ハミダシクリエイティブ(まどそふと)

 妹と2人暮らしの和泉智宏(変更不可)が学園に向かうと生徒会長が業務を放棄して失踪していた。代役の選出方法はなんとくじ引き。自分には関係ないとなにひとつプレッシャーを感じずにいた智宏であったが、全校生徒から選出されたのはまさかの自分。当然、拒否権を発動させたかったが、人気声優として学園にあまり来ていない妹の進学を取引材料とされてしまい……。いやいやながら生徒会長ライフが始まってしまうのだった。

 まどそふとの新作は陰キャの主人公が様々な理由で学園に来ていない特殊な才能を持つヒロインたちを復帰させるという少し変わった学園アドベンチャー。
 購入動機は原画買い。前々作「ワガママハイスペック」がそこそこ気に入っていたので。
 初回特典はオリジナルサウンドトラック、裸パッチダウンロードカード、まどそふとLIVE2020優先先行販売チケット申し込み券。予約キャンペーン特典はあすみのやわらかおっぱい色紙と妃愛のやわらかおっぱい色紙に追加でオリジナルクリアファイルが付きました。

 ジャンルはごく一般的なアドベンチャー。
 足回りは残念ながら退化してしまいました。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。次の選択肢へジャンプする機能及び前の選択肢に戻る機能も用意されています。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生にシーンジャンプも可能ですがそれほど戻ることはできません。ロード直後でも使用可能です。
 前回の続きから始められるいわゆるCONTINUE機能を搭載しています。

 シナリオは粗削りながら光るものを感じさせる作り。変わった立ち位置のヒロインたちと過ごす日常は思った以上に新鮮でなかなか飽きさせません。笑いの成分も多めで各キャラの出番をしっかりと用意していると感じます。一方で様々なところに説明不足が目立ちます。ソシャゲの単語やギャル語など時に主人公さえわからないものに対して説明はほとんどありません。中にはキャラクターの紹介が普通に欠けていたり、なんてことも。
 惹かれあう過程は共通シナリオで基本的に終わらせているといった感じです。つまり、どのシナリオへと進んでもキャラクター同士の距離は非常に近いものとなっています。主人公にとっては本当にボタンの掛け違え程度。たまたま、そのタイミングで一緒にいたからそのヒロインと恋仲になるといった具合。実際、イベントのタイムテーブルもそんな感じで組まれているようです(誰かと誰かの困ったタイミングがほぼ同一に発生するとか)。
 クリエイティブスキルの描写はシナリオごとに差があります。しっかりと活かしているものもあれば、正直に言って他のスキルでも差し替えられてしまいそうなものもあります。
 Hシーンはカウントが難しいですが各ヒロイン4~5回程度。最後の一つはおまけシナリオとしてクリア後に消化する形で、基本的には後日談になってます。エロ度はまどそふとにしては控えめです。むしろ、Hシーン以外の会話の方がエロさを感じさせます。Hしていない時の方がすごそうなのに、いざ迎えてみるとそうでもない、といったような。ここでも各クリエイティブスキルの扱いには差があります。まぁ、仕方のない面もありますが。

 CGは欲しいところにしっかりと用意されていますが、代わりに予想外の1枚なんてのはなかなかありません。イベントCGは差分抜きで83枚と「ワガママハイスペック」→「ラズベリーキューブ」→本作と順調に値段が上がってきているだけに寂しさもひとしおです。
 立ちCGは掛け合いを盛り上げる大きな力となっています。ポーズ、衣装、表情ととても充実している上に各カットのレベルが高いです。サブキャラにも遜色ないレベルで用意されているあたりこだわりを感じます。見ているだけで楽しいくらいに仕上がっているのではないかと。

 音楽は耳に馴染みやすい日常系のものからしんみりと聞かせるものまで実に多彩な曲が揃っています。オリジナルサウンドトラックを付けるのも納得のクオリティです。単独でも十分に聞くことができます。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技は基本的に問題ありませんが鎌倉詩桜役の浜辺実雨さんがHシーンの時に普段の声と違い過ぎて別人のような気も。和泉妃愛役の柳ひとみさんはクリエイティブスキルが声優なためか、声の使い分けや体を張ったような熱演が印象的でした。

 まとめ。これからに期待したくなる作品。ライターは新人なのでしょうか。今後も起用されるのかは知りませんが、そうであれば伸びしろが感じられるので楽しみです。キャラクターの魅力は十分ですが、見せ方はまだまだ向上の余地がありそう。
 お気に入り:錦あすみ
 評点:75

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、和泉妃愛
 急に真剣になられるとたまに引いてました。やはり、多少は加減されている本人以外のシナリオでの妃愛の方が明らかに好きだったりします。どんだけ近い仲になっても隠し事をされてしまうというのも地味にきついものがあります。気を使いすぎるのも問題ですわな。

2、常盤華乃
 意外とののかさんとしての絵を見せてくれないんですよねぇ。北条氏康ちゃんもあれだけ何度も名前が出ていながらきっちりとしたカットは出てこないですからねぇ。SDみたいなのでもいいから「戦デレ」関係のカットが見たかったです。
 雑魚メンタルなところがとても良いです。「~わよ」の語尾はほっこりしながら聞いてました。でも、オタクくさいところを指摘するところではこのネタ出ないんですねぇ。
 詩桜が宿敵なところもいい感じです。

3、錦あすみ
 もうちょいVtuber雪景シキの活躍を見たかったように思います。そうあってこそおまけのHシーンも映えるような。
 妃愛シナリオで彼女がどうなったのかはすごく気になるなぁ。将来的に世間の目をごまかすために格好の存在であることは間違いなく、妃愛の甘言にそのうち主人公が乗ってしまうのではないだろうか。

4、鎌倉詩桜
 詩桜先輩は素の演技のせいかもしれませんが、Hシーンのそれと差があり過ぎるような気がします。正直に言って苦手キャラなのであまり丁寧には聞いていなんですけど、あまり同一人物には聞こえないような。
 後半でなんとか帳尻を合わせようとしていますけど、基本的に酷い人間なのであまりうまくいっていないように思います。なぜか、詩桜シナリオでのみ明かされるくじ引き会長の真実も全然、本人のフォローになっていないですからねぇ。実際、他のシナリオでの終盤になっても悪役感がすごいです。特に華乃シナリオ。