緋の月(みるくそふと)

 師弟関係にある霧と惣一(変更不可)は武者修行を名目に旅を続けている。江戸を出て既に一年が過ぎていた。そんな頃、二人はとある港町に立ち寄る。そこで巻き込まれる厄介事にちらつく男の影。それこそは霧が仇と狙う神崎であった。

 みるくそふと第2弾。個人的には初みるくそふととなります。購入動機は最初のデモを見て、といういささか微妙な、古傷が疼きそうなパターン。その後、体験版をプレイして期待値は下がったものの、結局は購入に踏み切りました。
 初回特典はドラマCD。プレイ後に聞くことを推奨とあるのでネタバレな内容かと推測します。どうしてこんな書き方をしているかというと聞いていないから。そして、聞くつもりがないから。仮にこのCDがネタバレを含まないとしても私はまずプレイ前には聞きません。それでゲームが気に入れば聞くこともある、というのが私のスタンス。あとは察していただけると助かります。

 ジャンルはパッケージによると幕末マルチサイトADV。システム的には徹頭徹尾ありふれたアドベンチャー。シナリオは3本+1本で、この1本が名称にあるマルチサイトたらしめている存在。3本のシナリオを終わらせることで初めて進める仕様。
 テキスト表示は時代劇ということもあって、縦書き横書きの好きな方を選択可能。デフォルトは縦書きに設定されています。
 足回りはもう一歩使い勝手が良くありません。雰囲気を重視しているためか、メッセージウインドウに一切の機能が付加されていません。何をするにもまずは右クリックが必要になります。これが意外と面倒です。
 メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが、判定がどうも甘いようで既読箇所で止まることもしばしばありました。スピードの方は平均程度。
 メッセージの巻き戻しは別画面で行います。ホイールマウスには対応していますが、残念ながらボイスのリピート再生はありません。

 シナリオはほぼ完全な一本道。各シナリオの違いはヒロインと視点のみと言っても過言ではありません。シナリオが1本であるならばそれも当然でしょうが、4本もあるのに展開が全て同じではコンプリート前に飽きが来てしまいます。選択肢によって様々な展開を見せることがゲームの重要な意義のひとつだと思うのですが。
 テキストは節操なくシリアスとギャグが混じっているので果てしなく微妙。ギャグそのものもとても面白いとは思えませんでした。パッケージによると「軽快なテンポの萌え活劇」だそうですが、この段階で何か間違っているような気がするのは私だけでしょうか。
 展開はかなりいい加減。基本的にイベントは始まりも終わりも都合がよく、緊張感というものがまるでありません。ヒロインと主人公が惹かれ合う様子もあると言えばある、ないと言えばない程度の寂しさ。
 Hシーンは近年稀に見る尺の短さ。Win95移行期のF&Cクラス。ここまで短いとライターはHシーンを書きたくないのではないかと邪推したくなります。
 ボリュームはかなり控えめな感じ。8800円でこれはどうなのかという疑問が出ても不思議はない総量。もうちょっとくらいはあっても良かったように思います。

 原画はねこにゃん氏が担当。「ショコラ」と同じ原画家さんな訳ですが、あまり同じ作家には見えません。確かにデザインの方向性は違うんですけどそれにしても。と言ってもわからないのは私だけかも知れませんが。
 イベントCGはややバラツキがあり、中には同じキャラに見えないものも見受けられます。また、どうも印象に残りにくいカットが多かったように思います。
 立ちCGはポーズの種類が少なく変化も小さめ。表情はかなり豊富に用意されています。珍しいことに本作は一画面一人限定。文字通り各キャラクターが幅を利かせている訳です。
 背景は丁寧に描き込まれていて時代劇の設定をしっかりと支えています。ただ、どういう訳か、ライアーソフトの「行殺(はぁと)新選組」のキャラが随所にモブキャラとして配されています。ただのお遊びにしては目立ちすぎであるように思いました。何の意味もないんですし。
 戦闘(剣術)シーンは刀の軌跡を視覚的に見せたり、SEを用いることで表現しています。雰囲気を味わうのがせいぜいの演出かと。
 本作はウェブ上や誌面でムービーが2種類公開されていましたが、製品には含まれていません。最近はこういうケースも多いようでもったいない限り。出来が良かっただけに尚更そう思います。

 音楽は時代劇を思わせるいかにもな旋律が大勢を占めている訳ですが、不思議とあまり記憶に残りません。けしてレベルが低いとかそんなことはないんですが。
 ボイスはほぼフルボイス。主人公やその他の男性キャラも収録されています。ただ、Hシーンだけは例外。喋ることはありません。
 レベル的にはどなたも特に問題は見当たらず。ただ、時代劇にロリはどうなのかという疑問は残りますが。

 まとめ。時代劇の必然性が希薄な作品。テーマ的なものはもちろん、様々な要素における説得力、「らしさ」も不足しているように思います。個々のヒロインの魅力が薄いのも厳しいところ。1本の話としても弱いです。
 お気に入り:特にいないなぁ
 評点:50

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、霧
 剣の達人。それを実感させてくれる機会が本当に少ない。それが霧の不幸。剣の達人という要素が希薄であれば、残るはただのロリキャラでしかない。ロリ、ツインテール、実は可愛い姿が好きと本来ならミスマッチを狙うはずの要素が見たまんまでしかない。これではあまりに苦しい。

2、茜
 ロリ2号にしてなんちゃって忍者。彼女の存在が敵方の価値さえも貶める。強いのか弱いのかよくわからない。少なくとも覆面剣士は道場の師範代クラスの実力があると思われるが、これを手玉にとったりする一方でどうしようもなく弱いようなことを霧や惣一に言われる。まぁ、この作品では気にしても意味のないことなんでしょうが。

3、香澄
 狂言回し。緋という麻薬を説明するためと検死するためだけが彼女の存在意義。冗談抜きで他に何もないような。事態の解決に何ら寄与しないからなぁ。

4、さくら
 前振り。凌辱要員。悲しいことに香澄よりもさらに存在意義がない。私はヒロインの一人と勘違いしたばかりにシナリオの成り行きに唖然としてました。そういや結局、彼女の父親の消息は知れないね。生きてはいないんだろうけど。つーか、香澄のシナリオ以外ではさくらの死は不明なのに誰も彼女の父親を探さない。このあたりにもシナリオの破綻が見えるなぁ。

5、和泉
 いかにもな怪しさがお気に入りでした。そして、あまりにも見え透いていたからこそ、どうやって惣一とくっつくか期待したのですが……。相手が神崎と見当がついた時にこのゲームに対する興味は消え失せました。

6、惣一
 どうも彼の審美眼と私のそれはかけ離れているようで。何度も茜を可愛いとモノローグで呟くその感性が私には理解出来ませんでした。
 師匠にも言われていますが、あまりにも物事を考えずに行動しすぎ。おまけに諦めるのも早いと良いところなし。
 そういや彼のどこが主人公なんでしょうか。ああ、なるほど。女を抱くところですか、納得。