愛cute! キミに恋してる(ぱれっと)

 学園にはひとつの恒例行事があった。それはひとつの石が起因となっている告白イベント。世にバレンタインデーがあってもこの日、12月1日に告白する者は多い。冬條陽平(変更可能)は期せずして5人からの告白攻勢に遭う。その中には義姉も含まれていた。
 陽平は複雑だった。寄せられた好意は嬉しいが彼にはひとつの義務があるからだ。告白イベントの前に現れた妖精チョコ。他人にはけして見えない存在は陽平が恋を成就すれば人間になれるという。果たしてチョコのために恋をするべきなのだろうか。

 ぱれっと第3弾は再び純愛方向に戻っての学園モノ。とすると次作は再び凌辱方向だったりするんでしょうか。今回も原画はたまひよ氏に初回特典はサントラとすっかりぱれっとのスタンダードになりつつあります。
 購入動機は一応、ブランド買いになるんでしょうか。1作目より2作目の方に魅力を感じたので購入リストから外さず、押さえておいたというのが正直なところ。

 アップの前にゲームを終えてしまったので詳しくは不明ですが、修整ファイルが公開されています。誤字などが直されているようです。

 システムは基本的にはごく平凡なアドベンチャー。わずかに変わったところではヒロインとの会話システムが挙げられます。まずチョコに内偵してもらうヒロインを選択。ここで個別ルートは決定され、あとはどう頑張っても他のヒロインのルートへは進めません。
 序盤のヒロインとの会話を3択で5~6問、これを数日繰り返します。毎日ひとつチョコに調べてもらった情報が役立ちます。ここで充分に好感度を上げておかないと忘れた頃に問答無用で急転直下のゲームオーバーに。好感度はプロフィールで確認できます。
 このシステムがかなり微妙です。選択肢の内容は「話題」が表示されるんですけど、この「話題」をどう使うかは選んでみるまで本当にわからないため、推測などまるでできずほとんど無意味です。また、当然のことながらこの期間だけQ&Aのような問答をヒロインと繰り返すのは物語として見た場合に明らかに不自然です。なぜ、このシステムを用意したのかがわかりません。無理にゲーム性をもたせようとしたとしか思えないのですが。
 足回りは相変わらず進歩というものが見られません。メッセージスキップは既読未読こそ判別してくれますが、そのスピードは遅めで毎日の日付表示も高速化されません。ボイスの頭出しも改善されておらず。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。ホイール非対応、ボイスのリピート再生もなし、戻れる量も少ないと良いところがありません。ブランドも3作目ですし、そろそろ向上を願いたいところ。
 おまけとしてシナリオクリア後に各ヒロインの後日談的Hが用意されています。その内容の是非はともかく、名前を変更していても主人公の名前がデフォルトネームのままというのはどうかと。付け加えるなら2周目以降もいちいち名前を設定しなくてはならないのは不親切。

 シナリオはシリアスパートとギャグパートに大きな乖離が見られます。恐らくはシナリオライターが二人いる際の悪影響がそのまま出ていると思われますが、同じ物語とは思えないほどノリに差があります。
 5人から告白されるまでは賑やかなドタバタ劇に時折、マニアックなギャグが入るといった感じですが、それ以降は180度方向を転換してシリアス一辺倒に(除く佐伯亜里砂シナリオ)。会話のテンポも軽快から鈍重へと切り換わっていきます。
 あらすじにもあるように中盤以降は恋の在り方とそれに望む姿勢について終始、理屈を最優先してストーリーが進みます。理詰めっぷりは徹底されていてHシーンまでそれが貫かれています。エロスとはどこまでも無縁。
 本作の特徴といえば紛れもなく妖精チョコ。これが特徴という言葉に相応しい縦横無尽の活躍をしてくれていて、それがゆえにプレイヤーの反応を真っ二つに分けそうな勢い。
 主人公以外には見えないチョコは誰に対してもやりたい放題。直接、相手に触って影響を与えることはできないものの、人間と同じ食事をしたり無機物を動かせたりと中途半端な干渉力を持っています。例えばヒロインのスカートを気分でめくるとチョコの姿は見えないので必然的に(?)に主人公がセクハラをしたことに。これを複数回とか。
 また、チョコはゲーム開始時において何も知らないので人間の心の機微を学んでいきます。その過程では主人公とその義姉が多大なる迷惑を被る訳ですが、彼らの教育方針はいつでも同じ。自分たち以外に類が及ぼうとも答えは変わりません。つまり、
 「悪気がないのだからしょうがない」
 と、それで全てを押し通します。これに同意できるか否かが本作の印象を決定づけるといっても過言ではありません。私見では主人公姉弟はペットを飼ったりしない方がいいと思います。迷惑だから。
 ちなみにチョコの成長は全てのシナリオにおいて欠かせない要素として組み込まれています。つまり、一人のシナリオが終わったらまた最初からやり直しということです。個人的には忍耐力を養っているかのようでした。
 ゲームをしばし進めると気がつくことですが、本作は主人公とチョコ、それにヒロインを見守るゲームです。システムのところで少し触れましたが、プレイヤーはゲーム冒頭でヒロインを決定しなければならないのに対し、主人公はずっと悩み続けます。そんな選択などなかったも同然のものとして。必然的にプレイヤーと主人公の間には距離が生まれ感情移入することが難しくなります。
 主人公とヒロインが惹かれ合う様子にも厳しいものがあります。常に受け身でヒロインよりもチョコを優先する主人公。そもそも考えながら好きになる過程に無理があります。またそんな主人公に惹かれるヒロインにも。

 CGは前作とは打って変わっての明るい塗り。ゲームの雰囲気に合わせた的確な彩色にスタッフの実力を感じます。イベントCGは90枚弱とまずまずなんですが、あまり数字ほどの多さを感じないのは不思議なところ。
 立ちCGはぱれっと伝統の横向き、後ろ向きを交えてくるくるとよく動き回ります。表情、ポーズとも性格を表してよく変わってくれます。ただ推理モノであった前作に比べると若干、横向きは不自然な気も。それと喫茶店での扱い。他ゲームにおいても喫茶店で座った状態で立ちCGで演出、ということはありますけど、それほど違和感は感じません。しかし、本作のように後ろ向きを見せられるとさすがに拭いきれない違和感が。

 音楽は意外に、と言っては失礼かもしれませんが、バリエーション豊か。実に聞き応えのある曲が揃っています。1作ごとに確実な成長が見られますね。しかし、ゲーム中においては特定の曲ばかり聞いている印象がありました。個人的には主にギャグシーンで流れる犬や猫の鳴き声を使った「猫の猫じゃらし」という曲が面白かったです。
 ボイスはヒロインのみフルボイス。演技は安心の有名どころが担当しています。相変わらずぱれっとのキャスティングは固いです。

 まとめ。良くも悪くもチョコが全て。チョコを許容できるなら構成にも光るものがある佳作なんですけど、それができないと非常に苦しいです。理屈っぽいところも我慢できなくなる可能性が。
 お気に入り:特になし
 評点:53

 ヒロインにあまり深い思い入れが持てなかったのでキャラ別感想はなし。