70号 おわりの挨拶
The A'-Team
お楽しみいただけましたでしょうか。
それではまた、冬にお会いしましょう。
【おしまい】
「こんにちは、フェイスです。ここに健康診断の結果が届いてます。コング宛のが。開けて見てみたい気がするんだけど、見たら殴られる気もして。」
「開けちゃえ、開けちゃえ! で、内容に応じてコングちゃんで遊ぼうぜ。」
と、退屈していたマードック。
2人は悪い表情で顔を見合わせ、「いいかなあ?」「イイヨー(裏声)」という儀式を交わした。そうして徐に封筒を開くフェイスマン。取り出した紙には様々な数値が並んでいる。
「ああ、これ、血圧高くてヤバそう。」
ささくれ剥いたら水芸ができそうな数値を見て、フェイスマンが呟く。
「脈拍が遅いから何とか耐えてる感じ? 減塩した方がいいね。明日からバナナとケールのスムージー飲まそうか。」
「いいね、ハンニバルも一緒に。」
飲まそうか、と言っても、作るのはマードックではなくフェイスマンである。
さらに読み進めたフェイスマンがカッと目を見開いた。
「いや待て、むしろ血圧よりコレステロールの方がヤバい。こんな数値、初めて見た。」
「ホントだ。桁違いの数値。悪玉の方だけ。」
マードックが0の数を数える。数値の最後には赤い上向き矢印がついており、判定はE。
「うわ、再検査だって!」
「てことは、再検査までに改善する時間はあるってことだ。」
フェイスマンの銀縁眼鏡(いつかけたの?)の縁がキラリと光った。
「そういうこった。」
マードックが白衣(どこから出てきた?)に袖を通しつつ答える。
「まだ間に合うぜ。改善に向けた作戦会議を。」
「そうだな。」
フェイスマンも頷いた。
「何をこそこそやってるんだ、お前たち。」
新聞を手にリビングルームに入ってきたハンニバルは、頭を寄せ合うフェイスマンとマードックに目を向けた。
「かくかくしかじか。」
検査結果を見せて説明するフェイスマン。
「ふうむ、こりゃ改善が必要だな。」
ハンニバルの言葉に、フェイスマンとマードックが大きく頷いた。
「そう言えば、そろそろハンニバルも届くんじゃない? 検診結果。」
フェイスマンがそう言い終わらぬうちに、玄関扉の郵便受けから、カタン、と1通の封筒が吐き出された。それは、コングの検診結果と同じサイズ、同じ柄の、コングのより厚い封筒であった。3人は、床に投げ出された封筒を我先にと奪いに行く。
いつになく俊敏に走るハンニバル。しかし、回り込まれてしまった! 立ちはだかるフェイスマンの隙を見て走るハンニバル。もう少しで封筒に手が届く。と思った瞬間に、スッと横から出てきた手が封筒を拾い上げた。
「何だ、みんな揃って障害物競争か?」
事態を把握していないコングが手にした封筒に、ハンニバルが声をかける。
「それを渡してもらおうか。」
「ああ、こりゃハンニバル宛か。」
ほらよ、とコングが検査結果をハンニバルに渡す。
「俺の結果も届いてるんじゃねえか?」
とフェイスマンとマードックを見る。
「え、と……これ……。」
フェイスマンが既に封筒から出された紙を渋々&おずおずとコングに差し出した。
コングは渡された紙を一瞥すると、フン、と満足げに鼻を鳴らした。
「赤い上向き矢印が沢山ついてるじゃねえか。これって、あれだろ? 上り調子だってことだろ? 肝臓も腎臓も、全部上向きだ、ま、言われなくてもわかってたけどな!」
コングは、そう言うと、ワッハッハ、と笑った。
「上り調子なわけがあるか。どれどれ、あたしのはどうでしたかね。」
ハンニバルが笑顔で封筒を開け、複数枚の紙を取り出した。
1枚目はコングと同じように各数値が並んだ表。こちらも見事に赤い上向き矢印だらけだ。2枚目以降はすぐに専門病院へ行けという通知と対応病院リスト。各臓器ごとに。
「ははは、あたしも上り調子だな。」
苦笑するハンニバルに、フェイスマンがピシリと指を差す。
「そんなわけあるかー!」
「何叫んでんのさ、フェイス。ほらこれ、コングちゃん、冷たい牛乳。」
キッチンから出てきたマードックが、牛乳を入れたグラスをコングに渡す。
「大佐にはコーヒー。」
と、ハンニバルにコーヒーを渡す。
「お、済まんな。」×2
そうして2人はマードックに渡された飲み物を、疑うことなく飲み干した。
飲み干した後、若干の違和感に飲み物の容器を見つめる2人。
「この牛乳、妙に……。」
「コーヒーも、雑草の匂いがするような……。」
「気のせいじゃね?」
菩薩のように微笑むマードックと頷くフェイスマン。
数秒後、コングとハンニバルはばったりと床に倒れた。ニンマリとした顔を見合わせるフェイスマンとマードックだった。
〈Aチームのテーマ曲、始まる。〉
コングの脇にロープを回して括るマードック、ハンニバルの脇にロープを回して括るフェイスマン。2本のロープの他端をクレーンのフックに結びつける。
クレーンで引き摺られ、吊り上げられ、トラックの荷台に載せられるハンニバルとコング。トラックの運転席にはフェイスマン、クレーンの操縦席にはマードック。
トラックが大きな病院の前に停まる。フェイスマンが病院に駆け込み、医師看護師大勢がストレッチャーと共にトラックに駆け寄る。
何だかんだ検査されたり治療されたりする、気絶したままのハンニバルとコング。神妙な顔で検査室前のベンチに座り、手はお祈りのポーズで、しかし口角を上げているフェイスマンとマードック。
〈Aチームのテーマ曲、終わる。〉
検査室の扉が開いて、ストレッチャーが出てきた。
「すっかり元気になりましたよ。」
お決まりの台詞を口にする女医がカルテを片手にフェイスマンとマードックに向かって説明する。
「これからは食生活に気を配って、お酒はほどほどに。適度な運動と十分な睡眠も大事ですからね。」
目を覚ましたハンニバルとコングはわけがわからないといった表情で辺りを見回している。その肩にそっと手を置き、フェイスマンは口を開いた。
「さて次回は、『コングの豆乳生活』、『Aチームの冷蔵庫』、『ハンニバル、ほどほどについて考える』の3本です。」
「ふんがっふっふ。」
酸素マスクを口に当ててボンベのバルブを開いたマードックが、ふらっと倒れた。見れば、ボンベの色は黒(酸素)でなく緑(二酸化炭素)。駆け寄る看護師。にこやかに笑うAチーム3名であった。

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