ぼくらがここにいるふしぎ。(ルージュ)

 新一はなんの変哲もない、あえて言うならちょぴっとへなちょこな青綾学園一年生。五年前、彼は、幼なじみの珠子と未生とともに街の名物である蜃気楼を見に出かけました。そのこと自体はとても良い想い出ですが、その一週間後に未生が不慮の事故で亡くなるといった不遇っぷり。
 それ以来、彼はちょっぴり蜃気楼が苦手気味。
 しかし、偶然のイタズラから新一は珠子と一緒に蜃気楼に遭遇。やだなあ、などと思っているとなにやら濃霧が出てきて視界も定かならぬといった有様に。難儀な現象に、珠子の手を引いて歩く新一。
 しかし霧が晴れて気が付けば、珠子の姿はなく、代わりにそこには未生の姿が。新一は驚きますが、他の知人達に聞いてもなに喰わぬ顔。まるで、昔からそれが当たり前だと言わんばかりに。
 その代わりといってはアレですが珠子が既に五年前に亡くなっていると聞き、新一は驚きまくり。さらに自分のアルバムを見ると、ここ五年ほどに撮られた見知らぬ写真がいっぱい。やがて、新一は一つの結論に辿り着きます。
 「ここって、もしかして自分がいた世界とは別の世界ではないカシラ」
 確かによく似てはいるけれど、どこか別の世界。そう思うほかないのでありました。なんともけったいな出来事に、フクザツどころではない当の新一。果たして彼は、元の世界に還ることが出来るのでしょうか?
 (マニュアルより抜粋)

 シナリオ担当が荒川工氏ということだけで購入。正直、原画家の方はそれほど好みではなかったのですが……。
 初回特典はオープニング及びエンディングテーマのマキシシングル。フライングシャイン製のボーカル曲は個人的にどうも肌に合わないので未開封のまま。

 普通にプレイを進めていると何の前触れもなく強制終了することあり。再現性なし。現在(8月15日)のところ修整ファイルは出ていません。要注意。

 システムはなんの変哲もないアドベンチャー。あえて注釈するとすれば、1周目は選択肢がひとつ。2周目は選択肢なし。3周目以降に出現する選択肢はサブキャラシナリオへの分岐のためにのみ存在。なんとなく作り手の好ましくない見切りが感じられます。
 足回りはなんだか前作よりも微妙に退化しているような気がします。
 メッセージスキップは速度がかなりゆったり目。選択肢間がそれなりに長いので相当に苦痛です。暇つぶし用具必須。たまにスキップするはずの箇所で出来ないなどやや動作も不安定。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。ホイールマウスに対応していないので結構な量を逆上る時はやや不便。ボイスの再生は出来ない模様。
 ひとつ前の選択肢に戻る機能が搭載されているはずなんですけど、私のところでは全く反応しません。まぁ、正常に働いたところで使い所に困る機能ではあるんですが。
 あとメーカーロゴをスキップできずに毎回見せつけられるのは苦痛です。このあたりはご一考していただきたいところ。

 シナリオは構造的にかなり問題あり。
 まずボリュームが前作「このはちゃれんじ!」に比べてもはっきりと少ないです。加えて分量もサブシナリオライターが3分の1くらいを担当して、これですからフォローのしようもありません。
 テキストは今回も氏らしく、地の文の後ろにキャラクターの状態や状況を示した括弧内文章を多用。ややくどい感じもしますが、独特の面白さは今回も安定しています。
 今作のヒロインは6人。うちタイトルに関係するシナリオ(=主人公が新一であるもの)はわずか2本だけ。残りは全ておまけシナリオ並の少ない分量とはっきりとどうでもいい内容と思わず頭を抱えたくなります。頭数と呼ぶのもどうかと思うくらい重要度は低く、文章のレベルにも開きがあります(約一名除く)。
 メインの話もストーリー的な意味での分岐は一切なく、何も解決せず何を言いたいかもわからぬままエンディング。ギャグパートを除けばほとんど何も残らないと言っても過言ではありません。
 シナリオのまとめ方は前作にも不満はありましたが、今作は明らかにそれ以上です。手抜きといわれても弁解しようがないのではないでしょうか。
 以前にも書きましたが、本ページであらすじを抜粋するのは理由がある時です。今作の場合は本編とあらすじに食い違いがあります。文中にある、濃霧などどこにも出てきません。手をつないでいた相手がすり替わるなどということもありません。
 また、最後もおかしいです。これを読めば元の世界に帰るかどうか、という話になると読み取れます。が、実際には二つの世界の新一が入れ替わっただけなので、そんなことは本人の気持ちも含めて問題にもなっていません。
 マニュアルの締め切りは本編のマスターアップよりもかなり早くやってきます。要は締め切り以後に変更した(何かあった)、ただそれだけのことなのでしょうけれども。個人的には少々ベタでも変更前の方が良かったように思いますが。
 
 CGは原画、塗りに問題はないと思いますが、ギャグ主体のシナリオとエロ重視の原画という噛み合わせはどうかと思います。
 立ちCGは滅多に出ません。代わりにフェイスウインドウが画面中央を占拠して時折、キャラクターの動作も含めて喜怒哀楽を表現しています。ただ「行殺(はぁと)新選組」に比べると演出的にかなり見劣りして寂しい感じです。
 フェイスウインドウにプラスするような形で今回もSDカットが挿入されます。これは変わらずに良いセンスを発揮しています。テキストとの合わせ技で笑えることもしばしば。
 背景は素晴らしい手抜き。今時、デジカメで撮ったような写真を加工しただけに見える背景はどうかと。「月姫」あたりは効果もあってまだしも許せますが、これはねぇ……。

 音楽は正直、あんまり印象に残っていません。スキップ中に曲が鳴らないのもその一因かとは思いますが。
 ボイスは今回もキャスティングは問題ないんですが、男性キャラにボイスがないのでどうも会話のリズムを殺してしまっているような気がします。その意味では女性主人公だった前作の方がずっと良かったです。

 まとめ。なんか全ての面で前作の方が良かったような。何一つ前作を越えているように見えないのはあまりにツライです。次は確実に様子見を誓います。
 お気に入り:明らかに前作の方が良いのでなし。
 評点:55

 当然のようにキャラ別感想もありません。