ChuShingura46+1-忠臣蔵46+1-~武士の鼓動(A samurai's beat)~(inre)

 2013年に発売された「ChuShingura46+1-忠臣蔵46+1-」のファンディスク。
 購入動機はもちろん、2013年で最も気に入った作品だったから。
 初回特典はサウンドトラック。予約キャンペーン特典はOP曲主題歌CD。早期予約キャンペーン特典は恥じらう安兵衛複製色紙。

 コンテンツは長編シナリオ1本とクリア後に開放される中編と短編シナリオが1本ずつの計3本。長編は本編の空白のシナリオがメインですが、基本的な時系列は本編後となっているので、ファンディスクというよりは続編といった方がしっくりきます。
 修正ファイルが公開されています。それほど重大なものではありませんがさくっとあてておきましょう。

 ジャンルはもっと燃え萌えサウンドノベル、だそうです。
 足回りはほとんど変わっていません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。ただし、基本的に繰り返しプレイする作品ではないのであまり使う機会はないでしょう。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能でそれなりに戻ることができます。ただし、ロード直後には使用できません。ジャンルがサウンドノベルだけにこのあたりは改善を求めたいところ。

 シナリオは本編後の現在と空白の期間の過去を交互に進める構成となっているので、(説明が最小限なこともあって)慣れるまではなかなか戸惑いやすいです。ファンディスクということで基本的には大団円にしようという配慮は感じるのですが、一方で非常に気になるポイントが多いです。一部のキャラは悲しくなるくらい出番がありません。具体的には高田郡兵衛、毛利小平太、山田浅右衛門、矢頭絹&無垢の他に男ども。特に最初の2人はファンも多そうなだけに気になります。確かにパッケージ裏にはいませんが。
 他には書くにあたってのスタンスが変わってしまっています。吉良家サイドの視点があった本編からは信じられないくらいです。幕末という要素を持ち出すことで赤穂浪士を神格化する、と言っても過言ではないくらいの扱いをしています。その描写は実に激しく、パッケージの表示のように「義か!? 誠か!?」なんて並列に語られるような内容ではありません。新撰組の扱いはことのほか酷く、ファンを自称する人ならば不快になる可能性がとても高いほど。そこにご都合主義が絡むことでかなりやり過ぎているような様相となってしまっています。どちらも好きという人でも、もやもやしやすいのではないでしょうか。明らかにバランスを欠いていると感じます。
 Hシーンの弱さは相変わらずです。本編でなかったキャラにシーンが用意されているのは嬉しいですが決して期待しすぎてはいけません。新撰組のメンツにはありません。それとライターの趣味なのか、特定のパターンを踏襲した似たようなHシーンが多いようにも感じます。尺は短く、数はやや増量されました。ただし、配置場所はやたらと偏っています。
 DVD2枚組ということを考えるとボリュームもかなり乏しいです。金額などからも本編を考えてはいけません。
 ファンディスクですのでこの作品からプレイするのは厳しいものがあります。一応、最低限のフォローはありますが、これはどちらかというと本編はプレイしたけど忘れてしまった人用、というところでしょう。

 イベントCGは100枚オーバーながら本編が150枚以上だったためにやや物足りなく感じるところもあります。シナリオのボリュームから考えれば妥当な線ですが一部旧CGを含んでこの枚数ですから十分と呼ぶのは難しいところも。新キャラにもあまり割かれていません。
 立ちCGの演出はさらに磨きがかかり、激しい動きが戦闘シーンの派手さを伝える役目を果たしています。残念ながら目を見張るほど動いているのはわずか1ヶ所ですが。
 Hシーンにおける主人公の薄気味悪いほどの肌の黒さはだいぶ緩和されました。
 イベントCGを動かすタイプのアニメーションが導入されました。しかし、まだうまく使えないのか動きに違和感を感じやすいです。あまりエロさに貢献しているとは言い難いです。

 音楽は主題歌などのボーカル曲以外はほぼ同じものを使用しています。本編では曲名がありませんでしたが、無事に曲名がつけられました。出来の方はすでに証明済み。物語を巧みに盛り上げてくれます。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。多くのキャストが再び結集して熱い演技を披露しています。以前と演技が違うということもありません。新キャラも従来キャラに負けない演技を聞かせてくれます。

 まとめ。ファンディスクと思うか続編と思うかで評価が分かれる作品。ボリューム以外にも新撰組の扱いはそのまま賛否を分けそうです。新作がどうなるのか、ちょっと不安を感じてしまいます。
 お気に入り:山吉新八郎
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。








1、大石蔵之助
 なんかもはや神に近い感じになっちゃってましたなー。どこにも隙はなく見通せないものはない、くらいの勢いでした。個別シナリオは他と差別化に失敗していてネタも被り気味で残念。浅野内匠頭の力で記憶が戻ったことが救いぐらいかなぁ。

2、堀部安兵衛
 本編からそうでしたが乙女化した安兵衛さんはいまひとつ魅力に欠ける感じです。なんか弱さばかりが感じられてどうもね。

3、大石主税
 浮気ならいいです、が口癖のようになっているというのも悲しいなー。小夜に似た巫女さんは結局、何の意味もないのね。

4、矢頭右衛門七
 本当なら正妻なのに……(泣)。記憶が戻る前から他の3人に押し切られてしまうあたりもの悲しい。で、幼なじみが右衛門七とそっくりなのはただの他人の空似なんですか?

5、大高源吾
 子孫のあのオチのために出てきたような存在が切ない。むしろ、歴史が変わるかもしれないと期待して主人公とHした方が良かったのでは。

6、近藤勇
 せっかく山田浅右衛門からクラスチェンジに成功して気持ち良さそうに演じていましたが……。どこまでも道化っぽかったですなー。

7、土方歳三
 悲しくなるほどの悪役。しかも、たいして大物に見えないという。ほとんど雑魚に毛が生えた程度。安兵衛が苦戦したことに違和感を覚えるレベル。洋装の立ちCGも悲しくなるばかり。

8、沖田総司
 えっと、沖田総司と言えば大抵どんな作品でも天才剣士として描かれているのですが……。本作ではせいぜい中ボスくらいあるかどうか。女子になっているせいで幼い外見だけど……、というのもほとんど意味を失ってしまったしねぇ。

9、斉藤一
 こちらも結局は口だけ、という感じになってしまいました。みんな1年間、特訓してたって言っても新撰組だって戦い続けていたのにねぇ。全員イメトレ通りに問題なく勝ってしまうあたり手ごわい山賊程度デスヨ。

10、山吉新八郎
 残念なことに上杉陣営に行くというシナリオではありませんでした。この流れだと極論すれば何をやってもよくなってしまうのでいささか緊張感がなくなってしまうんですよねぇ。あともうちょっとどうやって分岐したのかをしっかり書いて欲しかったですね。
 隻眼の下のオチは読めていましたがそれでも、しっかりと燃える展開となっていて良かったです。隙が生まれた理由も実に納得のいくものでした。いっそそのまま主人公が消えていた方が綺麗だったかもしれません。そして、雪と氷が新八を支える、と。