from 三橋 順子さん (1999年02月02日 19:35)
日本でも性転換手術後の戸籍の性別の変更が認められたケースがある、という
情報(噂)は、一部のGID(性同一性障害)関係者の間で流布していました。
ただ、その情報の根拠が、私、及び私たちのグループ(TSG)では確認できて
いませんでした(他のグループはご存知なのかもしれませんが)。
1月27日、私が準備している「女装の社会史」研究の資料調査の際に、その根
拠となる雑誌記事を目にしましたのでご報告します。
文献:『週刊文春』1981年4月23日号
題目:本邦初公開 性転換して女の戸籍を闘いとった"男"の術前術後
概要:MTFのBさん(1981年当時44歳)は、アメリカのスタンフォード大学
で20倍の難関お適正検査を通過して、1974年同大学で性転換手術を受
けた。同大学での745人目の被術者で、日本人では初めてだった。
帰国後、家庭裁判所に戸籍の性別記載の変更を申請し、家裁の指示に
従って慶応義塾大学で診断書(術後の状況確認)をとり、1980年11月
17日、家裁から戸籍の続柄(性別)記載の変更を許可され、港区役所
で変更手続きを行った。
スタンフォード大学の手術証明書、長男から長女に記載変更された戸
籍謄本、性別が変更された年金証書の写真が掲載されている。
なお、同記事には、法務省民事局二課の以下のような見解が紹介されていま
す。非公式なものであるにしても当時の法務省の肯定的なコメントはたいへ
ん注目されます。
「法的には可能です。昭和45年(1970)に、福岡県連合戸籍事務協議
会が、当時としては珍しいケースだった性転換の問題を取り上げま
してね。医学的に証明した上で家庭裁判所の許可が出れば、戸籍を
訂正することにしたのです。家裁の許可書と戸籍謄本、それに印鑑
と戸籍訂正申請書を市役所に持ってゆけば、戸籍の性も変えられる。
こういったことは、今や全国的に可能とみていいでしょう」
また、同誌に掲載されているスタンフォード大学の手術証明書については、
1月31日に開催された第7回TSG集会の席上で、英語の堪能な出席者の方に
検討していただいたところ、幸いにも誌面で削られているの数文字程度で、
ほぼ全文が判読できることがわかりました。
以下に、拙訳ではありますが、1974年3月29日付のスタンフォード大学メディ
カルセンター発行の手術証明書の主文を示します。
(翻訳にあたりご教示をいただいた方々に感謝いたします)
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スタンフォード大学メディカルセンター
1974年3月29日
広範な医学的、かつ心理学的・精神医学評価が、B氏(原文は当事者の名前)
に対して実施された。これらの評価は、患者の性の再指定に関連している。
私たちスタンフォード大学性別違和分科会は、完全な性の再判定プログラム
によって上記の患者に医学的かつ心理学的な支援を行った。
B氏は、性転換症(トランスセクシャリズム)であると診断されに至った。
ホルモン療法と外科的療法が心理学的な再指定とともにに完遂された。した
がって、この患者は、いかなる人からも女性として取り扱われるべきである。
この患者B氏は、法的文書を正当な女性であることを反映させる形で変更さ
れるべきである。
(発行者署名)
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この1980年の事例以前にも「性転換」による戸籍の変更事例は、雑誌などで
いくつか報道されていましたが、いずれも半陰陽の治療にともなう戸籍の
「誤記訂正」で、先例となるものではありませんでした。スタンフォードの
手術証明書が判読できたことにより1980年事例は、半陰陽の治療にともなう
ものではなく、性別違和(=性同一性障害)に起因するよる「性転換」にと
もなう戸籍の続柄(性別)記載の変更であることが確実になりました。
こうした確実な事例の存在が明らかになったことは、近い将来(おそらくは
今年中)に予想されるGID(性同一性障害)によるSRS(性別再判定手
術)後の戸籍の続柄(性別)記載の変更申請に際して、重要な先例資料とな
り、大きな突破口となるものと思われます。
TSG(トランスサポートグループ)顧問 三橋 順子 |
少なくともポストオペであれば先例があるというのは、判例主義を取る
日本では、重要な情報だと思います。
これは素晴らしい「発見」(発掘?)ですね(^^)。
