前編
3年…それは、長いようで短い期間……そして、短いようで長い期間……
何事も無く暮らしていれば、3年と言う月日はあっという間に過ぎて行く。
しかし、時間から取り残されたものにとって、3年と言う月日はあまりにも大きい物だ。
ここ、欅町の病院のベットで静かに横たわっている女性…『涼宮 遙』は3年前にあった事故以来、意識を失ったままだった。
通常、このような状態であれば筋肉は衰え、身体は痩せ細っていくのが普通だ。しかし、遙は違っていた。
筋肉の衰えは無く、あたかも通常の生活をしているかのような成長を続けていた。
そしてある日、遙が目覚めた瞬間から……物語は始まった……
愛美「先生!涼宮 遙さんが目を覚ましました!!」
時刻は夜の9時。病院の看護婦である、穂村 愛美の一言で遙の担当医である香月モトコは遙の病室へと走り出した。
三年間、意識不明で何時目覚めるかもわからない…しかも、筋肉の衰えもなくごく普通に成長しているという奇妙な患者。
それが突然目覚めたのだ。兎に角、患者を診なければ始まらない。モトコは病院の廊下を走り抜けると遙の病室へと入った。
そこには、鏡に映る自分の姿を見てどうして良いかわからない様な表情を浮かべた遙がいた。
遙「なに…何これ……私…なんでこんなに髪が…それに顔も…なんなのよ……それに、貴方は誰!?」
混乱して何がなんだかわからない様子の遙に、モトコはできるだけ優しい口調で話し掛けた。
モトコ「落ち着いて聞いて、涼宮 遙さん。私は貴方の担当医で『香月モトコ』。貴方は、事故にあって3年間意識が無かったのよ。」
遙「担当医…事故……それに3年って……」
モトコの言葉を聞いて、遙は思い出した。恋人との待ち合わせをしている時、自分に向かって突っ込んでくる車を…
遙「そう…私は事故にあって……あれから……3年も経ったんですか……」
現実を突きつけられて、遙は気を失いそうなショックを受けた。が、すぐにある違和感に気付く。そう、3年間も寝たままだったら身体はまともに動かないはずだ。
しかし、遙の身体は何の違和感も無く動く…まるで、ごく普通に睡眠から覚めたように…
そしてこの時、遙の頭に恋人の事が浮かんだ。そう、3年前…事故にあう前に付き合っていた、鳴海 孝之の事だ
遙「孝之くん…孝之くんは!?孝之くん……孝之くん!!」
モトコ「ああ、彼にも今連絡を……っきゃ!?」
モトコの言葉が終わる前に、遙はベットから飛び起き、病室の外へと走っていった。
モトコ「涼宮さん!!……3年間寝たきりの人間が出来る事じゃないわね……まったく、どうなってるのかしら」
遙の頭には、孝之しかなかった。孝之くんに会いたい……ただそれだけの思いで走った。何故か遙の身体は軽く、事故以前よりも調子が良いようだった。
何故か自然に足が動く…まるで、孝之がどこに居るのかが解っているかのように…そして遙が走り出して1時間ほど経った時、遙はとあるファミリーレストランの近くに辿り着いた。
孝之「ああ〜〜〜!!今日も終わったぁ!!」
ファミリーレストラン『すかいてんぷる』でのバイトが終わった孝之は帰り支度をしながら声を上げた。
今日は、恋人の水月がここに来ている。この後、2人で一緒に帰る約束なのだ。が、こう言う日に限って、店は忙しく、同じバイトの『大空寺あゆ』がなにやら用事があるというのだ。
「まぁ大空寺とは駅で別れるし、駅までは大空寺も一緒に帰れば用事もすむだろう。水月とは家まで一緒な訳だし。」
そんな事を考えながら孝之は支度を終えて店を出た。すると、そこには会社帰りでスーツ姿の水月と、なにやら銀色のアタッシュケースを持った大空寺が立っていた。
水月「遅いよ孝之〜。着替えはチャッチャとする!」
あゆ「まったく…あたしを待たせるなんて、糞虫の分際でいい度胸ね?」
店を出ていきなりの文句に孝之は苦笑いを浮かべた
孝之「悪かったよ。で、大空寺、用事って言うのは何だ?」
あゆ「あんたの女の前では話せないことなんだけど?」
大空寺は水月を一瞥すると、この女を何処かにやれと言わんばかりに孝之を睨んだ。
いきなり何を言い出すんだ、と思いつつも、大空寺が真剣だったので仕方なく孝之は水月に先に帰っているように頼んだ…が。
水月「はぁ?何よそれ!!話が違うじゃない!!」
突然の申し出に、もう抗議をする水月。約束的には水月のほうが先に約束していたのだから、これはおかしいと思ったのだろう。
孝之は、そんな水月をなだめるように何度も「頼むよ」と頭を下げた。すると、水月は1つの提案を出した。
水月「解ったわよ、先に帰ってる。そのかわりぃ……今ここでキスして。」
孝之「はぁ!?」
水月「なによ〜。キスぐらい良いじゃない。するの?しないの?さっさと決める!3、2、1ハイ!」
水月の台詞が終わると同時に、孝之は水月の唇にキスをした。
あゆ「まったく…こんな所でチチクリあってんじゃないわ……ん?」
孝之と水月がキスをした直後、今まで見た事の無い生物が孝之達の前に現れた…
「あれは…もしかして水月?髪、切ったんだ…あと…隣の子は……あ、孝之くん!!」
遙の辿り着いたファミレスの前に、恐らく水月であろう女性と、見た事の無い女の子が立っていた。そして、そのファミレスから出てきたのは、自分の恋人、孝之だった。
声をかけようかとも思ったが、何やら話しているようだったので遙は少し様子を見ることにした。
そして少しして、水月が怒り出したかと思えば、孝之と水月が……キスをした。
ドクン
そんな……なんで水月と孝之くんが…?
ドクン
私が寝ている3年の間に…孝之くんと水月が…?
ドクン
水月が私の孝之くんを……!!
次の瞬間、激しい怒りの感情と共に、遙の顔に奇妙な模様が浮かび上がり…体が…変った。全身が銀色の、何かの生物をモチーフにした人間とは全く別の人型の生物に。
遙の姿は、何故かオコジョをモチーフにした姿だった。
姿の変った遙は我を忘れ、ただ水月への怒りと憎悪を抱いて孝之達の前へと飛び出した。
怪物「グルルルルルルル……」
今まで見た事もない生物…ソレが現れた瞬間、その場の空気は凍りついた。そう、ただ一人を除いて。
あゆ「……まぁ、こうもタイミングよく向こうから現れてくれるとはね。」
そう言うと、あゆは手に持っていた銀色のアタッシュケースを孝之へと手渡す。
あゆ「とっととこのケース中身を装着しなさい。説明は後でして上げるから。」
あゆの行動で、今まで固まっていた孝之と水月が我に帰る。
水月「な…何あれ……何かの撮影…?」
あゆ「そんなわけないさ。あれは本物。正真正銘、人を殺す化け物よ。おら、糞虫!!さっさとそれをつけなさい!!」
言われて、孝之はあゆから渡されたケースを開ける。するとそこには、バックルの部分がとても大きく、何かがそこにはまる様な形をしたベルトと、スコープ、デジタルカメラ、携帯電話が入っていた。
孝之「それって…何だよこれ…このベルトをつければいいのか??」
怪物「ガァァァァァァ!!!」
孝之がベルトをつけるより速く、怪物が水月に向かって突進し、水月の顔をめがけて拳を突き出した。
水月「きゃぁ!」
反射的に、水月はその場にしゃがみ込んだ。そのお陰で、遙の拳は水月の顔ではなく、その後ろにあったすかいてんぷるの壁へと突き刺さった。
その拳は深々と壁に突き刺さり、その一撃が当たれば人間などひとたまりも無い事を語っていた。
水月「あ……ああ………」
その場に座り込んで、水月は遙の姿を見上げた。闇をバックに、壁に拳を突き立てたその姿は『恐怖』以外の何者でもない。
孝之「水月!!くそっ!!遙だけじゃなく…水月まで失ってたまるかよ!!」
あゆ「早くするさ!!」
あゆに言われて、慌てて孝之はベルトを腰に巻いた。
孝之「で!?この後はどうすればいい!?」
あゆ「その携帯電話を開いて『5・5・5』とプッシュした後、エンターを押してベルトに垂直に差し込んで、その後、横に倒すさ!!」
孝之は混乱しながらもあゆに言われたとおり、携帯電話を取り出して5・5・5と押した後にエンターを押した。
「スタンディング・バイ」
携帯電話から声がした。しかし、孝之は気にせずにそのまま携帯電話を閉じて垂直にベルトへと差し込み、横へ倒した。
「コンプリート」
再び、携帯電話から声が聞こえた。次の瞬間、ベルトのバックルの両サイドから真っ赤な光の線が上下に延びて、その線が何かの骨組みのように孝之の身体の周りを巡る。
そして、孝之の全身を包むように線が巡り終わった瞬間、孝之の身体は………変身した。
孝之「なっ!!これは!?」
あゆ「驚いてないでさっさとあんたの女を助けるさ!!!」
言われて、孝之が水月の方向を見ると、地面に座り込む水月と、見下ろすような形で立っている怪物が居た。
孝之「水月!!!てめぇ!!俺の水月から離れろぉぉぉぉ!!」
バッ!!
咄嗟に、孝之は怪物へと殴りかかった。孝之の放った右ストレートは、見事に怪物の横顔を捕らえ、不意打ちのような形で殴られた怪物は横に、派手に吹っ飛び、壁へと激突した。
怪物「グゥ………」
怪物はゆっくりと起き上がると、突然キョロキョロと辺りを見回した。
怪物「アアアアアアアアア!!!!!!!!」
突然、怪物は吼えて、うろたえる様に逃げていった。
孝之「はぁっはぁっ………水月、大丈夫か?立てるか?」
水月「え?あ、大丈夫……」
呆然としていた水月は、孝之の言葉で我に帰ると立ち上がろうとした…が、どうにも腰が抜けているようで立ち上がることはできなかった。
水月「あはは、ダメみたい。腰が抜けちゃった…」
孝之「そっか。じゃぁ少しそうしてたほうが良いかな?しかし、あのバケモノ……明らかに水月を狙ってやがった……」
何故水月を?近くには大空寺も、俺も居たのに…そんな事を考えつつも、孝之は改めて変身した自分の姿をみた。まるで、子供の頃に見たTVの変身ヒーローのような感じだ
あゆ「だらしない女ね。まぁ、糞虫は最初にしては上出来さ。まぁそこの女も動けないみたいだから、今からそのベルトと怪物について説明してやるから、ありがたく聞きなさい。」
あゆの物の言い方に少し不満を覚えたが、孝之はあえて反論せずにあゆの説明を聞きはじめた……
バキィ!!
遙「!?」
突然、遙の顔に衝撃が走った。わけもわからないまま、遙は横に吹っ飛ばされてそのまま壁に激突した。
遙(何…??何が起きたの?確か、私は孝之君をみつけて…そう、水月と…水月とキスをしている所を……そしたら急に体が熱くなって……それからどうしたろう?)
遙は、兎に角立ち上がって辺りを見回した。そこには、地面に座り込んでガタガタと震えている水月と、まるで汚い物でも見るかのような目でこちらを見ている金髪の少女と、恐らく遙を殴ったであろう、ヒーロースーツのような物を着た人物が居た。
孝之の姿は見られない。恐らく、物陰にでも居るのだろう。
遙(何??何が起こったの??それに私は……)
遙は、自分の手を見た。そこには今まで見たことも無い、決して人のものでは無い手が映っていた
遙(何これ!?これが……これが私の手……?何よこれ!?)
その瞬間、遙は自分が水月に襲い掛かった事を自覚した。本気で…本気で水月を殺そうとした自分を…
遙(そんな……私が…私が水月を………私は…私は………)
遙「ああああああああああああ!!!!」
遙は叫び声を上げて、混乱しながらそのまま訳もわからずに走り出した。兎に角、その場に居たくなかったのだ。
そうして、30分ほど走ったところで、遙は元の姿へと戻った。そしてその時、遙の目の前には見覚えのある病院があり、そこからモトコと名乗った女性が出てきた。
モトコ「涼宮さん!!一体どこへ行っていたの!?兎に角、病室に戻って、私の話を聞いて頂戴。わかった?」
遙「……はい。」
この後、遙はモトコによって今まで自分がどう言う状況だったのかという事を聞かされるのだった……
君が望む永遠〜パラダイス・ロスト〜
つづく
アトガキ
久し振りに、つうか2年ぶりにSSを書きました。内容的には君が望む永遠+仮面ライダーファイズです。
まぁ、君が望む永遠をプレイした勢いで書きました。因みに、前、中、後編の三部作です。
一応、ラストまで考えてあるんで、中、後編のUPは時間が出来たらUPします。
そんな感じで、とりあえず読んで下さいってありがとうございました〜。
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