ココロ@ファンクション!(PULL TOP)

 最先端のモデル都市はオルカと呼ばれる多機能カードで全てが賄えた。速水太陽(変更不可)の通う学園も例外ではない。なくては生活さえままならない。そんな便利なカードにココロファンクションというアプリが突然ダウンロードされた。削除もできない怪しげなアプリの機能はなんと自らの心を周囲にまき散らすオープンウインドウ。エロ大好きな太陽はあっさりと信用を失い会長の座からも引きずり下ろされてしまう。今さらながらに危機感を抱いた太陽はCFC(ココロファンクション対策委員会)を立ち上げる。果たして、ココロファンクションを送りつけた者とは。

 PULL TOPの新作は相変わらず要求環境の高めなアドベンチャー。
 購入動機は体験版がそれなりに面白かったので。
 初回特典はラブリーラブパッチダウンロードコード。予約キャンペーン特典は色紙とプライマリーブック。

 ジャンルはオーソドックスなアドベンチャー。
 足回りはほとんど進歩していません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、選択肢間が長い上に数も多めです。前の選択肢へ戻る機能は追加されましたが、肝心の次の選択肢へ飛ぶ機能がありません。さらにスキップ起動中はセーブができません。一旦、解除する必要があります。当然、選択肢でスキップが停止するようコンフィグを調整すれば問題はなくなりますが、代わりに選択肢後も継続する機能が使えなくなります。改善を求めたいところです。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることができません。よってシーンジャンプという任意の場所に飛べる機能もバックログ表示範囲にしか使えないのでほとんど宝の持ち腐れです。ロード直後にも使用することはできません。また、起動すると発声中のボイスが中断され、止めると再開するという謎仕様は継続されています。

 シナリオは複数ライター制の弊害が遺憾なく発揮されています。ルートによってイメージが異なるくらいには主人公やヒロインたちのキャラに違いが見受けられました。結果、シナリオ自体の出来に大きな影響を与えています。それぞれのシナリオの当該ヒロイン以外を雑に扱う傾向があり、中には蔑むような内容まであってかなり賛否が分かれそうです。
 全体的にご都合主義が蔓延しています。伝家の宝刀というくらい振り回されるのでまともに読む気をなくす可能性があります。そもそもの用意した世界観や設定をライターが上手に捌ききれていないように見えました。単にいい加減なだけかもしれませんが。
 日常の掛け合いはキャラの個性もあってなかなか賑やかで楽しさが感じられます。ただし、要所要所で無駄としか思えない繰り返し表現が使われるのは気になるところです。例)オープンウインドウが発動していることに気付けない主人公が毎度、相手の口元を見て気付く、など。
 惹かれ合う過程は物語からしてもココロファンクションの機能からしてもかなり苦しく、ここでも都合の良さの方を感じやすいです。というか、基本的にはゲーム開始時点で好意を持っているケースがほとんどです。
 2周目以降になるとスキップを使い始めるため、短い時間で3回もオープニングが入るという微妙な按配になります(飛ばせますが代わりにスキップは停止します)。内容もどうにか工夫は感じられますが、使える素材が同じなのでどうしても似たような印象になりがちです。なにより単純に3回もオープニングが必要な内容でも尺でもない気がします。
 Hシーンはカウントが難しいですが各ヒロインラブリーラブパッチを含めて6回程度。白草姉妹は2人で1人というカウントになります。やっぱりと言うべきかサブキャラには一切ありません。舞台設定のために似たようなHシーンがすごく多いです。この意味ではオルカの設定は完全に逆効果だったと思います。いる場所がわかってしまう→Hする場所が限られる、というのはかなり深刻な問題ではないでしょうか。条件の割りにエロ度は頑張っているように感じます。ただし、売りの(?)オープンウインドウは発動しているかどうかが画面左上を確認することでしかわからないので、もうひとつ効果的に使われているようには思えませんでした。いちいち確認すると気が散りやすいですし、この設定でなくてもヒロインのモノローグを書くことは何の制限もなくできてしまうので。

 CGはプライマリーブックを見る限り試行錯誤が見て取れるのですが、あまり成果を上げられていないように見えます。単純に画力及び彩色力不足が目立ちます。構図自体や体のラインに下着の表現などもうちょっと勉強が必要な要素が散見されます。また、時間や場所などバリエーションに乏しいのも気になるところです。ラブリーラブパッチの内容がかなり救いになっていて、これがなかったらと思うとゾッとするくらい。
 そのせいかはわかりませんが、SDカットの中には不安定なものが見受けられます。いまひとつ本来の実力を出し切れていないカットが数点あったように感じられました。
 反対に立ちCGは作品の象徴となるくらいしっかりしています。イベントCGのような不安定さを感じさせません。会話劇を安定させてくれる役目を十分に担っています。サブキャラもメインヒロインに負けない仕上がりです。それでいてどこかヒロインではないよ、という空気を出すことに成功しています。ただ、露骨に例外っぽい人が数人ばかりいます。
 Hシーンはばらつきもあってエロいとは言い難いものがあります。中には良いものもあるのですが、残念ながらそれ以外の方がずっと多いです。
 動作環境の割りに動的な演出はほとんどありません。数少ないそれもオルカをクリックする手元のアップくらいで敷居を高くした意味は薄く、正直なところ肩すかし気味です。これは前作の演出がとても効果的だったことが関係しています。

 音楽は心を題材にした作品に相応しい繊細な曲が多く用意されています。いずれも聞き応えのあるものばかりで曲関係が特典にならなかったのが不思議なくらいです。もちろん、学園ものに必須のドタバタ劇用の曲など場面に応じた曲も完備しています。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。実力不足を感じる作品。前作が高いハードルになっていることを差し引いてもまだまだなところが多いです。音楽関係以外は誉めるところが少ないです。体験版の時点から膨らむことなく萎んでしまったような感じでした。
 お気に入り:特になし
 評点:50

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。








1、蓮ヶ瀬水菜
 ココロファンクションの機能が意味不明。これでどうやって朝顔の友達になるのかどうかを量るのでしょうね。まぁ、恐らくあまり深く考えていないんでしょうけど。それとココロファンクションをコントロールできるなら白草姉妹の事件の時になぜ使わなかったのか。人格に疑いがもたれるところです。CFCのメンバーのは全て可能って言っていたしなぁ。使ったらバレるというのならまだしもね。オープンウインドウだって不快に感じるならこっそりコントロールしてやればいいのに。
 ラストは訳がわからない感じでした。どこが盛り上がっているのやらさっぱり。ボーカル曲がかかっているのが不自然に感じられるほどでした。
 ブラのエロくなさが信じがたいレベル。というか、あまりブラに見えません。
 結局、序盤の負債を返すことさえままなりませんでした。

2、譲葉聖
 オシャレ少女というポジションがなんとも悲しい。いざという時に頼れる友人が誰もいないという残酷な設定。CFCメンバーは全て数ヶ月以内に会ったばかりの人間。加えて面倒くさい女設定が痛い。
 幼稚すぎる心が生んだ酷い弱いものいじめ。自信を持った聖に気味悪ささえを感じてしまいました。主人公もこのシナリオではやけに傲慢で、見ていられないカップルでした。ある意味、お似合いではありましたけど。

3、白草姉妹
 事実上、1本分のシナリオしかないのに欲張って3分割。結局、どれもまともに仕上がらず。他のヒロイン(サブ含む)を虚仮にしまくるめばえシナリオは逆の意味ですごいと思います。めばえ好きの人でもあれは愉快になるのものなんでしょうか。単純にああゆうのは良くない、という意味ならあそこまでしなくてもよかったのでは。
 双子としての旨味はもう一つ。

4、速水朝顔
 個人的にはあっさり陥落しすぎて拍子抜けでした。その後ぐいぐい来るのもなんだか困るというよりは楽だな、と感じてしまいました。

5、ベル
 困ったラスボス。主人公のコンシェルジュじゃないじゃん、とか普通に突っ込みたくなってしまうのですが。