赤さんと吸血鬼。(ALcotハニカム)

 寮暮らしの西桐悠(変更不可)が息抜きに夜の学園の屋上にやって来ると、そこには金髪と銀髪の見慣れぬ先客がいた。どう見ても怪しかったが自分も人のことは言えない。果たして2人は自分と同じ転校生であった。しかも、寮まで同じという。担任教師が食事を作って総勢5人しかいないアットホームな寮暮らし。ある日、2人に負けぬ爆弾が現れた。それは悠の子供ではないかと疑惑の赤ん坊であった。

 ALcotハニカムの新作はタイトルがそのまんまジャンル名なアドベンチャー。
 購入動機は企画が面白そうだったので。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典はマキシCD。

 ジャンルはごく普通のアドベンチャー。
 足回りは及第点クラス。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが、それほど高速ではありません。選択肢間も長いので暇つぶし道具があった方がいいでしょう。前の選択肢に戻ることも次の選択肢に飛ぶこともできません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能で、いつでも最初まで戻ることができます。ロード直後にも使用可能。バックログ画面では文章にカーソルを合わせるとその場所の画面が透けるように再現されます。また、そこにジャンプすることが可能です。
 カーソルを画面右下にもっていくと各種メニューが出現します。これが普段は邪魔になることなく必要なときだけ活用できるのでなかなか便利です。

 本作はヒロインこそメイン3人、サブが2人いるものの実質的に一本道なシナリオです。よって2周目以降は驚異的なスピードで消化されてしまい、あっという間に終わってしまいます。個別シナリオと呼べるほどの差異はありません。強いて言えばHシーンがそれにあたるでしょうか。全体のボリュームは乏しく、かなり食い足りない感があります。
 詳細は省きますが、シナリオ上では未来の因子が影響を与えることによって現在に揺らぎが発生しています。これが何を示しているかというと惹かれ合う過程が一切、全くもって存在しません。そういう設定ということになっています。なので唐突に初めてのHシーンが(2回目以降も)発生しますし、4股になることもまた当たり前です。よって修羅場も発生しませんし、おかしいとも感じません。そういう公式設定だからそれでいいのです、きっと。
 イベントはぶつ切りが基本です。前後が繋がるということが稀で、なかなか連続したお話が起きません。よってせっかくキャラクターが立っていてもそれほど印象に残りにくいです。これはHシーンにも同じことが言えます。とにかく話題を引きずるということがなかなかありません。そのせいもあってか、日常はいささか退屈気味です。赤ちゃんの世話をするという一大イベントもあまりアクセントになっていません。すぐに当たり前の日常に沈んでしまいます。
 Hシーンはそこに至る過程が全省略なのでエロさを感じるのはちょっと難しいです。

 CGはシナリオに反して良い味を出しています。細かい衣装の差分などもきちんと用意されていたりして好印象です。性格が見えるようなイベントCGはどれもなかなかに見応えがあります。ただし、その枚数は差分抜きで80枚とお世辞にも多いとは言えません。
 Hシーンはテキストが足を引っ張っている影響もあってそれなりに、というところ。エロくない訳ではないのですが、前後の文脈がほとんどないとなるといささか厳しいものがあります。

 音楽は場面に応じた曲がしっかりと用意されていて、意外にも(?)しっとりした曲なども用意されています。ただ、シーンの選曲という意味では時折、首を傾げたくなるようなことも散見されました。状況の割りに大げさすぎるのではないか、と感じることが何度かありました。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。狙いが見えない作品。奇しくもパッケージデザインのライトノベルのような作品になってしまいました。1、2冊の短編で終わるような。正直、ライトノベルとして発売してもあまり売れるようには感じられません。企画してデザインしたのがもったいないように思います。
 お気に入り:特になし
 評点:55

 こんな感じなのでキャラ別感想はありません。