僕はキミだけを見つめる-I gaze at only you-(inre)

 かつては歌舞伎町最大の少年グループのリーダーであった佐原拓実(変更不可)。だが、今ではその影もなく拓実も孤児院時代からの仲間を失って狙われる身。かつての恩師の情けで生きているような彼にひとつの依頼が舞い込んだ。それはとある人物の護衛。その人物を狙っているのが仲間を殺害した相手と同じだと知った拓実は依頼を受けることを承諾する。

 inre第3弾は同人時代に発表した作品のリメイク。
 購入動機はinreの今後の方向性が気になったから、なのですがリメイク作品なので保留になりました。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典はオリジナルマキシCDと永遠のマウスパッド。残念ながら後者は購入店舗の関係で実物は見ていませんが。
 12/24にミニシナリオが公開に。こういうサービスは嬉しいですね。

 ジャンルはアドベンチャーノベル。選択肢が本編には存在しないのでゲームとは言えないでしょう。
 足回りは今回もほぼ同じ。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。ただし、すでに書いたように選択肢がないためあまり使用機会はありません。今回もプレイ開始直後に体験版パートをスキップするか確認してきます。プレイした人間には親切でしょうがそうでない人間には出鼻をくじかれる感じですね。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能でそれなりに戻ることができます。やっぱり、ロード直後には使用できません。ノベルだけにこのあたりは改善して欲しいところですがなかなか難しそうです。

 シナリオは章構成の一本道。章が終わるたびにタイトル画面に戻る仕様です。そのせいなのかはわかりませんが、舞台も頻繁に変わり小気味よく進んでいきます。
 登場人物の謎を少しずつ開陳していくスタイルは純粋に先が気になります。ついつい止め時を見失いがちなのは構成の巧みさでしょう。テンポの良さもあってするすると読めてしまいます。
 日常の掛け合いはそれほど人数は多くないながらも実に賑やか。扱う題材の割りには笑いも多めに投入されています。
 戦闘シーンは思ったよりも少なく「ChuShingura46+1-忠臣蔵46+1-」から期待しているとちょっと残念な要素かも。
 惹かれ合う過程はかなり苦しいものがあります。少なくとも恋愛過程を楽しむものではないでしょう。特にメインヒロイン以外はバッド扱いだけど付けました、というくらいの内容なので好きな人には悲しい仕上がりです。
 Hシーンは変わることなく、ここのウィークポイントです。頑張りは感じますがあまりエロさは感じません。むしろバッド気味の2人の方が無理矢理さが逆に作用してましになっています。
 元が同人作品ということもあってボリューム的には追加シナリオを含めても控えめなくらい。inreの作品をプレイしてきた人にはちょっと物足りないものがあるでしょう。

 CGはinreの得意部門と言ってもいいくらいになってきました。相変わらず可愛らしさとシリアスさの融合がとても良い按配です。ただ、今回は戦うヒロインではないので役割はヒロインと主人公に分かれましたけど。立ちCGの豊富さは今回も変わるどころかよりパワーアップしています。ボリュームの関係上、総数では負けるかもしれませんが、こんなことにも用意しているのか、と驚くくらい些細なことにも用意されています。これを使った動きの演出も鮮やかで高い効果を上げています。また、よく見ると懐かしい顔がモブキャラを務めていて、ファンサービスと手抜きを両立させるという高等テクニックを使っています。
 Hシーンは可愛らしくがメインです。エロ度はあまり期待してはいけません。アニメーションはなくなりました。

 音楽は後から用意したせいなのか、それとも作るところが違ったからなのか、なんとも地味です。ボーカルはまだしも普段のBGMは作品の雰囲気に比べて驚くほど印象に残りません。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。各キャラしっかりと聞き応えのある演技を披露してくれます。起用声優さんの関係上でも「ChuShingura46+1-忠臣蔵46+1-」を思い出しやすいです。

 まとめ。フルプライスには物足りない作品。中編というのが正直なところなので、もう少しボリュームが欲しかったです。inreの実力を知っているからこそそう感じてしまいます。完全新作には長編と呼べるくらいの尺をお願いします。
 お気に入り:真名瀬莉亜、一色零美
 評点:65

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。








1、風早永遠
 これだけ特別に強い輝きを持ったヒロインが主人公のことを最初から好き、というのはやはりちょっと肩すかしというか、もったいない気がします。徐々に惹かれていった方が物語としても盛り上がるような。特技である歌を実際に歌うのが難しい以上、もうひとつ何か欲しかった、とは贅沢でしょうか。

2、森戸美夜
 最初の方で気に入らないように見える態度で主人公を見ているところに特に意味がないのが残念。そりゃ、想い人ではあるでしょうけど、睨みつけるような、という部分にフォローがないのは頂けないです。目つきが悪いのは生まれつきなのに、みたいな嘆きがあるとなお良かったように思います。いかにも何かあったけれども、そのために具体的なイベントはないという悲しさ。計算通りの配役の悲哀ですな。
 瑠璃に会っていたのはちょっと都合が良すぎるような気がしますよね、やっぱり。

3、真名瀬莉亜
 パッケージ裏の立ちCGが銃を構えているカットである、というのが莉亜の全てを表していると思います。きっと出版業界でもアレでモノを言わせているに違いないと思います。1年間で上になりすぎでしょ。基本、後輩はいないかできたばかりのはずなのに。
 声優が有栖川みやびさんということでご城代のイメージが半端なく溢れていました。

4、片瀬郁乃
 せっかくの裁縫スキルで主人公の戦闘服を作ってもほとんど触れられることはなかったですね。なら、でかい刃物を使えばいいじゃん、って郁乃視点からするとさぁ……。
 もはや妬み嫉みのネタにしかならない貧乳。瑠璃に負けているあたり、しかもそれを勝っていると言い張るあたりなんとも悲しい。仕方ないとはいえ、2人ともバッドエンド的であるのが残念。

5、視音
 こちらもパッケージ裏のポジションが露骨におかしい。なぜ、あなたがそこに立っているのか。唯と同じ枠であるはずなのに。

6、一色零美
 これは何かの呪いなんでしょうか。小倉結衣さんに何かあるとでも言うのでしょうか。無理矢理、用意したようなHシーンが他のメンツも多いというのになぜ、彼女にはないのか。最後も出番があるのにあれではねぇ。ラストのイベントCGが脇役感を遺憾なく発揮していて切なくなります。
 追加のミニシナリオも悲しくなるような内容で可哀相すぎました。