はちみつ荘deほっぺにチュウ(ぱれっと)

 広田公人(変更可能)にはかつて夢があった。しかし、今ではそれは失われ、大学4年の夏になっても目指すものは見つからなかった。当然、内定などひとつもとっていない。
 このままではお先真っ暗な息子を心配したのかしないのか、公人は父親から就職先を見つけるまで帰ってくるな、というありがたい仰せを賜ったのだった。

 ねこねこソフトから独立した米村純一氏を擁するぱれっとのデビュー作。初回特典は定番といえば定番のアレンジCD。

 もはや当たり前。インストールしたら動作チェックよりも早く、脊髄反射でメーカーホームページを閲覧しましょう。そこには修整ファイルがアップされているでしょうから。ってことで今作にもあります。これをあてないと名前を変えられなかったりするので本名派の人は要注意。

 購入動機はシステムを気に入ったのと体験版の内容が良好であったから。もっとも、最近ではそれは当てにならないと言うのが業界の常識になりつつありますが。

 ゲームは大きく3つに分けられます。すなわちプロローグ、本編、各キャラ個別のシナリオに。
 プロローグはいわゆる世界観を説明する共通ルート、分岐はありません。
 本編はシステムの核となる部分。7月から8月の2ヶ月間、一週間単位でスケジュールを組んでいきます。バイトはヒロインに会えるものとそうでないものがあり、原則として前者は時給が安く、後者は高く設定されています。生活環境を整えながらヒロインと会い、お金も貯めなければいけません。それなり以上の計画性が求められます。
 終盤にはヒロインがはちみつ荘に引っ越してきて、同棲モードが使用可能になります。この時、選べる選択肢は一人当たり3つ。うち、2つはコスプレであるため、お買い物をしなくてはなりません。このためにも当然、お金は必要になってきます。
 この同棲モード、悪くはないんですけど枚数少なめなので選択肢がもう一つくらいは欲しいです。
 無事、条件を満たせば8月以降は個別シナリオに分岐していきます。事実上のエピローグと言っても過言ではありません。
 本編の難易度は意外にも高いです。思いついた方法を試すにも時間がかかり、二の足を踏みやすいというパターンでしょうか。ただ、バッドも含めてエンディングを一度でも見ればイージーモードが使用可能になります。これはキャラごとのフラグが全て立っている、すなわち本編の予定が前もって用意されているというもので、適当にクリックしていれば寝ていてもエンディングへ辿り着きます(ちょっと嘘)。言わば盲導犬モードが完備されている訳です。
 足回りはデビュー作らしく使い勝手はイマイチ。メッセージスキップは速度こそ早めですが、一日の終わりと始まりに既読未読に関係なく、必ず止まるので2周目以降もかなり手間がかかります。また、就寝時の処理が加速されないのも遅さを感じる要因になってます。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行います。残念ながらボイスの再生はできません。

 シナリオは予想以上に密度薄め。プロローグ部はキャラ同士の掛け合いも豊富なのですが、本編に入るとそれが著しく減少。せっかく同じアパートに住むという設定もあまり活かされていないように感じます。互いが惹かれる様子もハッキリと希薄ですし。
 本編、個別シナリオともに言えることですがキャラによって分量の差が大きいです。林春奈シナリオでは各キャラの出番も多くにぎやかですが、他のヒロインシナリオでは寂しさが拭えません。明らかに統一性に欠けています。
 キャラクターはそれなりに魅力的な面々が揃ってますが、一度見たら忘れないというほどの強烈さはありません。もうちょいパンチ力があると良かったかも。
 朝、夕方、夜の時間帯に好感度と確率によってイベントが発生するんですが、これがどうにも苦しいです。あくまで確率の問題であるため、目当てのヒロインが来ることなく、一度も会っていないヒロインが来る、なんてことも珍しくありません。特に序盤においてその傾向が見られます。
 またフラグによって発生するイベントと同時にこれが発生して一日の同時間に二度帰宅するなんてことも当たり前のように起こります。やる気を失うという程ではありませんが、あまり嬉しいことではありません。
 時間帯イベントで一番気になるのは何度プレイしても悪友の出現度が一番高いということ。毎朝、ダーリンと呼ばれて起こされるとさすがにめげてきます。

 CGはなかなか頑張っているかと。中でも背景の美しさは特筆に値するほどの高レベル。ただ、部分違いを除いてイベントCGが65枚というのは少ないように思います。
 立ちCGはちょっと大げさなくらいに表情が変化してくれます。テキストとのイメージもうまく合致しているかと。大きさを2段階に後ろから見た姿を用意して距離感を表現しています。基本的にお笑い方向の演出という感じではありますが。

 音楽はシステムとの絡みか、あまり飽きないような曲作りをしているようです。それほど強く主張することなく、BGMに徹している印象を受けました。気のせいかもしれませんが、日常の曲は「みずいろ」を彷彿とさせるものもあります。
 ボイスは女性のみフルボイス。各キャラのイメージにも合っていて、実力も申し分ないと思います。特に横村しずか、五十嵐優美の両名はいい味を出していると。

 まとめ。これ以上ないほど佳作という言葉が似合う作品。過度に期待しなければ大きな不満も生まれないと考えます。ただ、体験版から期待を膨らませ過ぎると危険。シナリオは弱い部類に入るでしょう。残念ながら。
 個人的にはシステムも楽しめなかったのが痛いところ。これなら完全にアドベンチャースタイルの方がキャラもよく絡んでくれそう、とか考えちゃいます。
 お気に入り:横村しずか
 評点:61

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、林春奈
 はちみつ荘って一刻館にしか見えませんね。玄関の感じとか、間取りとかかなり似ているように思うんですけど、キャラ同様こちらも参考にしたんでしょうか。何の確証もないですけど、これで連想するなってーのは正直、不可能だと思うんですよ。主人公は5号室だしねぇ。でも、そこまで考えるとあれに匹敵するアクの強い住人がいないのが残念。お邪魔キャラとしてエロゲーでも十二分に役に立つと思うんですけど。
 それはそれとして、これは管理人さんの感想とは思えませんな。
 私が気になるのはやっぱり記憶がなくなる度に性格が変わったらやだなぁ、ってことでしょうか。あー、もちろん出張から帰ってきたら警察呼ばれても嫌ですけど。

2、横村しずか
 「ド○えもん」? とか考えないようにするのに必死でしたよ。素で意識したらシナリオを進めるのは困難になりますから。
 まぁ、なんつーか、やっぱり日和センセーを思い出さない訳にはいかないわけで。ただ、個人的にはこちらの方が暴走したりとか、予想外の行動をとってくれそうなんで好きですわ。諦観して静かに泣くところも気に入ってます。
 それだけにシナリオがないに等しいのは悔しいです。いいキャラ持ってるだけにねー。

3、横村もとか
 妹メガネは開幕前にファーム落ち。永遠に上がる可能性なし。

4、巌谷裕子
 今の時代にこういうお色気担当というのは珍しいですな。学生時代は委員長タイプだったのにいつの間に遊び人にクラスチェンジしたのやら。もったいないことです。
 でも、このシナリオの肝はどう考えてもゆうこちゃん(幼女)の方でしょう。エンディング後に思いを馳せるともう大変なことに(発病中)。

5、五十嵐優美
 エセ関西弁使いというのは魅力的なんですけど、イベントの少なさがどうにも痛いです。ぼーっとした感じの表情とかかなりいいんですけどねー。惜しい限りデスヨ。