
明朝、ツォンさんと合流し、ヘリで古代種の神殿へと向かった。
「へへ、ツォンさんと二人っきりの任務なんて嬉しいな。」
「こら、遊びにいくんじゃないんだぞ。」
「はぁい。」
レノ先輩にああ言われたものの、自分の体のどこからか湧いてくるこの信号は偽り様がない。
私の中の何かが告げているのだ、気を抜いてはいけないと。
だからそれを振り払うつもりで、わざと明るく振る舞ったりしている。
「もうすぐだ、見えてきたぞ。」
島の真ん中にそびえる古いピラミッドの様な、あれがそうだろうか。
「モンスターが潜んでいる可能性もある。戦闘の準備をしておけ。」
「はい。」
モンスターなんてコテンパンだわ。ツォンさんは私が守るんだから。
神殿近くにヘリを止めて、注意深く辺りを見ながら1歩1歩足を進めていく。化学部門の社員
から以前聞いた、セフィロスコピーと呼ばれる、黒いコートの連中が遠くに見えた。
「ツォンさん、あれ…。」
「構うな、出来損ないだ。」
私は小走りでツォンさんを追った。長い階段を上ると、大きな入り口が見える。
ツォンさんは辺りを見渡した後、ゆっくりと中に入っていく。何もない事を確認すると私を呼んだ。
危険がないかを先に確認した上で、私を導いてくれる。
自分の命より部下を優先に考える、そんな所が素敵な所でもあり、不安な所でもあった。
私はそろりそろりと、足を踏み入れた。その瞬間!!
何か、悪寒の様な物が走った。背筋がぞくぞくする、足が震える、めまいがして立っている
のがやっとだった。
部屋の中央にある台座の様な所に、キーストーンを置こうとしていたツォンさんが慌てて
駆け寄ってくる。
「どうした?イリーナ!!」
「あ、いえ、ちょっと目眩が。昨日飲みすぎたかな?」
彼は目をパチクリさせた後、私の頬を両手でピシャッと叩いた。
「バカ、脅かすな!!ったく、昨日私があれほど…。」
「ごめんなさい!!もう、大丈夫ですから。」
「頼むぞ、イリーナ。」
私は震えが止まらなかった。その時ツォンさんの笑顔が…一瞬透けて見えたのだ。震える足を
無理矢理前に運ぶ。
駄目よ!!イリーナ、あんたがしっかりしなくてどうするの?私が守るのよ!!震えていたり
しちゃ闘えない!!
私は皮手袋をはめ直し、拳を握り締めた。
いくつか罠を潜り抜け、モンスターとも必死で戦った。ツォンさんはホントに強くてカッコ良かった。
この背中をずっと追いかけていたい、この人の為ならなんだって出来る。
私はツォンさんに憧れてタークスに入隊したんだもの。
いつまでも側にいるって決めたんだ!!神羅の為に仕事してるんじゃない!!私はツォンさんの
為に働いてるのよ!!
「イリーナ、着いたぞ!ここだ…。」
「広い部屋ですね…この壁、何が書いてあるんでしょう?」
「解らん、調べてみない事にはな。とにかく社長に報告だ!!ここの壁の映像を収めて持
っていけ。」
「え?ツォンさんは。」
「私はもう少しこの中を調べてみる、報告頼んだぞ。」
私は足が動かなかった。
「どうした?」
「え?あぁ、すいません。」
誰かに見られている。そんな気がした。私は部屋の中を小型カメラで写しながら、言い知れぬ
恐怖と不安感に襲われた。
「なぁ、イリーナ。」
「はい?」
「この仕事が終わったら、飯でも食いに行くか?」
「え?」
「んー?私とでは嫌か?」
「と、とんでもない!はい!!楽しみにしてます!!」
「そうか、その為にも早く謎を解かなければな。さぁ、イリーナ映像を収めたらお前はも
う行け。」
今すぐにでも、その背中に抱きつきたい気持ちだった。明日が必ず来るとは限らないのだ。
それにさっき、貴方が透けたのが気のせいでなかったら…。
行かなければならない。行って、ルーファウス社長にここの事を報告しなくては。でも…。
「どうした?さぁ、行くんだ。」
「は、はい…。」
最後はもう、声がかすれて返事になっていなかった。喉がからからで、体中の血が抜かれて
いくみたいに、足元からサーッと冷たい空気があがってくる。
だけど努めて明るく返事をしたつもりだ。私は振り返らずに走った、そうしなければここを離れ
る事が出来そうになかったからだ。
セフィロスコピーの間を走りぬけ、ヘリに駆け込んだ。操縦席に座り、通信機のスイッチを入れた。
「総務部調査課、イリーナ。古代種の神殿にて情報を入手しました。只今より帰還します。」
私はミッドガルへ向けて進路を取った。
操縦パネルに乗せられた手のひらから汗が滲んでくる。体中が小刻みに震えていた。
何ナノヨ!?何ダッテ言ウノヨ…!?
もう半分位まで来た頃だろうか。私はある事を思い出してしまった。
化学部門の人間がセフィロスコピーの話をしていた時、こう言っていたのだ。
「セフィロスコピーは、いずれ動き出す。彼らが動き出して向かう先は、セフィロス本人
の意識が向かう所。彼らを追えばセフィロスの行き先が解る。」
あの時、神殿には多くのセフィロスコピーがいた。まさか、まさか、まさか!!!
私は、先ほどの視線の主を理解した。ツォンさんの身が危ない!!しかし、世界一の
ソルジャーを相手に自分に何が出来るというの?
彼がツォンさんに危害を加えるかハッキリしないが、少なくともあそこで私が感じた視線と
悪寒からは、とても好意的な物は想像できない。
急がなきゃ!!何も出来なくたって良い、彼を連れて逃げ出すだけで良いんだから!!
無我夢中で飛んだ。