イノセントバレット~the false world~(CINEMATOGRAPH)

 未確認攻性体。次世代エネルギー「ツングーシウム」を執拗に狙ってどこからともなく現れる敵。那智祐爾(変更不可)は未確認攻性体との戦闘に巻き込まれたことで自分が特異点と呼ばれる異能を持っていることを知る。祐爾は自らの答えを探し求めて第四機動隊、通称「即鬼隊」に志願する。

 CINEMATOGRAPHのデビュー作はシリアスと萌えの融合を目指した意欲作。
 購入動機は企画が気になったので。
 初回特典は特になし。マニュアルがありません。オンラインマニュアルのみです。

 修正ファイルが出ています。クリアできないなど重い症状ではありませんが、発症すると割と間抜けな感じになりやすいのであてておいた方がいいでしょう。SEが鳴りっぱなしという症状が問題で、シーン切り替えや次の選択肢へ機能を使ったりすると起こります。その結果、Hシーンなのに銃弾の音が延々と響きわたるというシュールなことになったりします。しかも、セーブ&ロードでは消えないので意外と厄介です。

 ジャンルはおなじみのアドベンチャー。
 足回りはデビュー作らしいもどかしさ。メッセージスキップは既読未読を判別して平均的なスピードです。1周目を終えると次の選択肢へ飛ぶ機能が開放されます。ただし、前の選択肢に戻ることはできません。それとどうやら未読文(イベント)を飛ばしてしまうことがあるようで、いきなり知らない文章が出たり、イベントを知らない内にスキップしたりすることがありました。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることはできません。また、この画面の使い勝手が悪く戻りにくいです。ロード直後にも使用できます。

 シナリオはほぼ一本道。中盤までのフラグ立てによって主人公の横に立つヒロインが変わるだけです。よって1周目と2周目以降で雲泥の差があります。本作は主人公以外の男性キャラも出番や見せ場が非常に多いのですが、それらは全て共通シナリオであるため、2周目になって次の選択肢へ飛ぶ機能を使い始めると男性キャラの出番はほぼゼロになってしまうのでまるで違うゲームになってしまいます。物語としても3周で差異がほとんどなく意味が薄いです。差分程度なので必然的に作業プレイになりやすいです。
 物語はもやもやするようなオチ×3周という按配なのでどうにもスッキリしないところはありますが、戦闘描写は力が入っていてライターの意欲を感じます。ただ、良くも悪くも設定的にもパターンにはまりやすいので少しばかり単調な嫌いがあります。終盤に特異点設定が崩壊するのも賛否ありそうです。
 ヒロインシナリオはイベントが被り気味でやや寂しいものを感じます。シナリオの中身も一本道な本編に比べると取ってつけたようで重みを感じません。せっかくヒロインたちの姿は魅力的に描けているだけにもったいないです。
 日常の掛け合いはそれなりに盛り上がりますが、当該ヒロイン以外がなかなか出てこないのがもったいないところ。言うまでもなく4人の方が何倍も楽しく、各ヒロインのリアクションも多めで個性が出ているので。
 惹かれ合う過程はヒロインごとに差があります。順を追って丁寧に書かれたものから、まるですり替えたような強引なものまで三者三様です。
 Hシーンは各ヒロイン3回ずつ。正直に言ってエロくありません。ここはあんまり高レベルの融合を目指していないように見えます。本作を見ると純愛系タイトルのエロ度は本当に高くなったのだなぁ、としみじみ感じます。

 CGは非常にアンバランスです。銃器にこだわっているだけあって戦闘に関するカットは迫力があって優れたものが多いです。一方でヒロインやその他については気になるものが散見されます。シナリオの項でも触れましたがデートする場所の使い回しやとあるヒロインの秘密に関する描写が絵的にまるで配慮されていなかったりと、未確認攻性体の圧倒的な使い回しバリエーションを含めて省力化の傾向が見えます。基本的なレベルが高いだけにもったいないです。
 Hシーンはヒロインの可愛らしさは出ているものの、エロ度の不足を感じます。

 音楽はしっとり聞かせてくれるものから、ひりつくような戦闘シーンのものまでレベルの高い曲が揃い踏みです。サントラが付属していないのがとても残念に感じます。単体でも十分に聞けるだけのクオリティです。本作だと意外に感じますがギャグシーン用の曲もしっかりと用意されています。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技は適材適所という言葉が相応しいくらい、しっかりしたキャスティングがされています。男性陣の輝きが目立ちますが、どうしてどうして女性陣も負けてはいません。特に夜曹寺愛役の真地未亜さんは演技の使い分けがギャグになるという変わった面白さを生んでいましたし、それがシリアスなシーンではさらに活きていました。

 まとめ。息切れの見えるデビュー作。やりたかったことはある程度、達成されていると思いますが、後味の良さに繋がっていないのが悲しいところ。何か足りないところがあるのは仕方ないですが、それがイメージの悪さとなるのが設計ミスを感じさせます。一本道なのだから1周で終了、くらいの割り切りが必要だったのではないでしょうか。次回作があるなら期待したいです。
 お気に入り:夜曹寺愛
 評点:60

 思い入れがもうひとつなのでキャラ別感想はありません。