Bullet Butlers(propeller)

 幼い頃、母と死に別れ、父と死に別れ、兄と共に宿命を否応なく背負わされた。フォルテンマイヤー家に居場所をもらったが兄とは別れた。同時に生きる道とかけがえのない主人を得た。主を補佐し守ることこそ執事の使命。彼の名はリック・アロースミス(変更不可)。

 propeller2年ぶりの第3弾は本来は第4弾のはずであった「Bullet Butlers」をもってきました。よって同じチーム構成の作品が2つ続くことに。結果的により「あやかしびと」と比較されやすくなりました。
 購入動機はブランド買いというか、やはり「あやかしびと」が感心するくらい面白く感じられたからでしょうか。あと本来の第3弾「はるはろ!」を早く出して欲しいから、なんてものもあります。
 初回特典はマキシシングルと特別小冊子。

 あまり重要なバグでもありませんが修正ファイルが出ています。快適にプレイするために落としておきましょう。

 ジャンルは従来通りのアドベンチャースタイル。システム的に特に変わったところはありません。
 足回りはかなり改善されました。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。未読箇所までジャンプする機能が追加され、これが非常に便利で助かります。前作同様、長丁場のゲームなので。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。戻れる量は非常に多いですがロード直後には使用できません。
 前作でもあった左クリックの押しっぱなしによる未読スキップ機能がコンフィグでオン/オフの切り替えが可能になりました。この機能には(本作でも気付くまで)非常に苦しめられたので実に嬉しかったです。

 シナリオは一本道に近い印象があります。セルマシナリオをメインとして他の2つはその派生といった感が強いです。
 戦う執事ものということで基本は戦闘に次ぐ戦闘で平和な日常は希少なくらい。戦闘でなくとも大抵は護衛の計画などを立てていますし。
 テキストは剣と魔法、それに銃といった世界観をきっちりと浮き彫りにしています。ただ、設定が世界レベルのわりには舞台がかなり手狭な印象があります。テーブルトークRPGの潤沢な設定とそれを使って作った数シナリオというイメージが強いです。
 全体の構成は荒く、一本の流れとしてみると首をかしげるようなところも散見されます。最初と最後がうまく繋がっていないようにも見えますし、ベクトルが分散しているようにも。
 シリアス成分の多い本作ですが、それでも貴重な日常にはしっかりした掛け合いと笑いが用意されています。キャラ立ての確かさが大きな魅力に昇華されているかと。
 互いに惹かれあう過程は主に回想シーンでフォローしています。というのも物語開始時点でヒロインの好感度は一様にとても高いので。ほとんどあと一押しという感じです。弊害としてはヒロインを直接、選ぶ選択肢が少ないだけに、たまたま側にいたキャラがヒロインになっているように見えること。
 Hシーンはとても弱く、一応は用意しましたよ、という程度。その時だけヒロインが恋人であるような濃密な描写が施されています。終わるとまたいつも通りというような。

 CGはキャラ数の多さから考えると若干、少なめかもしれませんが、それでも世界観と渋さと格好良さをうまく演出できています。特に戦闘シーンのそれらは秀逸です。
 キャラクターデザインは世界観のこともあって少し硬質に。よってSDカットとの相性はやや悪くなりました。落差がありすぎるといいますか。ただ、SDカットそのものは非常に良い出来です。
 立ちCGはイベントCGに遜色ない仕上がり。中にはお辞儀など予想しないものもあって長い物語でもなかなか飽きさせません。

 音楽は緩急取り混ぜ状況に応じた曲をしっかりと用意しています。単独でも十分に聞き応えあり。また曲を先行させることでシーンの雰囲気を変えるなど使い方にも工夫が感じられます。ただ、妙に同じ曲ばかり聞いている印象がありました。
 ボイスは主人公を含めてフルボイス。キャラクターに配慮したキャスティングは見事の一語に尽きます。費用がいくらかかったのか、というスタッフの自戒のような言葉も頷けるほどの豪華声優陣です。前作に続いてこのために買っても後悔しないほど。

 まとめ。すごく「あやかしびと」を再プレイしたくなる作品。良くも悪くも経験者はどうしても比較してしまうものが本作にはあります。未経験者の方が楽しめる確率は高いのではないかと。基本的な出来はとても良いだけに個人の好みというものが重要なファクターになってきそうです。
 お気に入り:渡良瀬雪、ホープ、ガラ、カウラ、プーキー、エルネスタ
 評点:77

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、セルマ・フォルテンマイヤー
 物語を引っ張る第一人者的ヒロイン。その役目をしっかりと果たしていますが、ヒロインとしては若干、弱め。まぁ、本作のヒロイン全てに言えることなのですが。気の強いヒロインがゲーム開始時点から主人公に惚れている、これは小さいようで大きなポイント。特に執事が主人公のゲームであればなおのこと。恋仲に至る過程もイマイチ楽しめませんし、なった後も変化がないに等しいのでやはり楽しみにくい。
 全編を通して思うのは他キャラを弄ってこそのセルマだよなぁ、ということ。いざ自身がその立場になるとライバル的キャラがいないためにどうも居心地が悪くなりがち。立場的にも突っ込める人材がいないしねぇ。

2、ヴァレリア・フォースター
 ヒロインにしてはアピールポイントが弱いような気も。雪の萌え対象としてもそこらへんもうちょっとパンチ力が欲しかったように思います。素材的にもSDカットは雪の方ばかり印象に残っているような。別に崩しにくいキャラでもないのにねぇ。個人的にはちょっとでいいから両親が出てきて雪とヴァレリアを取りあうようなシーンが見たかったです。

3、渡良瀬雪
 他の2人に対してちと設定を盛り込みすぎなような気も。終盤は伏線回収に目まぐるしかったように思います。ただでさえ、色々面倒なキャラなのに生みの親との再会までやらなくてよかったような。だってここでプレイヤーが感動するのはきっと難しいですよ。ほとんど忘れているようなネタだし、これに関しては回収せずともほとんど指摘の声はないと思います。
 ヒロインキャラとしては最も好感触でした。わずかな差ではありますが2人きりになった時に違う姿を見せてくれるのが小さくて大きな違い。執事同士というのが良かったのかも。

4、アルフレッド・アロースミス
 無敵キャラ。まさに完全無欠。凡人がある日突然、魔王になりました、くらいのキャラ。そう思ってないと色々と納得いかない。

5、シド・フォルテンマイヤー
 声優的には大注目であったがその役割には悲哀ばかりが漂う。なんか某議長に通じるところがあったような。シナリオ順の縛りはよくわかりませんが、可能ならセルマシナリオ→雪シナリオと読むことができればシドというキャラにとっては良かったように思います。本作ってそのキャラ本人にとって深く切り込んでいるシナリオの方が酷い目に遭ってしまうんですよねぇ。仕方ないかもしれませんが切ないです。
 ところでアップでないとシドおじさまがフレイマルネクスであることはわかりませんです、はい。

6、ランド・フォルテンマイヤー
 エンディングを迎える頃にはランド様の事件はもう遠い昔のことのようでした。あの態度で愛情を感じ取れればもはや神の領域といってもいいでしょう。
 やはりレイスの正体には気付かなかったんでしょうかね。

7、キャロル・ピール
 嫌いなキャラではないんです、嫌いなキャラでは。でも、Hシーンだけは見たくなかったです。いやホントに。

8、アッシュ・ガープリング
 体験版をプレイした時にはまさか最後まで係わるキャラとは思いませんでした。Hシーンはアッシュの方をこそ好きだから見たくないという感じ。少し仲が良くなるくらいでいいんだよぅ。

9、ホープ・A・シャルマ
 最後まで笑いをとるだけのキャラでした。良かったような悪かったような。最後に行くに連れ出番が減っていくのが切なかったです。まぁ、裏のひとつもなければ止むを得ないのですが。

10、レイス
 なんだかシーン毎に実力が上下していた人。特にセルマシナリオ最終戦では異常な耐久力を有していました。ドラゴンブレスを瞬時に治癒できるなら首や四肢を切断されたりなんてしないと思います。
 レイスに問題なければ本気で不死身ってのはさすがにずるいでしょう。セルマなんてそれより遥かに弱い能力で時間切れなんてあるのに。むしろそれはレイスの方でないの、と。

11、ギュスターヴ
 初登場時のインパクトはとても大きなものでしたが、蓋を開けてみればヴァレリアシナリオ以外は共通シナリオまでの敵でした。というか聖導評議会自体がこれ以降はパッとしないという。なんか終盤は壮大な内輪もめばかりでした。まぁギュスターヴ=聖導評議会みたいなものなので仕方ないのですが。なんか純粋にミスティックワンを狙う人がいなかったのがスケールが小さく感じてしまった要因ですかねぇ。敵役にあたるキャラは本質としてはミスティックワンなんてどうでも良かった、というのがね。

12、ヘル
 ヘル自体はどうであれレイスを引きつける魅力という意味ではもう一歩、弱かったかなと。なにせ唯一愛した存在ですからねぇ。もうちょっとそれなりのものが欲しかったです。

13、ベアトリス
 キャラとしては悪くなかったですが、ギュスターヴの動機づけの部分としてはちょっとありがちっぽかったように思います。新しいパターンを模索して欲しいところ。

14、エルネスタ・ディードリッヒ
 実に便利。立ち位置が完璧で困った時にはエルネスタに頼れ、が標語でもおかしくありません。この手の物語によくいる半無敵キャラ。実力はあれど戦闘はほぼしませんというタイプ。なんでかというと戦ってしまうと数人のキャラの立つ瀬がなくなるほどに強いから。本作はそこまでではなかったようですが弟子のケンカに師匠は出ないというスタイルは保たれてました。
 外見からすれば当たり前かもしれませんが、私はHシーンがあるとは思っていなかったのでたいそう驚きました。でも、エルネスタに限らずどうもポイントを外したようなHシーンが多いですね。

15、ガラ・ラ・レッドウッド
 煙草を吸うリザードマン。これを思いついた時点で八割方勝ったようなものだと思います。さらに雪の存在が大きくプラスに働いているかと。元軍人なれど今は一刑事というのもいい感じです。っていうかプーキーとの外伝みたいな話が欲しいところですよ。孤児院の話だけでなく。
 プライマルスタイルに関しては微妙なところですが、アレがないと話がさらに盛り上がらないので仕方のないところかなぁ。ただ、レイスの能力が相変わらず便利すぎたがゆえに不公平感が異様に強いんですよねぇ。結局はあんなエンディングに繋がってしまったいる訳ですから。

16、プーキー・フーキー
 見た目差別だ! というくらいに切ないギャグ専用キャラ。ホープの方がまだしもシリアスなシーンがあるという報われなさ。オークであることがそんなにも罪なのでしょうか。好きなキャラだけにより一層、悲しいものがありました。
 横から見るとまるで別人なあたりはちょっと衝撃でした。

17、オリヴァー・レングランス
 最初はもしかして裏切りの理由がホントにベイルのせいかと思ってびっくりしました。しかし、14歳の時から無敵キャラですか、アルフレッドさんは。外見のわりに存在感が薄いのは役割上、止むを得ませんか。

18、カウラ・ロイ・ラガスティア
 最序盤から伏線を張っていながら正体はコゼットというあたりに微妙感が漂ったような。気のせいか正体判明後は実力も急降下したように思えました。雪シナリオではレイスと互角に近かったのにセルマシナリオではほぼ雑魚扱いだものなぁ。
 ガラエンドがあるならカウラエンドがあっても良かったような気がします。せっかくの伏線も結構サラッと流されてしまいましたからねぇ。いきなりメイド服を着ても無意味ではねぇ。