾げる。
「タッパーに入っているからと言って食べ物とは限らん。」
 とハンニバル。
「食べ物かどうかは、食べてみりゃわかるんじゃん?」
 そう言ってマードックは素早い動きでタッパーの中身をつまみ取ると、口の中に放り込んだ。
「味は、特にねえなあ。舌も痺れねえし。俺っちの勘だと、これ、食べ物だね。冷やしたら、きっと美味いやつ。」
「ソーダとかに入れてキラキラさせるもんなんじゃねえか?」
「そうかも! 蜂蜜かけんのも美味いはず。」
 この物体をどう食すか考え始めているマードックとコング。
 ハンニバルは「ソイソースとビネガーが合うかもしれませんよ」と正解に辿り着いていたけれども、そのことに誰も気づいていない。
「あと、マスタードとセサミ。」
 ますます正解に近づくハンニバル。
「はは、何言ってるのハンニバル。この食感は、絶対スイーツだよ。そう、やっぱり蜂蜜より黒糖のソースがぴったりなんじゃない?」
 フェイスマンも、京風な感じに正解に近づいている。
「いやいや甘いよりしょっぱい系だろう。キザミノリとか散らして。」
 それもう正解でしかない。
「甘いのも捨て難いんじゃないかな。缶詰のチェリーとか乗せて。」
 こっちもほぼ完成形である。
「こんだけ量がありゃ、甘いのもしょっぱいのも、どっちもできるぜ。で、これ食っていいの?」
 いきなり核心を突くマードック。
「食ってしまおうじゃないの。」
 ハンニバルがニカッと笑った。

《Aチームの作業テーマ曲、始まる。》
 砕け散ったところてんを冷蔵庫に入れるフェイスマン。砕け散ったところてんを冷蔵庫から出すマードック。砕け散ったところてんを4つの器に盛り、思い思いに味をつける4人。空になったタッパーがアップになる。
《Aチームの作業テーマ曲、終わる。》

 そして思い思いの味つけで砕け散ったところてんを平らげた後、ふと気がつくのであった。
“砕け散ったところてんがこれだけ美味ということは、砕け散る前のところてんは、ものすごく美味なんじゃないだろうか。それとも、砕け散っているからこそのところてんなのか……。”
「よし、砕け散っていないところてんを探しに行くぞ。」
 ハンニバルが言った。
「えっ、ところてんって、砕け散っているからこそなんじゃなくて?」
 とフェイスマン。
「そん時ゃところてん砕け散り機を作りゃいい。」
 とコング。

《Aチームのテーマ曲、始まる。》
 ところてんについて調べるハンニバルとフェイスマン。洗ったタッパーを怪しい女性に返却するマードック、お礼を言い、ついでにところてんの情報を得る。
 睡眠薬盛られ済みのコング。飛んでいく飛行機。飛行場に降り立つ面々とでかい箱。
 テングサを採るAチーム。テングサから寒天を作るAチーム。
 天突きを買ってくるコング。ところてんを突くマードック。出てきたところてんを皿に受けるハンニバル。横では黒蜜を持ったフェイスマンが待機している。でも、酢醤油をかけるハンニバル。
《Aチームのテーマ曲、終わる。》

「さて、できたぞ、真のところてん。さあ、食おうじゃないか!」
 ハンニバルの号令に、一斉に食べ始めるAチーム。
「むむ、何だこりゃ、全っ然食えやしねえ。」
 と、コング。ところてんを食べるなら、と、店で勧められた箸を使って啜ろうとするも、滑るところてんを掴めない上に、啜り込むという行為ができないため、1本も口に入らないのだ。
 奮闘すること3分、箸でところてんを食べることを諦めたAチームは、再び立ち上がった。
「ところてん砕け散り機を作るぞ。」
 ハンニバルの号令に、一斉に行動を開始するAチーム。
――さて、次回のAチームは、『最高の砕け具合を求めて』、『タッパーには敵わない』、『酢醤油か黒蜜か』の3本です。
「ふんがっふっふ。」
 砕け散っていない真のところてん(蜂蜜がけ)をシュボンッと吸引することに成功したマードックが、喉に大量のところてんを詰めて倒れた。


ここで質問です。「騙しエノキ場」って何なんでしょう?
ダマシエノキタケの栽培工場。
表向きはエノキタケ栽培工場だけれど、裏ではそうでない場所。
書き割りのエノキタケ栽培工場。
なめ茸製造工場。
コレラタケが混在する確率の高いエノキタケ栽培工場。
榎の生育地にしか見えない、野生エノキタケの生育地。
Aチームの今回のアジトの通称。

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