行殺(はぁと)新選組(ライアーソフト)

 時は幕末、所は京の町。田舎から剣で身を立てようと上京した島田誠(変更可能)は、武闘派集団「新組」に所属することになります。幕府転覆を目論むキンノーの跋扈する都で島田誠は生き残ることが出来るでしょうか。

 個人的にイチオシのソフトハウス、ライアーソフトの第2弾ソフトは「人斬り美少女あどべんちゃ~」。幕末が舞台というのは18禁ゲーでは珍しいですね。
 まずはお持ちの製品の確認を。初版であれば修正ファイルが必須です。なければゲームになりません。最悪の場合、立ち上がらないこともあるようです。
 増刷版ならばまず問題はないと思います。どうやらCDを焼き直したようで、フロッピーは入っていません。ちなみに増刷版は箱にシールが張ってあるのですぐにわかります。現在、新品で購入すれば、まずこちらでしょう。
 まずはいきなりオープニングで度肝を抜いてくれます。世界観をバッチリと表現したナイスなイカレソングです。画面構成も確かなセンスが感じられます。画像が粗いのは残念ですが。

 システムは1話区切りのオムニバスタイプのアドベンチャー。選択肢によって4話目ぐらいから各ヒロインのストーリーに分岐していきます。歴史的には池田屋事件くらいまで。その後はシナリオによって様々です。
 アドベンチャーモードには移動の他に、キンノーと戦う「真剣勝負!」と隊費を稼ぐ「押し借りクイズ」があります。
 前者はなぜかルーレット形式。しかも正義の新選組は負けないという素晴らしい仕様です。ルーレットの目によっては良くない結果をもたらすことがあるというのですが、これがよくわかりません。実際的なペナルティはなにもないように思うのですが。
 後者はSFから新撰組(本物)関係のものまで幅広いクイズが出題されます。その難しさは折り紙付きでパッケージに「こんなもんわかるか!!」と書かれています。さすがとしか言いようがありません。
 他にも「財政」、「治安」、「発言力」、「知名度」、「評判」、「不条理」のパラメーターがありますが、「財政」と「不条理」以外は残念なことにあまり意味はありません。
 「財政」はその数値によってところどころテキストが変わります。シナリオの流れは変わりませんが、場合によってはなかなか面白い話が挿入されます。
 「不条理」は読んで字の如く、です。このパラメーターが意味を持つ時、まさに不条理なことになるでしょう。

 シナリオはかなり巧みです。一見、時代考証無視の無茶苦茶な幕末を書いていますが、きっちりと抑えるところは抑えられており、読みごたえのあるものに仕上がっています。
 知識的にはそれほど必要としません。新選組なんて「修羅の刻」と「るろうに剣心」でしか知らないという人でも問題ありません。充分に楽しめるでしょう。
 新選組のメインとなるメンツは近藤勇こと近藤勇子はマゾ娘。土方歳三こと土方歳江はサド女。沖田総司こと沖田鈴音は病弱メガネ。原田沙乃助こと原田沙乃は18歳だけれどもロリ担当。永倉新八こと永倉新は肉体派。芹沢鴨ことカモミール芹沢は外人さん。以下は残念ながら(?)男性陣。斉藤はじめに山南敬助の計8人。
 大半は女性に変わっても魅力的なキャラクターが揃っています。

 CGは地味めの塗り具合がゲームにぴったりと合っています。特筆なのはフェイスウインドウ。普通のゲームではメッセージ枠の隣か上にありますが、ウインドウ自体が動くことはありません。
 ですが、このゲームでは動きます。画面狭しと動き回ります。キャラクターが千鳥足になればウインドウはふらふらと画面を動き、怒れば上下動したりと派手に愉快に画面を彩ります。
 これによってキャラクターの性格もテキストと合わせて効果的に表現されています。アイデア賞ものですね、これは。

 音楽は馬鹿ゲーには相応しくないしっかりとした曲が用意されてます。曲単体でも充分聞き応えがあります。
 本当にライアーソフトには才能ある人が結集していますね。あとはプログラムだけなのですが……。

 まとめ。真面目な馬鹿ゲー。なにか矛盾しているような気がしますが、ホントにそんな印象を受けました。個人的には文句なくオススメ。才能ある人たちがあえて作る馬鹿ゲーというのは本っ当に面白い。ただプレイしているだけで楽しいという貴重なゲーム。2000年最高クラス。
 お気に入り:原田沙乃、土方歳江
 評点:91

 以下はキャラ別感想。ネタバレ注意。







1、近藤勇子
 プレイ前の予想以上に良い局長。弱い自分をどうにか克服したいとあがく様はなんとかしてやりたいと思ってしまいます。それでもうまくいかない。ついには現実から目を背けようとしてしまう。それを引き戻す主人公。このぺちぺちと頬をたたくシーンは好きです。

2、土方歳江
 鬼の副長ここにあり。愛想のないところがすさまじく可愛い。特に照れた(酔った)表情は絶品。Hシーンへの導入方法がなかなか笑える。
 「言ってみるもんだなぁ」 実にらしくて妙に納得しました。
 EXシナリオは一長一短な感じ。函館五稜郭のあたりは洋装も含めていいのだけれど、そこまでが要点だけの書き出しで今一つ。でも、あのエンディングは好きです。なんか真のエンディングみたいでした。
 時間がなかったのか、HシーンのCGが使い回し(のようなもの)で残念。
 EX2シナリオのラストにちょろっと書かれている副長のウエイトレス姿はぜひともCGで見たかったです。

3、沖田鈴音
 う~ん。新選組になってもメガネなキャラは苦手だなぁ。シナリオもなにか諸行無常って感じですし。
 EX2は大団円なシナリオ。真のヒロインは鈴音なんでしょうか? こうなると近藤さん生存のEX的なシナリオも見たかった。

4、原田沙乃
 ロリだけどロリじゃない、ファニーフェイス&スレンダー最高。オープニングでも忙しく大活躍。指を合わせて恥ずかしがる表情はこのゲームのベスト。
 カモさんを認める方向のシナリオ展開なのもナイス! エンディングはほぼ史実通りなのにいい感じ。このカットはお気に入り。
 前提として「負け」があることを認めた上でのシナリオのアレンジは好感が持てます。
 各隊士のシナリオで事件の見せ方や結末、人間関係等が微妙に異なるのがこのゲームの面白いところ。特に池田屋事件。
 EX2のエピローグでやはり書かれていた大陸に渡ったという沙乃の活躍も見てみたい。やっぱり十字槍を振り回しているあたりがらしいです。なんか源義経の大陸逃亡説みたいでGood。

5、永倉新
 予想通り苦手なタイプ。池田屋事件では腰を抜かしそうになりました。新のシナリオで1番良かったのは副長とのキスシーンでした。背景と化している連中が素敵です。

6、カモミール芹沢
 なにはなくとも、88㎜カモちゃん砲。この人のテーマ曲(?)が1番好きかも。
 いいですね。こういう快楽主義的なヒト。それでいて本当は自分は嫌われていると思っていて、それを隠そうと派手に生きている。シナリオにも光るものがあります。
 今までこういうお色気系のキャラは苦手だったのですがカモちゃんさんは別です。普段もいいですが、本音モードはさらに可愛いです。

7、おまちちゃん
 当たって砕けろな感じの町娘。屯所に押しかけるくだりはなかなか笑わせてもらいました。それだけに2章で終わりなのが残念。なんかシナリオ自体がバッドエンドのようで。

8、斉藤はじめ
 「るろうに剣心」のイメージがあるとそのギャップに酔うことが出来る。衆道シナリオのために存在。最初は実は女っていうオチかと思っていました。

9、山南敬助
 なんというかいいキャラだと思うのだけれど、他が個性が強すぎて霞みがち。出番が少ないのもツライ。

 2001年4月現在、「電撃大王」でマンガ版短期連載中。しかも原作はライアーソフトに作画は原画の八雲剣豪氏。頑張って本格連載になって欲しいです。微力ながら協力中。