例えば、"白のなか"でのこと。作:空(sora)
第3章 田中教授の研究メモ
うたた寝をしていた田中はフッと目を覚ますと、ノックをされている事に気づいた。
「どうぞ。」…「佐野です。失礼します。」…小柄でいかにも“オカタそう”な佐野陽子が田中研究室に入室した。すると、田中は陽子に鍵をかけるように目で合図を送った。陽子の鍵をかける動作
は実に自然である。二人は、無言で研究室中央のソファに並んで座り込んだ。田中が、すっと陽子の胸に手を伸ばす。陽子も田中に身をまかせ、自らキスを求める。陽子の衣服のボタンを素早く外し、直に胸を揉む田中の息が荒くなっている…
佐野陽子は、医学部2年生である。入学当初、田中の公開講義に参加したことがきっかけで“目をつけられた”のだ。佐野陽子自身にとってみれば、田中との不倫ははじめての恋愛であった。田中の優しさと知的センスに惹かれ、誘われるままに体を許したのだ。その後、田中は巧みに陽子を操りSEXも1から教え込んだ。今では、すっかり田中の言い成りの存在になっていた。
時々“いじわるな視線”を送る陽子に田中がとまどうような事も起こっている。結婚願望…独占欲…佐野陽子にもそういった感情がふつふつと湧いてきていることを田中は悟っていた。
ソファの上でお互いの体をまさぐりあう前に、田中はアートブレイキーをかけた。隣の研究室に淫靡な音が漏れないようにである。電話のベルが鳴ったが、すぐ留守録に切り替わる。
「あっ…」と思わず声を漏らしてしまう陽子…田中の激しい愛撫に耐え切れず、ついつい声を出してしまう。田中は指で陽子をイカせる…
快楽に落ち、なまめかしく恍惚な表情をしている陽子に対して、田中は小声で言った。
「決心してくれたかい?」…「え?何ですか?先生」…「メモさ、読んでくれたんだろ?」
第4章 田中教授のメモ2
A君へ
これは訓告というか、いわば君の行為に対する注意、または警告だと思ってくれたまえ。君が私の作成した症例ファイルを非常に熱心に整理してくれるのは有り難い。しかし、そのファイルを見て、君がしていることはすくなくとも大学内ですべきことではない。一個人の趣味をとやかく言う権利はないが、君は少し異常ではないのか?スポーツやストレス発散を考えた方が良いのではないか?
しかし、医師にはよくあることなのだ。一部の器官に強烈に魅力を感じてしまう。それがいつしか性欲に発展してしまう。その対象が、例えば乳歯でも良いし鼻孔でも良い。それはその一個人の特別な性欲対象であってとがめられるべきことではないかもしれない。しかし、医師であるがゆえに起こるこういった異常性欲は、医師であるならば抑制しなければならないのだ。その道を君は極めて早く体験しているに過ぎない。つまり、結論はこうだ。君の異常性欲は必然的なものであったのだ。そして、それを抑制できるかどうかで君の医師への資格を試されていることになる。よく考えて欲しい。
T(8月○○日)
Aが田中の妊婦の症例写真を見て、自慰に耽っている事を田中は確認していた。Aはこのメモを読み愕然としたが、田中が教授会で報告する意図の無いことを知ると安心した。しかし、恥ずかしさと全てを見透かされてしまったようなどうしようもない絶望感は拭うことはできなかった。
それにしても田中のメモは意味深な点が多いことにAは気づいた。大学内でのオナニーをやめろという点と医師の運命的な性衝動に関する注意であるが、症例写真整理をやめろとは書かれていない。それどころか、メモの裏には整理スケジュール予定がビッシリ書いてある。今のAにとってみれば、症例写真が最高の“オカズ”でありこれ意外考えられないのである。Aはコピーをとり、自宅に持ち帰り再び自慰に使用することにした。
第5章 佐野陽子
佐野陽子が実験妊婦になるよう田中に迫られたのは、Aが症例写真ファイルの整理係になった頃であった。田中は妊婦研究をすべく、どうしても佐野陽子に妊娠して欲しいと頼んだ。非常識な頼みゴトであるが、なんだか佐野陽子には普通の事のように思えた。普通の医薬品権利獲得のために行われる人体実験と同じコトではないか?妊娠といっても、男性と関係するのではなく、“世界初の体外受精卵”の生存を導く実験である。やましいことはないと思い始めた。それが誰の精子で卵子であろうが、世界初の名誉ある実験に関わる事ができるのなら…と佐野陽子は田中からの実験依頼メモを何度も読み直し、ついに決心したのだ。
実験開始の日、佐野陽子とAは田中研究室に呼ばれた。
第6章 佐野陽子2に続く