新 西遊記 『外伝』


後編



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 中編からの続き
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 ついに太陽が水平線に沈んで夜がやってきた。
 いまだにサキムニは到着していない。レノラは不安な面持ちでウロウロしていた。

「やっぱりアタシが頑張らないとダメですう」
「危ないことはしないで下さいね、レノラさん」

 代理母たちの安全を心配しつつレノラの身の上を案ずるネスサの表情は複雑である。
 特にレノラが犠牲的精神に満ちているわけではないが、彼女が妖怪の鋭鋒を引き受けてくれた以上、ネスサとしては気にせずにはいられないらしい。

「大丈夫ですぅ。このために絶食して(?)我慢してたんですから」

 受胎の儀式後、風船腹を抱えて早々に“生命の器”を辞去したレノラは夕刻までネスサの神殿で休んでいた。
 今日は昨晩とは結界の配置を換えている。
 昨夜の策が通じないことを見越した上で、敢えて妖怪を館に導き入れ、代理母ではなくレノラのいる部屋へ誘導するのにである。
 レノラが連れ去られても、ネスサの貸した髪飾りによって彼女の居場所はネスサに分かる。サキムニが到着次第、彼にレノラの居場所を教えることが出来るというわけなのだ。
 レノラは自分に変化の術をかけて代理母の姿に見えるようにしていた。これには昼間の受胎の儀式で膨らんだ腹とそのエネルギーが大きく貢献している。レオタードの生地も分子配列を変えて人間の肌のような感触と色あいにしてあるから触られても違和感はない。その薄さも分子一個分(?)、ピッタリとレノラの身体に張り付いたレオタードはまさに第二の皮膚である。これで股間だけは前もって露出させているから、本当に全裸同様である。(乳房、とくに乳首はレオタードに透けて、ナマ同様とお考えください)
 加えて体型を支持している魔法のレオタードを負圧(加圧の反対。減圧というべきか)モードにすることによって風船腹をさらに膨らませ、一ダースほども子を孕んだような体型になっていた。

「お腹は大丈夫なんですか?」
「ふみっ、相手が挑んできたらすぐに圧縮率を引き上げますから、容量的には大丈夫なはずですぅ。それにこれ・・・」

 レノラは小指の爪ほどの仙丹を取り出した。

「なんですか?」
「精気の吸収効率を低下させるおクスリですぅ。これをアソコにソーニューしておくと、胎内に吸収される精気が減るんで長持ちするんです」 この仙丹は淫魔の一族から通販(?)で購入したもので、複数の相手とナニするときに最初の一人や二人で満腹になってしまわないようにするためのアイテムである。(つまり乱交用です。人間でいうなら避妊具みたいなもの) 「これでサキムニ様が来るまで休まず責め立てて、粉も出ないほどにしてやりますぅ。んふふふふ、案外アタシ一人で妖怪を退治しちゃったりして」

 今回はやたらと周囲からヨイショされるので、少し鼻が高くなっているレノラは意気軒高である。

「とにかく気をつけてくださいね」

 ネスサの心配をよそに、レノラは用意してもらった寝室へ行くと寝間着代わりの腹掛けを羽織りベッドに潜り込んでスタンバイした。


 夜半過ぎ、再び陰の気が強くなりはじめると、その気に当てられた人間たちは深い夢遊状態に陥って屋敷の周辺は不自然なほどの静寂に包まれた。
 何者かがヒタヒタと廊下を歩く音がする。それがある部屋の前で立ち止まった。

『いよいよですぅ』

 レノラの枕元に何かが立つ気配がした。

「やあ、待たせたね。今夜は君の晩だよ」

 昨夜の青年の声である。
 それと同時に手が伸びてきてレノラの爆腹をまさぐった。

「すごいお腹だね、パンパンに張って。楽しませてくれそうだ」

 どうやら妖怪は妊娠腹に御執心らしい。
 レノラはスウスウと寝息を立てて、寝ている振りをした。

「さあ、立ち上がって。こんな無粋なところは出て、僕の家で楽しもう」

 青年に促され、レノラは夢遊状態を装ってふらふらと起きあがった。巨大な腹がさほど邪魔に感じないのは、妖怪の魔力が彼女の立ち居振る舞いを助けているからだろう。
 二人は手を取り合って外へ出た。辺りには濃い霧が立ちこめていてなにも見えない。青年に引かれて十歩ほども歩いているうちに、足下が雲を踏んでいるように頼りなく感じられた。
 レノラが薄目をあけて下を見ると、まさしく二人は空を踏んで宙を飛んでいた。

「そんなお腹じゃあ立っているのは辛いだろう。すぐに僕の家に着くから、そうしたらゆっくり出来るよ」

 妖怪は鷹揚にかまえている。
 さほど飛ばないうちに眼下に昨夜の屋敷が見えてきた。
 レノラは昼間の間にこの近辺を探索がてらぶらついてみたが、このような家屋敷はついぞ見かけなかった。もっとも彼女は方向音痴の気があるのだが。

『この辺りには耕作に適さなくて放棄された畑とその住人たちが住んでた廃屋があるって族長さんから聞いたけど・・・・』

 三日続いた怪事から察しても、妖怪は人目を欺く術(幻術)を心得ているはずである。サキムニのように仙郷(異空間)を作り出せるほど強力な術を使える存在でないなら、おそらくその廃屋あたりを利用しているのではないかとレノラは推測した。代用となるものがあれば術の効果は増す。そのことは昨晩レノラ自身が実践(木人を代理母に仕立てたこと)したことである。
 今日は首尾良く代理母を連れ出せたせいか、妖怪は昨晩(今朝)の悪態もどこへやら、上機嫌で寝室へレノラを連れ込んだ。屋敷の内外装はともかく(レノラを幻覚術でたぶらかしているつもりなので、妖怪も手を抜いているらしい)、寝室だけはなかなか立派である。
 島内で一番豪壮であるとはいえ、代理母たちの居住している“生命の器”ですら所詮は小規模な共同社会の行政府兼祭礼所兼産室に過ぎない。族長ですら同格の中の最年長者に過ぎず、各自の居室にせよ大広間にせよ装飾に華美な点はほとんどない。実際、衣食住に不自由しないという点(あとは代理母という特殊な体質の女性たちが快適かつ安全に生活するための若干の家具や道具があるという点)を除けば、ふつうの民家を規模拡大しただけなのである。
 それに比べれば妖怪の用意した寝室は、大陸の諸王国の後宮にはるかに近いといえるだろう。四方の壁はタペストリーで飾られ、一方の壁にはベッドほどもありそうなソファ、木の枝別れしたような金の燭台には十数本の蝋燭が立てられ、窓のない部屋で唯一の光源となって家具の影を揺らめかせていた。部屋の中央にある天蓋付きのベッドは八畳ほどもあるだろう。その上に並べられたクッションや大きめ枕は身動きのままならない代理母の身体を支え様々な体位でナニするためのものである。(レノラの用意してもらった寝室にもあった)
 レノラは妖怪に手を取られてベッドの端に腰を下ろした。ベッドはやたらと柔らかく区ションが効いていて、レノラの腰が包み込まれるように沈み込んだ。レノラは後ろに手をついたが、それすらもベッドに沈み込んで発育しすぎた上体を支えきれない。代理母を装っているレノラは半ばベッドに埋もれ、巨大な腹と乳房を抱えて手足をジタバタした。
(作者うんちく&設定:代理母の体重は個人差もあるが大雑把に見て百キロ以上百五十キロ未満くらい、その半分以上が乳房と腹部で占められています。バビラリーの伝説では、種族の“イヴ”となった最初の代理母は四十人近い子供を孕む能力があったらしい)

「あはは、オナカが大きすぎて起きられないんだね」

 レノラが起きあがろうとして万年臨月の爆腹を宙に突き上げるように持ち上げようとする。それを見た妖怪は、巨腹の揺れる様を見てすっかり興奮してしまったらしい。

「いいよ、いいよ、そのままで。すぐに僕が行くから」

 青年を姿をした妖怪はいそいそと身につけているものを脱ぐ。服の下からは痩せ気味ではあるが程良く鍛えられた筋肉質の身体があらわれた。半ば起ちかけて股間にぶら下がっているものは、(レノラの)期待通りなかなか立派だが、その長さに比して太さが目立つ。そのためにどことなく寸詰まりのような印象を受ける。
 普通の男性の所有物を棒に例えるなら、妖怪のナニはワインなどを入れるビンに例えられなくもない。しかも半ば包茎なので亀頭のくびれが目立たず、変化に乏しくてやたらと太さだけが目に付くソレは、虫眼鏡でミミズと睨めっこしているような気分にさせられる。睾丸もオレンジのような大きさで陰毛はあまり濃くない。(作者注:男性の形状は人それぞれ、もしこれに該当するよう同志読者の方がいらした場合は御容赦を)
 全体として股間からの生え方がいかにも不自然である。
 レノラにしてもこの青年の姿が妖怪の正体だとは思っていない。だがナニだけは本来の形態に近いのではないだろうかと爆腹爆乳のこちら側から観察しながら推測した。

「やあ、お待たせ」

 レノラが半覚醒(ぼんやりした)状態を装っているとも知らず、妖怪は股間のいちもつをブラブラさせながらベッドに上がってきた。

「それにしても大きいなぁ。こうしている間にも少し育ったんじゃない?」

 妖怪は感心したように香油を塗ってツヤツヤしている(ように見える)ぼて腹を撫で回した。

「あんっ、オナカ気持ちいい・・・」

 両手でもどうかという爆乳を片手でわしづかみにされると、もう一方の乳房も愛撫を求めてプルプルと揺れる。
 日頃の“食糧難”を解消するために大いに“食いだめ”するつもりであるレノラは、進んで快感に身悶え妖怪を誘惑しようとした。

「邪魔なものは取ってしまおうね」

 両の乳房を揉んでいた妖怪は、不意に身を乗り出してレノラの髪飾りを取ってしまった。そしてそのまま唇を重ね合い接吻する。

『しまった! これじゃ連絡できないけど、ネスサさん、こっちのおおよその位置をつかんでくれているかしら?』

 少し焦るレノラだが、そのような内心の同様をここで見せるわけには行かない。
 妖怪はレノラがネスサたちから借りた装飾品を慣れた手際ではずす。ベッド脇の小卓にそれらを置くと、戻ってきて前戯を再開した。

「それにしても・・・・・あんまり見たことのない顔だね?」

 髪飾りをはずしたレノラの顔を改めて燭台の明かりの下で眺めた妖怪は首を傾げた。

『やばい!』

 妖怪は三日間の夜這いで十一人の代理母全員の顔を一度は品定めしているらしい。だが妖怪は容貌よりも腹の大きさに気をとられていたはずである。その点にレノラは賭けることにした。

「やだぁ、アタシ、レノラっていいますぅ。忘れちゃイヤですぅ。」

 レノラは大胆にとぼけてみせると、手を伸ばして顔をのぞき込んでいる妖怪のいちもつをギュッとつかんだ。

「うぅっ・・・そうだったかな?」

 レノラにナニをしごかれて呻く妖怪。

「そうですぅ」

 レノラはズルッと包皮を引き下ろす。

「いっ、いいぞ。続けて・・・・・」

 剥き出しになった亀頭を五本の指で包み込むように握られ、妖怪の疑問は頭の外へ消し飛んだ。

「もっと・・・うっ・・強く・・・」

 上の空の妖怪は今までにない代理母の積極的な行動に喜んでいた。いままで交渉を持った代理母は幻覚術の影響のために今ひとつ一方的な行為になりがちだったのである。
 さらに血液の流入量の増した男性自身が剛直化する。鎌首をもたげたそれの頭は大人の男性の握り拳よりも大きい。

『わちゃ、すごっ!』

 男性自身の膨張率にレノラは驚いた。半分起ちかけでさえ太いそれは、完全に勃起すると(痩せ気味の)女性の太股ほどもありそうである。
 なるほどこの逸物では御相手をつとめられるものは限られてくる。度重なる出産で鍛えられた、伸縮性と締まりを持つ女性自身、ついでにぼてフェチという妖怪の嗜好を満たす理想の女性といえば代理母以外にあり得ない。

『これ、アタシの中に入るかしら?』

 レノラに躊躇している贅沢は許されない。
 本物の代理母なら十日に二回は赤ん坊がその産道を通り抜けているから入らないはずがない。その事実があるからこそ妖怪も毎夜通い詰めているのである。挿入できないとなれば正体が露見してしまう。そうなるとどのような目に遭わされるかわからない。
 妖怪のサイズが大根ほどであろうが、千年杉(屋久島の?)ほどもあろうが、代理母に出来ることはレノラにも出来なければならないのである。 

「うぉっ、す、すごいぞ、出ちまいそうだ。もう我慢できん。い、入れてもいいか?」

 妖怪の口調が変わってきている。前戯でレノラのあそこを濡らす暇もあらばこそ、彼女の手技に我慢できなくなった妖怪は獣のようにいきなり本番を挑んできた。
 柔らかいベッドの上で自らの爆腹の下敷きになっているレノラの足を開かせるとその間に陣取り、強引に腰を進めてきた。

「あっ・・・あん・・・」(き、きつい)

 まるで壁に押しつけられているようである。股間にあてがわれたそれがメリメリと秘部を裂くようにレノラの中へ侵入してきた。挿入される快感を装いながらも、レノラは泣きそうになるのを堪えなければならなかった。

「ううぅっ、し、締まりやがる」

 締まるのではなく狭いのである。

「あぁん・・・いいっ・・・・」(力抜かないと裂けちゃうぅ)

 レノラは息を吐き、全身をリラックスさせて妖怪のいちもつを受け入れようとした。爆乳と爆腹が妖怪の視線を遮っているので、一瞬隠しようが無くなる苦痛の表情が見られないのが幸いだった。

「うおぉぉぉ、で、出るっ!」
『は、入った!』

 極太のナニがレノラの奥まで届いたと思った瞬間、妖怪が絶頂に達した。射精というよりは奔流のような精液が子宮口に叩き付けられる。もし淫魔から購入した仙丹が無ければ、これ一回ぎりで代理母五人前の超腹になっていたかもしれない。
 往路一度の挿入だけでも大量の煩悩エネルギーがレノラの中に流れ込んできた。

「ふうぅぅ・・・・」

 射精後の余韻に浸る間もあらばこそ、妖怪のナニは萎える気配すらない。

「いいか、動くぞ」

 レノラの手技を喜んでいたくせに、妖怪は思いやりに欠け、一方的な行為しか出来ないらしい。妖怪は右手でレノラの足を引き寄せ、左手で山のような妊娠腹に手を添えて腰を前後に動かし始めた。とはいっても、繋がっている部分が一分の余裕もないので妖怪の動きに連れてレノラの身体も前後し、とてもピストン運動しているとは言い難い。

「あっ・・あっ・・はぁっ・・・」

 馴染むまでの我慢である。そう自分に言い聞かせて喘ぐふりをするレノラ。彼女だってSMマニアの相手をつとめたこともある。その道のプロ意識を多少は持ち合わせているのだ。
 妖怪の乱暴な性交に耐えているうちに奥に放出された精液が、徐々に全体に行き渡り潤滑油の役割をはたしはじめた。レノラの女性自身もどうにか馴染んできて、余裕を持って受け入れることが出来るようになってきた。

「あっ・・あんっ・・あっ・・あっ・・・」

 代理母ほどの超ぼて体型になると身体そのものより乳房やぼて腹のほうが重くなるので、左右どちらかに引き倒されて仰向けに寝るのは不可能になる。だが、やたらと柔らかいこのベッドの上では、身体が沈み込んで左右から支えられるかたちになるので、どうにか正常位が出来るようになるのだ。

「はっ・・はっ・・はぁっ・・はははっ、は、腹が弾んでやがる」

 力任せの前後運動にレノラの爆乳がタプンッタプンッと縦横無尽に波打つ。その下ではパンパンに張った風船腹が一拍遅れてユッサユッサと重々しく揺れていた。
 妖怪はレノラの腹を両手で抱えて揺すりたて、身動きのままならない彼女の腰の動きに代えている。こんなに乱暴に妊娠腹を扱われていると知ったら、犯された代理母たちはさぞ驚き恐れ憤慨したに違いない。

『ひっ、な、なんか・・・すごい・・・』

 たった一晩御無沙汰しただけなのに妖怪は相当溜まっているようである。いまにも射精しそうなのを堪えてその高ぶりをさらに高めようとしていた。その煩悩が股間を通して突き上げるように胎内に響いてくる。
 とうにレオタードの負圧モードはうち切っている。逆にこのペースではもうすぐ圧縮モードに頼らなければならなくなるだろう。少しばかりお腹が膨らんだ方が容量的にも余裕が出来るのだが、代理母を装っているレノラがぷぅぷぅと膨らむわけにもいかない。
 とにかく精根尽きるまで妖怪の精気を搾り取ることが先決である。妖怪の極太に馴染んできたレノラは代理母そこのけに締め付けていかせようとした。

「・・うくっ・・うぅぅ・・・・」

 いくら我慢しても妖怪は早漏気味であることに変わりない。たちまちのうちにレノラの性技に屈し、妖怪の臀部の筋肉が痙攣して先ほどに勝るとも劣らぬ量の精液がレノラの中にぶちまけられた。

「はあぁぁぁ・・・」 (なんかアソコの具合が・・・?)

 妖怪の絶頂に合わせて達したふりをしているレノラは胎内に違和感を覚えた。精気の吸収による腹部の膨圧感とは違う圧力を股間の奥に感じたのである。
 それもそのはず、妖怪のナニで栓をされた状態の膣内に大量の精液が注ぎ込まれた結果、水圧(液圧?)で子宮口が開きそうになっているのだった。
 精気の吸収効率が落ちているとはいえ、子宮内に直接中出しされるようになるとそれが相殺されてしまうようなことになりかねない。

「よぅし、これから本番だな」

 一息ついた妖怪はズルズルとレノラに中に入れていたものを引き出した。それと同時に極太に押し裂かれて半ば口を開いたままの女性自身から白濁した液が流れ出す。子宮口への圧力が低下してレノラは一安心した。
 同時にレノラの身体を包み込んで支えていたベッドが、生き物のように彼女の身体を押し出した。どうやらこのベッドも妖怪の術で操られているらしい。バランスを失ったレノラは腹に引き倒されるようにして右に転がった。

「ほら、四つん這いになれよ」

 妖怪はポンッと無造作にレノラの腹を叩いて体位の変更を命じた。
 たとえベッドのクッションが効いているとはいえ、膝より腹が前につき出ている超爆腹妊婦に後背位とは随分無茶なはなしである。両手足を精一杯突っ張っても自分の体重で腹を圧迫してしまうのに、この上後ろからのしかかられたら膨張しきっている腹を押しつぶしてしまうことになりかねない。
 いかに代理母の身体が丈夫とはいえ、こんな乱暴な性交をしていたのでは出産を間近に控えてで卵膜(羊膜)が破れやすくなっている妊娠後期の胎児を早産してしまうわけである。
 レノラがフウフウいいながら苦労して起きあがっている間に、妖怪は並べてあったクッションから堅めのものをいくつか選んで持ってきた。これを手足の下に敷いて腹を圧迫しないようにかさ上げするのである。
 レノラがそこへ手足をついて、なるだけゆっくり体重を預けていく。ふたたびベッドの表面が変形するとレノラの超爆腹を受け止めるように凹んだ。
 ほぼ球体の臨月腹は半ばレノラの身体からの重そうに垂れ下がり、下半分がベッドの凹みに受け止められ、レノラは案外楽な姿勢に落ち着くことが出来た。腹同様に身体の下になっている乳房はちょうど乳首がベッドに擦れるか擦れないかという具合である。
 堅すぎず柔らかすぎずのベッドに支えられている腹と胸が腰の動きにあわせて程良いリズムでユラユラと揺れるので、先ほどまでの発育しきった肉体に振り回されていた正常位に比べると、身体の取り回しが楽であると同時に自分の身体の特徴(爆乳爆腹)を行為に際して充実したかたちで(その余裕があればだが)味わうことが出来る。
 なによりも自分のペースで腰を動かすことが出来るのがレノラにとってはメリットがある点だった。これで妖怪との“対決”を五分に持ち込めると彼女はふんだ。

「おぉっ、そのでかい腹の重そうな垂れ具合と豊かな腰の張りがたまらんな」  

 見た目青年のままの姿の妖怪がオヤジのような口調で話すのは違和感がある。
 妖怪は感に堪えない様子で、片手は横に丸く張ったレノラの脇腹を撫でさすり、もう一方の手で豊かな尻を引き寄せるようにつかむと再び強引に野太いいちもつを挿入してきた。

「うぐぅっ」

 アソコに入ってくるというよりは、下半身にめり込んで来るような挿入に肺の中の空気を押し出されてレノラの喉が呻くような音を出した。
 妖怪はレノラの尻をわしづかみにすると腰を動かしはじめた。ベッドのくぼみではレノラの腹と乳房が腰の動きにあわせて前後に揺れる。
 レノラもそれにあわせて腰を動かし、妖怪をいかせようと努力した。

「い、いい・・・いいぞぉ・・・」

 もはや我慢するつもりはないらしい。妖怪はレノラの巧みな腰使いに身も心もゆだねて立て続けに射精する。いや、射精というよりは大開放打ちっ放しの状態である。

「あっ・・・あんっ・・・あぁっ・・・」(ひゃー、奥にどくどく出てるぅ)

 ふたたび膣内の液圧が上昇して子宮口が開きそうな形勢に、レノラのうなじの毛が逆立つ。妖怪の精力にも限界はあるのだろうが、レノラにとっては現在の状況は“底なし”としか言いようがない。
 懸命にレノラが腰を使って回数を稼ごうと努力していると、興に乗った妖怪も身を乗り出して激しく突きを入れてきた。

「はぁ・・はぁ・・そんなに激しくしちゃダメですぅ」

 腰から乗り上げるように背後にのしかかってこられると、辛うじて手足を突っ張って支えている臨月腹を圧迫してしまう。
 レノラは本当に妊娠しているわけではないのだが、奔流のごとく流れ込んでくる妖怪の精気で胎内の内圧はかなり上昇している。代理母を装っているの都合上、腹を膨らませて余裕を作るわけにもいかないからかなり苦しい。
 妖怪の術に操られている(振りをしている)とはいえ、代理母が本能的に腹の子を気遣うことは当然あり得る。一向に責め手をゆるめようとしない妖怪に抗議するために、レノラは上体をひねって背後へ振り返った。

「・・・??・・・・っ!?」

 背後を見やったレノラの目が驚きで丸く見開かれた。
 行為に没入しきっていた妖怪が原形を表していたのである。
 それは身の丈三メートルはあろうかという狐狸の精、つまり大狸の化け物だった。この世界には獣人の種族もいろいろいるが、この妖怪はそれらの種族よりも獣に近い。顔つきは元々の狸に近くて愛嬌があるが、知性と性欲をあらわにしている目つきと身長相応に大きな頭部から突き出している口をくわっと開いて喘いでいる様は、下から仰ぎ見ると怖いくらい迫力がある。耳まで裂けている口元がやや吊り上がっているのは、射精の快感に対する歓喜の表情をあらわしているのだろう。
 前脚は熊の手よりも大きく、毛が生えて肉球のある手は人間のそれを不器用に模倣したように太い指が生えている。前脚に比べると後ろ足は犬猫のそれに近く、股が太くてくの字に曲がった短足である。
 狸が人をだましたり月夜に腹鼓を打ったりするというのは、人間が勝手に作った伝説だが、いずれの場合もこの妖怪には当てはまる。
 大狸は直径二メートル近いべんべんとした太鼓腹をしていた。雄なので妊娠しているわけではないだろう。太っているとも膨らんでいるとも言える太鼓腹は、腰の前後運動に合わせて大きく波打ち、呼吸に合わせて気球のように大きく膨らんだりしぼんだりしている。
 レノラの尻に当たっている太鼓腹は、短めの白い獣毛に包まれていて肉付きもよく、感触としては上等の毛皮で作った縫いぐるみのように柔らかく心地よい。だが、相当に重量のありそうなその腹でのしかかられるというのはゾッとしない。

 この太鼓腹で代理母の超臨月爆腹を犯していたかと思うと、レノラは妖怪の無道さに憤ると同時に代理母たちの身体の丈夫さに改めて感銘を受けた。こんな太いいちもつを内側に突っ込まれ、外側からは山のような太鼓腹で乗られたら、腹の胎児は全員流産してしまってもおかしくなかったのである。
 だがそれよりもレノラを驚かせたのは、今まで広いベッドだと思っていたのが大狸の玉袋であるという事実だった。
 “狸のナニは八畳敷き”とはこれまた人間の間で流布しているいい加減な伝説だが、この妖怪のそれはまさに法螺噺しの真なることを証明していた。レノラが四つん這いになっているその手足の下は、太鼓腹同様に敷物のような短い陰毛の生えた、なま暖かい巨大な睾丸だった。
 その中には有り余る精気と精液が充満してレノラの胎内に射精されるのを待っている・・・・

「ひっ!?」

 レノラはひきつった。
 妖怪の精力を完全に読み違いしていたのである。外に出すならともかく、レノラの胎内にはこんな容量はない。全部中出しされたら、腹が家ほどに膨らんでも妖怪の精を絞り尽くすことは出来ない。もっとも、その前にレノラの腹が十回はパンクしてしまうだろうが。

「んっ・・・どうした?」

 妖怪はレノラの腰の動きが止まったので怪訝な表情で下を見下ろした。マインドコントロールされているはずの代理母に妖怪の原形が見えるはずはない。

「い、いえ、ちょっと疲れただけですぅ」

 妖怪の正体を知って腰を抜かしたレノラの括約筋が一瞬ゆるんだ。その瞬間に子宮口を塞いでいた仙丹が液圧に屈して、ポンッと栓が抜けるように子宮内に押し込まれる。それに続いて膣内に溜まっていた精液がドッと流れ込んできた。

「ひゃわわっ、だっ、ダメぇっ」

 悲鳴を上げる間もあらばこそ、レノラの腹が身体の下でぷうぅ〜〜っと膨らむ。風船腹に下半身を持ち上げられて、四つん這いになっていた膝が浮き上がった。

「むうっ、おまえ、代理母じゃないな」

 幻術は相手の先入観(見たいもの)を利用することによって効果をあげている。それが無くなると(よほどレベルが高くない限り)術は容易に見破られてしまうのである。

「しかしあの神殿にいる腹ぼて女神でもないな。この島にはあいつ一人しかいないと思っていたが・・・ううっ・・・」

 大狸は繋がったまま射精を続けながら、自分の太鼓腹越しに身動きの出来ないレノラをジロジロと眺め回した。

「どうせあいつの眷属だろう。腹のでかいところなどそっくりだ。それに中出しされると腹が膨らんじまうようだな」

 大狸がニヤリと笑って口の端を持ち上げた。その口調にレノラはゾッとする。

「こっちも最近精力が有り余っていてな、陰陽のバランスが崩れかけていたところなんだ。それで陽の気を減らして(射精して)妊婦たちから陰の気を頂いていたんだが・・・うっ・・・おまえたちに騙されて、もう少しで金玉が破裂するかと思ったぜ。ちょうどいい、昨日の腹いせにその腹がはち切れるまでたっぷりと中出ししてやる・・・うっく・・・」

 喋っている間にも射精は止まらない。

「あ、ア、アタシにそんなことすると上司が黙っていないですぅ」
「ナニを抜かすか。あんな腹がでかいだけの土地神風情が俺を捕まえられるものか。こっちも妊婦が相手なんで遠慮していたが、これで思いっきり出せるってもんだ。そらっ、これでも食らえ、ううっ 」

 レノラの下で“八畳敷き”がわずかに痙攣するとドロリッと熱い精液が胎内に流れ込んできた。

「いやぁぁ、お腹が膨らんじゃうぅ」

 顎の下で頭三つ分ほどにも乳房が膨らんで腕を左右へ押し広げ、レノラは手をついていられなくなった。後ろから繋がれたままの足も踏ん張ることが出来ず、腹だけで自分の全体重を支えることになってしまった。
 これで子宮が破裂してしまわないのは、球体に膨らんだ腹部の下半分がウォーターベッドのような大狸の八畳敷きにすっぽり包み込まれていて、重量が均等に分散されているからである。

「はははは、代理母三人分はありそうな腹だな。それだけ大きけりゃあ、まだまだ入るだろう。心配するなよ、こっちもまだまだ出るぞ」
「もう、やめてぇ。オナカいっぱいですぅ」

 確かにレノラの腹は三十人近い子供を孕んでいる妊婦のような大きさになっていた。しかもその膨れ上がった腹の中は三分の一まで注ぎ込まれた精液が溜まっている。
 精気の吸収を妨げる仙丹(まだ子宮内で機能しているらしい)がなければとっくに破裂してしまっているほどのエネルギー量である。
 しかし仙丹のおかげで胎内エネルギーの暴走(膨張)は押さえられているとはいえ、精液の喫水はどんどん上昇している。液体は圧縮できないし、その重量たるや相当重い。レノラ自身の肉体も体型支持の魔法のレオタードも、注入される精液の質量に屈してしまうのは時間の問題であった。

「ほお、まだ大きくなれるのか? どら、こっちも腹が大きいからな。つかえて動きづらくなってきた」

 大狸は太鼓腹を抱えると、仰け反って後ろ手を付いて腰を下ろした。変形の座位である。
 レノラの上にその巨腹でのしかかれば、簡単に彼女を破裂させることが出来るのだが、あくまで限界までナニをするつもりなのである。

「あっ、あんっ、まだ出てるぅ」
「遠慮せんでいいぞ。もっと膨らめ」

 代理母を犯していただけあって、大狸はぼて腹が大好きである。しかも大きければ大きいほど燃えるらしい。レノラの膨腹が進むごとに、極太のナニは彼女の中でますますいきり立ち、射精のサイクルは短く、一回あたりの量は増えていく。

「ひぐぅぅぅ、オナカはち切れちゃうよぉぉ」

 もはやレノラの腹は直径一メートルを超えている。しかも胎内の喫水は九割超、胸の下まで精液が溜まっている。座位(レノラにとっては立位?)を強制されているレノラは、ほぼ直立して大狸の股間に腰を預けているような具合だが、腹で身体を支えていることに代わりはなく、足はつま先が八畳敷きに届くかどうかというところである。

「そうか? 破裂しちまうのはかわいそうだな」

 不意に大狸が腰を動かすのをやめた。

「ふみっ? あうっ」

 極太のナニを引き出されてレノラが呻いた。股間からドロドロとヨーグルトより濃い液が溢れ出してくるが、いかに胎内の圧力が高くとも狭い子宮口から排出される量はたかが知れている。

「十数えるから、その間に逃げて見ろよ。そしたら後は追いかけたりせんよ。そのかわり、捕まったら今の倍も射精させてもらうぞ。十、九」
「!!」

 一瞬本気で妖怪が改心したのかと淡い期待を抱いたレノラは事態を察した。

「八、七、六」
「あわわっ」

 レノラは背中に翼を生やし、飛空術を使って飛び立とうとする。

「五、四」

 パタパタと背中の翼が羽ばたく。しかし・・・・

「ううぅん、お、オナカが重くて動けないですぅ」
 それもそのはず。直径一メートルの精液タンクと化したレノラの身体は普段より五六倍は重い。そんな重量を飛ばすだけの術力はレノラにはない。
 またまんいち術で飛べたとしても、八畳敷きで包まれることによって辛うじて自重を支えられている腹が、重量に負けて破裂してしまうのは確実だっただろう。

「三、二、一」
「いやぁぁ」

 レノラの身体はその意志に反して微動だにしなかった。羽ばたいた拍子にわずかに腹を下にして身体が左に傾いただけである。

「零、時間切れだぞ。わははは、そんな腹で本当に逃げられると思っていたのか。どら、それでは約束通り続きをさせてもらうぞ」
「だめぇ、もう入らないですぅ」

 浜に座礁した鯨のように為す術もない自分の肉体に、屈辱感でレノラが泣き声をあげた。だが大狸がレノラの抗議に耳を傾けるはずはない。

「力を抜けよ。気張りすぎると腹の皮が裂けちまうぞ」

 大狸は今までとは打って変わってレノラをパンクさせないように優しく挿入してきた。しかし、そこから先は変わらない。

「ううっ・・・いいぞ。なにがもう無理だと。まだまだ大きくなってるじゃねえか・・・うっ・・・でかい腹しやがって・・・ふぅ・・・ははは、俺より大きくなるつもりか?」

 挿入に成功した大狸はすっかりご機嫌で、ポンッポンッと自分の太鼓腹で腹鼓を打った。
 十数える間に風船腹の内容物が股間から漏れ出て少しばかり生じた余裕も、再開した行為でたちまち帳消しになってしまう。
 大狸の腰使いは今までよりも慎重だが、レノラの膨腹に興奮してか息づかいだけは荒い。しかも一言喋るごとに射精するような有様なので、予告通りにレノラの膨張にはますます拍車がかかっている。
 精気の吸収を抑制する仙丹もその効力の限界が近いのか、胎内に溜まっている精液が徐々にエネルギーとなってレノラの身体に浸透しはじめ、レノラがいくらレオタードの圧縮率を引き上げても膨腹のペースは低下しない。

「ぎぎっ、うぐっ・・・ぐえぇっ・・・も、もう・・・ホントに・・・」

 精液で膨らんだ子宮によって肺と胃を圧迫され、レノラは吐き気を催して呻いた。その目に涙がにじむが、額を滝のように流れ落ちる脂汗と区別がつかない。
 見る見るうちにレノラの腹部の直径は彼女の身長を超えていた。そのために反り返ったレノラの身体は自分の超腹と大狸の太鼓腹の間で挟まれているような状態だった。超腹の上で代理母たちの孕み腹のように膨らんでいる超乳まで加えると、その高さは本当に大狸の太鼓腹を凌ぎつつある。レノラの身体は腹が膨らんでいるというよりも、気球の隅に手足や頭がくっついているようにしか見えない。
 子宮と腹筋はとうに伸びきって、レノラの身体は魔法のレオタードの繊維の強度のみで破局の淵に踏みとどまっている有様だった。
 そのレオタードも直径一メートル半を越えた精液タンクと化した、超絶巨大水風船腹の重量に耐えかねて軋んでいる。もし一本でもレオタードの繊維が切れたら、一気に伝線が広がってしまう。
 そうなれば次の瞬間やってくるのは支持を失ったタンク腹の大爆発である。

「うえぇっ・・・ぐっ・・・・お、お願い、抜いてぇ・・・・はれつしちゃ・・うぅ」
「いいぞ、破裂しちまえよ。でももう少し我慢しろよ。俺もフィニッシュを決めるからな」

 大狸は垂れ流しだった射精をピタリと止めた。それと同時に射精を止められた極太がいっそう怒張して、傘が開きレノラの胎内にピッタリと根を張る。

「ひぎっ?!」
「そぉれ」

 大狸は自分の太鼓腹を抱えてユサユサと揺すりはじめた。
 下腹部でそれと繋がっているレノラの腹もタプンッタプンッと緩慢に波打つ。いつ自分の腹が張り裂けるかとレノラは生きた心地がしない。

「ううっ、いいぞ」

 レノラの腹が波打つと、それを下から包み込んでいる八畳敷きが揉まれる。それが大狸には快感らしい。

「う、動かしちゃダメぇ・・・・」

 レノラは揺れる腹を押さえようと前に手を伸ばしたが、その手は腹部を四分の一周もしない。くわえて液体で満たされた腹はとてつもない重量であり、彼女の腕力が十人力であってもその慣性を押さえ込むのは困難だったに違いない。
 そうしている間にも射精を堪えているいちもつの根本に、噴火口を求める溶岩のようにとどめの一撃が溜まっていく。

「ぐあぁぁ・・・やめてぇ・・・外に出してぇ・・・・」

 噴火口目指して上昇してくる溶岩流を繋がれている部分に感じたレノラが、大爆発から逃れようとむなしくもがいた。

「うぅおぉぉぉぅ・・・で、出・・・・・」
「ひぃぃぃ、もう・・・・」



「タヌキさん、レノラさんが可哀想だからやめてあげてよ」

 どこからともなく少年らしい柔らかな声が部屋に響いた。
 その澄み渡る声に驚かされた部屋の中の全てのものが、凍り付いたように動きを止めた。



「??・・・んっ・・・だ、誰だっ?」

 最後の瞬間に射精を邪魔された妖怪が大声で喚いた。べつに声の主に脅威を感じたわけではないのだが、射精直後の放心で一瞬気が緩んで隙ができるのを避けたのである。

「!・・さ、サキムニ様ぁ・・・・」

 レノラが泣き声で助けを求めた。



「ごめんごめん、すっかり遅くなっちゃって。でも間に合って良かったよ」

 燭台の炎が揺らめき、部屋の入り口のあたりの光と影の境界が不明瞭になる。
 次の瞬間、そこには火眼金睛の少年の姿があった。金糸銀糸で刺繍した鮮やかな戦衣装に萌葱色の帯を締め、手に降妖杵を提げている姿は初陣に望む若武者のような出で立ちである。


「なんだ、このチビは?」

 大狸は拍子抜けした様子だった。
 自分を騙そうとしたネスサの助っ人(レノラ)は八畳敷きの上で破裂寸前まで膨らんでいる。
 それを助けにきたのが衆道を好む王侯の小姓のような少年では、なめてかかるのも当然だろう。

「ねえ、レノラさんを放してあげてよ。それからラマジャに戻ってネスサさんや島の人々に謝ろうよ。僕も一緒に行って取りなしてあげるから」

 サキムニはあくまで笑みを絶やさず、無造作に大狸の傍に近寄ってきた。そして手を伸ばすとパンパンに膨らんでいる太鼓腹を面白そうにスリスリと撫でた。
 少年の予想外の行動に大狸は呆気にとられてしまう。
 大狸はぼて腹好きだが、実を言うと自分の太鼓腹を触ってもらうのも大好きなのだ。
 それを見透かしたようなサキムニの行為に大狸は一瞬毒気を抜かれた。

「ううっ、こいつ、なかなか・・・・・と、こらっ、ガキ、ふざけたことするな! とっとと家に帰って寝床の中でマスでもかいてろ。俺はその手の趣味はないから、おまえなんか容赦なしに頭から喰っちまうぞ!!」

 気を取り直して大声でほえる。
 こんな少年に締めくくりの大放出を邪魔されたかと思うと、大狸はむらむらと腹が立ってきた。そしてサキムニをハエでも追うように払いのけようと大きな手を伸ばした。

パシッ!

 サキムニが旋風の素早さで降妖杵を振るって、大狸の手を叩いた。

「おお、痛い。なにをしやがる」

 大狸は慌てて叩かれた手を引っ込めた。予想外のサキムニの膂力に、叩かれた手に痺れるような痛みが走った。

「ごめんね。僕も暴力は好きじゃないんだけど、タヌキさんが言うこと聞いてくれないから」

 素直に謝りながらも、サキムニの赤い瞳には大狸を折伏しようという決意が光っていた。普段は寛大で慈悲深いが、天魔両族の最高位階に互する獣神の一人が事に際して躊躇ったりすることはない。優しいということと弱いということは別の次元のことなのである。
 大狸はそのあたり(ついでに相手の力量も)を完全に見誤っていた。
 
 だが大狸もサキムニの棒術に並々ならぬものは感じとった。
 それに現在の大狸自身は八畳敷きを広げてレノラと繋がったままである。そうでなくとも二抱えはある太鼓腹のせいで動きは機敏とはいえないし、一方のサキムニは身軽そうである。
 今のままでは埒があかないと思った大狸は、こっちも神通力を見せつけてやることにした。

「小僧、おまえの仲間(レノラ)は昨晩俺を騙した上に、十数える間に逃げられなかったから、このような腹ぼてにしてやった。俺はもっとこいつとやりたいし、当然放してやるつもりもない。おまえも邪魔をするとひどい目を見るぞ」

 そう言うなり大狸は身を起こし、床いっぱいに広げていた八畳敷きで破裂寸前まで膨らんでいるレノラの身体をグルッと包み込んだ。そして呪文を唱えながら立ち上がると、その巨体がグングン伸びはじめ、たちまちのうちに屋敷の屋根を突き破る。
 サキムニは屋敷が崩れる前に雲を踏んで外に飛び出した。振り返ると、背後では山のように大きくなった妖怪がそびえ立っていた。いわゆる変化の術の一種で、一見姿形が変わるわけではないから簡単そうに思えるが、肉体の実質を損なわずに数百倍数千倍に拡大するというのはそれなりに難しい。

「ふぅん、なかなかやるんだ」

 ちょっとだけサキムニは感心した様子である。
 大狸の身の丈は七、八十メートルもあるだろうか。直径五十メートルはあろうかという太鼓腹の下で、レノラを包み込んでいる八畳敷きだけはそのままである。あくまでサキムニを排除して、レノラとのナニを締めくくろうというのであろう。
 妖怪狸の意図を察したサキムニは内心安心した。もし妖怪のアソコが巨大化した身体相応になっていたら、レノラの身体は股間から四分五裂に裂けていたところである。

「どうだ。おまえなど喰ったところで、半口にもならん。命が惜しけりゃ、十数える間に消えちまえ」

 大狸は山のような腹を揺すって威嚇するように笑った。

「お腹の足しになるかならないか、試してみたら?」

 サキムニは宙に飛び上がると、降妖杵をかまえて撃ちかかった。
 しかし頭上から一撃したといえば景気がいいが、いかんせんこの体格差である。サキムニの得物は相対的に大狸のヒゲほどの太さしかない。

「わははは、くすぐったいぞ」

 大狸は頭にくっついた塵でも払うように、サキムニを家のように大きな手で払いのけた。

「うぐっ!」

 サキムニはもんどり打って大狸の太鼓腹の上に墜落した。

「そらっ、逃げりゃよかっただろう?」

 大狸は巨腕を振り上げると自分の腹めがけて振り下ろした。

パァァァンッ!

 島中の人も鳥獣も目が覚めるかと思われる威勢の良い腹鼓とともに、哀れサキムニは五臓六腑を押し潰されてしまった。

「ふふんっ、口ほどにもないガキが。どれ、本当に腹の足しになるかどうか、味見させてもらうぞ」

 大狸はピクリともしないサキムニを爪の先で引っかけるようにして摘み上げると、ポイッと口の中に放り込んだ。

「ふみぃーっ、サキムニ様ぁ」

 あっけないサキムニの最期に、股間に捕まったままのレノラが悲嘆する。

「うはっ、そんなにモゾモゾするなよ。出しちまうぞ」

 邪魔者を簡単に排除できたので、大狸はご機嫌である。
 そのとき・・・・・

「どう? タヌキさん、美味しかった?」
「っ?!」

 サキムニの声に大狸はギョッとした。

「ど、どこにいる?」
「いやだなぁ、呆ける歳じゃないでしょ? さっき自分で食べたじゃない」
「お、俺の腹の中にいるのか!?」
「そうだよ。ねぇ、満足した?」

 サキムニが慈悲深いことは度々述べてきた。彼はかつて成仙しかけの存在だった頃、飢饉に襲われて他国へ流れていく難民の家族に同情し、その一身を捧げたことがある。つまりサキムニは飢えた民に食べられて命を落としたのである。
 その自己犠牲を厭わぬ行為に感じた主によって、サキムニの霊魂は天に拾い上げられ、ふたたび生命を与えられて十二獣神に列せられた。
 そういう経緯があるだけに、サキムニは大狸のような妖怪ごときに食べられたぐらいでその肉体や本質が損じてしまうことはないのだった。

「な、なにが満足だっ! すぐに俺の腹の中から出ていけ!! そうしないと腹の中でトロトロに溶けちまうぞ」

 大狸は虚勢を張り、自分の腹に向かって吼えた。

「いやだよ」

 にべもないサキムニの返事に大狸は青くなった。同時に太鼓腹が鉄でも呑んだように重く感じられた。

「あのねえ、タヌキさん、お腹の大きな女の人っていうのは色々と大変なんだよ。タヌキさんだって大きなお腹してるのに、それに理解がないどころか、非道いことをするなんて。それに悪いことをするのを止めさせようとしたレノラさんまで、お腹をパンパンに膨らませて破裂させようとして」

「そ、それがどうしたっ!?」

 大狸はあくまで虚勢を崩そうとしない。

「あのね、タヌキさん」

 しようがないという口調で腹の中のサキムニが言った。

「タヌキさんが今までの罪を反省して償おうとしないんだったら、みんな(被害者)と同じ目にあってもらわなければいけないんだけど・・・いい?」

 返事をする間もあらばこそ、大狸は太鼓腹に妙な違和感と膨張感を覚えた。

「なっ?!」

大狸は慌てて太鼓腹に手をやった。
 巨大化した肉体は、目に見えるほどの変化は急に現れない。しかしさほど待たずに大狸の太鼓腹がぷくぅ〜っと膨らみはじめた。

「こっ、これはっ!?」

 大狸はそれがサキムニの仕業であることに気づいた。白い毛皮に包まれた直径五十メートルを超える太鼓腹が、それを抱えている大木のような腕の間からムクムクと膨張してきた。
 五十一メートル、五十二メートル、五十三メートル・・・・・

「なにを! このっ!」

 大狸は力任せに膨らむ腹をギュッと締め付けた。腹鼓を打つだけあって、大狸の腹はたいへん丈夫で弾力性に富んでいる。そのまま餅でもこねるように太鼓腹を揉み込んで、腹の中のサキムニを押し潰そうとした。

ドムッ!!

「うぐぐっ」

 大狸は呻いた。
 腹の中のサキムニが降妖杵を振るって、外側から締め付けてくる大狸の手を突き返したのである。大狸の手が弾かれた部分には直径五メートルほどの瘤ができていた。しかも降妖杵を樹齢数百年の松の木ほどにも太くし、万人力の膂力で腹を内側から突いたからたまらない。 

「ねぇ、痛いでしょう? タヌキさん、降参してよ」
「誰がっ!」

 丸く大きな太鼓腹は大狸の御自慢である。大狸は大いに怒り、痛みを堪えて飛び出した部分を押し戻そうとした。

「もう、強情なんだから」

ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ!

 サキムニは降妖杵を縦横無尽に振るって腹の中を突きまくった。大狸は突出する部分を押し戻してそれを押さえようとする。その様はまるでモグラ叩きゲームのようである。
 最初は互角に見えたこの攻防も大狸の方が不利だった。
 そもそも大狸は自慢の太鼓腹は、自分でも締めたり押したりしているように外側からの衝撃には相当程度に耐えられるが、内側からはそうでもない。それにサキムニに膨らまされずとも太鼓腹が大きすぎて、腹の正面や下半分に手が届かないのである。そのあたりから攻められて、真ん丸い球形だった太鼓腹はたちまち金平糖のようにデコボコになってしまう。
 サキムニが餅をつく要領で(兎の精霊だけに得意中の得意)それを均一にならす頃には、大狸の腹の筋肉は伸びきって、太鼓腹は双周りほども大きくなってしまっていた。

「もう降参をすすめたりしないからね」

 サキムニは呪文を唱えると大気(風)の精霊たちを腹の中に召喚する。
 サキムニに命じられた大気の精霊たちは、腹の中に居座り、この限られた空間にどんどん自分たちの構成要素を取り込みはじめた。

「ふむむむむっ?!」

 大狸の目が丸くなった。自分の意志と関わりなく、息を吸うばかりで吐くことができないのだ。肺に入った空気は鼻を抜けて出ていかず、気道でUターンして腹の中に流れ込んでいく。
 それ以外にも身体の周りの空気が勝手に鼻と口に押し掛けて腹の中に入っていき、大狸の太鼓腹は気球のようにグングン膨らんでいく・・・・

「うぷっ・・・・・・・ぶはっ」

 大狸は鼻と口を両手で押さえ、息を吸い込むのを止めようとした。だが、すぐに苦しくなって呼吸してしまう。
 腹が破裂するまで膨らむか、窒息死するか、選択を強いられていることを悟った大狸は真っ青になった。

「むぐぐぐぐぐ・・・」

 すでに大狸の太鼓腹は自分の身の丈を超えて、直径百メートル近くなっていた。太鼓腹はすでに大地に届き、両足とそろって三点支持で反り身になっているような体勢である。それが腹に寄り切られてひっくり返ってしまうまで、分秒の時間しかなかった。

ズッ、ズゥゥゥゥゥンッ・・・・・

 膨らみ続ける腹に足をすくわれて、大狸は地響きを立てて仰向けに倒れた。もはや大狸の腕力を持ってしても、腹の膨張を止めることは出来ない。それどころか腹筋がサキムニの杵つき攻撃で伸びきっているので、無理に膨腹を止めようとすれば破裂してしまいかねなかった。

「ひっ、はっ、は、破裂しちまうぅ〜〜」

 太鼓腹の直径はすでに百五十メートルを超えている。夜明けの薄暮の中に浮かぶ大狸の風船腹は、地上に繋がれた巨大な飛行船のように見えた。
 山のような腹の表面積は船の帆など較べ物にならないほど広い。限界の近い腹の皮は海から吹き寄せてくる緩やかな風にあおられてギシギシと軋んだ。

「やめて、やめてくれぇぇ」

 ついに大狸が降参の声をあげた。
 大狸の股間のナニと太鼓腹こそは、成仙の糧となる玄妙な精を蓄えた部分だった。御自慢の太鼓腹がはち切れてしまったら、一命を取り留めても仙骨を失ってただの獣に戻ってしまう。

「やめるって、ナニを?」

 腹の中からサキムニが惚けて問い返してきた。
 相手を拷問にかけて脅迫するなどということは、およそサキムニの性分に合わない。その強硬手段をとらされたことに、サキムニ自身が気分を害しているのである。

「腹だっ、腹だよ。もうこれ以上、俺の腹を膨らまさないでくれぇ!!」

 大狸の声は泣き声に近い。腹全体の皮が伸びきった痛みに我慢できなくなったのである。

「悪いことやめて、良いコトする?」

 サキムニが問うている間にも大狸の腹はとどまることを知らずにぐんぐん膨らみ続けていた。

「貴方のいうことでしたらなんでも聞きます。お願いですからやめてください」

 大狸はいまにも破裂しそうな気球腹に両手を添えて哀願した。
 膨腹がピタリと止まり、膨腹破裂に恐々としている大狸の口から、サキムニが一陣の風となって出てきた。

「じゃあ、手始めにレノラさんを解放して」



「ふみぃ〜〜、サキムニ様ぁ、助かったコトは嬉しいんですけど、オナカ パァンっていっちゃいそうですぅ」
 戦闘中(?)ずっと八畳敷きに隔離されていたレノラは無事に解放された。大狸がサキムニと争っている間、中出しされることはなかったとはいえ、すでに注入された大量の精液が徐々に吸収され続けた結果、レノラの超腹の直径は二メートル半を越えていた。
 現在、完全に萎縮してしまった大狸の極太が抜けた後の女性自身からは、胎内の物凄い圧力(加えて魔法のレオタードの締め付け)で粘りのある白濁した液体が噴出するような勢いで排出されていた。

「うん、レノラさんのお腹、ちっとも小さくならないね」

 サキムニはレノラの超絶巨大水風船腹を撫でたりさすったりして排出を促してやっていた。
 東の空がすでに白みかけている。
 時折レオタードに包まれたレノラの腹筋が痙攣して、股間からドッと精液が吹き出す。身動きできないレノラが腹を据えたままの大狸の八畳敷きは、自らの出したものに漬かってドロドロになっていた。
 腹囲がいっこうに縮まらないのは、現在も胎内に残っている精液の吸収がとまっていないからである。もっとも、排出に伴って重量的な負担は軽くなる方向なので、破裂の危険も少しは減少している。
 大狸も術を解いて元の大きさに戻っているものの、サキムニに膨らまされた太鼓腹は身長の倍近く(直径六メートル?)になっている。膨らんでいるというよりは腫れているという方が近いだろう。
 大狸はその太鼓腹を心配そうにそっと撫でたり、毛繕いをするように舐めたりしていた。 こちらもサキムニに治療して欲しいのだろうが、要求できるような立場にはない手前、辛抱強くレノラの腹囲が安全な範囲に落ち着くまで我慢して待つよりほかなかった。

「それにしてもサキムニ様、俺は、いえ、わたしはどうすればよろしいので?」

 大狸が今後の事を尋ねた。

「現在のように陽の気が有り余っているこの身では、俗界では女性と交わるよりそれ(性欲)をおさめる方法がありません。サキムニ様の仙境で修行させていただければ、数年でそれも抑えることができるようになると思うのですが」

 大狸もこうなっては観念して、サキムニに身を立てていける方法を考えてもらおうとしていた。

「そうだよねぇ。タヌキさんのその体質じゃ、ナニしないと(抜かないと)アソコが破裂しちゃうものねぇ」

サキムニは思案しながら自分の腹を気遣っているレノラをちらりと見た。

「ふみっ、アタシはこんな妖怪の面倒を見るのはこりごりですぅ。仙境に引き取るなんて選択肢から除外してください」
 レノラは慌てて首を横に振った。

「そうかなぁ、レノラさんがそういうんじゃ、取りあえずそっちは却下だね。お似合いのカップルだと思ったんだけどなぁ」

 サキムニは悪戯っぽくクスクス笑った。
 レノラと大狸は渋い表情をした。
 超腹同士のレノラと大狸が並んでいる様は、肌の色と毛色をのぞけば巨大な雪だるまが横倒しになっているようにしか見えなかった。

「まぁ、レノラさんとは考えが違うけど、当分仙境に引き取らないのは賛成だよ。タヌキさんは島の人たちに悪いことをしたんだから、まずそっちの方で罪を償うことが先決だよね。僕んちで修行するのはそれから後の話しだね」
「どうすればよろしいので?」
「うん、僕に一つ考えがあるんだけど聞いてくれる?」



一年後・・・・・

 ラマジャの“生命の器”は大々的な改装をされて、バビラリー島の実質的な中心としての体裁を整えつつあった。それはこれまでのように人口(=代理母)の数が多いというだけではない。
 むろん、代理母早産事件を解決した功績はサキムニからすべて土地神ネスサに譲られたので、彼女への信心も高まり、神殿のあるラマジャが崇められるようになった点も無視することは出来ない。
 だが、それよりもラマジャの権威に大きく貢献しているのが、捕縛され守山大神としてネスサの下で罪を償わされている大狸であるというのはある種の皮肉であろう。しかも妖怪はかつて彼自身の望んでいた方法で罪を償わされているのだった。

「さぁ、今日も予約がギッシリ詰まっていますから、よろしくお願いしますね」
「頼むよ、一日くらいゆっくり休ませてくれ。今朝も一番鶏が鳴くまでしてたんだ。もう、粉も出ない。ほんと・・・・」

 守山大神は大改装されて倍の広さになった大広間で勤労奉仕に励んでいた。もとは畜生とはいえ、成仙した存在の精気にはやはり玄妙な効果があるらしい。大狸が捕まってからの半年で、その元陽の気(精液)を受けたラマジャの代理母の三分の一が二十五人以上、残りの三分の二(十四、五人しか孕めなかった)も二十人近い子供を孕めるようになっていた。
 これを聞きつけた島中の代理母が守山大神の精を授かりに訪れるようになり、ラマジャへの朝貢が引きも切らないようになったのである。

 加えて最近、代理母たちが寝所へ引き取っていたあとで、深夜に守山大神と交渉を持っていた(夜這いしていた)世話人の女性たちの中に妊娠可能な体質を発現させた者が二人あらわれた。二人とも一度に一人か二人しか懐胎できなかったが、これも大神の精で不完全だった妊娠能力が開花したものと考えられた。
 ちなみに妊娠可能になった二人の女性は三十代前半と二十代後半である。ネスサはもっと早い時期(十代前半の成長期)に守山大神の精を受けると、劣性遺伝の妊娠能力が大きく発現する可能性もあると診断を下した。そうなると代理母ほどではないにせよ、七、八人ぐらいは一度に妊娠できる、いわゆる二級代理母なるものが誕生するかもしれない。
 このネスサ神の御託宣(学説?)を聞いた島中の女性、とくに十代の娘が一度守山大神の精を受けんと押し掛けたものだから、ラマジャの街は一時期大混乱に陥った。
 その後、制度が整えられ、代理母たちとの交渉で余った守山大神の精と時間は、これらの交渉希望者に当てられることになり、代理母たちの就寝する時間以降の夜這いが公然、合法化したのである。
 このため、守山大神は昼は代理母、夜は妊娠能力を開発したいふつうの女性たちに攻め続けられ、
八畳敷きの中に溜め込んでいた精を放ち続けるという試練を負わされているのだった。

「ほんと・・・、こんなに毎日精気を搾り取られたら、仙骨が溶けてただの狸にもどっちまう。なぁ、明日まで休んでしっかり溜め込んだら濃いやつがたくさん出るから、今日だけは勘弁して休ませてくれ」

 守山大神は傍らに座っているラヴナを見下ろして哀願した。

「そうおっしゃるだろうと思って、今朝も朝食に精のつくものを用意しました」

 族長のラヴナはにっこり笑いながら、元犯罪者兼妖怪、現ネスサの配下の守山大神にして囚人、八畳敷きを誇る大狸の巨体を見上げた。

「それに涸れるどころか、この一年でお出しになるものの量は確実に増えていますよ。昨日も午前中にクマノボから来た代理母たちとなさったときだけで、大桶に九杯も出されたではありませんか。あの後、股間をお清めするのにどれだけ世話人たちが苦労したか。その後も・・・・」
「ううぅ・・・それ以上言わんでくれ」

 ラヴナに射精した量と回数を数え上げられて守山大神には返す言葉がない。

「ほら、しっかりなさってください。貴方様は守山大神なのですから。午後にはネスサ様も様子を見に降りてこられます。お仕事に懈怠があってはお咎めを受けますよ」

 励ますようにラヴナは守山大神の手を取り、一年前より二周りは大きくなった自分の超巨大臨月腹に触らせた。かつては十五六人しか孕めなかった彼女も、守山大神の精のおかげで一度に二十一人もの子供を身ごもることが出来るようになっていた。

「おっ・・・・」

 ああだこうだ言いながらもやはりぼて腹が好きなのである。ラヴナの腹に触った守山大神の肉体は素直に反応した。

「どうです。こんなに大きくなれたの大神様の御陰なのですよ。過去の経緯はどうであれ、いまはこのように善行を積む機会に恵まれているのですから・・・あっ・・・・」

 肉球のついた毛むくじゃらの手が、パンパンに張り切った妊娠腹を熱心に撫で回すのでラヴナも思わず感じてしまう。

「す、すまん、起っちまった。その・・・・」

 守山大神はモジモジしながらラヴナを見た。
 毎食を代理母たちとともにし、精のつくものばかり食べさせられている守山大神の太鼓腹は肥満しきってラヴナ同様に一年前より二周りは大きくなっている。そのため自分の股間に手が届かない。当然手淫も出来ないから、いまラヴナたちの“世話”を受けられなくなると、八畳敷きに精気が溜まりすぎて破裂してしまう恐れがあった。(そうでなくとも、ネスサを通じてサキムニに報告が上がるのが怖い)
 たまには今朝のように不平も言うが、ラマジャを逃げ出さないのはそういう事情もあるのである。肉奴隷として飼い慣らされているといえばそれまでだが、彼なりに結構現在の生活を気に入っているのだった。

「分かりましたわ。それでは今朝の初物はわたしが頂戴いたします」

 早朝の相談と称して面会しているので、大広間にはラヴナと守山大神しかいない。
 ラヴナは苦労して独りで守山大神の股間に移動すると、そこに広がる八畳敷きに腰を降ろした。その上は暖かくて柔らかく、短く白っぽい毛が敷物のように生えそろっている。ラヴナはその表面を優しく撫で回した。
 後ろ手をついて上体を支えていた大狸は、その巨体を横たえ仰向けに寝ころんだ。いまでは直径二メートル半は軽く越えている太鼓腹は天井に届きそうである。両脚を開いた股間には先走った半透明な液に頭を濡らした例の太いものがそそり立っていた。

「まぁ、こんなに。とても明け方までなさっていたとは思えませんわ」

 守山大神が腹の大きな女性に無条件に反応してしまうことを知っているラヴナは、くすくす笑いながらからかった。
 たっぷりと肥え太った下腹部の肉を揉んでやると、山のような太鼓腹が獣じみた喘ぎにあわせてユサユサと波打つ。
 守山大神は相変わらず自分の太鼓腹を触ってもらうのが好きである。三日に一度は大改築した浴室で代理母たちと一緒に湯浴みをし、毎日朝晩に巨大な太鼓腹と八畳敷きを十人がかりでブラッシングしてもらっているので、毛並みはツヤツヤして白貂の毛皮よりも触り心地が良いほどだった。

「うぅっ、は、はやくしてくれ。アソコが破裂してしまいそうだ」

 ラヴナに腹を愛撫されて大狸のナニは痛いほどにいきり立っていた。ラヴナの腰の下では八畳敷きが射精の期待に熱く脈打っている。

「わたしもこの身体(超身重)ですから介添えがないとちょっと挿入は無理ですわ。手か、お口か・・・胸・・それともお腹で?」

 ラヴナは太鼓腹を愛撫し続けながらリクエストを尋ねた。二十人からの子を孕んだ彼女と守山大神では、一対一で出来ることが限られている。

「そ、そうだな、その腹で擦ってくれ。毎朝一番出しをその腹にたっぷり射精したら、半年もしないうちにあと四、五人は孕めるようになるかもしれないぞ」

 守山大神は自分の太鼓腹越しに期待を込めてラヴナに催促した。

「まあ、これ以上大きくなったらわたしのお腹は破裂してしまいますわ」

 ラヴナはそういいながらも守山大神の“毎朝”という申し出にまんざらでもない表情である。あっちの方に強い男性は歓迎だし、それが福(子を孕む能力)をもたらしてくれる神様ともなれば断る理由は見あたらない。
 ラヴナは、期待に満ちた目で太鼓腹越しに彼女を見下ろしている守山大神に承諾の笑みを返し、両手をいちもつにかるく添えると包茎気味の皮を剥いてやる。そして露出したそれを自分の巨大妊娠腹を揺すって擦りはじめた・・・・

「そ・・そろそろいくぞ・・・」
「今日の午後には一人産む予定なんです。空席が二人分になるようにいっぱい出してくださいね・・・・」



『・・・・万事がそのような具合でして、島の者たちはすすんで守山大神を受け入れてくれております。出産可能な女性が増えることによって、代理母を中心とする現在の社会体制に変化が起こったり、人口が増加する事によって島の環境(特に食糧増産による耕作地の増加)が変わることなども考えられます。
 しかし、もともと亜大陸とでもいうべき広大な島に、繁殖率が頭打ちになっていた種族ですので、それらの問題を心配することになるのは数百年以上先のことでしょう。わたしもこの島の土地神としてサキムニ様やレノラさんの御助力を無にせぬように一層励んでいきたいと思っています。
 ちなみに、わたしもようやく身体が元のように(今まで以上の超ぼて体型に)なり、ふたたびこの島に恵みをもたらすことができるようになりました。
 守山大神もサキムニ様の言いつけをよく守って勤務に精励しております。わたしも今まで以上に島民との接触を持とうと思い、時々は神殿を下りて守山大神共々、島民たちと喜びをともにしております。
 御二方とも、お暇がありましたら、再度バビラリーをお訪ねください。ネスサより』


「・・・・・だって。ネスサさんたち、うまくやってるみたいだね」

 久しぶりにネスサから届いた手紙を読み終えたサキムニはレノラに回覧した。

「うきゅ〜〜〜ぅ、なんで悪者がいいおもいしてるんですぅ? アタシがあれだけ(苦労したのにぃ」

 しかも文面から察するに、ネスサまでちょいちょい“いいこと”に参加しているらしい。レノラは手紙を一読して身もだえした。

「成り行きでこうなったんだからしようがないじゃない。タヌキさんも改心して島の人々のために役に立ってるし、自分であの役職を気に入ってるみたいだから僕も安心したよ。進んで良いことをするように仕向けないと、正道に帰依したとは言えないからねぇ。・・・ん、レノラさん、はやく食べないと朝御飯が冷えちゃうよ」
「ふみっ、手紙読んでたらオナカ空いてきました」
「また、あっちの方? あのときはもう少しでお腹破裂しちゃうところだったじゃない。あれに懲りてないの」
「苦しいのや痛いのは苦手なんですけど、アタシは食いだめできない体質なんですぅ。嗚呼、バビラリーに行けばアタシだって英雄(すーぱーヒロイン)。大歓迎されてナニし放題なのにぃ」
「だめだよ。こっちも仕事がつかえてるんだから。それにアモン侯爵からは五年契約でレノラさんを借りてるから、あと三年はしっかり働いてもらわないと」
「あうぅっ、サキムニ様は堅物ですぅ。お腹空いた!、休暇欲しい!、バビラリーに行きたい。それがダメなら(動物以外と)新しい出会いが欲しいですぅ!!」


これにて終劇。



 如何でしたでしょうか、新西遊記外伝その壱。正伝が行き詰まったり、夏場から秋にかけて私生活でいろいろあったせいで、気分転換にこのような外道な物語を書いてしまいました。追々本編も執筆を再会するつもりですので、そちらもお忘れなきよう。感想、批判、新企画、お譲りいただけるネタなどなど、ぼて小説に磨きをかけるための前向きなご意見ご提案をお待ちしています。


メモ書き(頭の中の整理も兼ねて)

レノラについて
 読者はご承知のように“ぼてフェチの旗手”あるみねこさんから借用しているキャラクターです。新西遊記本編では、複数レギュラーメンバーの一人という扱いでクローズアップが難しいので今回の企画を思いついたわけです。
 “腹ぺこさきゅばす”シリーズを見習って、あくまでエッチ中心に、非力なレノラが活躍できる舞台にしようと思ってこうなりました。時代的には本編に先立つ数百年前で、彼女がまだゼニアとも出会わずイスマスにも住まず、諸国を放浪していた頃を考えて書きました。書き終えて思ったのですが、この外伝のレノラは本編よりもよっぽど活躍してます。ミスらしいミスもしてないし。レノラはちょっとドジなところと努力しても報われないところがミソだと思うので、もう少し失敗談みたいにしてもよかったかなと思っています。(物語をコンパクトに出来ない、あるいは分割発表出来ない悪癖は相変わらず直っていません。度々の遅筆を謝罪します)
 ついでにレノラの周辺設定について語るとすると、あるみねこさんの設定と大きく違っているのは、魔族という社会組織のことです。わたしの考えでは彼らも好き勝手に個人単位で生活しているんじゃなくて、組合なり派閥なりあって、その枠組みの中で仕事も義務もあるんじゃないかと考え、レノラがサキムニ(よその神様組合)の下に出向しているという図式を考え出しました。
 最初からレノラ自身に事件を解決してもらおうとは思っていなかっただけに、この社会構造を取り入れることで、最終解決者としてのサキムニを物語に登場させることが可能になったというわけです。レノラが能動的に暴力絡みの事件に関わったりすることはないだけに、命令系統としての組織が存在するという設定は有効打であると自負しています。

バビラリー人について
 バビラリーという地名自体は全くの借用です。原典探してみてください。
 本編でも第六話で敵役として人狼のアインやダークエルフのロレイなどが登場していますが、執筆していて人間以外の種族とはどのような肉体構造や社会や風俗を持っているのかふと疑問に思いました。で、今回の種族(生殖方法)に結びついたわけです。
 託卵で卵胎生、多胎、それを順次出産という設定は、むろんぼて小説という大前提がある以上、腹囲のサイズを稼ぐための方便です。前半部のレノラとネスサの会話はこの社会の説明に字数を相当費やしてしまいました。本当は読者の代わりにレノラに実体験してもらってバビラリー島の社会を説明したかったのですが、事件に時間的余裕が無かった以上全てを事前に説明してしまわなければなりませんでした。
 こういう特殊な社会を設定し、その物語を書いたのは個人的には面白い実験でした。今後の創作活動でも生かしていきたいものです。少なくとも本編ではエルウィンやレノラたちが立ち寄る旅の先々の地域的特色を彼女たちに実体験させていきたいと思っています。
 小難しい設定ばかりしていますが、所以“風船爆弾”HPに掲載される以上はぼて小説です。空想力、筆力の限り、様々な土地や文化や種族の“ぼて”を読者の方々の頭の中に描いていけたらいいなと思っています。(再度書くけど、ネタ募集。あなたの考える土地のぼて文化をわたしだけにコソッと教えて)
悪役(大狸について)
 みなさんもときどき見かけると思いますが、笠を被り徳利を下げている睾丸のやたらと大きいあの狸の焼き物がモデルになっています(爆笑)。
 Trump先生の漫画に触発され、前々から獣娘のぼて小説を書いてみたいと思っていたのですが・・・・もしもあの焼き物が雌狸だったらもっとはやく思いついていたかもしれません。作者も男だから雄狸ではなかなかピンと来ませんでした。でもある日、これはこれで悪役として使えるなと着想し、今回の小説に登場させてみることにしました。
 悪役が成仙して妖怪になった獣、巨腹巨根巨玉、しかも雄。原型を壊したくなかったのでふたなりにはしたくなかったのです。雄という設定に不満のある読者は多いかと思いますが、あくまで原型に忠実、且つ(数少ない)女性読者へのサービスとお受け取り下さい。
 着想がかたまった時点で自分の設定に呆れてしまいました。レノラとのナニも異物挿入に近く、液体(精液)強制大量注入、で獣姦モノ。和姦派のわたしがなぜこんな小説を、と書いていて自分の壊れ方が怖くなってきました。ハッピーエンドだし鬼畜に徹し切れていないのでご不満の読者もいるかもしれませんが、いまの作者はこれが限界です。
 でもユニークなキャラなので機会があれば本編でも登場させてみたいです(リクエストあれば)。刑期を終えて自由になったということで、サキムニの部下になって方々へ出張しているとか再登場の方法はいくらでもあります。
 このキャラで欲情する人がいたら・・・・怖い。でも感想は聞いてみたいです。
 そろそろ時間も来てしまいました。このお話しはこれでおしまい。次回作でお会いしましょう。