Crescendo~永遠だと思っていたあの頃~(D.O.)

 卒業を間近に控えた学生、佐々木涼(変更不可)。残り五日となった学園生活の中で涼はこれまでのことを振り返り始める。永遠に思えたものが永遠ではないと気がついた時、涼の進む道は。

 「せ・ん・せ・い3」をプレイしてある程度の感触を得られたのでこちらにも手を出した、というのが購入動機でしょうか。有り体に言えばライター買いというやつですね。

 システムはノベルアドベンチャー形式を採ってます。非常にオーソドックスな作りで特に目新しい点はありません。
 足回りは右クリックで呼び出す、しばらく前までのD.O.スタイル。メッセージスキップは非常に高速。選択肢以後も継続するか否かを設定可能というところも嬉しいところ。
 メッセージの巻き戻しはノベルなのでそのまま行います。分量はかなり戻ることが可能なので必要充分かと。
 個人的に随分と久しぶりのノベルタイプだったせいか、微妙に気になったところも。文字が大きく表示されるせいか、フォントは見た目きれいな字体の方がいいように感じました。
 もうひとつ。言うまでもなく、ノベルタイプではCGに文字が重なります。表情に変化が起こった場合は一瞬だけ明るくなって再び文字が重なります。ここが本当に一瞬なので表情を確認したくなることがしばしば。ところが、文字を消すには右クリックからメニューを呼び出して選択しなければならないので少し面倒に感じます。戻す時も同様の手間がかかるのでなおのこと。

 シナリオは心に染み入るような秀逸さ。ノベルの名に相応しい情感あふれるテキストに自然と惹かれます。分量自体はそこそこでありながら充分な読み応えを感じました。
 今作の特徴のひとつに回想シーンの多用があります。それはもう、というくらい使われていて全シナリオ中のほぼ半分を回想シーンに費やしています。説得力のあるシナリオ、という意味ではいいことだと思いますが、あまりにも充実していて、なにかスタート時から外堀も内堀も埋められているような、そんな印象を受けました。後は本丸を落とす、あるいは落とされるだけ、というような。
 テキストが光る一方で気になるのは基本的なストーリーがあまりにもオーソドックスであるということ。読み進めていく中で予想外の展開というのが一度も無かったのは残念に思いました。ヒロインの個性についても似たようなことを感じました。
 細かいところで気になった点も。とあるシナリオで映画を見に行くシーンがあるのですが、この映画が「加奈」であることはあまりにも手前味噌であるように思います。ましてや主人公が感動して泣いてしまうのはどうかと。
 また、各エンディングの共通点である写真撮影にも少しばかり違和感を感じました。知人ではあっても、共通ルートの絡みがないヒロインがひとつのフレームに収まるのは無理があるかと。ただでさえ保護者と養護教諭と同学年と下級生、それに主人公という構図には厳しいものがあるのですから。

 CGはエロゲーには珍しい原画家起用かと。まぁ、あえて言うなら少女漫画的な絵に分類されるでしょうか。瞳がやけに大きいのが印象的です。劇中で大きいと形容されるキャラクターはちと怖いかもしれない域に達しています。
 塗りは心配ありませんが、カットに安定感がないのが残念なところ。魅力的に見えるものとそうでないものがやけにはっきりしているような気が。
 
 音楽は主題歌を除いてほとんどがクラシックという異色さ。これには正直、驚きました。そして、それが予想以上に合っていることにも。

 まとめ。CG、シナリオ、音楽と個性的な世界を作ることには成功していますが、どうにも地味さが拭えない作品。やはりストーリーの弱さが尾を引いている感があります。実力は充分だと思うので次回作……、は既に出ているので次々回作に期待したいところ。
 お気に入り:特になし
 評点:60

 テキストが気に入っているゲームなのでキャラ別感想はなし。