甘夏アドゥレセンス(Confiture Soft)

 宮地アキラ(変更不可)は軽音部の一員である。楽しければそれでいい、けれどもやってはいけないこともある。ある日のライブで持ち込んだ火炎放射ギターは威力が激しく校舎まで燃える事態に。軽音部は廃止となったが無論それで黙っている彼らではなかった。

 Confiture Softのデビュー作は軽音部がロシアまで行くアドベンチャー?
 購入動機は他に目ぼしいものがなかったので。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典は風見塔学園軽音部ミュージックエビデンスCD。他にも前期と後期の色紙2枚ずつあったようですが、購入店舗が対象店舗ではありませんでした。

 修正ファイルが出ています。それほど重要な内容ではありませんが念のため、あてておきましょう。

 ジャンルは毎度おなじみのアドベンチャー。
 足回りはデビュー作らしく香ばしい仕上がりです。メッセージスキップは既読未読を判別してくれません。スキップアイコンをクリックすればどこまでもすっ飛んでしまいます。なぜか、「前の選択肢へ」戻ると「シーンの最初へ」戻るという一方通行的な機能だけ充実。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、ほとんど戻ることができません。ミスクリックの読み直し程度にしか使えないでしょう。任意の場所に戻るジャンプ機能もありますが、戻れる範囲が狭すぎるので宝の持ち腐れです。
 「前回の続きから」といういわゆるコンティニュー機能がありますが、これをわざわざ「終了したところから始めますか?」と確認する意味はあるのでしょうか。まず間違いなくクリック数を減らすのが目的で作られた機能なのにそれを戻してしまってはあまり意味がないような……。
 メッセーウインドウを消してクリックするとその場所を中心に画面がアップになるという謎の機能があります。わざわざ用意した割りにはあまり拡大されませんが。
 1周目を終えると開放される鑑賞モードの「エクストラ」でなぜかクリアしていないヒロインまで全開放になりました。

 シナリオはロックを嗜む軽音部らしく(?)非常に無軌道な感じで展開されます。イベントひとつひとつの尺がとても短く、次から次へとせわしくなく物語が進行するのでおおよそ説得力が足りていない部分が目立ちます。その短さのために伏線が伏線になっていないくらいです。また、純粋に日本の軽音部とロシアの反政府組織というメインの組み合わせが無茶すぎて斜め上の展開が標準となり、どう頑張っても苦しくなってしまいます。困難に対して主人公たちがほとんど何もしていない、またはそう見えるのも気になるところです。
 惹かれ合う過程はヒロイン側にほんの少しあるような、程度なので期待は禁物。主人公は受け身で反応するのみです。
 Hシーンは各ヒロイン平等に4回ずつ。エロ度はそれほど高くありません。

 CGは差分抜きで80枚と寂しい感じです。Hシーンの方に優先して回すことで枚数の少なさをフォローしていますが、一部の絵に怪しいところがあったり、純粋に意図不明なカットがあったりとデビュー作らしさが出ているように見えます。原画家が2人しかいないのに主人公が(デザイン的に)何人もいるように感じるのは斬新すぎます。SDカットはその最たるもので、ほとんどが特定のキャラのアップで構成されていて、これなら立ちCGで十分に代用が利きそうと感じられるものが多いです。

 音楽は第一印象で変わった曲が多いというイメージを受けます。これも題材のせいなのか、あまり聞き慣れないノリに戸惑うこともしばしばありました。また、エンディングは各ヒロインによるボーカル曲となっているのですが、一部の曲は完全にカラオケと化していてしんどいものがありました。もう少し人選を考えた方が良いのではないかと思います。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。題材通りロックすぎる作品。これをなんとか形にしたのは凄いのかもしれませんが……。なんともフォローするのが難しいです。コストパフォーマンスが悪いのも厳しいところ。素直にもっとがんばりましょう。
 お気に入り:特になし
 評点:50

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、日向ナツ
 主人公枠とでも言うんですかね。根拠不明の持ち上げ感を彼女からは感じます。黙ってても無視するなよ、主役だから、というような。ま、実際バンドの中心ではあるので(ボーカルだし)シナリオ中でリーダー論が出た時には違和感がすごかったです。実際、ライブCGでリーダーのはずの主人公は映っていないし。冒頭のではいたのにねぇ。でも、あれは放火魔みたいな役割のためだしなぁ。なんだか不憫です。

2、サーシャ・マヤコフスカヤ
 最初に「あなたたちの演奏は音楽じゃない」とか言っていたのに、その真相がまさかのコミュ障気味で基本から外れることを一切、認めないから、というのはなんとも肩すかし。なのでとてもなぁなぁな感じで解消されてしまうお粗末さ。
 シナリオがおかしい理由の大半は彼女の存在そのものにあります。シナリオライターの好みなのかは知りませんが、全体的に特に必要のない要素。面白さに貢献していないゆえに。違う意味の面白さにはバッチリ繋がっていますが。
 声優のキャスティングで期待した人にも残念な感じ。

3、朱雀野リョウ
 どう見ても万能型で面白味に欠けるリョウよりも、いじられキャラ全開の雅姫の方がヒロインとして向いています。実際、立ちCGのリアクションの激しさは全キャラ中でも随一では。せめて、ラストはお言葉に甘えて彼女を好きにさせてもらえば良かったのに。なんとも無駄遣いが光る作品です。
 サーシャシナリオの悲願がこちらであっさり達成されているのはいかがなものか。こういうのは本人のシナリオでのみにするべきでは。それにしても、いくら失敗前提とはいえ、大統領夫人が来る会場でゲリラライブって命がいらな過ぎでしょう。大統領の権力が~、とか書いておいてそれはないような。

4、甘粕天音
 ひとりだけこの体型、ひとりだけ完全な素人、ひとりだけ科学部。どう考えても浮いてます。ついでにシナリオがおかしい理由の第2位は彼女の存在。音楽と全然関係ない。ドラムができるというか、やるようになる理由が振動が気持ちいい、だものなぁ。さすが彼氏と会った後の夜の学園でひとりオナったり(すでにHもする間柄なのに)、反政府組織を正論であっさり説得する天才は違いますね。