初恋1/1(tone work’s)

 片桐祐馬(変更不可)は過去の経験から何事にも二の足を踏むようになっていた。幼なじみや悪友に発破をかけられても煮え切らない日々。ところが、ひょんなことから休眠状態の学食向上委員会を復活させることに。果たして祐馬はかつての必死に物事に打ち込む姿勢を取り戻せるのだろうか。

 ビジュアルアーツ20周年記念タイトル。その割にはあまり仕掛けのようなものはなかったような不思議なタイトル。
 購入動機は体験版がぼちぼち楽しめたので。
 初回特典はスペシャルファンブック「初恋Art Works」、2枚組オリジナルサウンドトラック。残念ながらボーカル曲は3曲しか入っていません。予約キャンペーン特典は複製色紙5枚セットがもらえるID。

 ジャンルはごくオーソドックスなアドベンチャー。
 足回りは記念タイトルのわりに弱さが目立ちます。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、選択肢間が非常に長いので相対的に遅く感じやすいです。前の選択肢に戻れても次の選択肢へ行けないのならあまり意味がありません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることは出来ません。また、メールの文面はバックログに表示されず、スマートフォンのアイコンをクリックして呼び出さないと読めません。
 日付表示の演出であるスマートフォンがクリックで飛ばせません。シナリオ中の日数はかなり多いのでテンポが悪くなっています。また、メール演出自体が1通読むのに最低4クリックしなければならず、こちらももどかしいほどに時間がかかります。演出にスマートフォンを用いるのは結構ですが、もう少し使い勝手を考えて欲しかったです。

 シナリオは強引で無理矢理さが目立ちます。加えてご都合主義の感が強く、何事もうまくいき過ぎです。その上で主人公のあり得ない言動や姿勢によってバランスをとるといういささか歪な構成をしています。
 基本的に主人公もヒロインも足を引っ張ることで存在を主張しているようなところがあって、せっかく恋仲になってもいまひとつ素直に微笑ましい様子を楽しめない面があります。ヒロインの知らない面を知ることができても、それが喜ばしいとは限らない、そんなケースが本作は妙に多いように思います。
 日常の掛け合いは話題がやけに狭いですが、それなりに盛り上がります。ただし、笑いにはそれほど気を配っていないようなのであまり期待してはいけません。
 惹かれ合う過程はとても苦しいです。描写そのものもそうですが、物語開始時で面識のない相手の方が全て早く恋仲になってしまうのでどうにも違和感を感じやすいです。ただでさえ、理由不在のように見える恋ばかりなので。
 Hシーンはカウントの仕方にもよりますが各ヒロイン5回程度。エロ度はほどほどくらい。というか、ちょっとおっさんくささを感じるようなシーンが散見されます。

 CGは3人の原画家の混在による不協和音が目立ちます。瞳の大きさが露骨に違ったりするので同じ世界の住人としてはやや苦しいものがあります。主人公にも同じことが言えて、それぞれが好きに描いているのですっかり別人にです。全員に力量があるからこそ違いが悪目立ちしているように感じられます。
 また、森野雪乃の立ちCGは全体的に棒立ち気味で他のヒロインと比べて浮いています。それと1年近い物語のわりには立ちCGに目立った変化が少ないように感じます。衣替えもありますが変化が地味なせいでしょうか、どうもインパクトが弱いような。
 反面、背景は統一感があって落ち着いた色使いが安心させてくれます。
 Hシーンはエロくしようという気概が感じられます。テキストの弱さを懸命に補っていますが、シチュエーションの追求をさほどしていないせいかエロ度は原画家の実力を考えるとそれほどでもありません。

 音楽は地に足のついた曲が多いという印象です。昔から聞き馴染んできたような、そんな錯覚を起こさせてくれるオーソドックスな曲作りに感じました。ボーカルは豪華ですが、スマートフォンとメール演出時はそれぞれ状況が違うのに同じ曲を流したり、とやや厳しいものがあります。ヒロイン一人一人にカラオケの持ち唄が用意されていますが、全員ボーカルは別人なので曲の出来不出来は別にして賛否ありそうです。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。色々とピントのズレた作品。気合は感じられますが、正直なところ冠が重すぎるような気がします。萌えゲーなのかシナリオゲーなのかハッキリしないところも一因だと思います。
 お気に入り:真加辺碧、森野雪乃
 評点:60

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、真加辺碧
 学園で好きじゃない人はいない、というくらいの高嶺の花なのに非常にあっさり落ちて驚く。しかも、主人公からはたいしてアピールしていないという不思議。携帯の手口といい、なんだか主人公がいわゆる悪い男に見えましたね。
 父親との約束を葛藤もなく破ることもそうですが、露見したらしたでひとこともなく数ヶ月に渡ってシカトってあたりがすごかったです。変わり身早すぎでしょう。

2、藤川瑠奈
 委員会内であからさまに数段落ちる娘さん。正直、他のスタイル抜群な4人を差し置いて彼女を選ぶ意味がわからないくらい。シナリオもそれに準じるような内容でツライものがありました。学食向上委員会が空中分解するなんてこのシナリオだけですよ。

3、月島叶
 ピザ屋繁盛記。就職先も決まって良かったですね。悪口はピザ女。

4、森野雪乃
 どうでもいいけどフルネーム言いづらいですね。なんでも理解している幼なじみという前振りだったのに蓋を開ける(個別ルートに入る)とそうでもないという悲しさ。そういう意味であんまり幼なじみシナリオではありませんでしたね。
 ちなみに制服でラブホテルに入る猛者。

5、鴇崎摩耶
 碧同様になぜ、こうまで好かれているのかスピードも含めてよくわからない。お気に入りのおもちゃと恋人の間にはとても深い溝があると思うんだけどなぁ。
 妹は超可愛いが発展性がなく残念。ロリな人は間違いなく瑠奈よりも妹を落としたいと思ったはずだ!(断言)
 パキュラが実はすんげぇー小さくて驚きました。てっきりガメラやゴジラくらい大きいものとばかり。