例えば、"白のなか"でのこと。作:空(sora)
1章 僕にできることなど、今更何があるというのか…
銃殺隊の前に立つはめになった今でも、私は激しく勃起していた。今までの行動に後悔はまったく無い。それどころか、充足感と快感を一度に味わうことができたことに感謝したい。
旧式の銃…(銃殺にしか使われることの無い旧世代の銃)…を構えた兵士7人が私に照準を合わせる。私はいよいよ目隠しをされ、"最後のコトバ"を求められる。
神父が自分の腕時計を気にしながら、Aのそばにやってくる。時計を気にしている理由は、もうすぐ仕事の定時終了時刻に近づいているからであろう。これから起こる目の前の死には無関心の神父…神父は娘の誕生日プレゼントの選択に頭を悩ましている。機械的儀礼的調子でAに向かって神父は言う。
「最後の聖句をどうぞ。」
Aは、性器に触れることなく射精したようだ。口を半開きにして、ぼそぼそと何かAは言った。
「僕にできることなど、今更何があるというのか…」
2章・AD○○○○年4月○日(Aの日記より)
私を担当する教授の印象について書いておこう。パッとしない風情である。中肉中背で禿げ上がった頭部を右手で掻く癖があるようだ。私はこのパッとしない教授にテストをされ、単位をもらわなくてはならないのだ。我慢しなければ、外科医にはなれない。自分に再度我慢を要求する日々が続きそうだ。(深夜、雨、自宅にて)
5月○日(Aの日記より抜粋)
医学部のなかにも、お遊び系ナンパサークルがあるのには驚いた。国家試験からの逃避であろうか?それとも性欲を満たすための口実か?性器への執着は、もはやみじんの欠片もないが、性的興奮作用が消失したわけではない。その対象が"特殊ではある"と自覚しているが、人の性的欲求など千差万別であろう。(午後の昼食後、晴、第2医局前にて)
5月△日(Aの日記より抜粋)
田中教授の研究は実に興味深い。産婦人科専門区域で妊婦症例写真ファイル整理の課題を出された私は激しく興奮していた。田中教授の撮影した妊婦写真は実にエロティックであった。ぷっくりと膨らんだ腹部が"ぽてぽて"していて、私は勃起していた。しかし、妊婦に欲情していることは隠さざるを得ない。私はおそらく、そのぼて腹に対して激しい興奮をしているのだろう。
その症例写真には、妊婦の顔は写されていない。すると、私は腹部にのみ興奮しているということになる。これは異常であるが、私のなかでは避け難い興奮である。
8月□日(Aの日記より抜粋)
駄目だ。もう、このファイル虜になってしまった。毎日毎日、田中研究室に資料を取りにいくことが私の性欲充足のスタート地点になっている。"あの"写真をもっと見たい。そして、私はその写真を見ながら自慰にふけりたい。
第3章・田中教授の研究メモ(一部抜粋)へ続く