暁の護衛(しゃんぐりら)

 朝霧海斗(変更不可)は所属するボディガード養成校をやめるつもりだった。どうしたって自分のいるべき場所ではないと感じていたから。しかし、偶然と気まぐれが全てを変えた。誘拐されかかっている二階堂麗華を救ったことで再びその道に戻ることに。

 しゃんぐりらの新作はお嬢さまを守る護衛ものアドベンチャー。執事ものとの差が取り沙汰されるくらいジャンルとして増え始めてきています。
 購入動機は原画に惹かれて。ブランド自体はよく知りませんでした。
 初回特典はビジュアルブック。予約キャンペーン特典はボーカルCD。

 ジャンルはごくごく普通のアドベンチャー。
 足回りは平均からやや下回るくらい。メッセージスキップは基本的に既読未読を判別して高速ですが、稀に未読部をスキップすることがありました。ごく微量ですが。選択肢が多いので選択肢後にスキップが継続しないのはなかなかに不便です。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが戻れる量はそれほど多くはありません。ロード直後にも使用可能です。
 スクリーン設定のみコンフィグ情報の中で記憶されないので、フルスクリーン派は起動の度に変更せねばならずとても面倒です。

 シナリオは実に未完成風味。プロットを作成し、その通りに執筆したとは到底、思えない内容です。起承転結のうち「起」、「承」と書いたところでスケジュール的にとても間に合わないことが発覚し、そこから残り時間で無理矢理まとめて「転」、「結」を書いた、そんな仕上がりに見えます。
 序盤は微妙にキャラが動き出していないような節があり、活き活きと動き出した中盤以降に入ると物語的に密度が薄くなり、あっという間に失速して着地、終幕です。シナリオのボリューム自体も乏しく、とても食い足りないです。
 構成は微妙にクセがあります。意図の不明な説明的文章が各所にあり、ヒロイン不在のまま延々とサブキャラとの会話が綴られたりすることも。日常の掛け合いは温度差が見られ、中でも笑いは特定のキャラに偏っている印象があります。
 上述した理由からと思われる伏線放置は随所に。欠けたピースが多すぎてすっかり謎になってしまっているサブキャラも数人います。シナリオ単位で見ても全体的に描写不足。神崎萌シナリオなど手段が目的になってしまっています。結果として護衛ものである意義もほとんど感じられません。護衛対象者であるヒロインの立ち位置も霞んでしまっています。
 こんな有り様ですから惹かれ合う過程は基本的に見当たりません。あっても探して見つけなければならないレベルです。
 Hシーンは平等に各ヒロイン3回ずつ。ここでも未完成具合が感じ取れ、スタッフロール後にAパート、Bパートと分岐が発生。尺がとても短くすぐに終了してしまいます。とてもじゃないですがエロ度が高いとは言い難いです。

 CGは単体で十分、売りになりうる美しさ。原画買いの人間の期待にしっかり応えてくれるかと。ただ一点、サブキャラも含めてキャラクターデザイン的に似た顔を揃え過ぎたように見えるのが気になるところ。
 立ちCGはポーズ変化は少なく表情で勝負する方向性。題材を考えるとあまり動きの感じられないカットが多いようにも。
 HシーンはAパート、Bパートと分かれている割りには同じ行為や雰囲気のものが多く、ややバリエーションに乏しいように感じます。

 音楽は場面に応じた曲が用意されていますが、その肝心の場面の変化が小さいので必然的に小さくまとまっているように感じやすいです。曲数ほどの多様さは感じ取れませんでした。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。基本的に演技の方は問題ありませんが、一部のキャラはHシーンになると別人のようになります。これが果たしてギャップを狙っているのか、それとも単に声優の特性なのかがわかりません。

 まとめ。ファンディスクで補填するにも欠損が大きすぎる作品。すでに基本的な筋書きは書いてしまっているので100%のフォローは無理。エロ重視のお手軽作品でもないのでコストパフォーマンスもかなり悪いです。素材がいいだけに実にもったいなく感じます。
 お気に入り:ツキ
 評点:58

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、二階堂麗華
 彼がスズメの味を教えてくれたから好きになりました。や、冗談抜きでそれぐらいしか理由が見当たらない。なんともすごいかっ飛ばしぶりでさすがに唖然とせざるを得ませんでした。こういうヒロインってなかなか陥落しないところがポイントだと思うんだけどなぁ。最後にまわしたことで少しはましと感じられたかも。他シナリオではそれなりに冷たく厳しかったし。もし最初に攻略していたなら……。
 尊のタメ口特訓イベントや翻訳機の無駄借りイベントなど意味を感じられないものが多いような。ヒロインは出ないし、笑いどころとも思えないだけにこれは本当になんだろう。

2、二階堂彩
 最も印象が薄い。キャラ的には好きなタイプなのですが、シナリオがシナリオだけにどうしようもない。まぁ、彩の方は見たことのないタイプに興味を持つ、という最低限の動機づけがあったからまだ良かったかな。主人公の方は選択肢ゆえとしか言いようがありません。

3、倉屋敷妙
 アホの子という言葉がピッタリですが果たして可愛いと思えるかどうか。本作の中ではひとつの踏み絵のような役割かも。彼女が気に入れば嫌いなキャラはあまりいないのでは。
 母の方が存在感もキャラも抜群というのは禁句。ヒロインとしてあまりに不憫。
 オチで主人公が読んだ書物は同人のドラえもん最終回。

4、神崎萌
 懐かしいネタでアレですがプレイ後に最初に思い出したのは来栖川芹香@ToHeartでした。意外と共通点が多いデスヨ? 特に終盤で暴走するようなところは実によく似ています。
 どうして屋台を作ろうなどと思ったのか、その件はスッパリと忘れてしまいましたとさ。というか、手段が目的になってしまったんですな。
 Hシーンは全くキャラというか声が違うのですがこれは仕様ですか? ギャップのつもりなのか、それとも声優の特性だから致し方ないのか。

5、ツキ
 全てのボイスを聞いたのはツキさんだけでした。ネタ会話が実に面白い。笑いの9割は彼女が提供してくれたものです。まぁ、裏面を考えるとちと微妙なんですけど。どうして主人公相手ならそんな会話ができるのか、とか。
 設定に最も意味があったのは皮肉にもお嬢さまではないツキさんでした。他は本当に意味を乗せられていないからねぇ。

6、南条薫
 ルートを入れるならHシーンを入れましょう。なんですかエンディングのCGは。腰抜かすかと思いましたよ。まさにジャンプの打ち切りパターン。