DRACU-RIOT!-ドラクリオット-(ゆずソフト)

 六連佑斗(変更不可)は悪友と共に海上都市アクア・エデンにやってきた。ここは日本で唯一、カジノや風俗が合法となっている島。観光でやって来たはずが、どうしてか佑斗は吸血鬼になってしまう。そして、島の実態を知ることになる。ここが吸血鬼のための島であることを。果たして、佑斗は人に戻れるのか、それとも吸血鬼として余生を過ごすことになるのか。

 ゆずソフトの新作は少しばかり変わった吸血鬼ものアドベンチャー。
 購入動機は前作がそれなりに気に入ったから。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典は設定原画集DraculARTとお休みCD~今夜は寝かさないわよ~。どちらかであればパッケージに収納できます。今回もSD原画のものまで収録されていて、この手の企画では珍しいです。早期予約特典に色紙なんてものもありましたが瞬殺されたことで少し話題に。

 修正ファイルが出ています。運が悪いと強制終了になることもあるようなので、なるべくあてておきましょう。

 ジャンルはいつもの通りのアドベンチャー。
 足回りは今回も高性能です。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。その上で次の選択肢へ飛ぶ機能と前の選択肢に戻る機能が用意されています。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後にも使用できます。いつでも一番、最初まで逆上ることが可能です。さらにこの画面から好きなシーンへジャンプする機能が用意されています。アイコンにカーソルを合わせるだけで当該シーンの様子が画面上に表示されます。かなり使い勝手がいいです。贅沢を言うならこれらの機能を使う際に通常画面で表示されているチャプターがわかるとなお良かったですね。

 シナリオは全体的に中途半端。本作は一応、萌えゲーのカテゴリーに入る企画ではないかと思いますが、実際には萌えゲーともシナリオゲーとも言い切れないどっちつかずになってしまっています。
 人と吸血鬼の共棲する世界観がどうにも煮え切りません。ヒロインの魅力には何ら寄与することなく、物語を引っ張る牽引要素としてはいかにも頼りなく説得力も十分ではないです。
 日常の掛け合いは悪くはないが良くもないという程度。笑いはあまり意識されておらず、会話そのものに個性や深みがあまりありません。形式的な遣り取りが非常に目立ちます。ヒロインの魅力はデザイン面やボイスなどに集中していてテキストによる肉付けがあまりうまくいっていません。また、小イベントそのものの密度が薄く、意義も感じられなければ記憶にも残りにくいです。
 これを土台としたヒロインの物語はどこか得心がいかない感じで、どうにも上滑り気味。何を明かされても意外というよりしっくり来ないと表現したくなるような不安定さがあります。
 ゆえに惹かれあう過程も描写がそれなりにありながらどこか違和感を感じやすいです。加えて描写があるといっても出会った時の第一印象がどのヒロインもすこぶる高い上、結論が透けて見えた状態で悩むだけなので恋愛描写に期待する方には物足りなく感じるかもしれません。
 吸血鬼というテーマはあまり上手に活かされているようには見えません。そもそも、本作では一般的な吸血鬼らしさがほとんど削ぎ落とされてしまっているのでそうと感じるシーンがとても少ないです。
 Hシーンは各ヒロイン4~5回程度。ただし、そのうち1回はアフター扱いでクリア後にプレイするようになっています。別枠なのに内容に冒険が感じられないのは残念。せっかくなので本編では難しいものを用意して欲しかったです。エロ度はほどほどというところ。

 CGはテキストの弱さを懸命に補っています。立ちCGは表情も豊富でセリフひとつの間に何度も変わってくれますが、悲しいかな上で触れたようにテキストが魅力に欠けるため有効な効果を上げられていません。
 イベントCGは構図に工夫が感じられますが、そのせいか色々と安定しないカットが散見されました。
 SDカットは用意する場所のアイデアのせいか、存在感がもう一つ。これもテキストという要因が影響を与えているように見えます。カットそのものはすこぶる可愛らしいです。

 音楽は全体的に地味でおとなし目です。躍動感や疾走感といったものとは無縁でどうにも盛り上がりに欠けます。単独で聞くにもちょっと寂しいものがありそうです。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。メイン、サブとも演技の方は問題ありません。むしろ、サブの方に印象的な演技が多いです。まぁ、配役を見れば当たり前かもしれませんが。

 まとめ。前作を踏まえるとちょっと心配になる作品。相変わらずどこを目指しているのかがよくわかりません。シナリオゲーに脱皮中だとしてもキャラの魅力が不足しがちだとしんどいものがあります。 
 お気に入り:稲叢莉音
 評点:55

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、夜来美羽
 率直に言って外見ほどの魅力を中身からは感じません。もう社会に出ているとは思えない幼さです。いい年こいて自分は大人とか事あるごとに主張するのはかなりどうかと思います。もっと外見に相応しい精神年齢をお願いしたいところ。
 恋仲になって開き直るのも勘弁。主人公を採点しまくるのもいい加減にして欲しいですわ。あなたにそこまでの魅力があるのですか、と聞きたくなりました。

2、布良梓
 巫女服がコスプレ同然というのが萎えます。まるで遊園地のアトラクション。美羽も同様ですけど。かなりガッカリな感じです。
 まるで予定通りに一番エロい。もはや必然だったのかもしれません。ライターがJ・さいろー氏である以上は(未確認ですけど)。

3、エリナ・オレゴヴナ・アヴェーン
 どちらかというと見かけ倒し。もっとエロ娘で破天荒キャラなのかと思いましたが、実際にはとても普通。ちょっと戸惑うくらい特に何もありませんでした。アフターストーリーもわざわざ考え抜いてアレかぁ。かなり拍子抜けでした。
 西海岸風の喘ぎはいっそ選択肢にしても良かったんじゃないですかね。Hシーンで腹を抱えて笑いたい人にはナイス処置だと思います。

4、稲叢莉音
 ゆずソフト的な普通の人だそうです。そのせいか自分のシナリオ以外ではだいぶいらない子になっていました。ちなみに人気投票ヒロイン中では最下位。
 巨乳が売りというあたり萌えゲーとしてはちょっとさみしいものがあります。シナリオ的に最後にわりと大きな加点がありますけど、これは属性的な意味においては特殊だからなぁ。

5、ニコラ・ケフェウス
 隠しキャラ。というか、キャラチェンジしているので誰が得をするのか、という感じ。絵的にも別人っぽくなっているので最後まで違和感がありました。