武想少女隊ぶれいど☆ブライダーズ(アリスソフト)

 地球は狙われている! と警告される暇もなく異星人による圧倒的な襲撃を受けた。地球の抵抗は全てが無意味。核兵器さえ通用しない。もう駄目だろう、という絶望的な空気のなか、一縷の望みを賭けて発掘されたもの。それは氷漬けの全裸の男と謎の装置。男が目覚めた時、空に浮かぶ巨大な戦艦の姿があった。
 あっという間に異星人の兵器を駆逐していく空中戦艦。男の名は火乃流星。かつての大戦で具現化装置とともに眠りに就いていたのだ。彼こそが勝利の鍵。

 アリスソフトの新作は「大」などのシリーズタイトルではないシミュレーションRPG。
 購入動機は原画+ライター買い。一応はブランド買いもあるでしょうか。
 予約キャンペーン特典は描き下ろしサイン付きミニ色紙。初回特典は特になし。

 ジャンルはすでに述べたようにシミュレーションRPG。ただし、エロゲーですのでアドベンチャーパートの締める割合が大きく、家庭用ゲーム機の同ジャンルを想定していると違和感があります。
 話数形式を採用していますが、変わっているのがターン制。話ごとにターン数は決まっていますが、その中にシミュレーションパートとアドベンチャーパートの両方が含まれていること。例えば1、2ターンはアドベンチャーパートで3ターンめはシミュレーションパートが含まれる、という風に。最終ターンまで終わると次の話へ向かいます。概ね1話に2回シミュレーションパートが入っています。アドベンチャーパート次第ではその話限定でユニットの能力が上がったりするので地味ながら戦略性もあります。
 シミュレーションパートは「ランス9」のようなタクティカルRPGタイプ。戦闘前に武装を購入し、施設を作って準備をする必要があります。ここを怠るとまともに戦うこともできなくなります。特に回復はここで建設する施設でしかできません。とても重要です。
 戦闘では様々な目的があります。基本は敵の殲滅のみですが、自軍の本拠地が陥落してもゲームオーバーですし、重要施設を防衛すればお金が入ったり、特殊な地形に行けばアイテムが手に入ったりします。変わっているのは基本、施設は壊れるものだ、という設定。ユニットが乗らなければ回復以外の地形効果は得られません。ただし、その地形に乗って攻撃を受けるとその施設の耐久度が減ってしまいます。それは攻撃が命中しようがしまいが一緒です。ここが本作の悩ましいところで敵は破壊しながら進む、という特性を持っています(恐らくは怪獣映画のノリなのでしょう)。逆に言えば耐久度がなくならないと進撃できない、ということです。
 各ユニットには派手で強力な必殺技が用意されています。ゲージを溜めることで使用可能です。「ランス9」同様、部隊でひとつのゲージを共有しています。
 戦闘中はセーブができません。よって運の要素が大きな比率を持っています。運が悪い人はなかなか苦戦するバランス調整がされています。スタッフの声にもあるように最後まで緊張感があります。「ランス9」のような自由戦闘はないので予想外に歯ごたえを感じることも。
 アリスソフトによくある無茶なチャレンジ目標は今回は用意されておらず。2周目の措置はありますが、引き継ぎ要素自体はほぼありません。

 足回りはもうひとつ使いにくいです。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、メッセージウインドウにアイコンがないためにいちいちメニューからスキップを呼び出してやる必要があります。とても面倒です。戦闘後など一部のシーンではアイコンもないためCtrlキー以外でのスキップができないこともあります。非常に残念なことに一度、読んだテキストを自動でスキップする機能もありません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることができません。起動すると発声中のボイスが停止してしまいます。ロード直後にも使用できます。他にバックシーンと呼ばれるイベント巻き戻し機能が用意されています。500クリック分、戻ることが可能です。
 戦闘前の準備画面もわりと使いにくいです。とにかく自由にマップの確認がしにくく、施設を建設する際も何を建設するか決め手からでないとマップが見られません(施設建設と関係ないマップ確認からなら見られます)。特に慣れてくるとマップを見ながら、ここに何を建てる、とした方がわかりやすいため軽くストレスが溜まります。また、機能の一部が使ってみないと何を示しているのか、わかりにくいです。施設を作って、取り止めて、を繰り返して資金がどんどん減る、というのは初心者に起きやすい症状だと思います。
 武装を購入する画面でも似たようなことが言えます。各ユニットの装備や倉庫のアイテムの確認がしにくく、通常画面と購入画面を何度も行き来するケースが多くなりやすいです。購入、売却の段階でもアイコンをクリックする度に選択されている兵器の種類やユニットが変わってしまうので、常に無駄な手間がかかっています。

 シナリオは非常にテンポ良く進んでくれるので読んでいて気持ちいいほど。次のシナリオを早く読みたいが為にシミュレーションパートを進める、なんてことも珍しくありません。シナリオの目的とシミュレーションパートが上手に噛み合っているのも良い循環を生んでいると思います。
 テキストは笑いとシリアスがほどよくブレンドされていて読み手を飽きさせません。キャラがみんな立っているので掛け合いに活気があって盛り上がりやすいです。監督がイマーム氏とあってオタクネタもそれなりに入っていますが、「ぷろすちゅーでんと」シリーズほど激しくはありません。複数ライターの弊害も感じられませんでした。個人的には感動要素がちょっとおとなしいかな、と思いました。
 本作にはひとつ大きな特徴があります。それは個別ルートがないこと。ラスト前のわずかな分岐なんてお茶を濁すものもありません。では各ヒロインの扱いはどうなっているのか。正解は全員が主人公の嫁になる、です。比喩ではありません。事実そのままです。いわば1周目からハーレムルートのようなもの。ただし、予想外にも3P以上はありません。ライターか原画家のこだわりでしょうか。ちなみにセーブ&ロードを使えば全てのイベントを1周で見ることができます。
 Hシーンは各ヒロイン平等に6回ずつ。この中に3Pも含まれます。エロ度は主人公の性格を考えるとなかなかのエロさに仕上がっていると思います。中身は各ヒロインの特性を活かしたものが多かったように思います。

 CGは差分抜きで100枚オーバーとゲームの規模から考えるとなかなか豪勢なくらい用意されています。クオリティは言うまでもなく、原画買いの人の期待を裏切りません。立ちCGは変化なしといささか寂しいですが、その分フェイスウインドウが頑張っています。掛け合いをさらに盛り上げるだけの魅力あるカットがしっかりと。イベントCGの方にはないわずかなSDカットもこちらで補充しています。
 シミュレーションパートのユニットは今回は3Dではなく手描きです。実に可愛らしく表現されています。愛着を持つには十分です。

 音楽はとてもバラエティ豊か。曲数も多く、単純に飽きさせません。別売りのサントラが2枚組というのも納得です。状況に応じた曲を用意する、という基本的なことがかなり高いレベルで実現できていると感じます。戦闘シーンの曲には燃え要素もしっかりと入っています。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。主人公はなぜかレベルアップと必殺技の時のみ喋ります。演技の方は特に問題ありません。キャラによく合った声優を選んでいると感じました。

 まとめ。しっかり作った秀作。良くできてます。遊べます。しかし、それだけに予想を超える驚きが少ない気もします。贅沢でしょうがアリスソフトということでユーザーの期待は高くなりやすいと思います。事前は心配もしていたので実物はとても楽しめました。メーカー買いはできる完成度だと思います。
 お気に入り:天河ほのか、サイエ・F
 評点:75

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。








1、天河ほのか
 恐るべき正座させマシーン。異星人にも有効とか際限がなさ過ぎます。ひょっとしたら武想兵器よりも効果があるかもしれませんよ!?
 熱くなると思いも寄らぬことを言い出すあたりが良かったです。迷子の世話から子育て議論になるあたりが特に。何かというと奥さんであることを思い出して素に戻るあたり照れ顔と合わせて魅力的でした。
 ひょっとしてHシーンにはテーマとかあったんでしょうか。どうも傾向といった方がいいようなものがあったようにも。ほのかは他のヒロインよりもコスプレ色が強かったように思います。
 ユニットとしては最初はひ弱でしたが進むに連れて頼もしくなってくれました。防御力も上がってくれましたし、なにより飛べるようになってくれるのがありがたかったです。見た目も最も変化しました。ミサイルはあまり使わなかったですね。ブレードはもっとですけど。

2、星井なつみ
 おっぱい力のなさがなんとも不憫でした。最初から最後までそのためにいじられまくり。最後は変な風になってましたし。ツンデレ潰しをされるとか、キャラの沽券にかかってくるような気の毒な事態にまで。しかも、ギャグだからねぇ、それ。本気ならいいってもんじゃないですが。
 文句なしの撃墜され王でした。とにかく体力が低すぎる。しかも、そこに私の運の悪さが絡んでか、10%台の低い命中率でビシバシと当てられるわ、クリティカルヒットをメンバー内ではよく食らうわ、で戦線離脱がしょっちゅうでした。後半のマップでなつみがいなくてその存在感を思い知るみたいなセリフがありましたけど、個人的にはそうでもなかったです。

3、姫月小夜子
 巨大化少女というコンセプトは良かったものの、それ以外の個性が弱かったような気がします。隠れオタク(?)というのも意外すぎるというか、むしろ腑に落ちないことが多かったです。智苑のセクハラ相手というイメージがあまりにも強かったような。腕で胸元を隠している立ちCGがそれにあまり向いていないあたりも地味に痛かったような。温泉とかもね。
 Hシーンはどう考えても巨大な体でH、ですよねぇ。
 慣れるまではビルその他を投げる攻撃が楽しかったです。よく知ってくると壁役にするには不足しがちの体力が頼もしさを感じさせませんでした。順番の遅さもあってうちでは止めを刺す係が多かったです。

4、サイエ・F
 普段は智苑いわくサイエもんなところが面白い訳ですが、不意に見せる照れた表情がなんとも可愛らしかったです。ベタではありますがココロがないと悩む姿も良かったです。流星の好みの具現化か? という部分も色々と興味深いですよね。ただ、あのシステムは無意識下の願望をどれだけ引き出すかが不透明ですからねぇ。
 1周目と2周目で最もユニットの使い勝手が変わりました。1周目は攻撃力は低いし、回避率もさほど高いとは言えず、射程距離もただひとり4がない、と中途半端というか1.5軍な印象でした。撃墜されナンバー2でしたし。反面、2周目はしっかり得意なパラメータが上がるので途中からは被弾知らずの頼もしさ。ただ、どちらも共通していたのは強みがなく、攻撃力も低い、ということ。特にラスト2戦では役回りらしい役回りがなく困ったほど。

5、高倉智苑
 えーと、1年前まで座敷牢にいた、って設定に無理がないですか? そこからわずか1年でヤクザの束を更生させるわ、オタク部門に異様に詳しくなるわ、おっぱいマイスターになるわ、もう死ぬの? というくらいに弾けてますよ。会話の端々に違和感が漂うことしばしばでした。
 ユニットとしては足が遅いイメージが強かったですね。小夜子の次に順番が遅いせいも影響していると思いますが。サイエよりましとは言え、射程4武装がほとんどないあたりもしんどかったです。実際にはみんな移動力は同じなのにね。特徴的なチェーンソーが一切、武装に関係ない、というのも衝撃でした。最初はどこにあるのか、と探したくらいでしたよ。