5話 SUPER-Pregnant?
「きゃ!どいてどいて〜」ぼうぅんっ!!
|
「やはり、その場しのぎだったか・・・」
またしても会議である。メンバーは、艦内責任者であるミラ、コードF指揮担当のルーラ、医者であるDrジェシィ、そして計算役として同席しているキャウ
「ルーラの提示したデータによると、現時点ではサポーターで押さえているものの、発育は止まっていないとの事」
「つまりは、ぎゅ〜っと圧縮されとるっちゅー状態やな 」
「今の所、サポーターの強度に問題は無いよ、でも、計算によると二ヶ月後には圧力に負けて破ける可能性があるけど」
キャウがハンディ端末を叩きながら報告する。
「じゃ、計算して見て、今現在の状態でサポーターの保護が無くなったらどうなるの?」
「皮膚、腹筋、子宮筋、その他人体の各部の強度ちゅーたら、こんなもんや」
Drがデータをわたす「ふぅ〜ん・・・なるほどねぇ・・・・結果だけ先に言っちゃうとォ・・・」
そこにいる一同が顔を寄せる。キャウは両手の握りこぶしを身体の前で合わせると、
「ほぼ確実にィ・・・」
ぱっと両手を開き、一気に腕を広げた
「ぱぁん!!・・・・って大爆発確定ね、支えるモノが無くなったら」
ごぅ・・・ん
唐突に轟音と振動が艦内にこだまする。
照明が明滅し、緊急事態を知らせる電子サイレンが鳴るコンピュータが状況報告のメッセージをスピーカーに流す
「小型いん石、展望室ニ命中。隔壁閉鎖シマス」
この銀河辺境宙域では、確率的に考えてめったに無いことである
「珍しい事も・・・ってて、展望室って言わなかった!?」
「展望室ってェ、レクリエーションホール兼用のあそこでしょ?」
「残った3名がいるんだって!!」
「でも確か、外壁損傷時には一時的に隔壁閉鎖および全気密ドアが一時的にロックされるはずだ」
「我々も、一時的に雪隠詰め状態やな」
「せめて、展望室のモニタできない?」
「このハンディ端末ぢゃ、メインコントロールの権限ないよォ・・・」
ルーラは普段から付けているバレッタ(髪留め)を毟り取った。
「コレ使って!メインコンピュータ直結のAIエキスパートシステム端末」
キャウはバレッタ型AI端末を受け取ると、ハンディに接続した。
展望室では、ルシカ・モニカそしてミーサの3人が、住居可能惑星の捜査を続けていた。
全センサーを最大距離で稼動していたため、近距離が死角となったのだ
即座に緊急補修装置が壁の穴をふさぐ
いきなり跳び込んできた1.5mくらいの薄緑色をしたいん石。
大気中を飛んでいたわけではないので熱は持っていない。一同は、部屋の角へと移動し距離を開ける
「大丈夫、放射線・有害ガス・細菌、どれも無いとオレのインプラントが告げている」
ルシカにはサバイバルに必要な知識とセンサー、装備がインプラントされているのだ「でも、何か動いて・・・」いん石自体がぷるぷると、いやグニグニと動き始めた。どうやらこれ自体が生命体らしい。
「このヤロ」
ルシカがブラスターを抜き、構えた。モニカも、腰の工具ポーチから、レーザートーチを取り出す。
「キャウ、まだなの?画像だけでもモニタできない?」
「本来そーゆー仕様ぢゃないんだって、この端末ぅ。即興でアプリ移植やってるよォ」
やがて、ハンディ端末に展望室の画像が一瞬モニタされる。画面には薄緑色の物体と対峙している3人の姿が映ったが、すぐに画像が乱れた
「これは・・・!!シリカ=ベア!まずいわ!!」
ルーラは宇宙環境学のエキスパートだ。地球外生命体についても詳しい、判断は一瞬見えればOKだ。
「キャウ、こっちの声を送って、ハックしても構わないから!」
薄緑色のそいつがゆっくりと立ち上がる、体長2mの首の無い熊の様な形相だ
熊なら首のついているであろう場所には手のひらくらいの丸い口が1つ・・・
その身体に体毛等は一切なく、半つやのゴムの様なぬめっとした質感が不気味だ。
動きはそんなに速くはない。ルシカはブラスターの照準を定めた。
「ルシカ!熱火器はダメ!そいつの体液は強燃性よ!!」
天井のスピーカーからルーラの声が聞こえた。
「シリカ=ベアは珪素系生命体、酸素系大気に苦しんでいるのよ」
シリカ=ベアが前足を横殴りに振り回す。その腕はゴムのようにぐいっと伸びてルシカの身体を弾き飛ばした。壁に叩き付けられたルシカがへたり込む。
「くっ・・・アバラが・・・」
二番目に接近しているのはミーサだ。壁に張りついて立っているため、位置は等距離なのだが、身体の厚みが違いすぎる。ゆっくりとミーサに近づくシリカ=ベア・・・
「たぁぁぁぁっ!!」
横から、モーターツール(電動工具)を腰だめにモニカが突進する
高速回転するドリルがシリカ=ベアの脇腹をえぐる!
シリカ=ベアは無言のまま(発声器官が無い)モニカをなぎ払った
ルシカとは別の壁に叩き付けられたモニカは意識朦朧でつぶやく
「ミーサ・・・生き延びて・・・あたしの・・・」
胸ポケットから取り出したなにかのスイッチを押すと、そのまま意識を失った。
「画像戻らないの?!」
「やってるって!」
ふたたび画像が表示された時、ミーサとシリカ=ベアが一対一て対峙していた。
「モニカとルシカは?」
「モニカは気を失ってるし、ルシカは負傷して動けないみたい・・・」
「という事はミーサ一人?!」
「あとね、艦内のFTLフィールドのエネルギー密度が、展望室に集中してるんだけど・・・」
「FTLって超光速通信用の?」
「それで画像が乱れるんだよ・・・」
モニカが最後の力でスイッチを押した時、ミーサの四肢にかすかな振動がおこったのだが、恐怖のあまり震えていたミーサには判らなかった。
2人を打ちのめしたシリカ=ベアの触手が、今度はミーサを襲う・・・
「いやぁぁぁっ!!」とっさに手で払い除ける。バシィィッ!!なんと、弾かれたのは触手の方だった。
「何なの・・・これ・・・」
「そっかぁ、モニカのヤツ、パワーアシストシステムのリミッターを解除したな」
壁にもたれたまま動けないルシカが言った
「ミーサ!今なら戦える!VERSUS艦内の全てのエネルギーがお前の物だ!!」
「うーん、モニカやるなぁ。使用しなくなったFTLビームで、パワーアシストのエネルギー伝達するなんて発想、フツー思い付かないよ。これなら壁も距離も関係ないしね。さすがは”世界のH●NDA”の子孫」
モニターには、”エイリアン”シリカ=ベアVS”すーぱーPregnant”ミーサの対決が映し出されている。
端から見ると、ちょっとおマヌな子供向き特撮に見えてしまうが、これは現実。
さらには、人類種の存続がミーサの腹にはかかっているのだ。
「応援しか出来ない自分がちょっと悲しいな・・・」
ミラが自嘲気味につぶやいた
必殺の触手を弾かれたシリカ=ベアは、今度は突進してきた。
ガードしようと構えるミーサではあったが、構えた手足よりも巨大な腹の方が前に出ていた(笑)
ぼむぅぅっっ!!
腹の弾力が、クッションのように突進を受け止める。
「うぐぅぅっ・・・中身でちゃうぅ・・・」
強化繊維のサポータースーツは、ミリミリときしみながらも耐え抜いた。
「だいじょうぶ?!シリカ=ベアの触手には鋭い爪はないから安心して!」
スビーカーからルーラの声援が飛ぶ
突進を受け止められたシリカ=ベアは、ミーサの下腹にしがみつく形となった
(ミーサの腹は下膨れで、臍より下側がせり出している) そのままの状態から触手を伸ばし、ぎゅ〜っと腹を締め付けてきた。
「いやぁぁん、そんなに締め付けたら張ち切れちゃうぅぅ〜っ!!」そして、シリカ=ベアの口が開いた、中にはぐるりと放射状に内側に向かった鋭い牙が・・・・ミーサ本人には、乳房の影となって見えていない。
「やばいっ!!あの牙が刺さったら・・・」
さらに皮肉なことに、臍の周囲にはちょうど穴があり、肌が露出していた・・・
「ミーサ!!払いのけろ!!」
「えっ?えっ?・・・手が届かないよォ!!」
格闘技に精通したルシカだが、妊娠の経験はない。ましてやミーサ並みの超ぼて体型の不自由さなど知るはずも無い。超ぼて妊婦とは、こうも格闘に適さないもなのであった・・・(フツーはしませんって)
そうこうやり取りをしている間にシリカ=ベアの口がミーサの腹に・・・・!!針で突つかれたゴム風船のごとく、哀れミーサは“パァン”と破裂・・・しなかった・・・そう、あまりにも巨大なミーサの下腹部は、シリカ=ベアの口に入らなかったのである。リンゴは丸かじりできてもスイカは齧れない・・・同じ理由である。
「きゃっ、キモチわるい〜」
振り出した(腹につかえて振り上げるといえるほど高く上がらない)右足がかろうじて届き、シリカ=ベアを弾き飛ばす
「チャンス!追撃して!」
ルシカの指示か飛ぶ
「はぁいっ!・・・ととっ!!」
ダッシュしようと踏み込んだミーサだが、その手足はVERSUSメイン動力炉直結のパワーである力加減が出来るはずもなくミーサの身体は宙高く飛びあがる。
「わっ・・・きゃあっ」
そしてそのまま相手の上に・・・・尻から落ちた(笑)
ぶじゅっ!!
直径100cm、重さ100kgを優に超える、巨大なボールが10m近くから落下してきたのである。いかに頑丈な生命体といえど無事では済まない。骨格を持たない体は押しつぶされ、モニカの開けた脇腹の穴から体液が吹き出す。それでもゆっくりと立ち上がってくるあたりは、さすがにエイリアンである。
ミーサはボールのように弾んで10mほど離れたところにて止まった。
「ミラだ、そのままでは埒があかない。そこでだ、奴の背後にちょうど緊急用エアロックがある なんとかそこにヤツを押し込めないか?」
天井のスピーカーから、ミラの声が聞こえる
「ミラちゃん、そりゃええ作戦ね。ちょい貸してみィ、ワシにもええ考えあるわな」
Drが、不敵な笑みを浮かべ、モニタ前に割り込む。
「キャウ、モニターカメラ画像、俯瞰(見下ろし)にして、マイクもこっちへ」
「ミーサ、アイツをエアロックにぶち込む方法、見つかったで!」
天井からの声がDrのに変わる
「ええか?これからワシの言う通りにするんや、チャンスは一度やで」
こっくりとうなづくミーサ
「まず、ヤツに向かって走るんや、目ェつぶっても構わんから飛び上がらんよーにな」
ミーサが目をつぶったままダッシュする。前傾姿勢を取ると、腹が床を少し擦ってしまうが無視した。
「進路少し右へ・・・ちょい左へ修正!そのまま・・・・そこで上を見る!!」
走り込んでいったミーサが指示通り体を反らす。
ぼうぅぅんっ!!
そっくり返ったミーサの腹にシリカ=ベアがぶつかり、弾き飛ばされる
「よっしゃ!計算通りィ!!キャウ、エアロック・オープン!!」
開いたエアロックにシリカ=ベアの背中が叩きつけられる非常用エアロックは、かろうじて人間一人が通れるサイズしかないが、大気圧が強力にその体を吸い込んでいく、ゴム質の体は抵抗空しく捻じ曲げられ、やがて排出されていった・・・
各部屋の一時閉鎖も解け、ミーティングルームから現場・展望室へと向かいながらミラがつぶやく
「たいした計算と指示だな、普通ああはいかないもんだぞ・・・」Drは頭の後ろに両手を回しながら答える
「まぁこれでも、地球にいた頃はビリヤードのチャンプだったんやで!まぁるいモノの衝突なら感覚的に判断できる、まかせときぃや」
「・・・・・」
絶句する一同であった。
かくしてエイリアンの脅威は去ったわけだが、ミーサはそのへたり込んでいた
オーバーヒートした足のパワーアシストが機能を停止し、動けないのである。
「ふぅ・・・なんとか助かったわ・・・でも疲れたぁ・・・なんとなく息苦しいわね」
いままで夢中になっていて気づかなかったが、ミーサの身体は二周りほど膨張していた。
「感じてたんじゃなくっても大っきくなっちゃうんだ・・・って・・・え゛??」
膨張の原因はそれではなかった、その証拠に今目の前で、少しずつではあるが乳房と腹が膨張を続けている。
「えっえっ・・・・なんで?!膨らんじゃうのォ?!!」
ストラップの集合体のようなボディスーツの所々の隙間から、増量した分の肉がはみ出してくる・・・
さながらボンレスハムのようだ。いや円筒形のハムの方がずっとスリムである。
「いっ・・・やだぁっ!このままじゃバクハツしちゃうよぉ!」
急激な頭痛に気絶していたモニカは意識を取り戻した。少しだが呼吸が苦しい。目の前には、膨らみ行くミーサが・・・
「いけない・・・気圧が下がってる・・・原因は?」
モニカの目に非常用エアロックが止まった。
「歪んじゃってるわ・・・そうか、ここからヤツを・・・」
ばんっっ!
ミーサのボディスーツのバックルが1つ、圧力に耐えかねて弾けた
「いやぁぁん・・・オナカが、破裂しちゃうぅ・・・」
「な・・なにか隙間を充填するものは・・・」
工具はあれど材料が無い・・・
ばつんっ!!
ストラップの1つが千切れた
「だめぇ!膨らまないでェ!!張ち切れちゃうぅぅ〜!!!」
「そうだわっ!!」
モニカは素早く衣類を脱ぐとエアロックの隙間に押し込み、そして、
「ルシカごめんっ」
ルシカのジャンプスーツを引き剥がした。
ばぼんっ!!!
ボティースーツが完全に四散し、全裸になってしまったミーサ
支えを失った身体が急激に膨張する。
「ひっ・・・た・・・たすけて・・・わ・・割れちゃう・・・」
腹が・・・乳房が・・・張り詰めてメリメリと悲鳴を上げる・・・・
「間に合うの?!」
モニカは自分とルシカの下着をエアロックに投げつける
気流に乗り、隙間部分に下着が張り付く
最後にルシカのジャンプスーツを広げてかぶせると、至近距離からルシカのブラスターを連射する!
耐熱繊維のルシカのジャンプスーツに断続的に熱線が弾ける。
・・・ 空気の流出が急に止まった・・・
ブラスターの熱が下に重ねてあった化学繊維の下着類を溶かし、接着剤の役割を果たしたのだ。
気圧が徐々にもどり、ミーサの身体が少しだけ小さくなる。
あと数秒遅かったら張り裂けてしまったであろう・・・
ちょうど室内の気圧が完全に戻った頃、4人が飛び込んできた。
※5話後書き(読みたい人だけどうぞ)
今回は「宇宙モノSF」のお約束、エイリアンの登場です。
発想の原点は、とある日のCHAT、格闘GAMEの話から、「ぼて格闘」という話題が持ち上がりまして、我らが超ぼて娘(笑)ミーサちゃんにも戦ってもらいましょうという次第だったワケです。
・・・で、ハチャメチャSFとはいえ、ある程度の説得力は必要・・・ってんで、用意したアイテムがサポートスーツとパワーアシストです。(おおっ、SFらしいっ!)
第一、今のままじゃ格闘はもちろん、歩くことすらまともに出来ないですしね。戦う前に転んじゃってパァン!ぢゃ笑い話にすらならないし・・・(おいおい)
あと、苦労したのが対戦相手(笑)のエイリアン。迫力出すためにトゲトゲとか鋭い爪とか牙かあるヤツを作ってしまうと、破裂寸前の風船妊婦のミーサには勝ち目がなくなってしまいますし、かといって、いちおーある程度、脅威になってくれないと意味が無いです。
苦肉の策が、今回の“シリカ=ベア”ゴム質ボディのぱわふりゃ!なクマさんモドキです。デザインセンスないですね・・・
さて、この「コードF」には、「××の子孫」ってネタがありますけど、作者は深く考えてません。ただ、こう言っておくと、そのキャラの天性の素質が想像できるかな?ってくらいです。実際、この世界では遺伝子系列の混合、改造などが当たり前になりつつある時代ですから、有名な人の遺伝子をサルベージして使っていたのかもしれません。軽く聞き流してください。
一応書いておいて言うのもなんですが、ぼて娘は弱いほうがいいにゃあ・・・
一触即発、危機一髪(笑)「触れれば落ちん」ならぬ「触れれば弾けん」の爆発寸前の脆さ、危なさが魅力だと思うのは、ひょっとしてAlだけかにゃ?