『新・西遊記』


3話後編 


 斯様なわけでエルウィンとゼニア、それにヘラの初顔合わせは堅苦しく重い雰囲気に満ちていた。
 隊商の一行の食事の席に姿を見せたヘラは、エルウィンの傍らに先任者然として腰を下ろしてるゼニアを見て、ただでさえ曇り気味の表情を硬くした。あからさまに表情を変えたわけではないが、心中苦虫を噛み潰してるのは傍目に明らかである。
 ヘラの美貌はともかく、衆に秀でた長身に鎧をまとった姿である。その彼女がムスッとした顔で宴会場の敷き居をまたいだ途端、昼間から一杯聞こし召してた商人たちは黙り込みネルとレノラは箸を止めた。
 唯一ヘラの威圧的な雰囲気に呑まれなかったのはエルウィンとゼニアである。エルウィンはつと立ち上がるとヘラのそばまで行き、「はじめまして、エルウィン・ド・エアレンディルです。西への長旅、よろしくお願いします。あちらにいますのが、あなたと御同役のイスマスのゼニアさんです」 と普段にない丁寧な挨拶をし、握手を求めて手を差し出した。彼女が腰掛けていた席の隣では、ゼニアがものに動ぜぬ不敵な目付きで、ヘラを品定めするように無遠慮に見上げていた。
 自分の体格にいささかコンプレックスのあるヘラは、彼女をジロジロと眺めるゼニアの態度が気にくわないが、エルウィンの物腰に少しだけ緊張を解いた。エルウィンが同道の商人たちやネル、レノラも順繰りに紹介する。
「こんにちわ」
 ヘラは大きな手でエルウィンの手を包み込むように握手を返した。繊細だが意外なほどしっかりとした少女の手を握ると、妙にヘラの心も落ち着く。
「聞けば先程この店のゴタゴタを解決なさったとのこと、頼もしいかぎりです。いかがでしょう。旅の前に親睦を深めるということで私たちと食事を一緒にされては?」
 エルウィンの誘いにヘラがどう応じるか、部屋中の人間が二人の様子を窺う。
「招待ありがとう。でも、こちらとしても別室に同席者を待たせているので、そうもいきません。この町で数日を過ごして旅装など整えるというのでしたら、明日にでも改めて・・・・」
 ヘラはエルウィンの誘いを丁重に辞退した。ひとつには魔族と同席での会食に抵抗があった。それにアルマンドをマルチスキャン一人の監視に任せておくのは心配だったしかといって吸血鬼のような不浄な者を自分の目の届くこの場へ呼ぶわけにもいかなかったからである。
「・・・ですが・・・」
 ヘラはジロリとゼニアに視線を返した。
「そちらとは警護のことも兼ねて、後刻べつに席を持ちたいと思います。じつは少々手を借りたいこともありまして・・・」
 たったいま考えついたことなのだが、アルマンドを放逐するのはやはり天使側、それもヘラとマルチスキャンの独断専行の色が強い。そこでゼニアの力量を計るのも兼ねて魔族の同行者がいれば後々問題が少なくてすむと判断したのである。
「分かりました。それでは食事が済みましたらゼニアさんにはそちらへ行ってもらいますのでよしなにお願いします」
 機を見るのに敏なエルウィンはどの辺りにヘラの不満があるか察している。
 エルウィンが自ら一杯酌をしてヘラを送りだすころには、部屋の雰囲気が目に見えて和らいでいた。



『それにしても、エルウィンどうしたんだろ? 普段はあんな感じじゃないのに』
 昼食もすんで、商隊の一行に兄の家まで送られながらネルは心中首を傾げた。たしかにエルウィンは豪商エアレンディル家の娘で自由気ままに育てられているし、すこし風変わりなところもあるが、決して我がままでも非礼無礼なわけでもない。ただ、興味のあること以外への関心が極端に薄く、また権威や役職、もっともらしい名目や建て前といったものに対する反骨精神が旺盛なだけである。
 西方への旅を如何なる理由で引き受けたのかは、幼なじみのネルも推し量るのが難しいが、やると決めたら一人でどこまででも歩き続ける性格であるのは承知していた。だからこそ、警護役などあって無きがごとき風情なのだろうと思っていたのだが、案に相違してヘラに接する態度は配慮に満ちたものだったのでネルは意外な思いがしたのだった。
 エルウィンのことなので、魔族が嫌いで天使が好きなどという単純で俗物的な動機ではないのだろうが、ゼニアがこれを不本意に思ったのは間違いのないところである。
 ネルは兄の家からこの町の中等学校へ通うことになっているし、レノラも身の振り方を考えなければいけない。エルウィン、ゼニア、ヘラの三人は長い西への旅に発つことになるのだが・・・
『最初っからあんなにギクシャクしてて大丈夫なのかな?』
 いまの三人の間には何かが欠けているとネルは思う。なんの役にも立たないとは思うけれど、ネルはエルウィンのためにそれを埋めてあげたかった。


「兄さん」
「やあ、ネルヴァ。久しぶりだな。少し合わないうちに、また背が伸びたみたいだな」
「からかわないでよ。僕、前のクラスでも背の低いほうだったんだよ」
 半年ぶりに対面した二人の兄弟は固い抱擁を交わした。
 ボルテール家の長兄の名はピサネルロ、四男のネルとは一回り以上歳の離れた(ネルは十三歳)二十八歳で、実家の田畑は次男と三男に任せてこのアフラで商いをしていた。扱ってるものは主に繊維製品で、この地で収穫される麻や綿を織物にしている工房のために染料を仕入れ、出来上がった品を買い上げて他所で売り捌く問屋業を営んでいた。
 家はレオポルド門をくぐった西の旧市街にあり、中庭つきの家には染料と織物を保管する蔵が二つある。この商売を始めるに当たっては、エルウィンの父の口利きもあったし、屋敷や蔵にしてもギルド(同業者組合)からの借り入れ金で建てたもので、身代全てをこの若さで築いたというわけではないが、まずまず商売は順調だった。
 このほかにも、綿や麻を作ってくれる農家に低利で金を貸したりしている。それに作柄の不作や過剰な豊作の時には、決して暴利を貪ろうとせず、買い支えや在庫の放出などをして生産者への手厚い保護をしてやるので新参者ながら周囲からの信望は篤い。これも自分が農家の出身ということがあるのだろうが、生き馬の目を抜くような業界ではいささか甘すぎるのかもしれない。この辺りはやはりエルウィンの父の後押しが大きいのだろう。
 四年前に妻を娶り、去年二人目の子供が産まれている。ピサネルロとネルが会うのはこの宴席のとき以来である。
 ネルが両親が四十を過ぎてもうけた子ということもあり、ピサネルロとネルは歳が離れすぎているせいもあるのだろうが、二人は兄弟のなかでも仲が良い。疎遠になりがちとはいえ、子供のころからピサネルロはネルにとって一番の理解者である。両親や次男三男と違い、彼をフルネームで呼び一人前の男として扱ってくれる長兄がネルは大好きだった。
「はははっ、背なんかこれからまだまだ伸びるよ。兄さんだってこんなになったのは十五を過ぎてからだった」
 ピサネルロはいまの身代を築くまでの苦労もあって、ネルとは対照的に長身で逞しい。ネルが見上げるとピサネルロは励ますように彼の肩に手を置いた。
「それよりも一緒に来たお客さんを紹介してくれないか」
「うん」
 ネルは先ずエルウィンから紹介する。ピサネルロにしても彼女のことは以前から承知しているが、ここは儀礼通りに挨拶を交わす。
「いつも父上には世話になっています。狭い家ですが、旅の用意が整うまで二三日ゆっくりしていって下さい」
「こちらこそ。この度はいろいろと便宜をはかっていただいて感謝しています」
 ヘラの時とはまた違った気安さでエルウィンもペコリとお辞儀をする。
 次いでゼニアとレノラが紹介された。ゼニアはともかくレノラは飛び入りだし、ネルの貞操を奪って転校を余儀なくした張本人なので紹介するネルも冷や冷やしたが、ピサネルロはなにも言わなかった。おそらくはネルの様子からレノラとの関係が良好なものであると察せられたからだろう。
「しかし今は蔵に収まりきらない物を家の中に上げていてね。部屋に空きがない。ゼニアさんと同室になってしまうがよろしいかな?」
「は、はい、ありがとうございます」
 敷き居をまたぐことも憚られるレノラだったが、ピサネルロの寛大な扱いにしゃちほこ張って頭を下げる。
 
ひとまずは四人ともピサネルロの家に落ち着くことに決まった。
 四人が屋敷の奥へ上がって旅装を解き、茶などをすすめられているころ、商隊の者たちが運んできた荷駄を降ろし終えて挨拶を済ませ、エルウィンの旅の安全を口々に祈りながら去っていった。


夕刻、日没とともに〈牡鶏と牝牛〉亭の裏口から四つの影が出ると、人目を憚るように東の郊外へ歩みはじめた。
 四つの人影はヘラにマルチスキャン、そして魔族側の証人としてゼニア、それにこの件の当事者で吸血鬼のアルマンドである。
 アルマンドの青白い顔は日暮れとともに、人間で例えるなら生色とでもいうものが戻ってきていた。魔族や天使から転生した不死者というのは転生前の能力を引きずっているのでなかなか厄介な相手なのだが、三人の腕利きに囲まれていては不穏な態度を毛一筋も見せない。もっとも三人を出し抜いて逃走をはかったとしても、マルチスキャンに飲まされた仙丹でたちどころに居場所が発覚してしまうはずである。
 四人はアルマンドを先頭に、その左側に一歩遅れてマルチスキャン、背後には三尖の長柄刀を担いだヘラ、それに数歩遅れてゼニアが付き従っていた。アルマンドを放逐するに当たっては、決定はヘラとマルチスキャンの合議であり、ゼニアはそれに体よく巻き込まれたにすぎない。
 結局、アルマンドの罪は〈牡鶏と牝牛〉亭での婦女暴行と騒乱であり、アフラへ来る前に如何なる悪事を働いていたのかは聞き出すことはできなかった。店での騒動はアルマンドが手持ちの金を全額(どこでどう稼いだのか、かなりの額ではあった)手渡すことで話がついていたし、吸血鬼とはいえ予断や推測だけで処罰をすることもできなかった。事件の解決にはヘラとマルチスキャンが当たっているが、アルマンドの処罰権は魔族の側にある。その辺で後々のいざこざを避けるためにゼニアに同行を依頼しているのだが、やはり彼女にしてみれば面白くない。
 アフラの治安に関する問題はこの町の魔族に任せるべきであり、別の用件で通りすがりの自分を証人に利用すべきでないとゼニアは思う。昼食の席でのエルウィンの言質が無ければこのようなことに同行などしなかっただろう。
 だが、一見筋の通ったゼニアの思考も、やはり天使への反感に根差したものであることを本人は気付いていない。筋違いであると思いながらもエルウィンに意見できなかったのは、やはり彼女への御機嫌取りをしようという下心がゼニアにあるからなのだろう。
 エルウィンにしてみれば筋はともかく、ゼニアとヘラが諍いをはじめそうな気配は察していたはずであり、それゆえにこそ二人が歩み寄って協調性を育む機会を与えたつもりだったのだろう。しかし二千年に及ぶ天使と魔族の反目は、このような些細な事件でも表面化しこそすれ、容易に解消するものではなかった。
 一方のヘラにしても心中あまり面白くはなかった。
 ことの成り行きからしてゼニアが噛みついてくるのは確実だと思っていたが、予想に反して彼女は黙々とあとからついてきている。
 筋からすればゼニアが苦情を訴えるのは当然であり、そうしないのは彼女のいい加減さのせいではないかとヘラは勘ぐってしまう。
 しかしゼニアが難癖を付けてくれば、それはそれで口論の種になったことは間違いない。やはりこちらも感情から生ずる反感に突き動かされていると言えなくもない。
 そうこうしているうちに月も冲天にさしかかり、昼間ゼニアたちがアフラを見渡した峠に到着した。
「この辺りでいいだろう」
 ヘラが口を開くと暗闇の中でマルチスキャンも首肯いた。
「どこへでも消えるがいい。しかし二度とこのような騒ぎを起こすなよ。少なくとも二年は仙丹が腹の中で溶けることはない。良からぬことを仕出かせばすぐに追捕の手を掛けるぞ」
 マルチスキャンが脅しつけるとアルマンドは不安そうに自分の胸の辺りに手をやった。
「行け」
 ヘラが蠅でも追うように手を振ると、吸血鬼は溶けるように闇の中へ消え去った。
「やれやれ」
 ゼニアが当てつけるように溜め息を漏らすと、ヘラがジロリと彼女を睨む。
「夜も遅いですし、帰りますか」
 この場の雰囲気を取り繕うようにマルチスキャンが提案する。
「ああ、それがいいわね。ところで貴方、今夜の宿は?」
 ヘラはゼニアの反応を無視してマルチスキャンに向き直った。
「とりあえず〈牡鶏と牝牛〉亭ですよ、店の好意でね。寺院の方には明日にでも挨拶に行って、転居の段取りをしますよ」
 三人は踵を返すと、アフラへの道を下りはじめた。


ぐううぅぅ〜〜〜〜っ レノラの腹が長々と情けない音を立てた。
「うーん。お腹が空いて寝つけないですぅ」
 掛け布団にくるまったレノラは空っぽのままの隣のベッドを見る。どこまで行ったのかゼニアは夜が更けても帰ってこない。夕食は家の人たちと一緒に取らせてもらったのだが、彼女の飢えは食欲ではなく性欲と関係している。イスマスを発ってからこちら、一度もナニしていないので腹の辺りが空っぽになったようで我ながら情けなくなる。
 本当のところは、ネルに張ち切れんばかりにお腹の中に精気を注ぎ込んで欲しいのだが、前回の失敗(第一回参照)やゼニアから釘を刺されていることもあって自重してきた。しかしその我慢もそろそろ限界に達しつつある。
 この場にゼニアがいれば少ないながらも(←そういう言い方はゼニアに気の毒)エネルギーの補充ができるのだが、いつになると彼女が帰ってくるのか見当もつかない。
「もう限界 !  帰ってきて抱いてくれないお姉さまが悪いんですぅ」
 レノラは自分を納得させるように呟くとベッドから抜け出し、ふらふらと夢遊病のようにネルの寝室へと向かった。エルウィンも含め家人はみんな床に就いているはずなので、ネルを除いて他の者が目が覚めないように夢操術を使う。
 レノラも寝室もネルの新しい部屋もともに二階で、エルウィンの寝室を挟んでいる。レノラは足音を忍ばせてネルの部屋へ入っていった。


「レノラ、ただいまー・・・・」
 ヘラやマルチスキャンと別れたゼニアが帰ってきた。玄関からは出入りできないので寝室の窓をノックしてレノラに鎧戸の錠をはずしてもらう。翼をたたみながら窓をくぐると・・・
「お姉さま、ごめんなさいですぅ。どうしても我慢できなくって・・・」
 臨月の三つ子を孕んだようなレノラが爆腹を抱えてベッドに腰を下ろしていた。
「・・・・(少し怒)」
「ほ、ほら。レノラのお腹パンパンですよぅ(少し汗)」
 レノラはゼニアの御機嫌を取ろうとして膨らんだ下腹部を突きだして見せる。しかしゼニアはレノラの誘いに乗ろうとせず、自分のベッドに寝転がってしまう。
 今日は深夜までヘラに付き合わされたうえに、レノラに一人で楽しまれてしまって興が削がれた気持ちである。レノラの姿態は魅力的だし、抜け駆けしてネルとナニしたらしいのを咎める気はないのだが、人の家を間借りしている事情もあるし、あまりハッスルして彼女を抱こうという気にはなれないのだった。
「ふみぃ、アタシが約束破ったからキライになったんですか?」
 レノラが心配そうにゼニアの顔を覗き込む。
「んー、そんなわけじゃないんだけど・・・」
 レノラの瞳が月明かりにウルウルしているのを見たゼニアは、彼女をベッドに導き入れた。
「今夜は静かに・・・ね」
 ゼニアはレノラを横にならせると、背後にぴったり身体を寄せた。そして背後から手を伸ばし、レノラの爆腹を撫でながらいつの間にか眠りに落ちていった。


「遅かったな。本当に逃げ出したのかと思っていたぞ」
 闇の中からそれよりも黒い影が現れると吸血鬼は落ちつかなげに身じろぎした。
「そんなことをするはずがないだろう」
 肉体の代謝機能などとうの昔に停止しているのに、アルマンドの青白い顔を汗をかいているように見えた。
「そうかな? まあいい、また一仕事してもらいたい・・・」
「そろそろこの辺もやばくなってきているぜ。昼間は本当に干物にされるところだった」
 闇の中で影の両眼が濁った緑色の光を放つ。
「これが最後だ。首尾よくいけば縁切れとしよう・・・」


 翌日、郊外のヘラの家に三人の招かれざる客があった。最初の客はマルチスキャン、それに続いてゼニアとレノラがやって来たのである。
「お聞きになりましたか? なんでも、昨夜南の集落で農家の牛馬数頭が惨殺される事件が起きたようでして。どうやら賊は、数日来この近辺を騒がしている例のやつのようです」
 さすがに元順風耳といいたいところだが、早朝発覚した最新の事件ははやくもアフラ中に広まっていて、知らぬ者の方が少ないぐらいだった。
 ゼニアにしても、警護役としての打ち合わせも兼ねてヘラの家を訪ねたところでこの知らせを耳にした。ちなみにレノラは、昨晩来のゼニアの態度を危惧して自発的に付いてきたのだった。
 レノラを除く三人はとりあえず集まった事件の断片的な事実を継ぎ合わせて表情を曇らせた。
「やはりアルマンドだろうか?」
 朝から鎧をまとったままのヘラがマルチスキャンに尋ねる。
「どうでしょうか・・・」
 マルチスキャンの歯切れが悪い。
「居場所が?」
「・・・分からないのです」
 宙に消えたか、地に潜ったか、アルマンドの所在がつかめないというのである。
「貴方が飲ませた仙丹は容易に体内から取り出せる?」
 幾分かの不信感を込めてゼニアが尋ねる。
「そんなことは・・・ことわざに“病、膏肓に入る”というのがありますが、仙丹はその膏肓に落ち着くのです。胸を切り開いたって、手が届くかどうか・・・」
「あいつにそんな根性があるわけないだろう」
 ヘラが同僚に助け船を出す。天使の能力が疑われたことが気に入らないらしい。
 ゼニアにしてみれば吸血鬼の根性などを斟酌しても仕方がないと思う。口には出さないが、その思いは露骨に彼女の表情に表れた。
 室内の雰囲気が一気に氷点下まで下がる。部外者のレノラはハラハラしながらも横から口を挟むことができないでいる。
「とにかくアルマンドが容疑者であることは事実です。天使も魔族もできるかぎりの人員を割いて一帯を捜索してます。責任の一端はわたしにもあるわけですから、わたしもこれから捜索隊に加わろうと思っています」
 そう言うとマルチスキャンは立ち上がった。
「見つかるかな?」
「昼間はあいつも動けないはずです。チャンスはこちらにありますよ」
 マルチスキャンは三人に挨拶すると辞去した。
 ゼニア、ヘラ、レノラの三人は重苦しい雰囲気の中に取り残されたまま一時沈黙を保っていた。
 アルマンドが下手人であると決まったわけではないが、不審者を野放しにして捜索隊を混乱させてしまった責任がヘラにはある。またそれを看過した責任がゼニアにはあった。
 互いに相手を責めたいところだが、それは責任のなすり合いにすぎない。マルチスキャンのように捜索隊に加わって積極的な活動ができればよいのだか、祭司警護の役目に縛られていてはそれも不可能である。
 二人とも自分たちの警護役としての資質に疑義が生じるような事態に巻き込まれてしまい、今後の西行きについての話し合いどころの気分ではなくなっていた。どちらもテーブルを挟んで相手の力量を測り、決闘前の獣のように睨みあっていた。
 もはや昨日からの反目は何らかの行動無しには解消しそうにない雰囲気だった。
「やるか?」
 沈黙を破ったゼニアの一言にレノラが不安そうに身じろぎした。ゼニアの不敵な眼差しはもはや戦士のものとなっていた。
「ああ、おたがい相方の技量も知らずにこれから先の仕事は務まるまい。軽く手合わせ願おう」
 ムシャクシャしていたヘラも即座に応ずる。願おうという彼女の口調も、胸を貸してやろうという傲慢さをにじませた皮肉と己の技量への絶対の自信が混じっていた。
「ルールは?」
 席を立ちながらヘラがたずねた。「どちらかが降参するまで。“協定”もあることだし、引き際も知らぬ愚かな真似はせぬようにしましょう。それと・・・レノラ」
 ゼニアがレノラに振り向いた。そして軽くうなずくとヘラに視線を帰す。
「彼女は治癒魔法が使える。多少のケガなら大丈夫よ」
「そ、そんな・・・おねえさ、いえ、ゼニアさん、ヘラさん、二人とも喧嘩なんかしちゃダメですよぅ」
 レノラがこわごわ、しかし必死になって二人を思いとどまらせようとした。
「喧嘩じゃないわ。試合よ」
 ゼニアがレノラを落ち着かせるようにそっと肩に手を置いた。それを見たヘラが片方の眉を吊り上げ、軽く鼻を鳴らした。
「やめておくなら恥をかく前にしておいたほうがいい。お前の情婦も心配している」
 ヘラが嘲弄する。一つには試合前にゼニアを熱くさせて精神的に優位に立とうという策なのだが、もう一つはそのような関係を持つのが自由な魔族に対する無意識の嫉み心があった。
 それを聞いたゼニアの柳眉がキリリとつりあがった。額の独角が伸びて二十センチほどにもそそり立つ。
「表へ出ろ。あたしをからかうのは許せても、レノラを愚弄するのは許さない」
 ゼニアはフランベルジェを、ヘラは三尖両刃刀をつかむと家の外へ大股に向かった。


 ヘラの家の裏手にはかつては広壮な屋敷があったであろう広場がある。いや、屋敷跡の敷地の一角にヘラの家があるといってもよい。ヘラがここへ引っ越してくる以前、多分二百年くらい前に何らかの不幸があったのだろう。屋敷そのものは跡形もなく崩れ去り、強い火に焼かれたらしい建物の土台の石組みだけが残っていた。誰も土地の世話などしていないのに、敷地の境界となっていたであろうの生け垣の名残から内側にはほとんど雑草が生えていないのが奇妙で、昨日怪力乱神が屋敷を丸ごと盗み去ったといっても通用しそうだった。植物がよく育たないのは当時の陰の気が未だに多少残っているからだろう。
 百二十年前にヘラがここへ来たときには、とかく怪異な噂や幽霊譚があって、近所の村人も日が暮れてからはこの辺の道を通らぬようにしていた。だから、彼女がこの土地に住むことによって邪気が静まり妙な噂も少なくなると、さすが天使の霊験はあらたかであると言われたものだった。もっとも、ヘラにしてみればただ同然の捨て値で地所が購入できるからここにしただけの話である。爾来、ヘラはここを私設の練武場として使用していた。
 ヘラはゼニアとレノラをこの私設練武場へ連れてきた。元屋敷跡の石組みは、建物そのものの基礎部分と玄関前の馬廻があった部分で段差があるものの、おおよそ三十メートル四方の方形である。
 石の床のそこここに新しい傷がいくつかあるのはヘラの練習の痕なのだろう。そこに立ったゼニアも自分の足元の具合を確認した。
 ヘラが二人から十歩ほど離れて立つ。
 ゼニアは肩に掛けたフランベルジェを抜くと、鞘を傍らに立つレノラに手渡した。長老から貰って以来、陽の下で抜くのは初めてである。波打つ刀身が陽光ににじむと、ゼニア自身ですらこの業物の出来に身が引き締まった。
「先程ルールはないと言ったが、一つだけ。この敷き石の上を闘いの場と限り、ここから出たほうを負けとしたいが、どうだ?」
 ヘラが提案するとゼニアも承諾した。二人とも飛空術を心得ているので、闘場を限らないとどこまでも闘いの場を広げて周囲に迷惑がかかる。
「それじゃ、レノラ、外に出て待ってて」
「気を付けて、ゼニアさん」
 カドケウスの杖を握りしめてるレノラを見ていると、ゼニアもなるべくヘラを傷つけずに一本取りたいとは思う。
「それでは始めるか」
 レノラが場の外に出るのを見計らってヘラが声をかけた。
「ああ」
 ゼニアがフランベルジェを構えるとヘラも三尖両刃刀を構えた。こうして向かい合ってみると二人の戦士の違いが際立って見える。
 ゼニアも女性としては長身だが、ヘラは彼女よりさらに頭一つ分は背が高い。どちらも眼差しは鋭いが、ゼニアのボーイッシュで凛々しい容貌に対し、ヘラはふくよかで母性を感じさせる。体格にしてもゼニアが痩せ型の筋肉質なのに対し、ヘラは豊満な肉付きの下に剛健な筋肉を秘めていた。
 身にまとっている戎装(注 武装、軍装のこと)にしても、気休め程度の胸甲一つに手甲臑当てと徹底した軽装備のゼニアに対して、ヘラは全身に強固な鎧をまとっていた。ただそのヘラにしても容貌を隠すような兜の類いを被っていないのが妙といえば妙で、不用心な感じを与えていた。
『鎧をまとえば身のこなしが重くなるし、無意識に防具に頼って紙一重の接近戦では競り負けることもある。面と向き合っての一対一の決闘なら、あの重装備は決して有利とは言えないわ。兜を被らないのは視野を確保するうえでは正解なのだけれど・・・・』
 剣を構えたゼニアはヘラの技量と能力、得意とする戦術をはかろうとした。フランベルジェは両手で扱う長剣で、刀身から柄まで含めると地面に立てるとゼニアの顎ぐらいまではある。(作者注 設定ではゼニアの身長は175センチ弱。だからフランベルジェは少なくとも150センチはあることになります。ちなみにレノラは裸足で163センチ。二人のスリーサイズは読者の御想像に委ねるとして、バストとヒップはレノラが大きいようです。←注釈が脱線して申し訳ありません) 当然それなりの重さもあるので扱いには熟練を要するが、その重さと長さを生かして振り回せば、魔法アイテムであることを別にしても強力な斬撃を誇る。
『こっちのフランベルジェはリズム、バランス、スピードの三拍子からなる連続した斬撃が得意だけど、ヘラの長柄刀は三メートルはあるからそれ以上の間合いがとれる。こっちとしては間合いを詰めながら攻撃魔法との二段構えでいくのが順当な手か』
 一方のヘラも三尖両刃刀を構えてゼニアの腕のほどをはかっていた。
『あの軽装からすると機敏さを重視した攻撃型の戦士。どういう攻撃が得意かは分からないが、それをしのげばこちらに勝機がある。それに相手が身をすり寄せるような接近戦を挑んでくるなら・・・』
 じゃらつかないようにまとめて腰に下げている錬銅の鎖。このアイテムの能力をゼニアは知らないはずである・・・
「いまだっ ! 」
 ヘラの注意が一瞬散漫になったと見て取ったゼニアが先手を取って飛び出した。レノラが離れた時点で闘いは始まってる。
「小癪な ! 」
 もとより相手の攻勢をしのぐつもりのヘラは動じない。剣を振るって肉薄するゼニアに、長柄をしごくと鋭鋒を繰り出した。
 意外に敏捷なヘラの反応に対し、ゼニアも三尖の切っ先をさばきながら斬りつける。
 だがさすがは三尖両刃刀も魔法アイテムである。赤樫で出来たような長柄でゼニアの斬撃を受けても、二つに折れたり傷がついたりしない。
 ヘラは受け止めた剣先を腕力と体重差にまかせて押し返した。
 腕力と技量はともかく、体重差と得物の間合いだけはどうしようもない。押し返されて後退したゼニアに再び三尖両刃が突き出される。
 こうして戦うこと三十数合。まことに竜虎相撃つといった具合で勝負は容易につきそうになかった。
 双方剣技槍術についてはほぼ互角だが、長柄の優位を生かしたヘラが攻めの手数はわずかに多い。しかし決定的な攻め手を欠いているので、それをもってヘラの有利と断ずることは出来ない。
『誘っている・・・ならば期待に応えて戦法を切り替えるか ! 』
 やはりヘラはその重装備に相応しく、防御で敵の消耗を誘いおもむろに攻勢に転ずる後の先型の戦術を得意としているにちがいない。そう判断したゼニアは矛と矛での凌ぎ合から、矛をもって盾を突き破る全面攻撃に移ることにした。
『あの強固な防具からすれば、身体自体は案外脆いかも・・・ならば鎧を破壊してしまえば勝負はこちらのものだわ』
 防具も魔法アイテムのはずだから、それなりの耐久力はあるのだろうが、それはゼニアの計算のうちである。
 攻撃魔法を使用するためにゼニアはヘラに押されているふりをしながら大きく後退して間合いを取った。
「いくぞっ ! ! 」
 フランベルジェを片手に持って、もう一方の手で印を結ぶ。
「火の術法、爆雷波っ ! 」
 ゼニアの掌から火球が飛び出すと、三尖刀を振るって突進してくるヘラに命中した。その瞬間、火球が爆発してヘラの鎧を衝撃波が叩く。
「もう一丁 ! 」
 立て続けに火球を放つと、その後を追ってゼニアも飛び出した。
 爆発で一瞬視野の奪われるヘラの突撃をかいくぐり、ゼニアは交差する瞬間にヘラの胴にフランベルジェを横薙ぎに叩き込んだ。
「ぐっ ! 」
 ヘラの巨体が浮き上がるほどのすさまじい斬撃である。白金の鎧も軋んだが、この一撃には耐えた。
 予想していた攻撃とは言え予想外の攻撃力ということか、ヘラがわずかに焦りの色を浮かべて斬撃をくらった鎧に手をやった。内側への熱伝導こそないものの、二度の爆雷波で胴鎧の表面は相当灼けている。
 やるな、という表情でヘラがゼニアを睨んだ。
「まだまだっ ! 」
 さらに大きく闘場の隅まで跳び下がり、フランベルジェを地面に突き立てると両の手で印を結んだ。
「火炎陣 ! ! 」
 ゼニアが天を指さすと、彼女の周囲に無数の狐火のような火球が出現した。それらが次々に分裂しながら闘場内を乱舞し、ヘラを包囲する。
 次に何が起きるか予想のついたヘラも三尖刀を右手に下げると、素早く左手で印を結んだ。
「水の術法、水壁防御 ! 」
 火系の攻撃魔法を得意とするゼニアに対し、ヘラは水系の防御魔法を得意とする。ヘラは五行相剋(注 天地をかたちづくる火水木金土の五つの元気は、木は土に、土は水に、水は火に、火は金に、金は木に勝つという哲理。火水風土の四大元素説でも火水は正反対の属性を持つ)に従って大気から水の精を呼び出し、ゼニアの攻撃を防ごうとした。空気中の水分が凝結し、霧が高峰を覆い隠すようにヘラの周囲に防御結界が形成されていく。
 ゼニアはフランベルジェをつかむとヘラの頭上へ向けて大きく投げ上げ、同時に自分も前方へ疾走した。超人的な瞬発力でヘラに向かって突進しながら素早く両手を構える。
「くらえっ !  百烈火炎弾っ ! ! ! 」
 両掌から無数の火箭が飛び出すと同時に、火炎陣の火球たちも一斉にヘラ向けて殺到する。火炎弾と火炎陣による全方位からの火力集中攻撃である。
 水壁防御も物の数ではない。ヘラは一瞬に爆炎に包まれた。
 人間ならば一握の炭となっているところだが、天使であるヘラがこれくらいでくたばるとはゼニアも思っていない。ゼニアは絶妙のタイミングで上空から落ちてきたフランベルジェを受け取ると、爆炎の中の人影に向けて突っ込んだ。
「もらったぁ ! ! 」
 ゼニアが大きく振りかぶって斬り、突き、再び斬る。斬るというよりも、長大なフランベルジェの刀身を折れよとばかりに叩き付けているといってもよい。
 ついに耐久力の限界に達した鎧の留め金が壊れ、砕け、弾け飛んだ。
「勝った・・・・」
「・・・・? ? ?」
 と、その途端ゼニアは目を丸くした。
 ヘラが鎧の下に着込んでいた戦袍が一瞬にして弾け飛び、その下の白い肌が・・・ 腹が、胸が、爆発的な勢いで膨らむと前にせり出してきたのである。
「な、なんだ、なんだ?」
 戦意も勝利感も萎え、目のやり場に困ったゼニアが振り向くと、闘技場の片隅ではレノラも目をむいて唖然としていた。
「見たな ! 」
 妙に潤んだ怒りに満ちた目でヘラがゼニアを睨んだ。
「・・・見たなったって・・・」
 ゼニアの目の前では、頭よりも倍は大きな両の乳房とヘラの長い腕でも二抱えちかくありそうな爆腹が、膨らんだ余勢でユサユサと揺れている。盲人でもないかぎり嫌でも目に入るし、そうでなくとも最近レノラによって“ボテ”に開眼したゼニアは目を逸らすことなど出来ない。
 肉づきのよい豊満なヘラの腹は九つ子を孕んだ妊娠三十ヶ月の妊婦かとも思えるほどにパンパンに膨らんでいる。乳房のつくりも大きくて、本当に妊娠しているような濃いめのピンク色が広い乳輪に、赤ちゃんよりも大人の口にフィットしそうな粒の大きな乳首。これが果たし合いという状況でなければ、ゼニアも「ちょっと触ってみてもいい?」と頼み込んでいるところだった。
「殺す」
 ヘラが食いしばった歯の間から唸るように言った。怒りと恥辱で目に涙がにじんでいる。
 実を言うとこれがヘラの“通常体型”である。はるか昔にどのような経緯があったのかは知る由もないが、彼女は自分の体型に相当なコンプレックスを感じており、それこそがアフラへ移転してきての百二十年間独居生活を通してきた理由だった。
 さらに加えるなら、ヘラはその体型を補正するガードルの代用として魔法アイテムである胴鎧を使用していた。レノラのレオタードの様な着衣をあつらえてもらうのを彼女の自尊心が拒んだからである。魔法アイテムは使用者の術力に応じて性能を発揮するから、ゼニアと同等の実力を持つ(しかも防御魔法を専らとする)ヘラが正しい使用方法で鎧を着用していれば、魔法と斬撃の多段攻撃にも充分に耐えたはずである。
 しかし、ヘラは鎧を外的な衝撃力よりも内的な圧力を押さえ込むために使用していたためにあっけなく鎧を破壊されてしまったのだった。
 とにもかくにも、百数十年ぶりに己の裸体を人目にさらしてしまったヘラは激怒していた。
「殺す」
 もう一度ボソリと呟くと、ヘラは三尖両刃刀を右手に構えてユラリとゼニアの方に向き直った。もはや胸と腹が大きすぎて、両手で得物を扱うことが出来ないからである。
 いきなり静から動に転じたヘラが横薙ぎに長柄を振り回した。
 間一髪で我に返ったゼニアが身を引くと、首のあった空間を三尖の刃が風車のように通りすぎた。と、ヘラの爆乳に長柄を握った右手がめり込むと、その弾力による反動で行き足に倍する勢いの返す刃が襲ってきた。受けようとすれば、フランベルジェごと真っ二つにされそうな勢いである。
「ちょ、ちょっと本気なの? それって協定違反だぞ」
「やかましいっ ! ! 」
 ズルズルと後退するゼニアを逆上したヘラが追撃する。
「逃げるな。その首、差し出せぇ ! 」
 大きく振りかぶった一撃がゼニアを頭上から襲った。
 間一髪で横に身をかわしたゼニアの肩が、三尖刀の切っ先の巻き起こす風圧だけで切れた。空振りに終わった一撃は地面にめり込んで、地面に敷き詰められた礎石を真っ二つにした。
 巨大な胸と腹が邪魔なせいで、ヘラの動きは先刻の俊敏さを欠いているが、怒りで腕力は倍増しているらしい。片腕でも充分すぎる破壊力があった。
『こりゃダメだ』
 ゼニアは血の流れ出る肩を押さえて右へ左へと逃げ回りながら考えた。
 ヘラは怒りに我を忘れている上に、ゼニア自身はブルンブルンと激しく弾む爆乳と爆腹に目を奪われて完全に戦意が萎えている。この精神的な立ち遅れの差は如何ともしがたい。いくらヘラの踏み込みが甘くなっているとはいっても、一歩間違えば真っ二つにされかねない。
「ゼニアさん、逃げるですぅ ! ! 」
 雰囲気の変わったことを察したレノラが敷地の端で悲鳴を上げている。
 だが果たし合いの決着がついていない以上、ゼニアも「はい、そうですか」と逃げ出すわけにはいかない。
 ヘラの怒りが収まらぬ以上、ゼニアがヘラに両断されるか、それとも何らかの方法でヘラの動きを停めるしかない。『あのオナカだから、突っついたら簡単に破裂するかも。可哀想だけど、レノラもいることだし・・・』 手足の防具は装着したままで、巨大な胸と腹があらわなヘラの姿態は、膨らんだ部分が一層強調されて目のやり場に困るほど艶っぽい。これでまだ迫り出した下腹部に引き伸ばされたショーツが弾け飛んでいないのは奇跡とも言える。だが下着の食い込んだ豊かな尻は臀部の大きさと丸みが際立って、目の毒であることにかわりはない。
 ゼニアはヘラの攻撃をかわしながら、得物を握っていないヘラの左手側へ回り込んだ。
「爆雷波っ ! 」
 ヘラを傷つけたくないので、火球は彼女の眼前で爆発させて目くらましにする。その隙をついてゼニアはユサユサと揺れているヘラの巨大な脇腹に突きを一撃くれた。
 ぱあぁぁぁぁんっ ! ! !  
と哀れヘラの腹は大爆発を・・・
 ・・・しなかった。
 巨大な腹はムニッと柔らかくゼニアの一撃を包み込んで吸収してしまったのである。
 次の瞬間、腹の弾力でゼニアは弾き飛ばされていた。
「いったい・・・?」
 これまた実を言えばヘラの体質で、水の属性を持つ彼女の身体は衝撃に対して相当な柔軟性を備えているのである。その上、膨らんだ腹の胎内はゼニアの額の角に対応するヘラの能力の焦点で、ここに蓄えられた大量のエネルギーが彼女の体表面に強力な防御結界のシールドを作り出しているのだった。
 これぞヘラの水系防御魔法の神髄、“水壁防御”の数十倍の強度を誇る全自動全方位完全防御結界“爆腹弾力壁”である。この状態になった彼女の身体は鉄身銅体の魔神にも劣らぬぐらい堅固になる。(作者注 ここで笑うとヘラが激怒するので、読者の皆さんは唇を噛んでこらえて下さい)
「お、お前、鎧なんかいらないじゃないか ! ?」
「それを言うなっ ! ! 」
 不用意なゼニアの一言がヘラの怒りの炎に油を注ぐ。
 結界のシールドを破るには攻撃を繰り返してヘラの消耗を強いるしかない。ゼニアは椿事の続出に驚きながらも、効果的な攻撃を試みるべく再度無防備な左手側に回り込もうとした。
「百烈火炎弾っ ! 」
 牽制のために発した火球がヘラの膨らんだ身体に次々に命中しては爆発する。しかもそのほとんどはヘラの前面を覆い隠さんばかりに膨らんだ巨大な爆乳爆腹に命中しているのだが、これが一向にダメージを与えていない。
「はっ !  そんなちゃちな術が通用するか ! 」
 体型にコンプレックスはあっても、その能力には絶対の自信がある。ヘラはただでさえ迫り出した爆腹を誇らしげに突き出すと、「さあ、いくらでも打ってみろ」と言わんばかりに威勢よくバンバンと腹鼓を叩いてみせた。
 挑発されているとは分かっているものの、ここまで馬鹿にされてはゼニアも黙ってはいられない。
「なにをッ ! そのでっかい腹に穴があいてから泣いて後悔するな ! 」
 ゼニアはフランベルジェを振り回して幾度もヘラの腹に斬りつけた。
 ヘラの爆腹はゼニアの斬撃をことごとく受け止め、白い肌に食い込もうとする刀身を弾き返してしまう。だがゼニアもこの程度の攻撃が通用しないことぐらいすでに承知していた。頃合いをはかって再度ヘラの左側へ回り込もうとする。
 しかし、ヘラが左側面を隙だらけにしておいたのは理由があった。
「甘いっ ! ! 」
 ヘラは腰に下げていた錬銅の鎖を取り出すとゼニア目がけて繰り出した。
 繰り出された鎖は見る見るうちに太さと長さを増し、竜蛇のようにうねりながらゼニアを襲った。
 これぞ三尖両刃刀と並ぶヘラの武器“縛妖鎖”である。
「しまった ! ! 」
 不意を突かれてしこたま鎖に叩かれたゼニアはフランベルジェを取り落としてしまった。ゼニアが拾おうとするよりもはやく、縛妖鎖が剣をからめ捕ってしまう。
 屈んだゼニアにヘラが長柄を振りおろすが、これはかろうじて横に転がり避けることができた。「とどめだ ! 」 ヘラが間合いを詰めながら鎖を振り回す。
 自動追尾の縛妖鎖は、伸長の限界こそあるものの、闘場内(数十メートル)くらいならゼニアがどのように体をかわしても追いかけてくる。
 ゼニアが打ちかかってきた鎖を手甲で払おうとした瞬間、縛妖鎖は彼女の右手に絡みつき締め上げてきた。
「くそっ ! 」
 ゼニアは鎖を振りほどこうとするが、鎖はますます締め上げて腕の肉に食い込んできた。
「勝負あったな。降参すれば命だけは助けてやる」
 ヘラが鎖を手繰りながら近寄ってきた。体重差のあるゼニアはグイグイ引き寄せられていく。
『鉄壁の肉体に攻撃を仕掛けさせ、この鎖の間合いに誘い込んで敵の動きを封じる。これが彼女の戦法か・・・』
 ゼニアも気付いたがすでに遅い。いつものゼニアならヘラの隙だらけの体勢を罠と看破していたかもしれないが、今日ばかりは腕試しとあって手心を加えていたうえに、ヘラの姿態に幻惑されていまひとつ詰めが甘くなっていた。
 このまま手繰り込まれて三尖刀の間合いに入ってしまえば、負けを認めて降参するか、ヘラの怒りにまかせてなぶりものにされるしかない。
「やめてぇーっ !  ゼニアさん、もういいから降参して ! ! 」
 ゼニアの窮地を見かねたレノラが飛びだしてきた。
 為す術のないゼニアはレノラの声で我にかえった。
『なんのこれしき。でかい腹に見蕩れて後れを取るなど一生の恥。実力で負けたならまだしも、こんなことでは祭司の警護など務まるか ! ! 』
 徒手空拳のゼニアは腰に下げたククリを自由な左手で引き抜いた。
「そんなもので。まだ闘うつもりか ! ?」
 ヘラが長柄を構えた。「ぬうぅっ ! 魔族を舐めるなぁ ! ! 」 普段は決してみせない犬歯をむき出し、悪鬼の形相で咆哮するとゼニアは縛妖鎖が堅く巻き付いた右腕にククリを叩き付けた。
「きゃあぁぁぁっ ! ! 」
 ドッと溢れ出るゼニアの血にレノラが悲鳴を上げた。
 ヘラも呆気にとられている。
「くそったれがっ ! ! 」
 何を罵っているのか自分でも分からぬまま、ゼニアは二度三度と右肘の辺りに斬りつけた。そして皮一枚で繋がっているばかりになった右腕を肘から引きちぎる。
 鎖の巻き付いた右手は敷き石の上に転がった。
 流れ出るゼニアの血は、肉体の一部としての属性を失いあっという間に気化していった。
『片腕と得物を失っては勝ち目はない。ここはいったん退いて建て直すにかぎる』
 ゼニアが額の角に気合いを込めると一瞬にして背中から蝙蝠のような皮膜状の翼が生えてきた。
「爆雷波っ ! 」
 今度の火球はヘラに向けて放ったものの三倍ぐらいの直径がある。ゼニアはそれを自分の足元に撃ち込むと、爆風を翼に受けて舞い上がった。
「まっ、待て ! 」
 ヘラが叫ぶ。
 空高く舞い上がったゼニアはもはや縛妖鎖の射程から逃れている。ヘラも飛空術は使えるのだが、現在の身重な体型ではゼニアに追いつけるとは思えない。
「ゼニアさんっ ! 」
 レノラは腰が抜けてその場を動けない。
「今回は後れを取ったが、次はそうはいかん。首を洗って待ってろ ! 」
 ゼニアが上空から叫ぶ。
 ヘラとレノラが為す術もなく見上げる中、ゼニアは火遁の術をつかって消え去った。
「ゼニアさん・・・お姉さま・・・」
 レノラはゼニアが消えると呪縛が解けたように動けるようになった。実際、戦闘要員ではないレノラはゼニアが闘うところも、あのような恐ろしい形相を浮かべているのを見たのも初めてだった。
 ゼニアが何処へ消えたのか分からないが、後を追わねばならない。レノラは切り落とされた右手を拾おうとした。
「小娘、動くな ! 」
 不意にヘラが縛妖鎖を振るうと、レノラを捕縛した。レノラは蛇に絡みつかれた哀れな小動物のようにあっという間にグルグルに巻き付かれ、高手小手に縛り上げられてしまった。
「な、何をするんですか ? ! 」
「決着はまだついてない」 ヘラが硬い表情で言った。彼女もゼニアの行動にはいささか度肝を抜かれていた。
「そんな・・・ゼニアさんが逃げたんなら、貴女の勝ちでいいじゃないですか。はやくほどいて下さい。ゼニアさんを追っかけてケガの手当てをしないと・・・」
「行くあてはあるのか?」
 そう聞かれてレノラは黙った。火遁をつかったゼニアがどちらの方角へ姿をくらませたのか彼女にも分からない。
「そうだろう? 負けを認めずあんなことをするやつだ。考えがあってのことなら、試合は一時中断でも構わない。白黒をハッキリさせずには、わたしも納得がいかないからな」
 ヘラもゼニアの血を見たせいで、自分の“通常体型”が暴露されたことに対する怒りが冷めかけている。内心、見境もなく逆上してゼニアを追い込みすぎたことを反省していた。口先だけで、本当に殺すつもりはなかったにせよ、いささか大人気なさ過ぎたと思う。大体、数年も一緒に西へ旅をすれば、いつまでも彼女の秘密(コンプレックス)がばれずにすむわけはない。
「あの剣と手は・・・まあ、借金の形だ。お前は捕虜というわけだ。手荒には扱わないからうちの家で休め。晩まで待って、その後はあいつが帰ってこようと来るまいとお前は放してやる」
 ヘラにしてみれば胴鎧が自己修復するまで、“通常体型”で出歩くつもりはない。ゼニアは行方不明だし、エルウィンに目を配っておいてくれるのはレノラしかいないだろうと判断してのことである。ただ自分の体型のことを喋られると困るので、晩まで引き止めておくつもりなのだった。
 レノラも渋々この提案を受け入れざるを得ない。一つにはいまの縛り上げられた状態ではどの道どうしようもなかったし、二つにはヘラの気持ちが察せられたからだった。
『大っきなオナカとムネってステキだと思うんだけどな。きっとゼニアさんとだって・・・いっそのことアタシが一肌脱いで二人の仲を取り持ってあげようかな・・・』
 怒気のおさまったヘラを見上げるとタイプこそゼニアとは違うが、なかなかの美貌である。夢魔の本能として、少しばかりムラムラと悪戯心がレノラの中に沸き上がってきた。
「あの・・・逃げませんから、手の鎖だけでもほどいてくれません? こんなにきつく絞められたら痛くって・・・」
 レノラに逃げるつもりはない。その代わり、もしもヘラに隙ができれば、と別の意味でよからぬことを考えているのである。
 手荒に扱わないと約束した手前、ヘラも腕に巻き付いた鎖だけは解いてやる。ただし逃げられないようにレノラの腰に軽く縛妖鎖を結わえて、片端は自分が握る。なんとなく猿回しの親方と猿に似ていなくもない。
 ゼニアが残していった片手とフランベルジェはレノラが拾い上げた。爆乳爆腹を抱えたヘラは屈み込むのが大変そうなので、彼女のコンプレックスを刺激しないようにレノラが気を利かせたのである。
「それじゃあ家で一休みするか」
 レノラの配慮にヘラが嬉しそうにわずかに片頬を緩めた。レノラは何も気がつかない振りをして歩き出したヘラの後ろに従った。


「みんなどこ行ったんだろ? 夕刻になるのに帰ってこないね」
 兄が用意してくれた馬にブラシをかけながらネルが首をかしげた。
「いいじゃない。向こうは向こうでいろいろ用事があるんでしょ。それにしても旅の用意って大変なのね」
 馬の首筋を撫でながらエルウィンが他人事のように言う。まるで彼女が見送って、ネルが西方へ旅立つかのような口調だった。
「それにしても天使と魔族って、何でああもお互いに突っ張った態度とるのしら? 元は同族なんでしょ? ほら、ゼニアさんもヘラさんもお役目大事って顔してるけど、それってあたしのこととか自分たちの気持ちとは全然関係なくて、面子とか意地とかで仕事してんのよね」
「だからレノラさんとは仲良くしてるの?」
 エルウィンが理屈や建て前を嫌うことはネルも承知している。その点、魔族でも傍流である夢魔のレノラには見栄に対するこだわりがない。
「そう・・・そう見える? そんなつもりはないんだけどな」
 内省的なエルウィンは少し寂しそうに見える。彼女に必要なのは護衛ではなくて、旅の仲間なのではないかとネルは思った。
「ね、そろそろ晩御飯だから家に入ろう」
 二人は馬の世話を切り上げると馬小屋を出て母屋に向かった。


「ああ。あたしの配慮が足りなかったなぁ」
 ゼニアはエルウィンとネルが出ていった馬小屋の屋根裏で一人呟いた。自ら片腕を切り落としてしまったゼニアは、やはり行くあても考えつかずネルの兄の家に帰ってみることにしたのである。街中の、しかも人気の多い商家でエルウィンの身に危険なことが起きるとは考えられなかったが、警護役としては長時間彼女のそばを離れているわけにも行かず、かといっていまの屈辱的な姿を見せるわけにも行かず、陰身の術をつかって屋根裏から忍び込み二人の様子を窺っていたのである。
 いまこうして二人の会話を盗み聞き、頭に上った血も冷めてみると反省させられることが多々あった。
 蒲公英とのことに端を発していると思われたエルウィンのよそよそしさは、実は自分が負い目を感じ、必要以上にエルウィンの反応を気にしていることの裏返しではないかと思う。ヘラとのことについても、適当に十合ほど闘ってサッと剣をおさめる度量を見せればよかったと後悔した。魔族だの天使だのと面子を賭けて勝負をしたために片手を失うというつまらぬ結果を招いてしまった。
 ゼニアには魔族としての誇りもルーツも完全に捨て去ることは出来ないが、エルウィンのことを放り出して腕比べなどするのは筋の通った話ではない。いまにして思い出せば、ヘラも相当逆上していたが、それでもゼニアを傷つける気持ちは無かったのではないかと思う。
『あの肉体に惑わされて、あたしも度を失ってたのかなぁ?』
 鎧が弾け飛んでしまった後、その下から出現したヘラの姿態を思い出すと、ゼニアも妙に落ち着かなくなってしまう。
『あのムニムニした柔らかそうなお腹でレノラみたいにギューッてしてくれたら・・・それともお腹の上に乗っけてもらって、あの大きな胸を思いっきり揉みしだく・・・ううん、片方だけでも両手で扱いきれないくらいだから、もう片方はヘラ自身が揉みながらあたしに乳首を舐めてって・・・・』
「あぁーーーーっ、あたしは一体何を考えてるんだ? ! 」
 馬小屋の屋根裏に積んだ秣(まぐさ)の中で転がりながら、独り白昼夢に耽って赤面しているゼニア。
 ふと気がつくと左手が股間にのびているのに、右手が・・・・「あっ、そうだ。どうしよう」 傷口はとうに癒着してふさがっている。自分で覚悟してやったことだから、さほどのダメージにはならなかったが、まさにこのままでは手の出ない状態である。
 血のようにすぐに蒸発してしまうことはないにせよ、本質から切り離された肉体の一部は丸一日も放置しておけば腐って塵になってしまう。その後、新しい手が再生するまでには三四日かかる。名誉の負傷ならまだしも、私闘を演じて警護の任に支障をきたすなどあってはならないことである。
『エルウィンに事情を話して仲を取り持ってもらうのもひとつの手なんだけど、なんとなく気が引けるわ。直接ヘラに頭を下げて和を乞うのは負けを認めるも同然だし、腹に見蕩れて油断したから勝負を仕切り直せなんて言えるわけないよねぇ・・・』
 反省はたやすいが、それを種として実を収穫するのは難しい。どうしても頭を下げずに右腕とフランベルジェを取り戻す方法を考えてしまう。
『いまのままじゃ、事実上こっちの負け。やっぱりヘラの鼻を明かしてやらないと、対等な立場なんて主張できないわ。ここはひとつ、夜陰に忍んで引き返し、右手と剣を取り返しましょう。向こうも警戒しているはずだけど、それを出し抜いてこそこっちの実力も証明できるわ。そのあとで朝にでもエルウィンと一緒に出向き手打ちをする。うん、この手が良さそうだわ』
 渡辺綱と羅生門の故事ではないが、ゼニアは自力で腕を奪還する決意をした。
「さて、夜まで休んで体力を回復させないと」
 レノラが帰ってこないのは気になるが、片手でウロウロするわけにもいかない。闘いで疲れたゼニアは秣の中で目を閉じてウトウトしはじめた。


「あのう、食器はアタシが洗っておきますから休んでて下さい」
「そうか? 悪いな」
 レノラはヘラと簡単な夕食をすませて一息ついたところだった。腰の鎖は繋がれたままだが、それはなるべく意識しないようにしている。
 ヘラはかいがいしく卓上を片づけ流しへ向かうレノラの後ろ姿を満足そうに見送った。鎧が壊れてしまったままのヘラは、巨大な胸と腹を抱えての家事は結構大変である。そこでレノラが自発的にヘラの身の回りの世話を引き受けていたのだった。
 まずレノラが感じたのは、ヘラの愛想の無さは不必要に自分の体型を恥ずかしがってのことであり、根は開放的な女性であると察せられたことである。噂では人前では戎装を解かず、肌を人目にさらさないということだった。しかし、家で独りの時は結構開放的な格好をしているらしく、自分で縫ったものか“通常体型”でも着られるユッタリした服や下着が結構揃っていた。驚いたことには闇ルートで手に入れたものか、レノラのレオタードと同じ仕様の魔族製の腹掛があったことである。
 ヘラが幾分恥ずかしそうにお気に入りの肌着であることを認めたので、レノラが丸々と膨らんだ大きな腹に掛けてあげると、二人がかりでも抱えきれるかどうかという腹がなんとかヘラの手が回るくらいの大きさになった。それでも三十ヶ月の九つ子が十ヶ月になったくらいではあったが、戸口や家具の配置を広めにとった家の中では例の鎧を装着しなくても不自由なく生活できる。
 ただし乳房はさほど小さくならず、腹掛の両側から色気たっぷりにはみ出している。レノラは丈の短い(腹の隠れない)シャツを選んで手渡した。どうやら大食のヘラは通常の天使より身体に血肉の占める割合が多いらしい。その上、ここ十数年で少しばかり体型が豊かになっているのか、サイズがきつそうな服や下着が衣装戸棚の半分くらいを占めている。スリーサイズの変化する天使(もしくは魔族。長命な種族は経年変化が乏しい)は結構珍しい。
「もっと丈の長いユッタリしたのを・・・」
 ヘラはなんとか威厳を保とうとしていたが、気恥ずかしさを隠しきれていない。
「いやですぅ。アタシはゼニアお姉さまみたいに薄着の人が格好いいと思うんですぅ。ヘラさんもステキなプロポーションしてるんですから、隠そうなんてしちゃダメですぅ」
 ヘラは体型のことを指摘されて一瞬皮肉かと疑ったが、レノラはとっておきの無心な笑顔を浮かべている。
「ここだけの話なんですけどぉ・・・」
「?」
 ヘラはレノラの口調が微妙に変化してきているのに気付いていない。
「アタシ、夢魔なんで時々殿方とナニして精気を頂くんですけど、あんまり頂き過ぎるとお腹が膨らんじゃうんですぅ。ほらぁ・・・」
 そう言ってレノラがレオタードの制御力を弱めると、昨日ネルにしてもらった腹が余剰のエネルギーでプゥーッと膨れ上がった。
「おいっ、なにを・・・?」
 レノラの腰に巻いた縛妖鎖が膨らむ下腹部に食い込みそうになって、ヘラは慌てて縛り具合を緩めた。
「ね、こんなオナカがお姉さまは大好きなんです。だから時々二人で膨らませっこして楽しんでるんですよぉ。も、もちろん、ヘラさんにそんな失礼なことはお願いしませんから。でもアタシも見てのとおりの夢魔ですし、目の保養に見るだけでも、ね?」
 これは嘘も方便というやつである。たしかにゼニアはぼて好きで、レノラと一度ぼて体型でナニしているが、その時の彼女は結構苦しがったのだった(第一話参照)。それに腹を膨らませているのはネルからもらった精気である。
 これはいわばヘラを籠絡するための見せ金だった。
「アタシの服もヘラさんのと同じなんですよ」
 目を丸くしているヘラの前で、レノラは妊娠八ヶ月の妊婦ぐらいまで膨らんだ腹を軽くポンポンと叩いた。
『ゼニアのヤツ、そんな趣味が合ったのか?』
 恋愛や性交に寛大な魔族の習慣を少し羨ましく思うヘラ。思わぬところで自分がコンプレックスを感じている体型を楽しんでいる者に出会って心が揺らいでくる。
「ですからオナカを隠そうとしないで下さい。お姉さまも意地を張ってあんなことになってしまいましたけど、きっと後悔してると思うんですぅ。種族の違いはありますけど、お役目は一緒。気性は激しいヒトですけど、仲良くなれないことはないと思いますぅ」
 瞳をウルウルさせたレノラが真に迫った演技でヘラに近寄り、そっとシャツを差し出す。ついでに偶然を装ってお互いの迫り出した腹を軽く触れ合わせた。
「あぁ・・・」
 暖かく柔らかい下腹部が接触する感覚に戸惑うヘラ。
「あんっ、ごめんなさい」
 慌てて身を引き謝罪するレノラ。急いでレオタードの圧縮率を引き上げると迫り出した膨らみが平らになった。
「い、いいよ。悪気はないんだから気にするな。まあ、昼間のことはこっちも行き過ぎたと思ってるし、お前を巻き込んだのも褒められたことじゃない。詫び代わりにその服着てやるよ」
 そう言いながらも、長年のコンプレックスだった腹を称賛の目で眺められるヘラもまんざらではない。
 そんなこんなでレノラもお返しに夕食の準備などを申し出たというわけだった。
 ヘラは食堂から居間へ移った。多少はレノラに気を許しているが、伸縮自在の縛妖鎖はまだ納めていない。台所まで延びた鎖の端ではレノラが流しで食器を洗っていた。
 ソファに身を落ち着けたヘラは目を閉じて腹の上で両手を組んだ。今日一日の出来事をあれこれ思い返しながらも、何故か全ての思いは先刻のレノラの言葉に戻ってしまう。
『こんなオナカがお姉さまは大好きなんです、か・・・そう言えばゼニアも随分驚いてたっけ。わたしが腹を立ててるのに、三尖刀を構えるまで隙だらけだったな。てっきり馬鹿にされているとばかり思っていたけど・・・・時々してるって言ってたけど・・・』
 腹掛の間からそっと手を差し込んで自分の腹に触れてみる。豊満で肉厚な腹部はエネルギーでパンパンに満たされていて張りがあるが柔らかい。
『こんなみっともない肉体が好きな人がいるなんて・・・でも・・・でも、他人の手でしてもらうのって、どんな感じなんだろ・・・』
 丸みをおびたムチムチとした肌に軽く手を滑らせる。
「あぁ・・・」
 我知らず小さくあえぎ声を漏らしてしまう。全自動の防御結界は攻撃を受けないかぎり作動しない。いまのヘラの身体は熟れに熟れた女天使の肉体に過ぎなかった。この百二十年、自慰すら我慢してきた身体は案外敏感に反応した。
『だ、駄目よ。レノラに気付かれる・・・』
 そう思いながらも腹を撫でる手を止めることが出来ない。
「ヘラさん、片づけ終わりましたよー」
 レノラが鎖を引きずりながら居間に入ってきた。ヘラは慌てて手をもとに戻し、格好を繕った。
「・・・?・・・! 」
 レノラが部屋に入っていくと、微妙に今までと空気が違う。この手のコトだけは犬よりも嗅覚の鋭い夢魔である。ははぁん、と察するところはあったが何も気付かない振りをして、ヘラの座っているソファの足元の床に腰を下ろした。
「床に座るとお尻が冷えるよ」
 足元から見上げられるヘラはやましいところがあるので妙にドギマギしてしまう。もう少し離れていて欲しいと思う。
「いいんですよぉ、気にしなくっても。それよりお昼の試合でどこかケガしてるとか、痛いところとかありません? アタシ、治癒魔法が使えるんですよ」
 得意の無邪気な笑顔で媚びを売るレノラ。ひとつにはヘラを籠絡してやろうという下心もあるのだが、やはり彼女のコンプレックスを解消しゼニアと仲直りさせるのが狙いである。
「ん? ああ、ありがとう。別に怪我したところはないから、気を使わなくてもいいよ。お前も疲れてるだろうから少し休んだら。眠たかったら寝室のベッドを使うといいよ」
 夕食の間も女性同士としてあれこれ話していたおかげでヘラはすっかり気安くなっていた。レノラの真情に満ちた訴えかけもあって、いまでは彼女の前で“通常体型”でいることも気にしていない。久しぶりにありのままの自分が見せられる友達が見つかったようで心から寛いでいた。
「ダメですよぅ、無理しちゃ。たしかにヘラさんの身体は逞しくて頑丈そうでけど、あれだけゼニアさんの攻撃を受けてたんですから。ちょっとしたコトだからって放ってると、けっこうあとに尾を引くんですよ。ゼニアさんだって時々アタシの治療を受けてるんです」
「ふうん」「そうそう、この間だってラウリウムから帰ってきたときも少し負傷した部分がうまく修復されてなかったんでアタシが直してあげたんですよぉ」
 レノラが誇らしげに言う。
 過日魔族の株をあげたラウリウムの討伐戦にゼニアが参加していたと聞いて、ヘラも興味をそそられた。
「それにヘラさんは祭司を警護して遠い旅をするっていう大事なお役目があるじゃあないですか。大丈夫だっておっしゃるならそうなんでしょうけど、診察だけでも、ね?」
 夢魔であることも治癒魔法が使えることも生まれついてのレノラの天性であり、それは相手の怪我や悩みを解消し、気持ち良くしてあげたいという本能や欲求と結びついている。だから多少計算ずくとは言え、彼女がヘラを思いやる心に偽りはない。
 そういう真摯な態度が百年以上も日陰でしおれていたヘラの性格の開放的で友好的な部分を徐々に氷解させていった。
「うん、そういうことなら・・・まあ、たのむよ」
「はぁい ! まかせて下さいですぅ ! 」
 レノラは元気に返事をするといそいそとソファの後ろに回り込み、ヘラの厚い肩をマッサージし始めた。「ん・・なかなか上手じゃない」
 首筋から肩、そして両腕、手首、指のツボまで押さえたレノラのマッサージは本職顔負けの腕前である。そのうえ人間で言う経絡や経穴(作者注 経は動脈、絡は動脈を指す。あるいは神経系も含む。経穴はその要所で灸をすえ、鍼を打つ部分。間違っても“経絡秘孔”などと言ってはいけません)に当たる部分に生命エネルギーを送り込んでくる。その刺激の心地よさにヘラも思わず目を瞑ってリラックスしてしまう。
「足もしていいですか?」
「ああ」
 ヘラの許しを得たレノラは、足の裏から脹脛(ふくらはぎ)、そしてレノラの腹囲(膨腹してないときの)ぐらいありそうなむちむちした太股を揉み解していく。無論、この段階では治療者としてのプロフェッショナルに徹して、決して淫らな手つきでヘラの身体に触れたりしない。
 しかし、一通り四肢のマッサージをしてしまうころには、ヘラもすっかり気分が良くなって心を許している。頃合いを見計らっていたレノラはもう一手駒を進めてみることにした。
「ねえ、ヘラさん、カラダのほうも診察していいですか?」
 レノラがさりげなく切り出した。
「えっ ! そ、それはちょっと・・・」
「ごめんなさい。恥ずかしいのは分かってますけど・・・その・・・お腹とか胸の辺りって結構まともに攻撃を受けてたじゃないですか?・・・いえ、そのう・・・正直言うとヘラさんのステキなオナカに触ってみたいって気はありますけど・・・絶対いやらしいことなんかしせんから・・・嫌だったら触りません。手をかざしてみるだけでもいいんです。前が嫌なら背中だけでも・・・」
 こういうときは治療者としての権威を振りかざし、あれこれ理屈を持ち出すよりも、正直に自分の気持ちを明かしたほうが不信感を煽らずにすむことをレノラは承知してる。
「でも、裸になるのは・・・なあ」
 ヘラにしてみると、レノラの治癒術が本物で、しかも心地よく効果的であることは納得できた。しかし、腹を押し縮めている魔法アイテムの腹掛は診察と術の効果の妨げ(作者注 圧縮されているということは場が歪んでいることになるので、外部からのエネルギーの伝導に支障が生ずる)になるので脱がなければならない。それが恥ずかしいのである。
「あ、それなら胸とお腹はバスタオルか何かで覆いましょう。それだったら恥ずかしくないでしょう」
「う、うん。そうだな」
 どこかヘラにも流されてみたいという気持ちが芽生えていたのかもしれない。ヘラしてみれば、自分の許しあってこそのレノラの行動と解釈しているが、その実レノラの口説きに乗せられていた。
 レノラは立ち上がるとヘラの身体に羽織らせるものを探しにいった。
 タオル地のものが良いとは決めていた。見つかったのはバスタオル、ヘラ専用の腹部がゆったりしたバスローブ、夏用の掛け布団のタオルケットである。バスタオルは三枚あってもヘラの腹と胸を覆うことが出来ないので却下。タオルケットはヘラが自分用に縫ったものらしく、これまた逆に広すぎて却下。結局バスローブに落ち着いた。
 居間に帰るとヘラが恥ずかしそうにモソモソとシャツを脱いでいた。レノラが部屋に入っていくと、ヘラは慌ててノーブラの胸を隠したが、片方だけでも両手で扱いかねる弾力に富んだ乳房に彼女の手は埋没しかかっていて、妊婦のように発達した広い乳輪が掌で隠しきれずに見えているのが逆に淫らな感じを与える。
 レノラも思わず飛びついていきたくなるのを我慢して、バスローブを前から掛けてあげた。
「ありがとう」
 バスローブの下でヘラが腹掛をはずすと、再び十ヶ月の九つ子が三十ヶ月になる。閨房の術に関しては百戦錬磨、ゼニアやネルもお気に入りの自分のぼて体型にはいささか自信のあるレノラだが、“通常体型”のヘラの肉体だけは感心して見入ってしまう。
「そんなにジロジロ見ないでよ」
 無防備な姿になるとヘラも幾分口ぶりが初心な女性らしくなってくる。いまや彼女が身に付けているのは、バスローブを除けば、迫り出した腹に押し下げられて辛うじて秘部を覆い隠している、いまにも弾け飛んでしまいそうなショーツ一枚である。
「あ、・・・ごめんなさい。それじゃあ、失礼しますね」
「言っとくけど、変なことはしないでよ」
「はいはい、分かってますよぅ」
 ヘラが胸元までバスローブを引き上げ、ソファの背もたれに身体を預けて楽な姿勢に座り直した。二人掛けのソファも、ヘラの大柄な体が寛ぐと、子供でもないかぎりもう一人腰を下ろす余裕はない。レノラはヘラの足元に膝をつき、身を乗りだして彼女の下腹部に手をかざした。
「それじゃあ治療しますからね」
 レノラが小山のような腹に両手を当てる。臍の下あたり、中心線を挟んで左右の手を添え、やや肩に力を入れて持ち上げ気味にそれらしく構えると、パンパンに張っているのに弾力に富んだヘラの腹は重々しくユサリと揺れた。
「ん、ん・・・」
 ムッチリとした下腹部と太股がわずかに波打ったのは、その柔らかで豊かな肉体にレノラの手が触れたからではない。久しぶりに他人と肌を合わせる心地よさにヘラが身じろぎしたからだった。
 ヘラの反応にレノラの口の両端がわずかに持ち上がる。レノラと目を合わせるのが気恥ずかしいヘラは、することもなく部屋の壁と天井の合わせ目辺りを見上げているので、悪戯っぽいレノラの微笑に気付かなかった。
「うーん、傷はないみたいですけど。無理してるから、やっぱりところどころエネルギーの流れに乱れがありますねぇ」
「そ、そうか?」
 あちこちと腹を触られ撫で回される感覚に、上の空で返事をするヘラ。
 実はレノラは最初に一度触れただけで、ヘラの爆腹には昼間の闘いのダメージなど一切残っていないことを見て取っていた。しかし、それでは面白くないので診察している振りをして爆腹の感触を楽しんでいるのである。
 だが、それより大事なのはヘラ自身がそのことに気付いていない、あるいはレノラの言葉を信じていることである。つまりヘラは無意識にレノラの“触診”を望んでいるのだった。
「ほらぁ、ヘラさん、楽になるでしょう?」
 そう言いながらレノラは手足をマッサージしたときと同じように、ツボを探って生命エネルギーを送り込んでやる。それは必要のない治療のためではなく、ヘラの能力の中枢であり、エネルギーで目一杯に満たされた子宮に共鳴し、彼女の秘めた性的欲求への門戸を開かせるノックのようなものである。
 レノラはヘラを刺激しすぎないようにしつつも、バスローブのタオル地の擦れる感触を最大限に利用して巨大な腹を隅々までマッサージした。何度かは腹の上の爆乳を指先がなぞり、幾度かは股間の秘部に触れるかと思えるほど際どい下腹部を優しく愛撫した。
 ヘラ自身も気付いていないが、満月のような彼巨大な爆腹はそっくりそのまま未開発の性感帯でもあった。
「ん・・・んふ・・・ぅ・・・」
 自分では診療されていると信じているヘラは、レノラの巧みな誘導に対する肉体の反応に戸惑いながらも、逆にそれをレノラに悟られまいとして我慢している。
 おしまいには目を閉じて寛いでいる振りをしはじめたので、レノラの手つきがだんだん大胆になってきても、それが自分の過敏な反応だと思い込むようになった。
「ふぁ・・・あぁ・・・ぁん・・・くぅ・・・」
 自分で呼吸に喘ぎが混じっているのに気付いていない。
 そろそろ限界が近いと判断したレノラは、いったん腹をマッサージするのをやめ、攻め手を変えることにした。あまりお腹を刺激しすぎると、我慢の限界に達したヘラに拒まれる可能性があるからである。それよりも矛先を転じて、ヘラに心残りに思わせたほうが後の展開につなげやすい。
「お腹はもういいですよぉ」
「そ、そうか?」
 レノラの狙い通り、ヘラの瞳に残念そうな翳りがある。
「ついでですから、胸も診てかまいません?」
「うん」
 言葉少なだが、拒んだり躊躇したりする気配はもうない。
「中腰は疲れるんで失礼しますね」
 ヘラは反り返ってソファにもたれているので、レノラの位置からすれば、頭の倍はある爆乳は巨大な腹の向こう側にある。身を乗り出すとヘラの腹にもたれるかたちになってしまうので、彼女を意識させすぎて良くない。レノラは小さな羽を生やすと飛空術で宙に浮き上がった。そしてフワフワと漂いながらヘラの身体の上に移動する。そしてヘラの体温を感じるほどに近寄った。
「ちょっとくすぐったいかも知れませんけど、我慢して下さいね」
 レノラが右の乳房を両手でヤワヤワと揉みはじめた。張りがあるのに泡立てたクリームのように柔らかい爆乳は、両手でも持ちきれないくらい大きい。しかも手の動きに合わせてムニムニと柔軟自在に変形してレノラの手からこぼれ落ちようとするので、その動きを受けていきおいレノラも乳房をリズミカルに揉みしだいてしまう。乳首や乳輪の部分には触れないものの、先程まで腹をマッサージされていたヘラはたまったものではない。
 しかも二人の身体の間は辛うじて小指が差し込めるくらいのすき間しかない。レノラの下半身が宙に浮いていることをのぞけば、傍目には二人が身体を重ね合ってるようにしか見えない。ヘラの目の前、胸元にレノラの吐息がかかるほどの近さで、しかも身体が触れ合っていないとなれば、逆に相手の体温を肌に意識してしまう。
 身動きすればレノラと身体が触れ合ってしまうので、ヘラは硬直したように動けない。時々、揉まれている乳房につられてもう一方の乳房まで弾み、バスローブがはだけてしまうのが恥ずかしい。レノラの手の間で乳房が縦横に弾み、パン生地のようにこね回される快感に翻弄され、更なる忍耐を強いられるヘラはたちまちのうちにふくよかな頬から胸元まで紅潮し、額には汗が浮かんできた。
「だ、ダメ・・・レノラ・・あんっ・・・も、少し・・・」
 もう少しお手柔らかに願いたいのか、もっと思いっきりして欲しいのか、ヘラ自身も自分が何を口走るのか分からず怖くなる。このまま流されてしまうまいと、ヘラはかたく目を閉じ、必死になって他のことに意識を集中させた。
「あん・・・ああ・・・い、いい・・・・ねぇ、もっと・・・いいの・・・そこを・・さわって・・・」
 時間の感覚もなくなってぼうっとしていたヘラは、妙に今までと違うレノラの手つきと自分のものではない艶っぽい喘ぎ声に目を開けた。
「ちょ、ちょっと・・・あんた、レノラ、ひとの目の前でなんちゅうコトを ! ! 」
 ヘラはかたまった姿勢のまま、目を剥いて仰天した。
 なんとレノラが切なそうな表情で顔を赤らめ喘いでいる。診療という建て前もどこへやら、バスローブ越しではあるものの、右手は遠慮なくヘラの乳房をまさぐり、乳輪を搾乳でもするかのごとくにつかんで揉みしだいている。その指は魔法のように巧みに動き、指の腹で転がされ玩弄された乳首は痛いほどに勃起していた。
 一方の左手は左手はというと、レノラがうつ伏せの姿勢で宙に浮いているうえに、ヘラ自身の腹と胸が邪魔でしかと確認は出来ないが、自分の股間を弄ってるのは間違いない。レノラはヘラの乳房を揉んでいるうちに催してしまい、自慰しているのだった。
「こらっ ! ちょっと・・・やめ、やめなさいってばぁ」
 ヘラはレノラを制止するが、その言葉とは裏腹に乳房をまさぐるレノラの手を振りほどこうとはしない。それどころか、知らず知らずのうちに両手が自分の爆腹を抱えてそれとなく撫でていた。
「だってぇ、お姉さまの胸、気持ちいいんですものぉ・・・触ってると、レノラ我慢できなくなっちゃってぇ・・・」
 甘え声で訴えるレノラ。いつの間にかヘラもお姉さまに昇格させている。
「お姉さまのステキなカラダ・・・大っきなオナカとオッパイ・・・見て下さい、お姉さま、レノラはエッチな夢魔なんですぅ」
 レノラは宙に浮いたまま身体を回転させると、だらしなく座った姿勢で両股を開き、あられもなく濡れた股間をヘラの目にさらした。上下つなぎのレオタードは股間の部分だけがパックリ開いていて、グショグショになった秘部をレノラの指が掻き回している。乳房を離した右手がそれに加わると、充血してかたくなった肉の芽をつまんでいじりはじめた。
「お姉さま・・・お姉さまぁ・・・」
 激しい自慰にぴくっぴくっとレノラの足が痙攣して宙を蹴る。
「きゃっ? ! 」
 術がうまく制御できなくなったのか空中でレノラがバランスを崩した。「わっ ! わっ ! 」 どうしたらいいか分からずに凝固していたヘラは慌てて両手で受け止めようとした。
 ぼむぅっ ! !  受け止めるのが間に合わず、レノラはヘラの巨大な爆腹に腰から墜落した。
「ぐふぅっ ! 」
 防御結界の作動していない腹で、クッションのようにレノラの全体重を受け止めたヘラは思わず呻いた。レノラの“診療”で気合いが抜けているので、鉄壁の肉体も案外脆い。それでもヘラは腹の弾力で受け止めたレノラが、丸い腹から転げ落ちないようにギュッと抱いて支えてやった。
「おねえさまぁ・・・ああぁ・・・ ! 」
 抱きしめられたレノラがヘラの首にしがみついてくる。ヘラの爆乳の上にレノラの巨乳が重なり、大きく股を広げたまま腹をまたぐ形になったレノラの腰がヘラの上で二度三度と上下した。
「・・・あぁ・・・?・・! ! ・・やだ、ごめんなさい・・・」
 軽い絶頂に達したレノラが潮をふいて少し漏らしてしまったらしい。ヘラの腹を覆うローブが温かく湿ってくる。
「いいのよ。そんなに気持ち良かった?」
「んん? はい・・・」
 抱きついたレノラがヘラの肩に顔をうずめたまま恥ずかしそうに耳元で首肯く。
 レノラに見せつけられ、お姉さまと連呼されたヘラはすっかりその気になっていた。
「レノラったら、可愛いんだ」
 ヘラはレノラを抱いたまま、あやすように腹を揺すってやる。弾力に富んだ腹の上でまだ翼を生やしたままのレノラの身体がポヨポヨと弾む。
「ああん、ダメですぅ ! そんなことされたら。レノラまたいっちゃいますぅ」
 苦しいほどにレノラが首にしがみつくので、ヘラは慌てて腹を揺するのをやめた。
「ぁふぅ・・・」
 ようやく快感の余韻から人心地ついたレノラが呼吸をととのえた。そして伏し目がちに顔を上げるとヘラの表情を伏し目がちに窺う。
「ごめんなさい。こんなに汚しちゃって・・・」
「いいのよ。それよりわたしのお腹、そんなに気持ちいいの?」
「はいですぅ。お腹を診察させてもらっているうちにだんだん変な気持ちになってきて、お乳を触っていると我慢できなくなっちゃったんですぅ。それよりアタシがオナカの上に落っこちて大丈夫ですかぁ?」
「平気よ。昼間の見てたでしょう。わたしの身体はちょっとやそっとのことじゃ、ダメージなんか受けないんだから」
 本当は、目の前でレノラの自慰を見せつけられて気を抜いていたので、レノラの全体重を爆腹で受け止めるのは結構痛かった。しかしヘラは豪放を装い、腹を揺すりたてて笑う。
「あん、ダメですぅ。またそんな・・・オナカで責められると・・・あうっ・・・」
 ここに至って、その道に疎いヘラもようやくレノラの肉体を攻略する方法に気がついた。
 あるいは気がついたと思い込んだ。レノラがヘラの目を盗んで始めた自慰からの一連の行為は、半分は本気だったが、半分はヘラを釣り上げるためのまき餌だった。
 レノラがいくら正攻法で色気仕掛けをしても、誇り高い天使のヘラは、夢魔に籠絡されるのを潔しとはするまい。逆にヘラに主導権を握らせてやれば、心の奥底に秘めたものを開放したがってる彼女は進んで乗ってくると読んだのだった。
 レノラにしてみればヘラの気持ちをもてあそんでいるつもりはない。あくまでゼニアとヘラとの和解への道筋をつけているつもりで、これはその余禄だと思っている。ただ、夢魔の性分としてその余禄を熱心に追及しすぎるきらいはあるのは仕方がない。
『ゼニアさん、放ったらかしにして、楽しんじゃってごめんなさいですぅ』
 いよいよ避けがたい状況が来た(ヘラがその気になった)とき、レノラは一度だけ心中でゼニアに詫びた。
「ねえ、レノラ・・・」
 抱かれているレノラの耳元にヘラは顔を寄せた。
「はい?」
 ヘラの吐息にくすぐられてレノラの尖った耳がピクリとする。ヘラはレノラの髪を手ですいてやりながら、彼女の頬に軽く接吻した。
「そのぅ・・・わたしもレノラにお腹を診てもらっているとき、少し気持ち良かったの。レノラ、自分でいっちゃったでしょう。満足できた?」
「んんっ」
 返事は曖昧だが首はわずかに横に振られる。
「わたしもなの。だからレノラが良くしてくれるんだったら、わたしも・・・」
 ヘラは抱きしめたレノラの身体をキュッと自分の腹に押し付ける。
「あぅっ、ホントに? アタシなんかでいいんですかぁ?」
「ええ」
「ふみぃ、レノラ、とぉーっても嬉しいですぅ」
 レノラが顔を上げてヘラの頬に接吻を雨あられとお返しする。
「ここじゃ手狭だから、わたしの寝室へ、ね」
 ヘラはレノラを抱いたまま軽々と立ち上がる。そして二人の間に挟まれているバスローブを下から引き抜いた。じかにヘラの肌に下腹が触れる感触にレノラが身震いする。
「どう?」
 ヘラの爆腹にまたがったままのレノラは彼女の身体に両足を回し、身体を密着させる。ヘラはレノラが落ちないように右手を彼女の腰の下に回して支えてやり、左手を自分の爆腹に添えユサユサ揺らしてレノラを責めた。
「ああっ、ステキですぅ」
 迫り出した爆乳爆腹の上でレノラが身をよじる。先ほど達したときの蜜が溢れ出て、一筋股の内側を伝い、ヘラの腹をじかに濡らした。
「いけない娘ね。ベッドまで我慢しなさい」
「そんなに・・・オナカを動かされたら・・我慢できないですぅ」
 大柄なヘラに抱かれたレノラは本当の子供みたいに甘えてむずかる。ヘラは左の乳房に手をやると、レノラの顔の正面に突きつけた。
「はい、じゃあ、あなたが大きくしちゃったわたしの乳首、責任とって気持ち良くさせて。そうすれば少しは気が紛れるでしょう」
「ふみっ、いただきますぅ」
 レノラがはむっと勃起した乳首を口に含んだ。唇で軽く甘噛みしながら吸い、舌先でで乳頭を転がす。勃起した乳首は赤子の口に含ませるよりも、大人の口にぴったりするほど粒が大きい。レノラはヘラの爆腹の上で大きな子供のように無心に乳房にむしゃぶりついた。
「あはっ、なかなかいいわ。ねぇ、右も気持ち良くしてね」
 レノラに吸われる左の乳首に反応して、右の乳首も硬く勃起していた。
 すっかりその気になって上機嫌のヘラは、一歩ごとにユサユサと揺れる爆腹の上でよがるレノラを抱いたまま家中を二三周歩き回り、それから寝室へと入っていった。
「悪い娘ねえ。こんなにしちゃって」
「ん、うぅん・・・」
 寝室に辿り着くまでの間、ずっと爆腹の上で揺られていたレノラは、もはやヘラの胸を愛撫してる余裕などなくなってしきりに彼女の唇を求めていた。
「・・・だってお姉さまのお腹、とぉっても気持ち良いんだものぉ・・・」
 レノラはヘラに支えられた腰を動かし、恥丘をお腹に擦り付けている。あらわになった秘部からはとめどなく蜜があふれ出し、幾筋かの流れがヘラの巨大な爆腹を縦断していた。
「・・・あん、お姉さまのいじわるぅ・・・んむ・・はやくベッドに連れてってくれないから、レノラお漏らししちゃうんですぅ」
 そう言いながらもレノラは腰を動かしながら、ヘラのふくよかな頬や柔らかい唇に接吻を繰り返す。
「はいはい。ほら、寝室に着いたわよ」
 ヘラは自分の腹とレノラを抱いたまま、よいしょっとベッドの端に腰を下ろした。うっすらと恥毛の生えたレノラの秘部で爆腹をくすぐられ続けてきただけに、ヘラも幾分頬を紅潮させて上気していた。
「うぅん、降ろしてくださぁい」 ヘラが手を放すと、レノラが迫り出した爆腹をスルスルと滑り降りた。トンと床に膝をつくとヘラを見上げる。
 ヘッドの端に腰を下ろしたヘラは、男性のように威風堂々という風情で大きく股を両側に開き、幾分期待を込めた目で自分の爆乳爆腹越しにレノラを見下ろしていた。しかし、この姿勢はレノラを威嚇したり優位を誇示しているわけではない。ヘラは太股がムッチリと太いうえに腹と胸が大きすぎるので、開いた両足の間に爆腹を落とし込むように挟まないと身体が背後にのけ反ってしまい、両手をつかずに座っていられないのだった。
「見て下さい。お姉さま・・・」
 レノラは少し身を引いてレオタードをまとった自分の身体がヘラに見えるようにする。
「・・・お姉さまのお腹の上で抱かれているだけで、レノラこんなになっちゃったんですよぉ」 レノラがレオタードの圧縮フィールドを弱めると、先程の快感で得られたエネルギーで彼女の腹がぷぅーーっと膨らむ。
「へ、へぇぇ・・・それ、ホントにわたしの・・・?」
 ドギマギしながらヘラが尋ねた。レノラに乗せられてお姉さま気取りでも、やはり彼女はその道の強者ではない。いざとなるとどのようにしてよいか分からずに、無意識のうちにレノラにリードされている。
「そうですよぉ」
 レノラが三つ子を孕んだ臨月妊婦くらいに膨らんだお腹を自慢気にフリフリする。パンパンに膨らんだ腹部とそれにつられて発育した巨乳がレノラの動きに一拍遅れてタップンタップンと弾力に満ちた弾み具合を見せた。
 ヘラの頭の倍もある爆乳や妊娠三十ヶ月の九つ子を孕んだような爆腹よりはまだまだ二回りも三回りも小さいが、レノラの姿態はヘラの肉体の妹分であるかのように自己を主張していた。
「汚しちゃったオナカ、きれいにしますですぅ」
 レノラはどうしていいか分からずにモジモジしているヘラに近寄ると、自分から溢れ出た蜜で濡れているヘラの爆腹に舌を這わせ愛撫を始めた。
「あ・・うぅぅ・・・いいよ・・・」
 レノラの巧みな愛撫にヘラの腹が震える。
「あぁ、お姉さまのオナカ、ステキですぅ」
 レノラは嬉しそうに巨大な腹に頬擦りした。あくまで御奉仕しているという姿勢を崩さない。
 肉厚で柔軟性に富んだヘラの腹部は、レノラが唇で軽くついばんだだけでもそれにつられて柔らかく波打って変形し、一時彼女の愛撫の痕跡をその肌に残した。レノラは自分が濡らしたところもそうでないところも、ヘラの広大な腹を隅々まで愛撫してキスマークを付けようとした。
「んん、レノラ、そこは駄目・・・」
 この調子で腹を責められれば、快感に負けて押し流されてしまう。レノラの愛撫が下腹部から股間に達しそうな気配に、ヘラは慌てて身を捩る。
「んぐー、ぐ」
 ヘラが身を捩った拍子に、ヘラの股間に頭を差し入れて下腹部に舌を這わせていたレノラが上から爆腹、両側から太股に押しつぶされて窒息しそうになる。
「あ、ごめんごめん」
 腹の下でモゾモゾとレノラがもがくので、ヘラは慌てて両手で自分の巨大な腹を持ち上げてレノラを解放してやる。
「ごめんね。苦しかった?」
「んー、そんなことないですよ」
 大柄なヘラの体重が一点に集中すると結構重たいのだが、柔軟性に富んだ腹の肉がレノラの頭を包み込むように変形するので、窒息の危険性を除けばさほど苦しくはない。
 まだまだヘラが秘部に触れることを許してくれないので、容易に有利な態勢を占めるのは難しいと判断したレノラは今までの路線を維持して腹部を中心に攻めることにした。今までの経過からして、ヘラの腹は攻撃に対しては半ば自動的に耐久力がアップするが、逆に愛撫や性技などの優しいタッチに対しても彼女の意志と関わりなく(自動的に)敏感に反応することが分かっている。股間はヘラの脚力で閉じられてしまえばどうしようもないが、ヘラの長い両手でも抱えきれない巨大爆腹は攻め手がいくらでもある。
「さっきは大分気持ち良くさせてもらいましたから、今度はレノラがお姉さまをいかせてあげますよぉ」
 レノラは媚びを浮かべて再びヘラの腹にすり寄った。先刻は勝手にヘラの腹の上で達してしまったのだが、あくまでヘラのテクニックでいかされたのだと思わせるような言動をする。
「よっと ! 」
 レノラが襟ぐりの深いレオタードを引き下ろすと、両の乳房がプルンと転がり出た。レオタードの圧縮場から解放された乳房は二回りほどサイズを増して爆乳化する。
 レノラはベッドの端に腰を下ろしたままのヘラに身を寄せた。そして乳首を隠すように爆乳に手を添え、ヘラの太股の間に自分の腹を押し込んで、ヘラの下腹部をすくい上げるように二人の爆腹を重ね合わせた。同時に大きくなった乳房をヘラの腹に押し付ける。
「ほーら、お姉さまのオナカ、パイズリしちゃいますよぉ」
 レノラは両の乳房を上下左右に動かしてヘラの腹をマッサージし始めた。それと同時に軽く腰を前後に動かし、自分の腹でヘラの下腹部や太股も擦る。
 いくらレノラの乳房が大きくなっても、ヘラの爆腹を胸の谷間に挟むことはできないからパイズリという言葉は正確ではないかもしれない。しかし定義はともかくこの責めは効果があった。
「わっ、わっ・・・」
 最初はレノラの性技に驚いたヘラだが、彼女の意志とは裏腹に二抱えはある豊満な超巨大爆腹は喜んでこの愛撫を受け入れてしまう。
「こんなの・・・ん・・・はじめて・・・んんっ・・・・」
 ヘソのすぐ下、巨大な腹の中心線の両側辺りの肉を両側から挟むように揉みあげられ、レオタードに包まれた腹で自分の下腹部を擦られる快感にヘラの長身が震える。
「あうっ・・・レノラ・・・お腹・・いい・・・」
 ヘラの胎内に溜め込まれた生命エネルギーが長い禁欲生活から解放され、外側からの刺激に呼応するように波立って騒ぎはじめる。それは例えれば、とっくに臨月の産み月を越えた多胎妊娠をした妊婦が、膨満状態の超臨月腹を子宮の内側から子供たちに犯されるのに似ている。ヘラの理性は予想外の肉体の反応に驚き、快感に翻弄されることを恐れ、両手でも抱えきれない丸く大きな腹をなだめるように撫でさすった。
 だがいまのヘラにとっては、巨大な性感帯として開花し始めた腹部を撫でることは、自慰していることとかわりがない。知らず知らずのうちにヘラは腹を前に突き出し、より効果的にレノラのパイズリを受けようとした。
「て・・手が・・・止まらない・・・」
 自分の滑らかな曲線に指を滑らせ、いままで盾代わりにしか使ってこなかった自分の肉体に謝罪するかのように腹を隅々(手の届く範囲)まで撫でさする。
 上気してドッと汗が噴きだすと、その一筋一筋が集合離散して山のような腹の表面を伝い降りる。下腹部まで達した汗は肌を接するレノラの胸の谷間や腹を潤し、滑りを良くしてレノラの続けるパイズリをますます刺激的なものにした。
「もっともっと良くしてあげちゃいますぅ」
 ヘラが乗ってきたので、俄然レノラも気合い(?)が入る。
 レノラは目の前で揺れる腹に顔を寄せるとヘソのくぼみに唇を寄せ、接吻しながら舌をヘソの穴に差し入れた。
「ひゃはっ? ! 」
 普通ならこれだけ腹が大きく膨らんでいれば、ヘソは飛び出してしまっていまにもほつれてしまいそうに見えるものだが、ヘラのは厚い腹肉に深く埋もれている。しかも彼女のヘソの穴は両側から豊かな腹の肉に押し塞がれていて、幼い少女の未成熟な性器のようなスリット状になっていた。そこへ股間の秘部のように穴の内側で舌をそよがされては堪らない。
「あぁん、レノラくすぐったいよ・・・そんなとこ、汚い・・・」
 たしかにこれだけ大きな腹を抱えていては、入浴してもヘソの穴を充分に手入れすることなどできないが、天使や魔族の皮膚は新陳代謝の過程で塵となって霧散するので垢などたまって汚いことはない。
 ただ、このような行為はいやが応にもヘラの羞恥心を煽り立てるし、それがまた一層彼女の快感を刺激した。
「んんっ、そんなことないですよぅ」
 レノラが舌をそよがせ抽挿する。しかも胸を両脇でしめてパイズリを続けながら、自由になった両手をヘソの穴の両側にあてがい、舌の抽挿に合わせてお腹の肉を絞めたり緩めたりする。
「ああん、ダメっ・・・本当に・・・あぁおぉぉ・・」
 ヘラはレノラの頭を引き離そうと手を伸ばすが、両手でも抱えきれない超膨満巨大爆腹の向こう側で性技の限りを尽くしているレノラに届くはずかない。ヘラは快感に理性を引き裂かれて巨大な腹を揺すって身悶えし、痛いほど勃起した乳首を自分でつかみ揉みしだきながらあられもないよがり声をあげた。
「はあぁ・・いい、お腹・・・ふっ、んんっ・・・もっと・・・」
 ヘラは反り返って腹を突きだし、レノラの動きに合わせて自分でも腹を揺する。レノラに下腹部を責められながら、片手で胸を揉み片手で腹を撫で回す。それでも巨大な腹と胸には二人の愛撫が届かない部分があるのがもどかしい。
「んぐっ、結合しちゃいますぅ」
 あまりに腹を激しく揺するので口を寄せていられなくなったレノラがヘソの穴に指を差し入れた。「ああっ・・・はぁはぁ・・・もう・・・いひっ ! ! 」 当然ながらヘソは腹の中で一番皮が薄い個所である。そこを通じて胎内を刺激され、本質をつかまれたヘラが絶頂に達した。
 その途端に汗にまみれた腹がブワッと膨らみ、のけ反ったヘラがベッドに倒れ込んだ。
「は、腹が・・・ふむむっ・・・お腹が膨らむぅぅ・・・」
 仰向けになったヘラの身体の上で腹が山のように盛り上がる。下腹部では限界まで伸びたショーツがぶちっと切れて弾け飛ぶが、一回り大きくなった腹の陰に隠れて秘部は露見しなかった。
 絶頂の余韻に浸っているヘラが一回り大きくなった腹を上下にさせながら息を整えていると、レノラがいそいそとベッドの上に上がってきた。ヘラの絶頂のエネルギーを受け取って、こちらも一回り大きくなった胸が汗にまみれて揺れているのが淫らな感じを与える。腹の方はレオタードで包まれているのでさほど目立って大きくはなっていない。
「お姉さま、いっちゃいましたぁ?」
「ん・・・」
 はじめてお腹でいかされた絶頂の余韻にヘラの目は陶然としている。
 レノラが脇へ近寄っていくと、ヘラは手を伸ばしてレノラの腹に触れた。
「・・・うん・・・すっごく・・・」
 ヘラはレノラの爆腹と、それにいちだんと差を付けた自分の巨大爆腹を愛おしそうに交互に撫でる。
「こんなに喜んでくれて、レノラ大感激ですぅ」
 レノラは上下するヘラの腹にもたれ掛かり、嬉しそうに頬擦りした。
「あたしも」
 ヘラもレノラをギュッと抱きしめた。
「ね、今度は一緒に、ね?」
 期待を込めた目でレノラが見上げると、頬を赤く染めたヘラと目が合う。
「わたしのお腹、こんなにしちゃって。今度はあなたの大きくするわよ」
 ヘラは二人の腹をポンポンと軽く叩いた。
「ふみっ 優しくお願いしますぅ。じゃないと、レノラのお腹パァァンって破裂しちゃいますぅ」
 レノラはレオタードの胸元を思いきり引っ張ると、最初より三回りは大きくなった爆乳を片方ずつ無理やり押し込んだ。ヘラに責められる前の予防処置である。
「あら? お乳仕舞っちゃうの?」
 闘いの場ではないとはいえ、鉄壁の守りを誇る彼女の腹をはじめて陥落させた乳房である。ヘラは残念そうな表情をした。
「うう、ごめんなさい。でもアタシ、お姉さまみたいに身体が丈夫じゃないから、この服の支持がないと膨らみすぎてホントに破裂しちゃうんですぅ」
 レオタードの圧縮場に収まった胸は幾分小さくなるが、その代わりに腹部の圧縮率は少し引き下げて、ヘラの絶頂で得られたエネルギー分を膨らませて見せた。
「あはっ、可愛い娘。わたしがいくのを見て感じちゃったの?」
「・・・はいですぅ」
 レノラが真っ赤になってヘラの腹の上で恥ずかしそうに首肯く。
「しようがないわね」
 あくまで妹分に徹するレノラの演技に対し、お姉さまとして立てられるヘラは俄然萌えに萌えてくる。もはや先程いかされたことも、レノラに奉仕してもらったとしか思っていない。
「でも、その服があるかぎり大丈夫って言うんなら、手加減はしないわよ」
 大胆になったヘラは、レノラの腹を撫でる手をつと下の方にすべらせ、彼女の股間をまさぐった。
「あ、あん。お姉さまぁ・・・」
 レオタードに包まれた身体の中で、唯一あらわになっている股間の茂みをくすぐられてレノラはビクッと身を硬くした。ヘラの指が秘部をなぞると止めどもなく蜜が溢れ出てくる。それに連れてまたレノラの腹がググッと迫り出すと、ヘラの指を秘部から押し離した。
「エッチな娘ねぇ。こんなにしちゃって」
 そう言いながらヘラは濡れた指を口に運び、レノラの蜜を賞味した。今までのヘラには考えられなかった大胆な行為である。
「あぁん、そんなこと言っちゃイヤですぅ」
 耳の先から胸元まで赤くなったレノラが甘え声でヘラの胸の谷間に顔を埋めて隠そうとした。
「ふふふ、エッチな娘のお腹は張ち切れちゃうぐらい膨らませるわよ」「レノラ、いい娘にしますから、お腹パンパンにしちゃイヤですぅ」
「ほんとにいい娘かどうか、確かめてあげる」
 ヘラは恥ずかしがるレノラの顔を上げさせて唇を奪うと、彼女の腹を圧迫しないようにしながらベッドに押し倒した。
「それじゃあいいかしら?」
 ヘラはレノラの両足を大きく開かせ、その間に陣取りながら尋ねた。
「はいですぅ」
 腰の下に枕を支われたレノラは腹の向こう側から返事した。
「いくわよ・・・んんっ・・・・」
 枕で持ち上げられたレノラの股間にヘラが巨体を重ねていく。
「あああっ、いいっ ! ・・・やっぱりお姉さまの・・・オナカ、最高ですぅ ! ! 」
 二人とも臨月の妊婦など顔色無しの膨らませすぎた超巨大爆腹を抱えていては、互いの腰を絡めあって秘部を接触させることなど不可能である。ヘラはその柔軟性に富んだ巨大な腹をレノラの股間に擦り付けて彼女を責めているのだった。
「ふんっ・・あっ、あっ、はぁ、はぁ・・・うんん、レノラいい?・・・いいの?」
「あん、うぅ・・・そこ・・・もっと・・・いいですぅ・・・」
 腰枕を支われたレノラの秘部は丁度ヘラのヘソのくぼみに接する。たった今、責められているレノラに開発されたそこは、ヘラにとって第二の秘部と言えた。
「あふっ、一緒に・・・」
 もっとも熱くなっている触れ合った部分から、二人の本質が“結合”した。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ぁう・・・れ、レノラの・・・いい・・オナカが・・お腹が膨らんじゃいますぅ・・・」
 三つ子を孕んだ臨月の妊婦かと見紛うばかりのレノラの腹がぷぅぷぅと膨らんで、四つ子、五つ子、六つ子と大きくなっていく。やはりレノラは膨らみやすい体質になっているが、長老にチューン・アップされたレオタードは、ともすれば肉体の制御力を失ってしまいそうな彼女の腹をしっかりと支持していた。
「あはっ・・・うんっ、うんっ・・・うふぅ・・・レノラってば、こんなに・・・ふう・・・感じて・・お腹膨らませて・・・ううっ・・・やっぱりエッチで悪い娘なのね」
「そ、そんなこと・・・いいっ・・・もっとぉ・・・」
「・・・んんッ・・・悪い娘のポンポンは、んぅ、パンパンにしちゃう・・・」
 ヘラは、はぁっと自分の腹の気を抜いた。それと同時にぐっと腰を前にやると、気が抜けて柔らかさを増した腹の肉がムニュッと変形し、レノラの股間のみならず下腹部まで包み込んだ。
「あああぁぁぁぁっ、すッごぉぉい ! ! ・・・こ、こんなのはじめてぇ・・・」
 胎内のエネルギーをある程度制御できるヘラが、エネルギーの密度を偏らせて腹の膨圧を部分的に変えたのである。圧力の低下した部分はレノラの腹の形をトレースできるほどの柔軟性を得ていた。下腹部全体をヘラの腹の肉で包み込まれたレノラが背を弓なりに反らせ、小山のような爆腹をより高く突き上げてよがる。
「くふふ・・・どう? なかなかいいでしょ?」
 胎内のエネルギーを制御するのは少し苦しいが、グングン膨らんで高さを増していく腹の向こうからレノラのよがり声が聞こえてくるのを聞くと、ヘラもお姉さまとして面目躍如、一層萌えて激しく腹を揺すりレノラを責め立てた。
「あぁん、オナカが・・・オナカが・・・」
 いまやレノラの腹はヘラと互角になりつつあった。二人とも妊娠四十ヶ月の九つ子を孕んでいるような腹を上下にさせ“結合”を続ける。
「・・・レノラ、も、もうパンパンですぅ・・・」
 自分の腹を両手で抱え身悶えするレノラの足首をヘラがつかんだ。
「まだまだ・・・そぉれぇ ! 」
 レノラの足を引っ張って腹に秘部を押し付けたまま、ヘラは後ろへ倒れ込んだ。ヘラが仰向けになると、彼女の腹とひとつになったレノラの身体が下半身から持ち上げられる。そしてそのままヘラの腹の上に腰を降ろしている状態になった。
「ほぉら、わたしのお腹で騎乗位よ・・・ふう・・・自分で動きなさい」
 そう言いながら下から腹を突き上げるヘラ。
「・・・ふみぃ・・・お、オナカ・・・動かしちゃ・・ダメぇ・・」
 ヘラに足首をつかまれて支えられているとはいえ、自身抱えきれない爆腹で、丸く弾力に富んだ球体の上で腰を動かすのは容易ではない。レノラは反り返った背中に小さな翼を生やし、飛空術で体重を軽減しながらゆっくりと、あくまでゆっくりと腰を動かした。
「ああ、いいわ・・・レノラ、上手よ・・・」
 しとどに濡れたレノラの股間と腹の肉がからみあってヘラも甘美な悦楽に溺れる。快感を持続させるため、レノラに合わせてゆっくりと腹を動かす。
「ま、また・・・」
「あたしも・・・」
 二人とも抜きつ抜かれつ競うように腹が膨らんでいく。レノラが下腹部が二回りほども大きくなり、ヘラの目の前でユッサユッサと緩慢なリズムで上下に弾む。
 ヘラは自分が膨らんでレノラを押し上げていくので、彼女の足を支えていられなくなり、レノラはより一層大きく股を開かねばならなくなってきた。
「お、お腹重くて・・・大きすぎて動けないですぅ・・・」
 レオタードに包まれたレノラの下腹部がムクムクッと迫り出す。
「だいじょうぶ・・・わたしがしてあげるから・・・もっと・・・」
 ヘラは膨腹につられて大きくなった胸をレノラの下腹部にあてがい、彼女の腹を支えてやりながらパイズリした。
「いいっ・・・もっと・・・オッパイ、気持ちいいですぅ・・・」
 二人とも腹の直径が軽く1.5メートルを越え、膨らむ速度にも拍車がかかる。
 こうも二人して膨らみ続ければ、二人の身体に余裕があっても、部屋の造りに問題が出てくる。寝室の天井はヘラの長身に合わせて高くしてあるが、巨大化し続けるヘラの腹の上でレノラが負けじと腹を膨らませ続ければ、いずれつかえてしまうのは当然の成り行きである。
 案の定、頭より高くなったレノラの腹と胸がボンッボンッと天井の板を叩きはじめた。
「あうっ、もうダメ・・・お腹がつかえて動けないですぅ」「わたしも・・・もうパンパン。レノラ、降りて・・・でないと・・・うぅ・・お腹が張って破裂しそう」
 レオタードに保持されているレノラはともかく、全裸のヘラの腹はパッツンパッツンに膨らんで、柔軟性にも余裕がなくなってきていた。いまでは腹の肉に埋もれているヘソも飛び出してしまい、それがレノラの秘部をくすぐっているような状態になっている。
「は、はい」
 気球のように膨らんだレノラが術で浮き上がるとヘラの横に降り立った。
 ベッドもヘラの体格に合わせて寝相の悪い大人が三四人横になれるぐらい広く作ってあるのだが、二人の腹が並ぶといささか手狭に見えた。
「最後はお腹で一緒に」
 起き上がったヘラが横に降り立ったレノラと腹を寄せ合う。もはや二人とも自分の腹が視界を遮ってお互いの顔を見ることは出来ない。
「ふむっ・・ん」
「ああぁ・・・」
 再び本質を結合し、レノラとヘラは最後の追い込みにかかった。二人の身体は真ん丸に膨らんだ巨大な超腹の一点で接しているだけなのだが、またそれだけに快感が一点に集中して膨腹を加速する。
「ひあっ・・・いい・・・はんとにお腹が・・・」
 最後の最後、絶頂をむかえる寸前にヘラが剛力を振り絞って直径が二メートル以上になった腹を押し付け、激しく揺すり立てた。レノラの身体を包むレオタード地に擦れる感覚が心地よい。
「へ、ヘラさん・・・そんなに・・・いく、いくぅぅ・・・」
 急速に腹が膨らみ二人の身体がのけ反っていく。四方八方に膨らむ腹に押しやられ、二人はベッドの端と端に遠ざかる。互いに押し付けあった腹が変形し、上の方ではいまにも乳房が天井に届きそうである。
「もう・・・限界・・・いいっ・・・」
 その瞬間。
 不意に聞き覚えのある嘲笑が部屋の中に響き渡った。
 「ハッ、これはこれは。淫乱な雌豚が二匹、そんなみっともない馬鹿デカい腹を抱えて、何を淫らな行為に耽っているのです? 天使たるものがそのような痴態醜態を晒すとは困ったものですねぇ」
 これにはヘラも驚いた。天井にも届きそうな膨満巨大超腹を抱えてヘラが凍りつく。ヘラには見えないが、彼女の巨大風船に接するレノラの腹も不自然にパンパンに張りつめて緊張していた。
「誰だっ ! ?」
 身動きできない身体でヘラが勇を鼓して一喝した。
 それと同時に部屋の空気が重く冷たくなる。背後に気配を感じて首をめぐらすと、寝室の隅が不自然に暗く落ち込み深い洞窟の入り口のような影を形作っていた。その中から何者かの黒い影がわき出してくる。
『隠身の術か?』
 ヘラの考えを察したがごとく、影が応えた。
「いかにもその通り。我ながら礼儀知らずとは思いながらも、勝手に上がらせてもらいましたよ。おっと、そちらの娘さんも妙な動きはなさらぬように。もっともその腹では動けないでしょうがね」
 影は衣を脱ぎ捨て光の下へ歩み出た。
「マルチスキャンっ?? ! 」「少々用事がありましてね。貴女の本質を頂きたいのです」


 何かが・・・
『来る ? ! 』
 一筋の陰風が馬小屋の中に忍び込み、ゼニアは目覚めた。


「とうとう帰ってこなかったね」 ピサネルロ家の二階、ネルの新しい寝室に二人はいた。
 ネルとエルウィンは寝巻き姿でベッドの上に折り畳み式の小さなチェス盤を広げて対戦していた。二年ほど前にネルが父親から教わり、それを半年ほど前にエルウィンに手ほどきしてあげたのである。二人ともたまの暇つぶしにチェス盤を広げるくらいなので初心者の領域を脱してはいないが、いまでは彼女の方が上達が著しく、先輩のネルが勝つことは難しくなっていた。
 エルウィンはネルの話に乗らず、“僧正”を動かした。「ほら、次、ネル君よ」 あと数手で詰められてしまいそうな形勢である。ネルはため息をついて盤を覗き込んだ。夕食が済んでから、他にすることもなく寝室へ引き揚げ三回目の勝負をしているのだが、ネルは今夜一度も白星を取っていない。
 ゼニアとレノラは帰ってこず、ヘラからの連絡もない。別室ではピサネルロ夫妻や使用人達も自分たちの部屋に引き取り、就寝している者もいる時間である。街中とはいえ、周囲の商家もすっかり静まり返っていた。
 パタパタパタ 締め切った鎧戸の窓を何かが叩いた。「ん、なんだろ? 虫かな? それとも蝙蝠?」 今夜は肌寒く湿っぽく感じる。
 ネルが熟慮のすえ駒を動かして顔を上げると、エルウィンが妙な目付きで窓の方を見ていた。「ほら、エルウィンの番だよ」 そのとき、燭台の灯が隙間風もないのに瞬き、いまにも消えてしまいそうなほどにか細くなる。執拗な羽音はいつの間にか窓越しではなく、室内で聞こえているような気がした。「ネル君」 エルウィンがチェス盤を押しのけると不安そうにネルににじり寄った。ベッドと反対側の窓側の壁を睨んでいる。
 最後の瞬きとともに部屋の明かりが消えた。室内の異様な空気に二人が暗闇の中で手を握る。「兄さんっ ! ! 」 ネルが大声で兄を呼んだ。しかし部屋の外という空間が一切存在しなくなったかのような静けさで、ネルの声に応える家人はいない。
 部屋の中に二人以外の何者かがいる気配がする。
 いまや室内の光は鎧戸のすき間から差し込んでくる月明かりしかない。
 目が暗闇になれてくると 窓を背に闇よりも黒いマントを羽織った長身の男が立っていた。その瞳は燠のように赤く燃える光を内側から放ち、口の端にはみ出した牙は唾液に濡れて闇の中で研ぎ澄まされたナイフのようにギラギラしている。
 吸血鬼 ! !  ネルとエルウィンは咄嗟に手を取りあってベッドを飛び降り、部屋の扉に向けて走った。
 その後を追って闇をまとった不死者が二人に飛びかかった。


『しまった ! ! 』
 何者かが家の周囲に術の結界を張り巡らせている。
 ゼニアは馬小屋の屋根裏から飛び出した。
 額から角が伸びる。一気に跳躍すると家の屋根に飛び上がった。角で力の流れを探ると、その中心は二階のネルの寝室らしい。結界はレノラの夢想術に近いもので、人間の五感に作用する幻術の一種らしい。
『いったい誰が?』
 その瞬間、ネルの大声が室内から聞こえてきた。それは結界の中で妙にくぐもっていて、ゼニアのように術の影響を受けにくい者でないと聞こえない。
『襲撃か? こんなときに ! ! 』
 ゼニアは残った左手で切り落とされた右肘に触れた。身体にダメージを受け、得物も腰のククリ一丁。援護なしで敵の正体も不明。
 だがゼニアはエルウィンの身を守らねばならない。彼我の戦力をあれこれ推し量ったり、迷ったりしている余裕はない。
「爆雷波 ! 」
 ゼニアは足元の屋根をぶち抜くと、爆風に巻き上げられた木片を身体に浴びながら、自分であけた穴に飛び込んだ。


 吸血鬼が二人の背後に襲いかかった。
「だめだぁっ ! 」
 それを察したネルがエルウィンの手を振りほどくと吸血鬼の足元に飛びついた。吸血鬼はエルウィンを第一に狙っていたらしく、ネルの予想外の反撃にたたらを踏んだ。もしネルを最初に狙っていたのなら、真っ向からぶつかれば体格と体力の差から彼の勇敢な行動は苦もなくねじ伏せられていたにちがいない。
「逃げて ! エルウィン ! ! 」
 だが態勢を立て直した吸血鬼は必死にしがみついてくるネルの腕から片足を引き抜くと、彼を思いきり蹴りつけようとした。
 その人間を遥かに上回る脚力で蹴られれば、骨格の華奢な少年でなくともひとたまりもない。
「ネルくん ! 」
 振り返ったエルウィンは怒りに満ちた目で怯まずに吸血鬼を睨みつけた。
「なにをするかっ ! ! 」
 気を呑むエルウィンの一喝に吸血鬼が一瞬たじろいだ。
 その瞬間、爆発とともに天井が抜け、ゼニアが飛び降りてきた。
「アルマンド ! ? キサマ、何故ここにいる? ! 」
  シャアァァァ ! !
 アルマンドの方も驚いたらしい。牙を剥いて威嚇し、慌てて足にしがみついたままのネルを振りほどこうとする。
 アルマンドがゼニア向けて足を振り回すと、手のすっぽ抜けたネルが彼女の身体に激突した。
「ぐはっ ! 」
 片手でネルの身体を受け止めたゼニアは、勢い余って板張りの壁に背中がめり込むほど叩き付けられた。
 もしネルが直接壁に叩き付けられていたら即死していたとろだった。
 ゼニアがネルを抱き下ろそうとするところへアルマンドが飛びかかってきた。いまや獲物を屠る前の最大の障害は彼女である。アルマンドは爪の生えた両手を突き出し、ゼニアの目を狙ってきた。左手にネルを抱えているゼニアは防ぎようが無い。
『ダメか ! ?』
 吸血鬼の能力は昼間より数段上回ってるものの、アルマンドの動きそのものはゼニアも完璧に見切っている。だが武器と片手がなくてはこの一瞬をしのぐことは難しい。ゼニアは避けがたい瞬間を冷静に覚悟した。
『ゼニア !  角の・・・』
  一瞬、ゼニアはエルウィンの声を聞いたと思った。しかしその声は耳ではなく、彼女の意識自体を内側から強烈に後押しする。
『・・・を使え ! 』
 見える。
 目の前に迫るアルマンドの爪が、自分の目を抉ろうと 恐れず、諦めず、爪の先端がゆっくりと迫ってくるのを気長に待つ。
 ゆっくりと 全てが静止して見えるほど ならば、自分は何故待っているのか?  よけることも、反撃することも可能なはず。
 ゼニアの額で角に嵌まった金箍がうっすらと光を放つ。
 力が急激に焦点を結ぶと額の角が赤熱化し、印も結んでいないのに火球が角の先端に現れた。
「爆雷波っ ! 」
 火球が飛びだし、アルマンドの両手の間をくぐって顔に直撃する。部屋の中にはエルウィンとネルがいるので、爆発力はで一点に集中させる。
 爆雷波はまともにアルマンドの顔の左半分を捉え、その爆圧で左目が眼窩の中で潰れ、耳と頭皮を吹き飛ばした。
 爆発の瞬間、ゼニアは首を右に傾け、突進力の減殺されたアルマンドの右手をかわすとともに、左手の正面に自分の顔を持ってきた。
「ロング・ホーン ! 」
 赤熱化した角が高速で伸長すると、アルマンドの左手に突き刺さる。角は人さし指と中指の間を貫き、水平に構えた手首の骨を砕いた。その衝撃で中指がちぎれとぶ。
 手首を砕いたロング・ホーンは反対側に突き抜け、アルマンドの肩に刺さってようやく止まる。
 ネルを間に挟んで、ゼニアとアルマンドの動きが凍りついた。
 ゼニアですら予想だにせぬ自分の動きに驚愕していた。全てが一瞬の出来事なのだが、ゼニアは自分の神経の反射速度を越えた反応をしていた。
 グゥオオオオオオオォォォォォォォーッ ! ! !
 次の瞬間、アルマンドが手負いの獣のような咆哮をあげた。無理やり苦痛を抑えて茫然としているゼニアの角から砕けた左手を引き抜く。
『これが金箍の能力なのか?』
 結界が破れ、アルマンドの咆哮が家人の耳に届いたらしい。家中がたちまち蜂の巣を突いたような騒ぎになる。
「ゼニアさんっ ! 」
 アルマンドを除いて、ゼニアより先に正気に返ったのはエルウィンだった。
 ゼニアが気付くと、アルマンドが彼女の空けた天井の穴から飛び出し、逃走しようとしていた。吸血鬼の再生能力と、夜間の利、ゼニアのハンデなどを考えればまだまだ勝機が無くなったわけではないが戦意を喪失したらしい。
「エルウィン、ネルをお願い」
 階下からはピサネルロが大声をあげながら上がってきている。ゼニアは気を失っているネルをエルウィンに預け、アルマンドの後を追おうとした。
「逃がすものか」
 もう一度先程と同じ能力が発動するのかどうか、ゼニア自身にも確信はない。得物と片手が無くては追撃戦は困難だが、アルマンドを捕らえ、何故アフラに舞い戻ってきてエルウィンを襲おうとしたのか問いたださなければならない。
『冗談じゃねぇ。全然話しと違うじゃねえか。ヤツに騙された』
 アルマンドははやくも再生しつつある左手を押さえ、屋根の上に飛びだした。手傷を負い、力を消耗しているので強烈な血への渇きを感じている。しかし、同時に予想外のゼニアの出現とその戦闘力を目の当たりにして動揺しているので、欲望に思考を委ねてる暇はない。
 足の下では家中の人間が大騒動しているのが感じられる。周囲の家も彼の咆哮を耳にして、何事ならんかと明かりが灯り始めていた。
『とにかく夜明けまでに、出来るだけ遠くへ逃げねぇと・・・』
 千年祭の祭司を襲ったとなれば、天使も魔族も総掛かりで追っ手を掛けてくるのは間違いない。捕まれば今度こそ弁解も命乞いもする間も無く極刑である。
 アルマンドは巨大な蝙蝠に変じ、風に乗って逃げようとした。
 アルマンドの翼が風をつかみ身体が浮き上がった瞬間、突如一陣の突風が起こり、体勢を崩した。
 そこを狙って何かが飛んでくると、右が変形した翼の付け根に突き刺さった。
 キィアアァァァーー !  巨大な蝙蝠は脳髄まで痺れるような痛みに、もんどり打って屋根に転がり落ちた。
「待てぃ、アルマンド ! 」
 ゼニアが屋根の上に飛び上がった。見れば、巨大な蝙蝠が再びアルマンドに変じつつあった。
 翼の皮膜が縮み、それを支持するために伸長した指や腕の骨格も人間のものに戻る。
 人間の姿に戻ったアルマンドは右肩に突き刺さった何かを引き抜こうとしていた。しかし、そのものに触ろうとする度に、焼け火箸でもつかむように手を引っ込めている。
「グゥウゥゥ」
 肩を射ぬかれ、それを抜くことの出来ない苦痛にアルマンドが身を捩った。アルマンドは何者かが放った犬釘ほどもある銀の弩矢に肩を射貫かれていた。
「好機 ! 」
 腰のククリを抜いたゼニアが凶刃を振るう。湾曲した刀身は刃先の一点に効率良く力が集中するように作られている。ゼニアは立ち上がろうとするアルマンドの膝を薙いだ。
 一度、二度。銀の矢が突き刺さっているアルマンドの肩から先は、服の下でしなびて枯木のようになっている。条件が互角になったゼニアはここぞとばかりにククリを振るって斬りつけた。
 ナイフの刃がアルマンドの膝の筋を断ち切り、吸血鬼は為す術もなく屋根の上から転がり落ちた。中庭の地面に叩き付けられたアルマンドを追ってゼニアも飛び降りる。
 地面にうつ伏せに落ちたアルマンドの背中にゼニアは全体重を乗せたニー・ドロップを食らわせた。湿った大枝が折れた様な音がして、アルマンドの背骨が折れた。
 ゼニアはそのまま馬乗りになると、アルマンドの肩の銀の矢を引き抜き、滅多やたらと背中に突き立てた。
「ギィャアァァァ ! ! ! 」
 アルマンドが魂消える絶叫をあげた。背中にあいた無数の傷口からドッと血膿が吹き出す。矢を突き立て引き抜くたびに粘度の高そうな赤黒い体液が尾を引いて飛び散り、それを浴びたゼニアは吸血鬼も顔負けの悪鬼の形相を浮かべている。この場に駆けつけた第三者が見れば、どちらが襲撃者なのか判別できない。
「やめろ、やめてくれぇ ! 」
 息も絶え絶えにアルマンドが降参した。やはり銀の武器を用いての攻撃が一番ダメージが大きい。ゼニアに刺された傷はどれも小指の穴程度なのだが、手や頭の傷と違って容易に塞がらないのである。
「命が惜しければ話してもらうぞ ! 貴様、何故アフラに戻ってきた? 何故祭司を襲ったのだ?」
「ぐっ、そ、それは言えねえ。言うと殺されちまう」
「誰かに命じられたのか? だが、話すのが嫌ならあたしが殺すまでだ ! 」
 ゼニアはアルマンドに背中に銀の矢を再び突き立てると、今度は全体重を乗せて心臓まで押し込もうとした。
 アルマンドがアフラに戻っていることを知ることが出来る者が一人だけいる。事件の詳細は分からないが、その人物が片棒を担いでいることは間違いないとゼニアは推理していた。「ひっ、やめろ。言う、言うよ。マルチスキャンのやつだ」 やはり、とゼニアは得心する。仙丹の術を使うマルチスキャンが黒幕では、いくら探してもアルマンドが見つからぬわけである。
「しかし、なぜ?」
「あいつは天使なんかじゃねえ。いや、元は天使だったかもしれねえが、偽ものだよ。多分、ラウリウムから逃げてきた怪物に違いねえ。自分の本質が傷ついて身体が崩れかかってるんで、他のやつのが必要だって言ってた」
「他の?」
「例えばあの大女の天使だよ。酒場での一件はあの天使が来ることを見越して芝居を打ったんだ。俺は十日ぐらい前にヤツに捕まってずっと脅されてた。偶々、あの天使の代わりにこっちへ向かっていた本当のマルチスキャンを襲ったらしいんだが、相当激しく抵抗されたんで、奪った本質が疵物で完全には馴染まなかったらしいんだよ。それで手近なところでこの町の天使を襲う必要があった」
「それで天使たちを分散させるためにこの近郷で?」
「そうだ。やつらが町を離れている隙に手薄になった町に潜り込んで、本質を手に入れる。祭司を襲うのも牽制だと・・・それに誰かに頼まれたんだと・・・くそッ、ヤツめ、俺が騒ぎを起こしている間に逃げるんだって言ってやがった。いやなら・・・」
 アルマンドがいきなりゼニアの下でもがきはじめた。
「何をしている動くな ! 」
「くそっ、たのむ ! 俺の腹を割いて、あいつが飲ませた仙丹を取り出してくれ ! ありゃあ、俺の居場所が分かるだけじゃねえ。銀の散弾なんだ !  俺がしゃべったことに感づいたら、吹っ飛ばされる」
 これにはゼニアもギョッとした。もし胸腔内に銀の粒がばらまかれたら、吸血鬼の心臓はあっという間に腐れて死んでしまう。アルマンドは初めてマルチスキャンに捕まったときと、ヘラの前で狂言芝居を打ったときの都合二回、銀の散弾を仕込んだ仙丹を飲まされていた。
 アルマンドが操り人形に過ぎなかったことは分かったが、エルウィンとネルを襲った罪は見逃せないし、それにも増していまはヘラの安否を確認するのが最優先である。
「知ったことか。自分でなんとかするのね」
 ゼニアはククリを地面に突き立てた。
「自分で腹を割けっていうのか?」
 アルマンドは悲鳴に近い声で尋ねた。
「その通り。ついでに・・・」
 ゼニアは銀の矢でアルマンドの両膝の傷口をザクザクと抉った。アルマンドが再び悲鳴を上げた。
「ひどいやつだ ! 」
 唾を飛ばして呻くアルマンドをゼニアが蹴飛ばす。
「これで逃げられないでしょう。左手だけは残しておいてあげる。それから・・・」
 ゼニアは立ち上がると、こわごわ中庭の様子を窺っている家人達を振り返った。二階を見上げると、エルウィンやネルを抱えたピサネルロもいる。
「このことを天使でも魔族でもいいから連絡して下さい。この吸血鬼は銀の武器で傷つけておきましたから、一晩は傷も治らず逃げることも出来ないでしょう。心配でしたら銀製のものを構えて見張っていて下さい。そうすれば吸血鬼の術は通用しません。それからピサネルロさん、ネル君は?」
「気絶してるが大丈夫なようだ」
 二階から返事が返る。
「あたしは此奴を差し向けた黒幕を追います。後のことは・・・」
 ゼニアの背中に翼が生える。
「ああ、任せてくれたまえ。すぐに君の仲間を呼びにやるよ」
「ゼニアさん、ありがとう。それから気を付けて」
 エルウィンの励ましを背に受けて、ゼニアは夜空に舞い上がった。


「・・・そういうわけでしてね。こんな危険な橋は渡りたくないのですが。英雄気取りの魔族どもが、点数稼ぎに我々を追い回したりするものでこのあたりも住みにくくなりましてね。そのとき手傷を負ってしまって、どうしても本質を取り込まなければいけないのですよ。しかも、活きのいいやつを・・・」
 そういうマルチスキャンの丁寧な口調は、先程までと微妙に変化してきていて、明らかに毒気と狂気が混じりはじめていた。
「どうやって本質を奪うつもり? わたしの防御結界を破ることなど出来ないぞ」
 身動きの出来ないままヘラは強気にでた。
「はったりは無駄です。先程自分でも、破裂しそうと言ってたじゃありませんか。昼間の闘いも遠くから拝見していましたが、カバーしなければならない面積が増え過ぎると、防御シールドの密度が薄くなって防御力が急激に低下するのではありませんか? ほら、このように・・・」
 マルチスキャンは悪意を込めて人さし指で限界まで膨らんだヘラの腹を突いた。
「ふぐぅ」
 ヘラがわずかに呻く。
「ヘラさん ! ?」
 レノラが腹の向こうで悲鳴に近い声をあげた。
 マルチスキャンの指はほとんど抵抗もなくヘラの肌に触れる。全自動の防御障壁は緩慢で破壊力に欠ける刺激には充分な反応をしない。その分を肉体の強度で補わなければならないのだが、いまのヘラの腹は余りにも膨らみすぎてそのちょっとした刺激にも耐えられなくなっていた。
「ほぅら。欲張ってこんなに溜め込むからですよ。こうしてこのみっともない豚腹を破裂させてしまえば、肉体が再生するまでのわずかな時間、貴女の本質は完全に無防備」
 そこを狙って両者の本質を強制的に結合させるのである。
「そんなことがうまくいくと思うのか?」
 ヘラが牽制した。たしかに強制的な結合が両者の本質に致命的な損傷を与える可能性は大きい。
「それは賭けです。しかしどの道わたしの本質は持たない。それに本物のマルチスキャンからいただいたやつも、不完全ながら機能しています。実を言うと、この姿も順風耳としての能力も彼からもらったもなのですよ。あの魔族がいなければ昨日の晩にでも片をつけていたのですがね」
 ニヤリと笑った片頬が奇妙に歪み、口元が耳までつりあがる。虹彩が広がり、眼球全体が真っ黒になって両眼が漆黒の洞穴のようになる。その眼球全体を覆う角膜が燭台の明かりを反射してギョロリと二人を眺めた。
「天使は誇り高い愚か者ですよ。同族の姿をしたものが近づけば、すぐに油断する。それに、したいこともせずにお高くとまって我慢しているから、このような醜態を晒すのですよ・・・」
「同感。しかし、いっときの成功を誇るあまり時間を浪費し、己の優位を失うのも愚か者のすることね」
 部屋の中に突然聞きなれた声が響いた。
「誰だ ? ! 」
「 ! 」
「お姉さま ! 」
「アルマンドが全て白状したわ。昨晩は忙しかったでしょう。あれと打ち合わせし、近所の村を荒らし、取って返して捜索隊に加わる。今日は途中でみんなと別れて引き返し、一日中あたし達を見張っていた・・・」
 寝室の明かりがユラリと揺らめき、ゼニアの声とともに明滅した。
「どこにいる?」
 マルチスキャンが少し焦りの色を浮かべて窓から離れた。
「多分、あなたもこの家に侵入するときに使ったんでしょう? 隠身の術」
 明かりが細くなり、部屋の隅々に影ができる。その影からいまにもゼニアが現れそうに見える。
「罠を仕掛けるのは得意でも、嵌められるのは苦手なようね。さあ、たったいま立場は逆転したわ。今度はこちらが狩る番よ」
「クソッ !  姿を見せろ !  さもなければこの二人の腹を破裂させるぞ ! ! 」
「好きにすれば? どのみち結合して本質を奪う時間は無いでしょう」 ヘラの腹を破裂させて本質を結合させるのは可能だが、結合の間はほとんど無防備になる。超巨大な風船腹を抱えて身動きの出来ないヘラとレノラを襲うのは容易だが、ゼニアという予想外の戦力が現れた今となっては、マルチスキャンの計算は大きく崩れた。
 ゼニアは幻火術を用いて、燭台の炎のエネルギーを介して喋り続けるばかりで、どこにいるのか姿を見せない。彼女を排除せぬことにはマルチスキャンが目的を達することは出来ない。
 ヘラは膨れ上がった腹に持ち上げられた乳房の陰でマルチスキャンに悟られぬようニヤリとした。
『時間を浪費して優位を失う、か。少し冷静になれば分かることだ。ゼニアは片腕と武器が無い。それを取り戻すために陰身の術を用いているのだとすれば・・・』
 時間の経過は逆にゼニアに有利に作用する。切り落とした腕を再び癒合させ、フランベルジェを手に入れれば少なくともマルチスキャンと五分に渡り合える。そのためにゼニアは幻火術を用いて喋り続けているのだ。
 とすれば、当然ゼニアは居間にいる。
「そこか ! ! 」
 ゼニアの居場所に気付いたマルチスキャンが疾風をまとい、寝室の壁を突き破って居間に突入してきた。
「気付くのが遅いんだよ ! 」
 フランベルジェをつかんだゼニアが空を踏んで家の外へ飛びだした。怒り狂ったマルチスキャンをレノラとヘラから引き離すためである。
「キサマ、このくたばり損ないがぁ ! 」
 マルチスキャンが腰の剣を抜き放って追いすがる。
「フンっ、怪物相手に手加減すると思うなよ」
 頃合いをはかってゼニアが振り返り、戦闘態勢をとった。右手は半分くらい癒合しているが、過酷な戦闘に耐えられるかどうか確信はない。剣での肉弾戦は危険である。
「百烈火炎弾 ! 」
 ゼニアは続けざまに無数の火球を放った。
「猪口才な ! 」
 マルチスキャンがゼニアを上回る俊敏な動きで火炎弾をかわした。
「なにっ ! ?」
 高速で斬り込んできたマルチスキャンの一撃を辛うじてフランベルジェで受けるゼニア。癒着しかけた右肘の傷から血がこぼれる。
「グッ ! 」
「遅い、遅いぞっ ! 」
 マルチスキャンがゼニアの脇をすり抜けると、ターンして再び凄まじい速さで背後から攻撃を仕掛けてきた。
 間一髪で横飛びに斬撃をかわすゼニア。
 マルチスキャンは不安定な本質の状態を逆に利用し、自分のエネルギーを制御の限界まで暴走させて運動能力を高めているのだ。ダメージを受ければ一瞬で本質が崩壊してしまう危険があるのだが、マルチスキャンにしてみれば勝利か死か二つの道しか残されていない。
 だがそれ以上に危険なのはマルチスキャンの精神である。彼は明らかに暴走状態で得られる自分の力を楽しんでいた。
「貴様ごときに ! 」
 ゼニアはフランベルジェを構え直した。ゼニアの見たところではマルチスキャンの剣技はそのスピードに追いついておらず、動きが直線的で変化に乏しい。すれ違いざまにもう一撃、返す一刀の斬撃があれば確実に彼女を仕留めることが出来たはずである。
『所詮は奇襲に頼っているに過ぎない』
 ゼニアの額の金箍が再びうっすらと輝きだした。
 先程アルマンドとの闘いでは、ほんの数秒金箍の能力を引きだしただけなのだが、まだアイテムが馴染んでいないせいかエネルギーの消耗がはやい。
 どのみち勝負は一瞬でつく。ゼニアは全エネルギーを次の一撃に集中させた。
「次はよけられんぞ ! 」
 マルチスキャンが剣を構えて突進してくる。
 本質が暴走して肉体が変形しているせいか、マルチスキャンを名乗る怪物の容貌は歪み、異形の姿になりつつあった。
『いくら金箍の能力があっても、スピード勝負では甲乙つけがたい。それに向こうはあの状態での戦闘に慣れているようだが、こちらは持久力に劣っている』
 速さで間合いを詰められると向こうに先手を取られてしまう。だが、こちらから予想外の攻撃を仕掛けて間合いを詰めれば後の先が取れる。
 ゼニアは右手を額の角にかざすと印を結んだ。
「火龍出師 ! ! 」
 ゼニアの大技の一つである。火龍は長い尾をひいてマルチスキャン向けて飛びかかった。
「幻術か? ! 」
 驚いたマルチスキャンが髪一筋の差で火龍をかわす。だが火龍は尾を振り回し、炎の爪をマルチスキャンに突き立てようと追いすがってきた。
 火龍は今までゼニアが繰り出してきた攻撃魔法の単なるエネルギーではない。火の精霊によって統御され、自らの意志をもって敵を襲う。しかも相手の本質を感知して追うので、幻術や変わり身の術も通用しない。また、ゼニア自身にもその動きが読めないために、敵が彼女の攻撃意図を察して回避することも困難である。
 変幻自在の火龍はあるときは双頭になって噛みつき、次の瞬間には九尾を振るってマルチスキャンに襲いかかる。しかも純粋エネルギー体のためにマルチスキャンよりも素早い。
「隙ありっ ! ! 」
 火龍の攻撃で体勢の崩れたマルチスキャンにゼニアが斬り込んだ。
 ゼニアがフランベルジェの柄を握り込むと、刀身が一気に白熱化する。
「龍炎剣、一刀両断 ! ! ! 」
 ゼニアは真っ向正面から剣を振り降ろした。
 炎の刃と化したフランベルジェは、触れずとも太刀風だけで岩をも切り裂く。驚愕の表情を浮かべた怪物は唐竹割りで真っ二つになった。
 その半分になった身体を猟犬のように飛びかかった火龍が焼き尽くし、本質の崩壊したもう半身もゼニアの目の前で瞬く間に一握りの灰となった。
「・・・ふうっ、やっと終わった・・・」
 ゼニアはフランベルジェを納めると、その場に片膝をついた。ヘラ、アルマンド、マルチスキャンと三連戦のうえ、初めて金箍を使ったので相当消耗している。ほぼ完治しかかっている右手もエネルギーを消費していた。
『すこしレノラに補給してもらわないと・・・』
 ゼニアは立ち上がるとふらふらとヘラの家に向かって歩き出した。


「片づけたのか?」
「あーん、ゼニアさん、怖かったですぅ」
 ゼニアが寝室へ入っていくと、身動きの出来ないレノラとヘラが先程までと同じく、天井に届きそうなほどパンパンに膨らんだ巨大爆腹をくっつけあってベッドの上にいた。
「ああ、片づいた・・・」
 ゼニアは肩で息をしながら二人の横に立った。
 ゼニアは少しいまいましく、そして少し二人が羨ましかった。自分が命のやり取りをしている真っ最中に、レノラとヘラはナニしていたときの体勢のままずーっと気持ちよさそうにお互いの下腹部を擦り付けあっていたのである。
 この状況で浮いているのは一番活躍したはずのゼニアなのだった。
「昼間のことはむきになって悪かったな。今回のことでは借りが出来た・・・」
 自分の腹の向こう側からヘラが半分だけ顔をのぞかせてばつが悪そうに謝る。ふくよかな頬が赤らんでいるのは、助けられたからではなく、レノラとこのような姿でいる現場を押さえられたからだろう。
「ゼニアさん、怪我のほうは大丈夫ですか?」
 ヘラへの気兼ねから、どの怪我とはレノラも言わない。こちらも少し間が悪そうに自分の腹の陰からゼニアを覗き込んでいる。ゼニアをそっちのけでヘラといいことしていたので気がとがめているのだった。
「うん、大丈夫だいじょうぶ」
 ゼニアはくっついた右手をプラプラと振って見せた。
「それよか、レノラ、ちょっとエネルギー分けて・・・」
 闘いが終わった後の緊張から開放され、二人のあられもない姿を見せられて、ゼニアも触発されている。レノラの小山のような超巨大風船腹に手をのばすとスリスリと撫でた。
「あんっ、ゼニアさんたらぁ」
 エネルギーの補充方法の御指定を受けて喜ぶレノラ。パンパンに膨らんだ腹を撫でられる心地よさに軽く身を震わせると、それが腹を接するヘラにも伝わる。レノラの腹がプルプルと揺れる感触にヘラも妙にその気になってしまう。
「あぁ、ゼニア・・・その・・・お詫びってわけじゃないんだけど・・・その・・・良かったらわたしのも・・・エネルギー分けてあげるから・・・」
 レノラとナニしているうちに魔族への反感も、自分の体型へのコンプレックスも解きほぐれ、自分を助けてくれたゼニアにも多少好感を持つに至ったヘラも不器用に誘いをかけてきた。
「そ・・そう?」
 レノラとはまた違ったヘラの超巨大爆腹にゼニアの食指が動く。レノラの腹を撫で続けながら、ヘラの腹に頬擦りでもしてみようと顔を寄せ・・・

・・・プスッ・・・


・・・エネルギーを消耗して意識が朦朧としていたわけでもないのだが、ゼニアは闘いの最中に伸ばした額の角を縮めるのを忘れていた・・・
「あ・・・ごめん・・・・」

 ぱああぁぁぁぁぁぁぁぁんん ! ! ! !  


 その頃。ピサネルロの家でも気を失っていたネルが意識を取り戻していた。
「良かったぁ。ネル君、気がついたみたい」
「ああ、気がついたかい? ネル」
 ベッドに寝かしつけられたネルが目を開けるとエルウィンと兄の顔があった。
「兄さん・・・エルウィン、大丈夫?」
「うん、ネルくんが助けてくれたから・・・そのあとゼニアさんがあの吸血鬼をやっつけてくれたの」
  ゼニアに手足を銀の矢で突かれて置き去りにされたアルマンドは、泣く泣く自分の身体を切り開いて二粒の仙丹を取り出した。
 仙丹はゼニアがマルチスキャンに幻火術を仕掛けたとき、間一髪でアルマンドの左手の中で炸裂した。おかげでアルマンドは手足ことごとくを銀で損じてしまい、這うことも出来なくなっているところを、家人の通報を受けて駆けつけた天使や魔族に取り押さえられた。
 銀の毒が体中に回っていたら数日で死んでしまうかもしれないが、ひょっとしたら生き延びることができるかもしれない。もっとも回復したとしても、同族の手で厳罰に処せられるのは間違いのないところで、彼にとっては運が良いこととは言えないかもしれない。
 とにかくこれらのことはすべて後日の話である。
 夜も遅い、あるいは朝も近い時間なので、ネルの意識が戻ったのを確認するとピサネルロはエルウィンを彼女の寝室へ引き取らせた。
「ねえ、兄さん・・・」
 二人になった寝室でネルが兄を見上げて口を開いた。
「僕、エルウィンと一緒に西へ行きたいんだ。父さんと母さんは、そんなこと許さないと思うけど・・・」
「うん、そうだな」
 意外に冷静にピサネルロはネルの言葉を受け止めた。
「ここへ来るまでの間にも、いろんないきさつがあって・・・イスマスからこっちへ転校することになっちゃったんだけど・・・」
 ネル自身、自分の気持ちをどう言葉で表現したらいいのか分からない。それでも歳の離れた兄は辛抱強くネルの言葉に耳を傾けていた。
「ゼニアさんは頼りになるいい人なんだけど・・・ヘラさんていう天使も多分同じだよ・・・だから僕が一緒に行ったって足手まといになるだけなんだけど・・・でも、エルウィンには身を守るだけの警護の人だけじゃなくて、その・・・旅の仲間っていうか、友達が必要だと思うんだ」
「でも、それだけじゃなくて?」
 ピサネルロが先を促す。
「それだけじゃなくって、僕はエルウィンのことが好きなんだ。だから・・・」
  そのあとはピサネルロが手を伸ばし、ネルの頭の髪の毛をクシャクシャと掻き回したので言葉にならなかった。


「ごめん、ごめん。ね?  謝ってんだから許してよ」
「せっかく助かったと思ったのに ! ! なんであんたがっ! ! ! 」
「うー、二人とも喧嘩しちゃダメですぅ」
 こちらの方は修羅場になっていた。
 レノラに比べると格段に身体の頑丈なヘラは、すぐに破裂した腹部と胸も再生して“通常体型”に戻っていた。
 レノラはレオタードを着ていたので、幸いにもヘラの爆発の巻き添えを食わずにすんだ。もし全裸だったら肌を接していたレノラの腹も連鎖的に破裂してたにちがいない。
 ヘラは超腹を抱えて身動きの出来ないレノラの枕元に腰を下ろし、ほとんど自力で再生した腹の傷を治療してもらっていた。その横ではゼニアが平蜘蛛のように頭を下げて謝っている。
 腹が破裂してよほど痛かったのか、ヘラは涙目で謝り続けるゼニアを睨んでいたが、このありさまではいくら怒っても全くしまらない間の抜けた状況だった。三人ともそれを自覚しているらしく、二人をなだめるレノラはヘラの腹を治療しながら撫で回すのを楽しんでいる風情があるし、ゼニアにしても頭を下げたときはヘラに見られないように口の端が緩んでいる。
 一方、ゼニアをなじっているヘラも、照れ隠しに怒りを表明しているようにしか見えない。その証拠に半身をレノラの超腹にあずけ、彼女に腹を撫でさすられて治療されてるヘラの目はどことなくトロンとして焦点を結んでいなかった。
「ごめん。許して。このとーり」
「誰が許すかっ ! 」
「お腹撫でてあげるから」
「だめ」
「じゃあ、舐めてあげる」
「どーしてそういう方向に行くんだよ !  こら、レノラ・・あぅ・・・どさくさに紛れてそんなとこ・・・・あぁん・・・」
「えへへ、ヘラさん、ゼニアさんのこと、許してあげてくださいよぉ」
「あっ、レノラずるい、あたしも ! 」
「ちょ、ちょっと、こらっ、二人とも・・・・あ・・・レノラ、結合しちゃ、ダメ・・・膨らんじゃうぅ・・・そこはさっき塞がったばかりなんだから・・・わたしは怪我人なんだぞ・・・なに? また直してあげるから遠慮なく?・・・痛い、痛いってば・・・ほんと、ホントに痛い・・・マジで、・・・うぅん・・・はっ、・・・ひっ、膨らむ膨らむ・・・そんなにしちゃ、ダメぇぇ・・・・・ぁは、は、破裂するぅ・・・」
 嗚呼、合掌・・・


「いったいこの人たち、なにやってんだろ・・・」
 様子を窺いに来た影が、ヘラの家の外でため息をついた。


『それにしてもあのマルチスキャンの偽者、誰かに祭司襲撃を頼まれたとのこと。あの状況では捕縛して情報を得る余裕はなかったか・・・そう言えば、アルマンドが逃げようとしたとき、銀の矢を射たのは誰だったのかしら?・・・ま、いいか。心当たりはあるけど・・・』


 二日後、アフラを発ち、西へ向かうエルウィン、ゼニア、ヘラの一行に付き従うネルとレノラの姿があった。
 ネルが西へ同行すると決意を告げたとき、ピサネルロは
「父さんと母さんには、俺から言っておくよ」
と言い、ネルを抱きしめたあと西門まで見送ってくれたのだった。
 レノラについては、居住地未定ということでしばらく西域行の三人と同道するという名目だった。ヘラは予定外の二人の同行に憮然とした面持ちだったが、弱みがあるのでとりあえず何も言わなかった。
第三回、これにて了



後書き
 さて、回を追うごとに字数の増えていくこの物語(反省)、第三回はいかがだったでしょうか。まだまだ登場人物同士の関係も明確になっていないまま突っ走ってる感じです。相対的にナニのシーンが減る傾向にありますが、旅が続く以上ベッドの上ばかり描写しているわけにはいかないことを御了承下さい。しかし、このペースで書き続けて収拾がつくのでしょうか。
 三月当初の大甘の見積もりでは、今ごろレギュラーメンバーも出そろって、メンバー内でのナニも一回りして、いよいよ西への旅も本格化してるはずだったんですけどね。月刊で投稿して、全二十回から二十五回程度、二年ぐらいの連載を考えていたのですが、この調子では、本当の「じいさん」になるまで書き上げられそうもありませんな。
 その頃にはぼてフェチも市民権を得て「ら〜じPONPON」もPart,10ぐらいまでいってるかも・・・(これだけは、ホントにそうなると嬉しいんだけど)  それにしても三連戦のゼニアと今回限定痛めつけられ役のアルマンドはお疲れさまでございます。
 ネルの兄ピサネルロに関しては、人間的に描き込みたい部分があったけど割愛して妙に物分かりのよい善人にしちゃいました。
 三蔵役(?)のエルウィンが「絡んで」くるのはもう少し先の話。
 レノラとネルは不正規の参加者ということで、この後チーム内での自分たちの立場を確立していかなければなりません。(どうやって? 無論、ナニするに決まっているじゃありませんか。レノラは夢魔だし、ネルは立派な一人息子がいるし)  今回の悪役としてのマルチスキャンの書き込みももう少し必要だった。天使や魔族の“本質”が変化すると怪物化するというくだりが第一回、第二回でありましたけど、具体的にどうなるかというテストパターンとして設定してみました。「生まれながらの悪」という存在ではなく、後天的に転向した悪役なので「蠅男」や「狼男」みたいに自分が望まず変貌していく悲哀というのもあるはずなんだけど、そこまで書くのは「ぼて小説」とそぐわないので割愛しました。(作者の筆力の限界もあるけど) こう考えると、邪神や妖怪といった類い(先天的悪役)の設定は背景や生い立ちを考える上で案外楽かもしれません。でも、やはり主役を引き立たせる悪役というのは設定が難しい。
 今回のヘラについては塞翁が馬ということで、楽あれば苦あり・・・。レノラはもう一回パンクすると命にかかわるけど、ヘラは頑丈に設定してあるのでむげに扱っても大丈夫。(かわいそー。でも当主Al Catさんからはヘラをパンク役に、という要望もあったし。今回はお間抜けでパンクさせてみようと考えていたのでこうしてみました) でも、そうなるとレノラがヘラに食われる。その辺りのバランスが今後の課題です。身長二メートルの大女という取っつきにくさを除けば、「ぼて小説」としては扱いやすいキャラ(通常体型がぼて、しかも破裂しても大丈夫)なので、他のメンバーが霞んでしまわないようにしなければ・・・ ところで少しうんちくを傾けますが、本家西遊記の八戒と沙悟浄というキャラのことです。日本においては、悟浄は河童というイメージがありますが、河童は日本の妖怪であって西遊記では水怪という設定ではありません。たしかに悟浄は流沙河という大河で三蔵法師に帰依するのですが、その姿については「顔の黒い凶悪な人相」の妖怪であるとしか説明されていません。
 悟空、八戒、悟浄には五行(火水木金土)の属性が与えられていて、悟空は火金、八戒は水木、悟浄は土となっています。火水、木金は相剋で仲が悪く、悟空と八戒が喧嘩をするのに対して、土は中性で悟浄が二人の仲裁役となっています。
 そして八戒の属性から分かるように、彼は天蓬元帥という水軍の神様です。それが天界から追放され、誤って豚(猪)の子宮に転生してしまった妖怪なのです。ですから悟空が空中戦は得意、水中は苦手(火の属性だから)なので、水中で活躍するのは悟浄ではなく八戒なのです。
 当方の小説ではこれほど凝った設定はしていませんが、火のゼニアに対抗する形でヘラの属性は水としました。そして戦闘スタイルも、攻撃重視のゼニアに対してヘラは防御重視としたわけです。三尖両刃刀を彼女の武器とした理由は、本家西遊記の劈頭、天界を騒がせる悟空を初めて捕縛したのが顕聖二郎神君(天帝の息子)で、彼の得物がこの武器だったからです。
 ちなみに悟空はこの後脱走を計るのですが、如来の掌から出ることができず、五行山の下敷きとなって三蔵の来訪を待つことになるわけです。
 まあ、くどくどと書きましたが、この本家西遊記の設定を自己流にアレンジしたのがヘラという天使なわけです。間違っても「北斗の拳」のハート様がモデルではないかなどと勘ぐってはいけません。
 あ、書くの疲れた。もう止めよう。
 それでは第四回にてお会いしましょう。(唐突に終わるなぁ)追伸というか次回予告?  第四回は今回のアクション路線から一転し、軟化してみようかと思います。イレギュラーズ(不正規メンバー)のレノラとネルが、ヘラの「説得」を試みる予定です。