ブラウン通り三番目(ソフトハウスキャラ)

 ジャック(変更不可)は親の言いつけで会ったこともない娘と結婚することに。微かな反発がないでもなかったが、相手が自分を選んでくれたので晴れて一緒になる。ところが、昨日まで他人、今日から妻であるリズィは寂れた店に愛着があり、街を離れられないという。両親の言いつけを破って店を再興することにしたジャックだが、果たしてその行く末は。

 エロゲーというジャンルは今も昔もアドベンチャーばかり。来る日も来る日もそればかり。内容の面白さとは関係なく、同じジャンルを続けてプレイすることについ虚しくなることも。そんな状態を救ってくれるのがソフトハウスキャラというメーカー。前々作「真昼に踊る犯罪者」以降、エロゲーライフのある種のオアシスとして確固たる地位を私の中で築いています。という訳で今回もデフォルト買いでした。その割には発売日からプレイまでしばらく経ってますが、その辺は気にしない方向でひとつ。

 初回特典なのかは不明ですが、いつもの初期設定資料集が付属してます。今回は「初期」と頭についているだけあって、これまでに比べて初期段階のラフが多いような気がします。個人的には楽しみにしていたパッケージ案のラフがほとんどなくて残念でした。

 今回のジャンルはお店経営型のシミュレーション。いつものように、それにアドベンチャースタイルでの会話シーンが加わってます。身も蓋もない例えをすれば、雰囲気的には「まじかるアンティーク」が最も近いでしょうか。
 ゲームの目的は大雑把に言えば赤字を出さず、両親の出す条件を満たして3年間お店を経営すること。するとそこまでの結果に応じたエンディングを迎えることになります。
 経営の基本は商品を売ること。商品は単品で扱うのではなく、複数を売る入荷ルートとして扱う形式。その方法として自ら市場で入荷のほか、冒険者への依頼(副産物として)、自ら開発、お客からの持ち込みなどがあります。商品には完売数が設定されていて、これを迎える度に一定確率で入荷ルートが消滅。よって常に新しい商品を得なくてはなりません。
 微妙なのは入荷する商品がランダムである点。自ら仕入れを行った時でも選べるのは良くて「装備」、「雑貨」、「飲食」などといった大まかな区分けだけであり、この商品を入荷するといった直接的な行動がとれません。よって多くの商品の中から掘り出し物を見抜くといったような楽しみがないんですね。さすがにこれは商売と呼ぶには厳しいかと。仕入れという行動に関して経験が反映されることがないんですから。
 上述した冒険者への依頼は5W1H方式で行います。冒険者パーティーの選択をして、3つの文を組み合わせることで期間も自動的に決定されます。ここは文章がランダムなだけに、良い条件を引き出そうとするとかなり時間がかかります。スピーディーに進めるためには半ば無視すれば良いという選択肢があるとはいえ、難しいところ。基本的には最後までずっと行う訳ですから。
 お店は見た目で変化していきます。各種コマンドを使用することで溜まっていくポイントを割り振ることで、どんどん豪華になっていきます。

 足回りはあまり進歩していません。メッセージスキップはCtrlキーによる強制のみ。2周目以降は選択式のイベントスキップを備えていますが、全てではないのでプレイの高速化という意味ではもう一歩、足りません。
 メッセージスキップは別画面で行います。ボイスのリピート再生は可能ですが、メッセージウインドウに表示されているものだけで、逆上って使用することができません。

 シナリオはかなり薄味。ヒロイン数がわずか4人でありながら分量はかなり少なめ。設定そのものは悪くないようなのでもったいない感じを受けました。もう少し個別シナリオというか、尺のあるエピソードを盛り込んでも良かったのではないでしょうか。
 イベントもあまり多彩とは言えません。3年間というプレイ期間がありながら、季節を感じさせるような定番イベントがほとんどないのはさすがに寂しいです。おかげで必然的に起伏の少ない展開になってしまっています。
 お店に関しても両親からの依頼をこなすだけでなく、〇〇セールといった作品の雰囲気を盛り上げるような縛りがあっても良かったのではないでしょうか。
 繰り返される新妻とのHシーンが短めなのはテンポを重視したソフトハウスキャラのスタイルだと思うのですが、そこで使われるCGが全て使い回しというのはどうかと思います。せめて枚数が多ければ納得もするんですけど、4~5枚くらいではそれも厳しいです。
 個人的に最も気になるのはヒロインが4人いながらエンディングのあるのが2人だけということ。一体どういう理由でこういった構成になったのか。少しスタッフに聞きたくなりました。

 CGは作品の雰囲気のせいか、前作よりもわずかに地味な塗りになってますが、レベル自体は問題ありません。ここの課題はやはり枚数でしょうか。メイン原画家佐々木珠流氏の手がけた枚数は部分違いなしで84枚。長くプレイするゲームがソフトハウスキャラの基本でしょうからもうちょっと欲しいです。

 音楽は順調に良くなってきたように思います。単体で聞くにはややツライかも知れませんが、場面場面に適したBGMという意味ではかなり聞けるようになったかと。
 ボイスは女性のみフルボイス。キャスティングは基本に忠実な選考という感じで、外見と性格に合った声の声優さんが担当しています。レベルは問題なし。

 まとめ。ソフトハウスキャラにしては小さくまとまってしまった作品。もう少し冒険心が欲しいような気がします。悪くはないんですが、「真昼に踊る犯罪者」と比べてしまうと厳しいかも。
 お気に入り:ラネット、マーチェリッカ
 評点:68

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、リズィ
 悪くはない奥さんなんですが、個人的に選択肢がないという、その一点がどうにも。無茶な要望ですけど、最初に2人のうちのどちらかから選べるとかいうシステムだったらなー。ってそれは「ドラクエ5」ですか。
 両親に関するイベントの中身があまりにも薄いんで驚きました。メインヒロインなんだからもうちょっとなにかあるかと思ったんですが。

2、マーチェリッカ
 声が青山ゆかりさんというだけで正義です。ソフトハウスキャラは採用率が高いんでたいへん嬉しいですわ。キャラ的にはアピールが少なくてやや微妙ではありましたが。つーか、印象的なイベントってのが特に思い浮かびません。

3、ラネット
 わかりやすいところが最大の魅力でしょうか。主人公に騙されるくだりはなかなか面白かったです。出番は少なくとも印象度は高く、このゲームでは一番のお気に入り。もうちょっと絡んでくれたらなー。

4、セラ
 や、何と言いますか。セールスポイントが全て私の属性とは反対方向でかなり厳しかったです。まるでメガネかと錯覚するくらいに、とは言い過ぎですか。