家飛-カットビ!-(Terra Lunar)

 あり得ないことが起きた。悪魔のような幼なじみ、小鉄おとねから金田晃二郎(変更不可)はいきなり告白されたのだ。どう考えても信じられない晃二郎が一笑に付したのも束の間、今度は家が空を飛んだのだ。果たして、金田家の行く末は。

 Terra Lunar第4弾。ここはかなり早い段階から製作ラインが複数流れているようで同じチームの作品がなかなか出てきません。それでもブランドに対する一定の信用ということで「ロケットの夏」が面白かったこともあって購入。

 システムはあらすじとは打って変わってごく普通のアドベンチャースタイル。細かいところでも別段、変わったところはありません。
 足回りは「ロケットの夏」とあまり変わりなく。メッセージスキップは既読未読を判別した上で実用的な速度。ただ、ボイスの頭出しをする必要はないような気がします。
 メッセージの巻き戻しはウインドウ単位で行いますが、それほど戻ることができません。選択肢表示中には使用できないもの同じ。このあたり、もうちょっとなんとかして欲しいところです。
 理由はよくわかりませんが、立ちCGの表情変化時にやけに時間がかかることがあります。クリックすると変わることがあるような気がします。

 シナリオは起承転結の「転」から始まる物語。ボリュームもそれに準じた短さ。
 家が飛ぶ、それが一切の溜めがない冒頭に起きるためにプレイヤーの感慨はゼロ。以降に起きるイベントも日常描写なくしての非日常描写であるため、少しも効果的ではありません。そもそもタイトルの家が飛ぶ以上の驚きがない時点で如何ともし難いものが。
 全体的に荒唐無稽の度が過ぎます。状況を作り出すだけでなく、望む方向に展開させる時にも都合よく持ち出すのでハッキリと白けます。一見なんでもありの作品でも、その作品ならではのルールがあるものです。それが作品を無軌道にせず、しっかりと締める訳ですが、この作品は緩みっぱなしで良いところがありません。
 主人公とヒロインが互いに惹かれていく過程にも大層苦しいものがあります。ストックホルムシンドロームを踏まえて好意的に考えてもやや厳しいように感じました。
 ライター3人制による弊害も見られます。各シナリオで主人公のヒロインに対する態度や、そのヒロインのキャラにかなりの差があります。これもまた他と同様、印象が悪くなる要因になっているかと。
 この作品にはテーマと呼ぶべきものが見えません。各シナリオを終えた後、一体何のためにそのシナリオを書いたのか、その目的は何のなのか、疑問を持つことがほとんどでした。言ってみれば「家が飛ぶ」、その思いつきから一歩も前へ進んでいないのではないでしょうか。

 CGはカットによって差があります。ものよっては同一人物に見えないことも。
 立ちCGはそれなりにバリエーションはあるものの、シナリオでの使い方があまりよくない感じを受けました。ピッタリの使い方があまり見られなかったような気がします。
 水彩画調のカットやSDカットなどなぜかCG鑑賞モードに登録されないものに魅力あるものが多かったように思います。
 
 音楽は同じ曲をよく使う傾向があるんですが、それがあまり耳に快い曲とは思えませんでした。
 本作にはボイスがついてます。どうも作品によってついたりつかなかったりするようですね。デビュー作にはついていたようですし。肝心のレベルは今ひとつ。個人的には聞くに堪えないキャラも。出演者のレベルにハッキリと差があるようです。

 まとめ。誉めどころに苦しむ作品。シナリオのところでも書いてますが、どこに楽しみを見つければいいのかわからない感じでした。傾向としてですけど、Terra Lunarの株は右肩下がりなのではないでしょうか。1作目の「しすたぁエンジェル」、2作目の「ロケットの夏」は世間的にも良い評価を受けていると思うのですが、そこから先は……。
 お気に入り:どこを探せと?
 評点:15

 書きたいことは日記の方で書いたのでキャラ別感想はなし。