朱-Aka-(ねこねこソフト)

 謎の存在ルタによって異能を授けられたアラミスとカダン。眷属と呼ばれる身になった2人には課せられた義務があった。それは定められた人々を異能なる力をもって還すこと。2人はただそのためだけに砂漠を渡る。

 「ねこねこファンディスク」以来、1年5ヶ月ぶりの新作。純粋なオリジナル作品だと「みずいろ」以来、2年2ヶ月ぶりというロングスパンになります。
 初回特典はねこカラーという小冊子とゴールドサントラディスク、それにいつものねこ缶もついてます。豪華なんだかそうでないんだか微妙なところです。DVD版にCD版3枚組が同梱。しかも、すべてカラーピクチャーディスクというあたり強いサービス精神を感じます。まぁ、その延長として修整インストールディスクもついてますが。
 購入動機はメーカー買い。ひたすら恩恵を受けるだけではありますが、ファンクラブにも入っているんで。
 
 バグではないようですが修整ファイルが出ています。これは初回版発売までに演出などを見直したアッパーバージョンのようです。通常版には織り込み済みなのであてる必要はありません。

 システムは「銀色」に準拠したビジュアルノベル。映画を意識した作りというのも共通で画面の上下をカットしたシネマサイズ、字幕ならぬテキスト表示も2行固定になっています。ルート分岐なく一本道であることも「銀色」譲り。これはもうねこねこソフトのスタイルなんでしょうね。しかし、二ヶ国語機能だけはなくなっています。やはりユーザーの声が反映されたのでしょうか。「銀色」よりもむしろ本作の方が向いていると思いますが。
 足回り。NScripterを搭載しています。ねこねこソフトはいつもコレですね。それなりに有用ではありますが、さすがに2003年ともなると進化がないのは厳しいです。
 メッセージスキップは早くもなく遅くもなく。いつものように既読未読を判別しません。まぁ、「銀色」以上に選択肢に意味がないのでそれほど困ることもないと思いますが。
 メッセージの巻き戻しは1クリック単位で行います。ロード直後にも使えるのは便利なんですが、残念なことに戻れる量が絶対的に少ないです。ボイスの再生も出来ません。ホイールマウス対応になったのが唯一の加点でしょうか。
 特別なことはしていないと思うんですが、足回り全般がもっさりしています。どうしてそんなに、というくらい反応が鈍いです。おかげでオプション項目の使い勝手が悪いのは明らかなマイナス。

 シナリオは「銀色」からは信じ難い出来になってます。
 物語を構成するに置いて最初に必要なのはプロット。この段階ですでに失敗しているのではないか、というほどの惨憺たる内容。人が行動を起こす動機、それを側面から支える設定、張りめぐらせた伏線、そして辻褄合わせ。それらが全く体現できておらず説得力は皆無。どうしてこうなってしまったのか、まさに疑問。「銀色」、「みずいろ」時代とはいくらかスタッフが変わってますが、それがこんなにも影響したのでしょうか。
 全編通してまるっきり盛り上がらず淡々と進む様はまさに脅威の一言。作っていてスタッフはこれを面白いと思ったんでしょうか。
 テキストも全体的に冗長の一語に尽きます。砂漠を旅する描写が退屈なのは間接的に砂漠の辛さを体感させるという超ポジティブ思考でフォローするにしても、会話が拙すぎます。特に第4章序盤は目を覆わんばかりの酷さ。
 Hシーンは全て取ってつけたような内容で唐突さがどのシーンでも目立っています。するのかどうか知りませんが、コンシューマーに移植する時に便利そうです。まぁ、恐らくはそんなことを考えてこうなったのではないというあたりが悲しいところ。
 おまけとしていつものがあったりしますが、こちらの方が遥かに楽しめたのが微妙さをより一層、際立たせています。

 CGはさすがに素晴らしい仕上がり。確実な進化が見えるのは好印象。過去シーンのCGもCGモードではフルサイズ、フルカラーであるのは嬉しい配慮です。しかし、シナリオの盛り上がらなさもあって印象に残るカットが少なかったように思います。
 立ちCGのポーズ変化はあまりありませんが、表情はよく変わってくれます。

 音楽はFeelにI’veと異常なほど豪華。実際、音色はかなりいいのですが不思議なほど心に残りません。シナリオのせいもあるでしょうが、環境音楽っぽいのが原因でしょうか。
 ボイスはいつものメンツに加えてサブキャラの担当が曲同様に豪華。北都南さん、鳥居花音さんなど他作品なら主役級の名前が並んでいます。よってレベルの方は全く心配ありません。
 1周目はヒロイン、アラミスがデフォルトで無音になっています。テンポ重視がその理由だそうですが、それなら全員無音にするべきだと思います。2周目からは選択制。

 まとめ。それはそれは絢爛たる張り子でした。度肝を抜かれるほどに中はスカスカ。メーカーへの信頼度が高いほど失望も大きいでしょう。まさにありえない出来かと。おまけの方が10倍は楽しめました。
 お気に入り:そういうレベルに到達しておらず。あえて挙げればやかま進藤たん(え?)
 評点:30

 キャラ別感想とかシナリオ感想とか書く気力が起きません。書いてもなんか虚しいだけですし。