1話 それは、唐突に・・・


「・・・で、その結果がコレな訳・・・?」

ややくたびれた白衣にスリッパ履き、口にはスリムタイプの咥えタバコといった、“SFやマンガのお約束パターン”の不摂生なドクターがつぶやいた。
その傍には、椅子に浅く腰掛け半ベソをかいている、ピンク色の髪をした少女・・・?

・・・少女の後に何故「?」が付いているのかというと、その子はどう見ても、「少女」とは思えないような外見をしているからなのだった・・・

 片方で頭と同じくらいはありそうな巨大な胸が、しゃくりあげる度にゆさゆさと揺れている。
さらには、その胸を下から支えている、まるで巨大な風船を抱えているかのように膨れ上がった腹。
実際に少女の手は重量を少しでも支えたいかのように巨大な腹に添えられているのだが、臍のあたりまでへはおろか、大きな腹の中心線までも届いていない。

 どう見ても妊婦さんと言うよりは、いまにも張ち切れんばかりに膨らまされたゴム風船のようだった・・・

 人類は、地球というちっぽけな星をいじくり飽きたのか、フロンティア=スピリッツを宇宙へと向け始めて、既に数世紀が過ぎた。
この時代、サバイバビリティや閉鎖空間での安定性等の諸々の理由から、「既に死語となりつつある”アストロノーツ”という仕事」は、完全な女性社会となっていた。
(航空事故等でも、生き残るのは大抵が女性である)

ここは、銀河系辺境調査ステーション「VERSUS」
大昔は「天の川」とも呼ばれていた銀河系という巨大なレンズ状星雲の端っこに設置された小さなステーションである。
主な目的は銀河系周辺の調査、はっきり言って閑職である(笑)
このステーションに詰めているのは7人、全員が女性である。
もし、これが男ばかり詰められていたら、長期の調査活動は不可能であろう。
もちろん、男女混成であっても、また別問題が発生するであろう、
いつの時代となっても、人間の心理には進化が無い様である・・・。
女性ばかりという状況は、閉鎖空間においては最適の選択なのである
もっとも、理想的とは言い切れない面も有るのだが、たいした問題ではない。
 さて、このVERSUSの面々だが、7人がそれぞれ、専用の教育を受け、その分野でのエキスパートとしての実力を持つ面々であるが、意外にもそのほとんどが10代である
 専門の機関による教育は、肉体的ピークを最も有効に生かせるよう、高密度に行われるのだ。いかに高度な訓練を受けたとは言え、人間は孤独には耐えられない。
 当然、ステーションVERSUSにも、超光速通信による地球とのデータリンクが張られていることは、言うまでもない。

この回線は、調査結果の送信のみならず全ての情報が流れる、いわばVERSUSの命綱でもあった・・・


「え〜・・・また、天体観測データだけなのォ? 」
VERSUS最年少のコンピュータ・オペレータ、キャウがぼやく
まだあどけなさの残る、スレンダーな眼鏡っ娘だ、フルネームはキャウ=アルファ、まだ14歳だが実力はある。
彼女は遥か昔、ゲイツと呼ばれた一族の末裔らしい・・・本人談に過ぎないが・・・(爆)
この時代、ナノマシンやインプラント(埋め込み)システム、果てはゲノム(遺伝子)改造等で視力の弱い者は存在しないはずなのだが、彼女はポリシーとして眼鏡を外そうとはしない。更には20世紀に流行ったジャンクフードをこよなく愛するほどの徹底ぶりである。もっともレプリカのジャンクフードには、栄養バランスの問題はないのだが・・・
「しかたないでしょ、何も変化が無いんだから・・・」
投げやりに答えるのは、惑星調査技師のルーラ、17歳、フルネームはルーラ=ウィズ、宇宙生物学およびテラフォーミングのエキスパートだ。
中肉中背のセミロングヘア、これぞといった特徴の無い娘
・・・実際、この作品の本編に当たる同人ソフト(ポシャった)では主人公だったのだが、今回はあまり関係がない(笑)

「おい、メシいこうぜ、なんだ?お決まりの報告なんてさっさと済ませちまいなよ」
ドアを開け入って来るなり声を掛けてきたのは、元傭兵のルシカ=ライレーン、18歳
長身を黒いジャンプスーツに包み、ブルーの逆立てたパンクな髪型は、性格をそのまんま表わしている。
ルーラが食堂に着いた時には先客がいた。
食後の一服をくゆらすドクター、ジェシイ=アルティマ、最年長の22歳、白衣とスリッパ以外は、下着しか着けていない彼女は、ヘビースモーカーで大酒飲み、それでいて相談役という、SFの医者の典型パターンだ
ただ違うのはボリュームのあるブロンドヘアと、けだるげな半開きの目つきが特徴の美人女医であるという点だけだ
ドクターの隣で、食後の紅茶をすすっているのが、通称「艦長」のミラ=バリアント、19歳。
VERSUSはステーションであるが、それ単体としても航行能力を持つ宇宙船でもあるので、責任者の彼女はこう呼ばれている
ややキツいつり目と長いストレートの銀髪が特徴の美人だ
食堂のカウンターの内側にいるのが、栄養士のミーサ=ポーピィ 16歳
ピンク色の髪のぽっちゃりした娘だ。料理の腕はピカイチなのだが、自分の体重管理だけは、やや苦手なようだ、
もっとも、少々泣き虫の傾向があるので、誰も本人に面と向かって言うヤツはいない。
全員ゴハン抜きは、宇宙生活者にとって死活問題だからだ(笑)
あ、そうそう、後一人を忘れてはいけない、メカニックのモニカ=ヴァクソル 17歳、無口でおとなしく、めったに機関室から出てこない。こう書くと暗いヤツのように思われてしまうが、そうではない。彼女は仕事熱心な上にメカマニアなのである(適材適所だぁね)
・・・かくして、一応メンバー紹介も終わったステーションVERSUS、
かくも平和で、退屈な日々が続いているのでありました・・・



世の中に完璧なものは無いのかもしれない・・・
いや、きっかけは些細なものだったのかもしれない
・・・どんなに完成されたシステムにも、動作不良はある・・・

ところが、もし、それが人間の最も弱いところを突いてきたのなら・・・・



その日も、いつもと同じように、時が過ぎていくかのように思えた。
「あれ?おかしいなぁ、故障かな?」
いつもと変わらぬ報告書を書き上げたルーラがこぼす
「そんなコトないよ、システムチェックに異常はないよ」
キャウがコンソールから目を離さずに答える

今日は非番で自室待機のルシカが駆け込んでくる
「おい!部屋のテレビ、写らんぞ! 今日は地球本土からの格闘技中継があるはずなのに・・・」
「アンテナは?」
「異常無し・・・・これって、ひょっとして・・・・」
皆で手分けして復旧を試みるが、手応えはまったくない、
・・・そう、地球とのデータリンクが途絶えたのだ

 そして、VERSUSのメインコンピュータは、重大な決断を下したのであった・・・


その日の夜、急遽、緊急ミーティングが行われ、全員がブリーフィングルームに集められた
纏め役である「艦長」こと、ミラが声を上げた。
「諸君、重大な発表がある。すでにご存知かもしれないが、地球とのデータリンクが途絶えた なお、当方のシステムには一切の異常は見られなかった。これがどのような意味を持っているかは 御分かりだろう・・・・我々は孤立したのだ・・・」
ミラの肩が小刻みに震えている
「メイコンピュータの決定により、本日0:00より、”コードF”を発動する!なお、今後、コード発令中の指揮権はルーラに移行するので注意、 各自、持ち場にて待機、解散!」

 ”コードF”・・・”F”はファイナルのF・・・ 
万一地球本土が壊滅してしまった時に、人類と言う種族の存続を最優先する司令コード

・・・もう、帰る所はどこにもない、なんとかして生き延びて、人類と言う種族の火を絶やさない事がすべて・・・
それが出来るのはVERSUSの7名だけなのだ

コード発令と共に、クルーの体内インプラントのロックが外される
人間の扱ってきた知識とは、積み重ねられたものの最上部だけである。
パソコンを組み立てられる人でも、トランジスタの山を渡されてコンピュータは作れない
優秀なメカニックでも、鉄の固まりから自動車は作れない・・・・
脳内インプラントが開放するのは、その、文明の”ゼロから現代までの間”の知識なのだ
 また、肉体的な面を強化するインプラントも作動を開始する。彼女たちアストロノーツ達は、有事の際に備えて、全員が何らかのインプラントを行われている。

 もっとも、悪用を防ぐため、インプラントの内容および使用マニュアルは、コード発令時までプロテクトされているのが普通だ。
VERSUSのクルー達は、開放された能力と使命感に燃えながら持ち場に戻った、

・・・ただ一人を除いて・・・