『人生、あきらめが肝心だと、写真屋はいった 』


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 最後に、ゆっくりと息を吐き出して、西田は仰向けに横たわった。
見事に膨れ上がった西田のカエル腹は、もうすっかり落ち着いていて、さっきまでの波打つ激しさは、完全に消えうせていた。

 秀生は、西田の豊満なふとももの肉を、たぽたぽとつまんでいたが、やがてそれにも飽きると、ぷっくりふくれたへそから腰へほおずりを始めた。
 「いやぁね」
 西田はいやいやをするかのように、少しばかり肩を揺すってみたが、そんなことにはお構いなしに、今度は腹にキスの雨を降らせた。

 「ねぇ、おへそはやめて、恥ずかしいから」

 「恥ずかしくないよ」

 「ううん、恥ずかしいのよ」

 「でも、ここに来る人はみんなそうだし……」

 「それはそうだけど、でも…」

 「いや」

 「歯は使わないでね、痛いから」

 いい加減な相づちを打ちながら、秀生は腹から唇を離し、次は膨れ上がって黒ずんだ乳輪に、ゆっくりと舌を這わせた。

 「また、ひどくうなされていたでしょ、写真屋さん。ここに来たときは、つわりがひどくて気づかなかったんだけど。ほとんど毎日、夜中になるとうなされているみたいだったから、気になっていたのね」

 「迷惑だった?」

 「ううん、そんなことないわ。でも、夜中に大きな声でうなっているから、最初は本当にびっくりしたわ」

 半分くらい聞き流しながら、秀生は西田のうなじにキスをしていた。

 「ねぇ」

 西田は、秀生の背中に腕を回して、強く身体を引き寄せた。

 「またぁ、明日も仕事があるのに…」

 「そんなこといっても、たいした仕事してないじゃない。写真屋さんなら、どうにでもなるわ」

 「そんなもんかな…」

 何も答えないまま、西田はキスを求めてきた。
 秀生は、全く抵抗しなかった。

 秀生のペニスを包んでいた皮はめくれあがり、赤く擦れて、ところどころに残る行為の残滓が卑猥にきらめいていた。
西田の右手が優しくしごくと、むくむくと腫れあがり、やがて血管が青黒く、太いツタの様にうねって、皮膚の表面にくっきりと浮き出してくる。
 秀生はのそのそと体を回し、西田のふとももに顔を近づける。そして、秀生は西田の両足を大きく開くと、陰部に右手を伸ばし、薄い包皮を広げてワギナとクリトリスをさらけ出した。西田の粘膜がはれぼったくなっていたのは、情欲の激しさばかりでなく、少し前まで秀生の妙に太いペニスがねじ込まれていたせいもあるだろう。既に真っ黒く変色していた西田のワギナは湧き出した愛液にまみれ、小振りなクリトリスもムクムクと身体の芯から沸き上がり、完全に勃起していた。秀生は、濡れそぼったワギナに舌を突っ込みながら、同時に西田の底知れない性欲の強さを感じた。そして、相手かまわず繰り返される毎夜の行為に、いささか辟易とし始めていたもう1人の自分の存在を、この上も無くはっきりと自覚していた。
 しかし、そのもう1人の自分の抵抗にも関わらず、眼の前に広がる薄いひだひだの西田のワギナは、臨月間近のドス黒い色だったのが、挿入を期待する赤味がくっきりと浮かび上がり、やがて焦げ茶色に変色していく。もちろん、ワギナからは鼻を突くような、淫美で、強烈な麝香の臭いが放たれていた。

 「くふっ」

 秀生は軽くせき込むと、唐突に起き上がり、むぞうさに西田の両足首をつかんだ。そして、一気に挿入した。

 「ああああぁんっ」

 秀生のペニスはカリが大きく広がっている上に、先端から約半分ぐらいのところが妙に太い、ちょうど葉巻にきのこの傘をくっつけたような、そんな形をしていた。秀生は、半分ぐらい挿入したところで腰を引き、広がったカリが入口にあたる感触を楽しんでいた。肩透かしを食わされた格好になった西田は、なんとか秀生のペニスを飲み込もうと、腰を前に突き出して見たが、膨れ上がったカエル腹が邪魔になってうまくいかない。

 「ほ、欲しいっ!」

 「いっ、入れて欲しいの!」

 「どこに?」

 「お願い、お願いだからちゃんとして〜」

 ふっと、全てを諦めきったような表情を目に浮かべると、秀生は一気に根本まで突っ込んだ。

 「…うっ!…う〜〜〜〜ん!」

 秀生のペニスを完全にくわえ込んだ瞬間、西田は顔を歪めて擦り切れたシーツをバリバリとかきむしり、腹の底からうめき声を上げた。秀生はペニスを一番奥にまで突き刺し、一呼吸した後、激しく腰を使いはじめた。
 「ふふ。締めつけてきますね」

 「あぁ〜ん、あぁぁんっ」

 既に、西田は秀生がなにをいってもわからなくなっていた。

 「西田さんは、本当に禁欲してたんですね」

 ふっと、秀生は顔を曇らせたが、再び激しく西田を責めはじめた。だが、秀生が本格的に腰を使い始めると、すぐに西田は絶頂を迎えてしまった。秀生はいったん腰の動きを止め、余裕の表情で西田を見下し、意味有りげに口をゆがめると、上体を倒して耳元でささやいた。

 「どうですか、西田さん。本当に久しぶりなんでしょう?。気持ちいいんですか?。ほら、正直に言ってみてくださいよ」

 しかし、快楽の絶頂で失神状態にあった西田は、いった表情のママ口をだらしなく開いて、なにも答えようとしなかった。

 「全く、仕方の無い人だ。じゃあ、こうしてみようかな」

秀生は、再び力強く肉棒を突き刺した。

 「あぁっ!だめぇ〜〜〜!」

 その瞬間、西田は凄まじい声を上げた。
 秀生はゆっくりとペニスを引き抜き、また力強く突き刺した。

 「はうぅぅぅぅっ!」

 「自分ばかり気持ちよくなっちゃって。ほらっ」

 「あぁっ!」

 秀生は、なにも答えることができない西田を、強弱をつけながら何度も責め続け、いつしか、西田は秀生の腰に自分の脚を絡ませ、絶頂の繰り返しのなかでさらなる快楽をむさぼっていた。
 膨れ上がったカエル腹は、流れ落ちる2人の汗でぬらぬらと怪しく光り、圧迫されるのもかまわず、西田はさらなる密着を求めてふとももに力を入れた。その事に気づいた秀生は、少し肉棒を引き抜こうとしたが、反対に西田から両腕をつかまれ、再び上体を密着することになる。

 「あぁぁぁぁん、あんあん、あん」

 「気持ちいいんだね、西田さん」

 「いい〜〜っ!気持ちいいの〜〜!わ、私こんなの初めて〜〜っ!」

 あたりかまわず、西田の狂ったような喘ぎ声が響き渡る。そして、意を決したように秀生は一層激しく腰を使った。 

「いい〜〜っ!いいの〜〜〜っ!」

 西田は秀生にしがみついたまま、狂ったように喚きたててた。

 「あぁ〜っ、だめっ、だめぇ〜〜〜ひぃぃぃぃっ!」

 再び、西田は体を激しく痙攣させると、ぐったりと倒れていった。

 「また、いっちゃっんですねぇ。ほんとに仕方の無い人ですよ。でも、私はまだいってないんでね」

 絡みつく腕を振り払って上体を起こした秀生は、ゆっくりと西田のふとももをを持ち上げ、また深々とペニスを挿入した。

 「ねぇ、ま、待って。写真屋さん、少し休ませて〜」

 「西田さん、もう少しでいくから、チョットがまんして」

 「で、でもぉ〜!」

 「お願い!」

 「もう、ゆるしてぇ〜…」

 そう言いながらも、西田はゆっくりと腰を使いはじめ、秀生も激しく腰を突き入れた。

 「あぁっん!あぉぅっ!」

 「うぅんぅっ!おんぅぅぅっ!あぁいぃぃぃっ!」

 再び快楽の高みに押しやられた西田は、むせるように激しく喘ぎ続けた。

 「ねぇっ、あぁぁんっ!また、またなのぉ〜」

 「いく?いっしょにいく?」

 「うんっ!いっしょにいってぇ〜」

 ラストスパートにかかった秀生は、既に根本までつき入れていたペニスを、さらにぐいぐいと押し込もうとした。

 「あぁぁぁっ、あんあんあんあん、くるわ、くるっ!きてっ、お願い、きてぇ〜!」

 両腕を広げて、西田はシーツに握り締めたまま叫んだ。

 「いくよ!いくからね、いくいく〜!」

 そして、秀生は西田のふとももにしがみつきながら、臨月の子宮に大量の白濁液をぶちまけた。

 奇妙な左足の冷たさに目を覚まされてしまった秀生は、西田の大きな太股の下から足首をそっと引き出し、ゆっくりと起き上がってタバコを探したが、サイドテーブルには空っぽのティッシュボックスしかない。
 おまけにどうにも喉が渇いて仕方がなかった。行為の後はいつもそうだが、水差しがないとなると、余計に水が欲しくなる。ふと気がつくと、寝返りを打った西田は丸く秀生に背を向けていて、うまく抜け出せば台所にいっても起こしてしまうようなことはなさそうだったし、ついでにタバコを取ってくることもできるだろう。
 何とはなしに時計を見ると、そろそろ夜明けの時間だった。
 秀生は居留地の夜明けが嫌いだった。徒弟時代、まだ訳も分からないまま修行に明け暮れていたときはたまらなく好きだったのだが、それだからこそ、余計に現在の自分がま「夜明け」と向かい合うこと自体がどうしても面白くなかった。
 あまりにも均一で均質な、そして自らの血脈に縛られた産院での仕事は、できの悪いおままごとですらない。秀生には仕事に対する意欲も、責任も、そして何よりリアリティが全く存在していなかった。もちろん、産院に連れてこられた後も、秀生は何度も夜明けを体験していたが、感動したこともなければ、あの無意味な高揚感に胸を踊らせたこともなく、そこにはただ白っ茶けた馬鹿馬鹿しさが漂うだけでしかなかった。
 水は冷えていたが、氷はなかった。
 タバコは…
 流し台にタバコがあるはずもなし、止めた方がよさそうだろう。
 不意に人影がさした。

 「どうしたの」裸の西田が壁にもたれて、秀生を見ていた。

 「起こしてしまいましたね」

秀生はゆっくりと目をそらし、コップに水を注ぐ。

 「私にも水をちょうだい」

西田の口調にはどこか非難がましさが臭った。
 「起こすつもりはなかったんですよ」先に西田にコップを渡して、秀生は別のコップを探し始めた。

 「いいのよ、気にしないで。それよりタバコは?」

 「机のどっかだと思うけど、先に腹帯を捲いた方がいいんじゃないですか」

 「そんなに見苦しいかしら、私のカラダ」

西田はにこりともせずに秀生の目を見つめ、空のコップを振ってもう一杯くれというジェスチャー。

 「いや、そうじゃないんです。それに、とってもきれいですよ。胸だって、すごく大きいですよ」

そう言いながらも、秀生は西田の身体を見ていなかった。いや、確かに、臨月になってもなお西田の身体は十分以上に美しかったし、妊娠前は抜群のプロポーションを誇っていたのだろう。しかし、それだけに秀生は強く意識せざるを得なかったのだ、知識でも、体力でも、経験でも、そして性的な魅力という点においても、自分は西田に劣っているということを。

 「ありがと。お世辞でも嬉しいわ。でも、もう乳首なんか真っ黒だし、ふくれるだけふくらんじゃったこのおなかやおしり」

 「いや、そんな…」

 秀生の言葉をさえぎるように、西田は空のコップを突き出した。

 「いいのよ、自分の方が判っているんだから、腹ぼて女をきれいだと思うのは、女だけなの。それより、あなたこそパンツ履きなさいよ。あなたのカラダの方が見苦しいわ」

西田はゆっくりと視線を落とし、そっと秀生の後ろに回ってやさしくささやいた。

 「それから、御願いだからベッドの上でまで西田さんと呼ぶのは止めてよね…」
最後の言葉を秀生の耳もとに吹きかけながら、西田は秀生の背中に抱きついていった。

 「判っているのよ、あなたがいますごく腹を立てているってこと。さっきまで自分の下でひいひい言っていた女に言い返すとこさえもできず、ただコップを洗っている自分を情けなく思っているってことも…」

西田は後ろから秀生の首筋に手をかけて、耳もとに言葉を吹きかけた。

 「それでいいのよ、秀生。あなたと私は生まれも違うし、役割も違うの。でも、私、そんなあなたがだあいすきよ」

 そのとき、秀生は感じていた。西田の親指が正確に自分の頚動脈を押さえつけていた事を、この上もなくはっきりと感じとっていた。