超昂天使エスカレイヤー(アリスソフト)

 学園にやってきた転校生、高円寺沙由香は柳瀬恭平(変更不可)の幼なじみ。ところが、久しぶりに再会した沙由香は恭平を知らないという。
 不審に思う日々を過ごす恭平だったが、そんなことを忘れるような事態に遭遇する。平和なはずの街中に現れたのは宇宙からの侵略者ダイラストの尖兵。
 驚きはまだ続く。ダイラストに抵抗する者が現れたのだ。その名はエスカレイヤー。恭平はその正体が沙由香だということを偶然に知ってしまう。まさかそれが原因で共に戦うことになるとは夢にも思わぬ恭平だった。

 アリスソフトのタイトルを買うのは去年の「Only you リ・クルス」以来なんですが、色々と変わっていて驚きました。パッケージが変わって横開きになったり、アリスCDがなくなっていたりと。「大悪司」からなんでしょうか。それとも今作から?
 買った理由はエロそうだから、に加えて変身ヒーロー(ヒロイン)ものだから。ヒロインがメガネであることに目をつぶったことは果たして吉か、それとも凶か。

 システムはアドベンチャーにRPG的戦闘を加えたもの。
 システム的な主目的はエネルギーを溜めること。これが全ての起点になっています。
 エネルギーは変身(戦闘時のヒットポイント)、各種パラメータ強化時に使用します。通常のRPGでいうところのお金とヒットポイントが共用なので、宵越しの金は持たねぇというプレイスタイルの人は要注意です。
 エネルギーは基本的に沙由香とHすることで溜まります。Hシーンのメニューには通常、純愛、鬼畜とそれぞれに複数のメニューがあり、3段階まで変化します。ゲームの進行によってメニューも増えていきます。
 コマンドメニューの合間には会話シーンが挿入されます。主にここでの選択肢で純愛、鬼畜のパラメータが増加してシナリオやHシーンの追加メニューが分岐します。
 この部分、わかりやすいのは良いんですが、あまりにも短いセンテンスの会話ばかりなので、かなりわざとらしく作業的な雰囲気が漂ってます。同じ会話とか平然と出ますし。侵略者と戦っている当事者とは思えない会話ばかりなのもどうかと思います。
 戦闘シーンは出撃場所を複数箇所から選択した上で発生します。一度に戦えるのは一ヶ所一体のみです。
 はい、そこ。言いたいことはすごくよくわかります。私とて考えましたとも。一体だけ倒したら他の場所でのさばっている怪人を放っておいて、家に帰って寝てしまうorHシーン。それは正義の味方としてはどうなのか、と。でも、このゲームでは怪人放置プレイが掟なのです。しかもその結果として治安度(ゼロになるとゲームオーバーになるパラメーター)が下がっても、です。
 そのかわり、戦闘は他のイベントで潰れない限りは一日一回必ず発生します。上述した通り、変身にはエネルギーを必要とする(終了後は半分しか還元されない)ので意外と真面目に運用を考えなければなりません。
 具体的な戦闘シーンはファミコン時代に戻ったかのような単純なコマンド戦闘。基本は自動進行ですが、必殺技を使用可能な状態であれば毎ターン指示を出すというスタイル。読んでおわかりかとは思いますが、面白味は皆無。繰り返しプレイには厳しいです。
 ここで問題になるのがシールド、攻撃力、防御力、反応力という戦闘用パラメータ。シールドはヒットポイント、攻撃力と防御力は読んで字の如く。ある意味、一番重要なのが反応力。これが相手よりも低いと攻撃は絶対に当たらない仕様になっています。
 勝敗のポイントが異常にわかりやすいことには訳があります。エスカレイヤーは基本的に戦闘で何度敗北してもゲームオーバーになりません。それどころか怪人に犯されて(怪人ごとに異なるイベント)、エネルギーを稼いでしまいます。しかも、その稼ぐ数値は主人公とのHよりも高いのです。主人公の面目丸潰れ。
 要は敗北イベントを見やすくするために反応力というパラメータが用意されたのですね。
 しかし、考えてみると主人公とのイメージプレイよりも怪人とのHの方がエネルギーが多く溜まるということは、やはりシミュレーションをいくら重ねても実戦にはかなわないということなんでしょうか。
 足回りはいつものアリス形式。つまりは一長一短ということですね。
 メッセージスキップはスピードは申し分ないものの、選択肢で解除されてしまうので少しばかり不便です。せめてコンフィグで設定できれば良かったんですけど。
 メッセージの巻き戻しは信じられないことにありません。これが大手の仕事なんでしょうか。アドベンチャースタイルで、しかもボイスがあってこの仕様はないと思うんですけど。
 ロードがいつでも実行できる訳ではないのも、相変わらずのアリス節。とーぜんのようにウインドウ枠に「タイトルに戻る」はありません。ロード可能な画面にはありますが、それでは意味がないですよ。

 シナリオはまるで脊髄反射のような内容。というのも主人公側が自発的に起こすイベントというものがほとんどないんですね(あえて言えばHシーンがそれ)。
 怪人エピソードは常に相手の行動にリアクションすることによってのみ進行、成立します。そのエピソードもひとつひとつが完全に分断されていて、お話としての連続性が全くありません。よって(整合性も考えてのことでしょうが)今どの辺りを進んでいるのか、という進捗状況がわかるイベントはほとんど発生しません。これではドラマを盛り上げるのは不可能というものです。敵も味方も「経過」というものがほとんど語られないのですから。シナリオとして一本、筋の通った話がないのはツライです。
 やはり話数制でないことが響いているのではないかと思います。緊張感も生まれませんしね。
 システムに絡む部分でもありますが、今作は約一ヶ月が過ぎると自動的にエンディングに向けたイベントが発生します。ということはその時点で進行中のイベントは無視されるかというと(例えば「Only You」のように)、そんなことはありません。と言っても別段、喜ぶようなことではなく、上でも書いたようにただ継続するイベントがないだけなのです。
 題材から特撮ヒーロー(ヒロイン)ものの側面を期待する向きもあるかと思いますが、残念ながら期待するだけ無駄です。この作品は表面をすくっているだけでまるで内実というものがありません。
 ジャンルを揶揄するような濃い文章もなく、馬鹿なことを真面目に書くことで笑いをとる、ということもなく。「ぷろすちゅーでんとGood」や「Only You~世紀末のジュリエットたち~」を作ったアリスとは思えぬ無策ぶりです。
 変身ヒロインを調教できれば、あとはどうでもいいという作りにも見えますが、その割にはHシーンのメインは変身前(メガネ)ばかり。やはり狙い所がよく分かりません。
 キャラクターの魅力も正直、弱いです。もっと動いていれば、と思わずにはいられません。特にサブキャラのデザインは悪くないだけに。

 CGは大変エロいです。原画のおにぎりくん氏の絵は「ダークロウズ」の頃よりもさらに柔らかくなった感じ。課題であった尖った顎もだいぶ良くなりました。ただ、当然というかやはりメガネ属性のない方には薦められません。エスカレイヤーのHシーンはそれほど多くないので。
 立ちCGはそれほど種類はなく、フェイスウインドウで。原画家コメント通り、仕上がりはもう一歩かと。それと相変わらず服装が変わってもフェイスウインドウの衣装はそのままなので違和感が激しいです。大手でありながら、いつまでこれを続けるのでしょうね。
 オープニングデモは今回もアニメ。しかし、絵(CG)に自信のあるメーカーがこの作画を許容しているというのが信じられません。私にはこれがイメージを良くするとは思えないのですが。

 音楽は予想より、かなりおとなしい感じを受けました。ジャンルからしてもっと緩急の激しいものかと予測していたんですが。個人的にはShade氏でないのがかなりの痛手でした。
 ボイスは(つける以上は)こだわりのあるアリスですからなかなかイメージ通りで良いと思います。まぁ、登場人物はえらく少ないんですけど。

 まとめ。仏作って魂入れず。様々な箇所でそう感じられました。複数のゲームジャンル、題材を合わせて作ったらこうなってしまったという感じ。ここまで外見を整えておいて、エロだけ(しかもメガネ限定)というのはもったいないように思います。
 システム的に同じことの繰り返しは止むを得ないとしても、戦闘シーンくらいはそれに耐える工夫が欲しかったです。
 お気に入り:気に入るほどしっかりした描写のあるキャラがいません。
 評点:35

 ということなのでキャラ別感想もなし。