ダンジョンクルセイダーズ~TALES OF DEMON EATER~(アトリエかぐや)

 クリフ(変更不可)とセシル、幼なじみ2人は悪魔の力に悩まされていた。かたや自身の内側に宿る力によって隔離され、かたや自身と融合する魂によってまるで二重人格のような症状を呈していた。そんな呪縛から逃れるために2人は冒険者として旅をしてきた。
 そして、遂に手がかりのあるルーレブルグへとたどり着く。

 アトリエかぐやの新作は驚きの3DダンジョンRPG。意欲的な企画は応援したいということで購入を決意。
 初回特典はフルカラーマニュアルにサウンドトラック。前者は但し書きはあるものの、キャラクター紹介の項にて致命的なネタバレが書かれています。取扱注意。

 修正ファイルが出ています。それなりに問題のある症状も含まれていますので落としておいた方がいいでしょう。なお、これに含まれないバグとして私の環境ではエラーメッセージも何もなくいきなり終了する、ということが5回ほどありました。こまめなセーブをお薦めしておきます。

 ジャンルはすでに書いたように3DダンジョンRPG。RPG黎明期から続くご先祖たちと比べて大きく違うところも革新的に進歩したところも特にありません。方向転換はいつも90度単位というアレです。エロゲーということでユーザーに優しいオートマッピング機能をもちろん備えています。
 パーティーは最大5人でそのメンバーは固定。これはちょっともったいなかったようにも。せっかくそれらしい展開やサブキャラクターがいるのでゲストメンバーとして参加したりすれば面白かったかもしれません。
 主人公以外は当然のように女性で彼女らがメインヒロインという扱いになります。中にはアトリエかぐやの過去作品で見たようなキャラも。
 戦闘シーンはコマンド入力型でリアルタイム要素などはありません。オート(殴るだけ)があるのは便利ですが、5人分のコマンドを登録する機能などがあると良かったかも。
 敗北すればゲームオーバーで、条件次第でそれ用のイベントがあったりもしますが、難易度がとても低いので知らないと一度も拝むことなくエンディングなんて可能性も。
 後半に進めば雑魚敵は歯ごたえが出てきますが、中ボスやラスボスは最初から最後までとても弱いです。むしろ雑魚の方にこそ苦しめられるでしょう。バランス調整はあまりしていないと思います。

 ゲームの進行はAVGシーンでイベント進行→ダンジョン探索→イベント→マップ移動→繰り返し、といった感じになります。マップ移動は通常のアドベンチャーと同じでヒロインを選択しますが、基本的に全部を選択可能なのであまり意味はありません。メインヒロインを終えると他のキャラが残っていても次に進んでしまいます。また、サブクエストもここで発生。
 ダンジョン探索中は非常に無味乾燥となり、ダンジョン内でもイベントは乏しく、地上に戻ってもマップ移動時のような賑やかさは全くありません。この2つの状態はあまりに落差が大きく、もうちょっとイベントを割り振るなど工夫のしようがあったようにも感じます。
 エンディング後にはやり込みモードなんてのも用意されていたり。

 システム設計は初挑戦にしては悪くない、というレベル。
 いつものAVG的な足回りは必要性十分で経験が生きています。メッセージスキップは既読未読を判別して高速。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能で恐らくはいつでも最初まで戻れるかと。
 ダンジョン探索時はセーブできませんが、例外としてイベントでAVGシーンになれば可能になります。
 ひとつ残念なのはタイトル画面からクイックロードできないこと。
 一方でRPG的な設計は進めれば進めるほどに厳しくなってきます。移動は方向を示したアイコンか、さもなくばキーボードのカーソルキーで行わなければならず、ほとんどの人はマウスとキーボードの二刀流を強いられるでしょう。
 クリックひとつとってもマウスは戦闘メッセージ毎にクリックせねばならないのに対し、キーボードは押しっぱなしで飛ばせるとよくわからない差が出ています。
 キャンプモードも中盤以降は難儀するように。キャンプ→魔法(アイテム)→使用者→魔法の種類→対象者、と5回のクリックが必要でこれの複数回を頻繁に、となるとなかなかにストレスが溜まってきます。どの深度からでもキャンプモードから一気に抜け出せる操作がないのも地味にツライです。
 こういったものは本来、頻度の問題なのですが、本作の場合だと中盤はほぼ戦闘毎の解毒、終盤は体力回復でキャンプモードを起動することがとても多いです。よって頻度が低ければそれほど気にならないシステム設計も手間がかかりすぎると嫌気がさしてきてしまうと。
 せっかく画面上にキャラクターの顔が出ているのだから、ここにカーソルを合わせると各メニューが(枝葉も含めて)自動で浮かんできて、最初のクリックで魔法やアイテムが使える、なんて仕様なら負担もかなり軽減したかもしれません。もちろん、通常のキャンプモードは残したままで。

 シナリオはとても意外性に欠ける内容でマニュアルを読んでしまうと全てが理解できてしまうかもしれません、というくらい。良くも悪くもストーリー性を重視してはいません。
 RPGといってもエロゲーであることは間違いなく、ヒロインとの小イベントは豊富に用意されています。しかしながら、キャラクターが十分に立っているとは言い難く、掛け合いがあまり楽しめません。地に足のついていない状態で延々と悩みを語られてもなかなか感情移入しにくいです。
 Hシーン総量はいつものかぐやといった分量ですが、プレイ時間に換算してしまうと相対的に少ないと感じてしまうことは避けられません。

 CGはシリアスなRPGということもあってか全体的に暗めの配色でまとめられています。初挑戦だからかモンスターには気合いが入っているように感じました。
 立ちCG演出は気のせいか少し地味なような。素材が少なかったりするのでしょうか。

 音楽は統一した雰囲気を生むことに成功していたとは思いますが、インパクトが少し弱かったように感じました。特に最も聞いたであろう戦闘の曲の印象が弱いのが……。それと主題歌の演出の仕方にちょっとどうかと思うものがありました。
 ボイスは主人公を除いた主要なキャラに用意。主人公もなぜか戦闘のクリティカルヒット時にだけ喋ります。全体的に演技に問題はなく、キャラにも合っていたように感じました。

 まとめ。新たなジャンルに挑んだことに意味のある作品。この一歩がのちに偉大な一歩であったと言えるかどうかは今後のメーカーの頑張り次第。ある程度のやる気は感じられたのでユーザーの声に耳を傾けつつ今後も頑張って欲しいところ。
 過剰な期待は禁物ですが、基本的なゲームとしての体裁は整っているかと。当然ですが、コンシューマーやエロゲーでも何作も何作も作っているところと比較してはいけません。
 ところで”絶対ハマる”とかその手の煽り文句は色々な意味でとても危険だと思います。
 お気に入り:特になし
 評点:60

 あまり思い入れがないのでキャラ別感想はありません。