黄雷のガクトゥーン-What a shining braves-(ライアーソフト)

 マルセイユ洋上学園都市。それがネオン・スカラ・スミリヤがやって来た土地の名前だ。なぜかは自分でもわからない。ただ、ここに来れば知りたい答えが得られる。そう確信していた。
 そして、現れる運命の男。その白い制服を身にまとった男はネオンのみならず、学園都市10万の学生を全て救ってみせると言い放った。なぜか、気がつくとネオンは男、ニコラ・テスラに銀貨30枚で買われていました。

 ライアーソフトの新作はスチームパンクシリーズの最新作。
 購入動機は同シリーズにしては敷居が低そうだと思ったのと原画もそれなり以上に気に入ったので。
 初回特典はフルカラー設定資料集&応援イラストとオリジナルサウンドトラック。予約キャンペーン特典はドラマ+アクセサリーボイスCD男の子用or女の子用。

 ジャンルはごく普通のアドベンチャーです。中途に出現する選択肢を本作では「例題」と呼んでいます。各章に2回出現し、問いかけを行ってきます。時間制限あり。2問とも間違うとゲームオーバーとなり、正解すればその数だけ章の終わりにサブエピソードを読むことができます。最後の選択肢は正解と同じ意味ですが、その代わりサブエピソードは読めなくなります。この内容はあくまでオマケ程度で読まなくても物語本体には影響を与えません。
 足回りは昔に比べればましになったものの、まだまだ物足りないレベル。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。しかし、アイキャッチ演出を飛ばすことはできません。また、この時スキップは停止してしまいます。それと「例題」になっても自動的に停止します。
 バックログは今時、珍しいウインドウ単位のみでそれほど戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。
 次の選択肢へ飛ぶ機能とひとつ前の選択肢、もしくは章の頭に戻る機能が用意されています。ただし、後者はひとつしか戻ることができません。

 シナリオは事実上、完全な一本道が章単位で構成されています。ヒーローものを扱っていますが、オープニングにエンディング、次回予告演出はありません。総じてスチームパンクシリーズにヒーローもの要素を持ち込んだ、という印象が強いです。よってヒーローもの的なお約束はあるようで意外とありません。
 主人公はヒーローとヒロインの2人制です。そのため語りはこの2人にとても偏っていて、その影響で他がやや薄く見えるくらい。良くも悪くも主人公であることを端的に示しています。
 主人公は2人ともボイス付きでよく喋り、加えてモノローグでやっぱりボイス付きでよく喋るのでテンポはもうひとつよろしくありません。CG表示(差分含む)の際に強制的にウインドウが消えることもそれを助長しています。
 蒸気文明を背景とした学園生活の日常は少し変わっていますが、用語辞典機能の手助けもあり順応はたやすいです。しかし、日常そのものはイベントも乏しく設定に比べると簡素であることは否めません。盛り上がりに欠けるシーンがちらほらと見受けられます。
 ヒーローものなので戦闘シーンはありますが、主人公が主人公なので燃え成分(描写)に対して過剰な期待は禁物です。筋書きがわかっていても面白いと思えるかどうかが分水嶺になるでしょう。
 惹かれあう過程は時間をかけてしっかりと描写されています。しかしながら、ヒーロー側は根本の動機が見えるようで見えないようなところがあります。
 Hシーンは本作では完全に蛇足です。総数で2回ないし3回(主観による)。同じ相手と2回以上なんて概念はありません。エロ度は語る必要もないほど。

 CGは高いレベルで安定していて120枚以上と枚数も豊富ですが、数字ほどには多く感じません(ミニカットを含んでいるせいもあるでしょう)。ただ、戦闘に関するものは意外なほど多くありません。特に主人公はバリエーションが少ないと感じるほど。
 立ちCG演出が一風、変わっています。画面左側に全身像を出して、右側にバストアップを表示します(それぞれ別のカット)。キャラによっては左側しか存在しないものもあります。さらに、フェイスウインドウを右下に配置しています。これにより同キャラの顔が一度に3つ並ぶという珍しい画面構成になっています。個性は感じますが、これでなくてはというものは感じられませんでした。標準的な配置に慣れているとしばらく戸惑います。
 ロボットとか出ますがアニメーション演出はありません。

 音楽は世界観に沿った渋めの曲で統一されています。いわゆるギャグシーンの曲、みたいなものはありません。テキスト通りというべきか燃えさせるような曲もありません。オーケストラ調で統一されています。
 ボイスは主人公を含めてフルボイス。各声優は役に負けない熱のこもった演技を聞かせてくれます。中でもヒロイン、ネオン・スカラ・スミリヤ役の一色ヒカルさんは素晴らしいの一言。まさに代表作と言っていいのではないでしょうか。

 まとめ。映画を思わせる作品。実際、2時間くらいで凝縮して見た方がより面白く感じそう。出来は十分なので相性が全て。
 お気に入り:エミリー・デュ・シャトレ、アンヌ・ベアール
 評点:75

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、ネオン・スカラ・スミリヤ
 一色ヒカルさん大活躍。さすがヒロインで主人公と書かれているだけあります。他が霞むほどの圧倒的な存在感。ちょっと重すぎるくらいに幅を効かせています。ひょっとして友人たちのキャラが薄いのは計算なんでしょうか。
 人間は環境に慣れる、ということを身も蓋もないほど体現したヒト。スタート直後の健気な姿は中盤以降、見る影もありません。人は幸せに慣れてわがままになるものなのね。
 マスターを恨む云々は正直よくわからない。まさか最後まで真相は知らないままなんでしょうか。そうでないならなぜ、あんなことを言い出すのか。少なくともいい大人が自分で決めたことでしょうに。まぁ、ネオンに関しては意志の確認的なものはない訳ですけど。
 どうでもいいですが電気魔人の関係者が飼う犬の名前がブランカって一体……。某ブラジル代表格闘家を連想してしまうのはひょっとして罠なんでしょうか。

2、ニコラ・テスラ
 ガス欠以外に弱点がない無敵超人。ゆえに必殺技が幾つあってもまるで意味がない。カッコつけてもあまり響くものがないのはちと悲しい。手を出す出さないの境界線がまるで不明。別段、ストイックでもないというあたりがよくわからない。

3、アンヌ・ベアール
 鉄の女。まさかのHシーン一番手。もちろん、アレをそうと呼ぶなら、ですが。最も色っぽくギャップもしっかりと出ていました。もうちょっと出番があったらねぇ。めちゃめちゃ触手ゲーに出そうなキャラ。

4、イズミ
 ネオンの友人。色々と思い悩むが作品にはなんら関係ない。結局、ネコミミキャラってことでいいんでしょうか。ひょっとしてスチームパンクシリーズ経験者はニヤニヤできるところなのか。

5、アナベス・ウィリアム・マードックJr
 テスラの正体に気付くということが最大の存在意義。逆に言えばこれがなければ登場に意味は少ない。尋常ではないほど胸が平ら。

6、キザイア・メースン
 どうやら魔女らしい。けれど、なぜテスラに味方するのかは一切不明。これも、スチームパンク(以下略)。

7、ウィルヘルム・ライヒ
 黒幕ぶっているが悲しいほどに前座の前座。他人をそそのかす方によほど才能がありました。

8、ヴァルター・リッツ
 本作の狂言回し。テリーマン現象が起こらないのがいっそ不思議なほどでした。

9、ベルタ・モリ・ヴィーゲルト
 詰まるところ、女であることは統治会メンバーはみんな知っていたんでしょうか? ベルタだけ気付かれていないと思っているような。
 思えばシナリオ的にこのへんが最大の見せ場だったような気も。

10、フロレンス・アメギノ・ナイチンゲール
 心配するだけで全く何もしない人。と思ったら最後の最後で出陣。でも、やっぱり意味はなかった。で、ロボって一体なんなんですか。

11、ジョセフィン・マーチ
 妹のことがサッパリわからない。どこからどう見ても毒妹という感じでしたが、あっさり解決しているし。そんな簡単な溝には見えなかったですよ? テスラはあまりにもいい迷惑でしたなー。

12、エミリー・デュ・シャトレ
 やっぱり、テスラと戦う意味がわからない。ルイとのくだりはなんだかちょっと変な感じ。相手がテスラである方がすっきりして良かったのでは。絶対強者であるからこそ支配者として勝たねばならない、というような。それにのちの伏線と繋がっていないような。それならルイも片目が黄金瞳でないと。
 戦闘服の背中がエロ過ぎます。ひとりだけ犯罪レベル。風紀委員は何をしているのか。