ひめごとユニオン~We are in the springtime of life!~(SEVEN WONDER)

 星守才蔵(変更不可)は現代の忍者である。隠密と言い換えてもいい。ただし、学生の身分である才蔵はまだ見習い扱い。重要な案件はなかなか任せてもらえない。ある日、仕事で夜の学園にいた才蔵は空飛ぶ姫と出会う。それが互いに秘密を抱えた者たちが集う、ないしょ同盟のはじまり。

 SEVEN WONDERの新作はヒロインたちの秘密が目を引くアドベンチャー。
 購入動機は体験版がなかなか楽しかったので。
 初回特典はオリジナルサウンドトラックとLyceeプロモーションカード。予約キャンペーン特典は不思議なことに「早期のみ」で第1弾がたけやまさみ複製原画色紙、第2弾が川原誠描きおろしA3クリアシート。ということなので発売日当日には特に何ももらえませんでした。

 演出強化パッチが出ています。不具合修正ファイルも含まれているので最初にあてておきましょう。それまでのセーブデータが使えなくなるので。

 ジャンルはごく基本的なアドベンチャー。ただし、選択肢は全編通してひとつしかありません。ゲーム性は皆無と言っていいでしょう。
 足回りは物足りないものがあります。メッセージスキップは既読未読を判別して標準程度のスピード。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることはできません。ロード直後にも使用できます。

 シナリオは共通シナリオ以降の失速が激しいです。共通まではヒロイン4人分のネタを順番にクロースアップしていくので密度も濃く、目先も変わってくれて賑やかですが、いざ個別シナリオに分岐してしまうとそれぞれのヒロインのみの話となってしまうので共通シナリオとの落差を感じやすくなっています。内容的にも1本の物語を四等分したくらい薄くなっていて賑やかさも同様に減ってしまっています。中には消化試合としか思えないようなシナリオも。
 さらに問題なのは4本全てのシナリオにおいて話が途中で終わってしまっていること。まるで漫画の打ち切り最終回のように唐突に終わってしまいます。思わずパッケージに1巻とか前編とか書いていないか確認したくなるほど色々と残したまま終幕を迎えています。
 当然のように複数ライター制の弊害も起きていて、キャラクターが驚くほどシナリオごとに違っています。特に三芳野小春シナリオの主人公はやり過ぎなほど変わっていて、もはや原型がほとんど残っていません。ライターが悪ノリしたようにしか見えません。そうした影響なのか、作中には矛盾点やツッコミどころがすごく多いです。ツッコミ疲れてしまいそうになるほどに。
 日常の掛け合いは個性あふれるメンツが揃っていることもあってなかなか盛り上がります。ただ、郷土史研究会(ないしょ同盟)の活動ばかり、それも普通の部活動とはまるで合致しないため学園ものらしさはわりと希薄です。
 惹かれ合う過程は存在しません。基本的には最初から好きであり、そうでないものはまるでやらせのような過程を経て恋仲になります。
 Hシーンは各ヒロイン3~4回。お世辞にもエロいとは言えません。

 CG。イベントCGは原画家2人で差分抜き68枚とかなり寂しい数字です。しかも、この枚数で通常イベントCGを用意する場所に困っているようにさえ見えます。インパクトあるCGがあまりありません。残りはSDカットで補っていますがイベントCGのパワー不足を助けるほどのものではありません。スタッフロールのアルバム演出がそれを顕著に物語っています。いくらなんでも少なすぎでしょう。
 立ちCGはポーズ、表情ともに多めですが中には大げさすぎて、あるいは広い意味で使い過ぎていて違和感を感じるものもありました。それと九帖聖のいわゆるbefore、afterで立ちCGに目ぼしい変化が見られないのはいかがなものかと思います。見違えるような、としたかったのではないのでしょうか。服装が違うだけで同じに見えるのに褒めちぎる様子はなんとも不可解です。

 音楽は場面に応じたかなりの種類の曲が用意されています。主人公が忍者であるためか、時代劇を思わせるような曲もあります。シナリオの単調さをそれなりにカバーしています。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。ヒロインは実力派が揃っているので安心して聞くことができます。中でも桐島夕輝&吹雪一式役の一色ヒカルさんのまるでボケとツッコミのような一人二役は実に味わい深いものがありました。

 まとめ。未完成が疑われる作品。シナリオだけでも十分ですが、作り込みにおいてもミスが散見されます。典型的な体験版が一番、面白い作品になってしまいました。素材そのものは良かっただけに悔やまれます。
 お気に入り:ヒメリア=ラ=トゥリオン=ヒメリエール
 評点:55

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、ヒメリア=ラ=トゥリオン=ヒメリエール
 空を飛ぶとか最初の頃しかまるで意味がなかったデス。なんでこの設定を入れたんでしょうね。あとで使えるとか思ったんですかねぇ。
 恋をする方法が酷すぎました。ついでのような過去設定にもゲンナリ。せっかくの良いキャラがなんとももったいないです。
 HシーンのCGとテキストの食い違いが激しかったです。テキストでは感嘆符まで使って脱がしたのにCGではずらしただけってなぁ。
 恋人になった日からずっと勝負下着は色々と無理があると思います。単語を知っていること自体、驚きなのにねぇ。いつ買いに行く暇があったのでしょう。そもそもいつになるかわからないのに全部勝負下着ってそれはもう(ヒメリアにとって)普通の下着と変わらないのでは。
 屋根裏部屋にヒメリアを連れ込んだのに聖に気付かれないはずないでしょう。最中もまるで音を気にしなかったですし。そもそも、下の部屋を通らずに屋根裏部屋に行けるのですか? しかも、ばれていないと思うって図々しすぎるのでは。
 細かいところではHシーンの最中に立ちCGを出したシーンに違和感が。裸バージョンがないせいでメッチャ服をきっちり着てましたよ。変すぎ。
 思いつきで生やしたかのような翼が悲しい。

2、桐島夕輝
 一色ヒカルさんの一人芝居を楽しむのが正解のシナリオ。しかし、せっかくの3Pがあまり機能していなかったのは残念。

3、九帖聖
 このシナリオ以外、2人の因縁がどうでもよくなっているのがちょっと笑えます。飛鳥とのカップルは何とも言えないものがあります。
 女バージョンになっても立ちCGが基本変わらないのは痛恨の極み。こういうところで差をつけることが大事だと思うんですけどねぇ。同じではちっとも意外ではないですよ。

4、三芳野小春
 無条件に主人公にべた惚れになるのは奇妙な感じでした。もうちょっと悔しいけど好き、みたいな感じにした方が良かったのでは。
 主人公のキャラが変すぎてかなり疲れました。馬とかメロスとか一体なんなのか。