5.制服と法律・規則について

Q・私はいわゆる「制服マニア」で、いろいろな制服を集めたり、身に着けたりするのが大好きです。ただ、制服の中には、持っていたり着て歩いたりすると法律に触れることがあるということを聞いたことがあるのですが、詳しいことが判からないので最近気になっているのですが…。

A.今回はちょっと難しい質問ですね。というのはそれが「何の制服」なのかによっても判断が別れるからです。ここではとりあえず、「公の官職や身分を表わす、法令で定められた制服」と、「学校や企業、その他の団体に属することを表わす制服」の2種類に分けて説明することにします。このように書くとむずかしそうですが、要するに前者は「公務員やそれに準ずる職業の制服」、後者は「学校や企業の(民間の)制服」と考えて下さい。
  (関連・軽犯罪法第1条第15項、他)

 軽犯罪法では、第1条第15項に「官公職、位階勲等、学位その他法令により定められた称号若くは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し、又は資格がないのにかかわらず、法令により定められた制服若しくは勲章、記章その他の標章若しくはこれらに似せて作った物を用いた者」とあります。違反した場合は拘留または科料という罰が定められています。この規定では官公職等の「詐称」や、制服等を「用い」ることが処罰の対象ですから、制服等を所有しているだけでは、ここに定める処罰の対象にはなりません。それでは、「用いる」とはどのような意味でしょう。

 ごく当たり前に考えれば、この場合の「用いる」とは「着用」の意味です。もっとも例えば警察官の制服を着用せずに手に持っている状態でも、そのことを利用して「私は警察官だ」と名乗って相手をだませば、これは「詐称」であり、その制服は詐称のために「用いられた」と判断される可能性が非常に高いでしょう。つまり、着用等によって警察官でない人物が警察官であるかのように見える場合(無言のうちに、詐称したのと同じ効果を得る場合)と考えるのが、ほぼ妥当かと思います。この解釈なら、特に除外規定が明記されていないにも関わらず、仮装大会の出場者や、映画等の撮影中の俳優が軽犯罪法違反で検挙されたという話を聞かないのも不思議ではありません。この場合は周囲の状況からその人物が警察官でないことが判かるからです。もちろん警察官に限らず、例えば消防官等の他の官公職の制服でも同じであることはいうまでもありません。

 また、ここでいう「制服」は「法令で定められた」ものということになっていますから、例えば警察官の有志グループが作ったジャケットなどは、ここでいう制服には含まれません。ただし文字で「警視庁」などと入っているものは別です。特定の機関・官公署の名前でなく、たとえば「POLICE」等というのは問題ないでしょう。もっともどこまでが「政令で定められた」ものなのかは、なかなか判かりにくいと思います。都内で、自衛隊の野戦服やジャケットなどが売りに出されていることがありますが、あれなど自衛官に聞いてみても判断がつきにくいでしょう。1つの安全基準として、条文中にある「記章その他の標章若しくはこれらに似」ているものがついていたら、はずしておくことです。余談になりますが、外国で軍隊経験のある者が退役後に他国で傭兵になる場合、在隊中に使用していた野戦服を使う場合でも必ずワッペン等ははずします。過去の栄光など誇ろうとすると、ワッペン1枚で国際問題になったり自分の身が危なくなるからです。今回の件とは直接関係はありませんが国内でも1つ間違えれば思いがけないトラブルの元になるという事だけは覚えておいて下さい。また国内といっても米軍基地のような場所もあります。基地の一般開放日に行く場合には、野戦服(私も数着持っていますが)を着用して行く場合でも、米軍関係の記章等の使用はひかえるようにしましょう。また、政令で定められたものでなくとも、そのデザインが意匠登録されている場合もあります。例えば警視庁のSP(警護課員)は私服ですが、あのSPのシンボルのバッジや赤いネクタイは意匠登録されていますので、このような場合には使用だけでなく、同じ物を作ることも出来ません。

 この規定では、「似ている」制服も規制の対象になっています。それでは、警察官の制服に似ていると思われる、警備会社の警備員(警備士)の制服を見てみましょう。なんとなくイメージとしては似ているように見えますが、実は色が茶色であったり、あざやかな青、また白や黒であったりするものが多いようです。警察官の制服は冬服が紺、合服や夏の略衣(盛夏略衣)は、やや青みがかった灰色です。また細かい点ですが、機会があったら、肩の上のベルト(肩章)を見比べてみてください。肩章はいずれも腕に近い方が制服に縫い付けられ、首に近い方の側でボタン留めするようになっています。警察官の制服では婦人警察官も含めて、このボタンが襟の下に隠れて見えませんが、警備士の制服ではほとんどのものが、ボタンが襟の外側のはっきりと見える位置にあります。また一部の警備会社では、アメリカの警察官のように袖に大きなワッペンを縫い付けたりして、ますます差別化が進んで来たようです。一方、某社の現金輸送車の警備員が持っている警棒は、日本の警察官が使用しているのとまったく同じ物ですが、これは身分を表わすための制服でも記章、階級章などでもない「装備」ですから、この法律には触れません。「似ている」「似ていない」をはっきりと文章で線引きすることはできませんが、以上の例から、見た目で区別が付く「感じ」を考えてみて下さい。もちろん着用するシチュエーションによっても判断が別れることは前述の通りですが、基本的に入手した制服を着用して外出などしないことです。数年前に他の女装誌に婦人警察官の制服で登場した人や、アメリカの女性兵士の制服姿で登場した人がいました。先日、地図でひまわりの編集部のある位置を見てみたら警察署のすぐ近くなんですね。だから、この婦人警察官の制服を着た方の人などはこの姿で編集部に撮影のために訪れたりすると非常に危険なわけです(やらないと思いますが)。

 (註:この文は数年前に書かれたもので、その後警察官の制服が変更されたために、現在では事情の異なる部分があります)

 次に「学校や企業の(民間の)制服」の場合ですが、これはさらに2種類に分類して考えます。例えば、OLの事務服の場合、その会社独自にデザイナーを起用して作る場合と、市販の事務服を購入して使用する場合があります。前者の場合はその会社が意匠権を持っていることが多いでしょうから、これもトラブルの元になります。この場合、刑罰を受けることはありませんが、話がこじれると民事訴訟になる可能性もないとはいえず、そうなると、正直なところ私の知識の範囲を越えます。また、学校の(特に女子の)制服は近年リサイクルショップ等に出回る事が多いそうですが、この中にもかなり意匠権を有するものがあると考えられます。またこのような制服の場合は、その学校の記章や、校章をデザインしたワッペン、刺繍などが付いているものが多いと思います。この場合には制服のデザインだけでなく、それらのデザインについても学校側が意匠登録を済ませていると考えるべきですから、みだりに使用することは出来ません。この他スチュワーデス、デパートやファーストフード、コンビニエンスストア等の店員のユニフォームなど、所属する団体(学校や企業等)が特定できるようなコスチュームはすべて同様に考えるべきです。無難なところでは、ごくオーソドックスなタイプで記章等のないブレザーやセーラー服、市販の事務服などは(法律上は)比較的安全と言えます。しかし、そういう無難なところに落ち着いていられないのが制服マニアのマニアたる所以なのでしょうから、以上の事を踏まえて着用の際のTPOを考えるようにして、あらかじめトラブルを避けるように心掛けて下さい。



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