恋色空模様after happiness and extra hearts(すたじお緑茶)

 2010年に発売された「恋色空模様」のファンディスク。
 購入動機は本編の力の入った内容に感心したのと企画内容がなかなか良かったので。
 初回特典はスペシャルマキシCD。予約キャンペーン特典はお楽しみブックレット。これがパッケージに収納可能なのは実に嬉しい仕様です。

 コンテンツはサブタイトルが示すようにヒロインたちとのその後を書いた「after happiness」シナリオとサブキャラを昇格させた「extra hearts」シナリオの計9本。どちらも本編に続く話数形式で遊べるようになっています。前者は24話からそれぞれの続きシナリオ、後者は21話から共通シナリオが始まって終盤に分岐します。1周目は「extra hearts」シナリオからしか始めることができませんが、2周目以降は制限がなくなります。
 足回りは恐らく進歩していません。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。本編では選択肢間が長かったので相対的に待ち時間が長くなりましたが、今回は選択肢がひとつしかないので問題ありません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですが、それほど戻ることができません。ロード直後にも使用できます。
 メッセージウインドウに一切のアイコンなどがなく、右クリックでメニューを呼び出してからでないと各機能が使えないのはちょっと不便です。
 次回予告、前回のあらすじは本編同様に用意されていますが改善はまるで見られません。2つが連続で発生するのでセーブも難しいだけでなく(クリックするとスキップしてしまう)、連続で聞くことになるのであまり意義がありません。せめて「あらすじから始める」機能があれば違ったと思うのですが。加えて本作では各シナリオの最初のあらすじが短すぎてまるで意味をなしていません。本編の発売から1年7ヶ月が過ぎているのですからもう少し考えて欲しかったように思います。

 シナリオは様々な意味でパワーダウンが目立ちます。1周目に45時間かかった本編が信じられなくなるような短さです。同じ分量の中でも描写が非常にあっさりしている印象があります。
 掛け合いは良く言えばお馴染みですが、悪く言えばマンネリで、ひたすらに同じことを繰り返すシーンが目立ちます。さすがにちょっとワンパターンが過ぎるように感じました。また、本編のイベントの細かいネタを平然と使うので時間がある人は復習しておいた方がいいかもしれません。
 共通シナリオはサブキャラをヒロインに昇格する儀式の場という体裁のようでかなり強引さが見受けられます。結果的に本編とはキャラが違うように感じられる描写も散見されました。三木真智子に至ってはリニューアルされた別キャラと評しても過言ではありません。
 選択肢がひとつしかない影響なのか恋愛描写が実にいい加減です。特に恋仲になるシーンはいずれのシナリオも目を覆わんばかりの出来で悲しくなります。主人公がまるで動くことなく受け身なのも一因です。
 サブキャラからヒロインへの昇格にあたって本当の意味でのプラスがなかなか感じられないのが残念なところです。本編では感じられなかった、知らなかった要素が三木真智子以外にはあまり見当たりませんでした。個人的にはみな昇格しきれていないように見えます。
 一方で「after happiness」シナリオの方にはそうした問題点があまりありません。後日談の旨味がほどよく出ているシナリオが多いです。ヒロインの魅力もうまく抽出できています。ただし、ボリュームの方に圧倒的な問題があって、どのシナリオもとても短いです。題材の料理もその尺ゆえか、とても雑で拍子抜けなことが多いです。
 Hシーンは各ヒロイン3~5回。ファンディスクと考えるとバリエーションに乏しいように感じます。エロ度は本編同様にほどほどというところ。

 CGはこだわりの感じられた本編に比べておとなしくなりました。立ちCGによる演出は本当に賑やかで感心したのですが、今回はシナリオの内容のせいもあるのか、とても普通です。
 素材の量に関しても物足りなさを感じやすいです。二度のデートの機会に二度とも制服を着てくるなど明らかに節約しています。お楽しみブックレットには私服のラフがあるだけに今回も原画家の魅力を活かしきっているようには見えませんでした。
 また、本編でもそうでしたがテキストと原画が合致していないところも相変わらずです。橋本優喜はテキストを読む限り巨乳キャラの枠に入るように感じるのですが、原画では普通というか貧乳扱いされているキャラたちとあまり変わりません。大きいとしても背が高いからのように感じます。
 Hシーンはなるべく全身を入れようとしている構図が多いせいか、どうもあまりエロさを感じません。半脱ぎ要素も弱く衣装の良さがあまり出ていないように見えます。
 立ちCG鑑賞は今回も用意されています。

 音楽は本編のものに新曲も加えて構成されています。日常の曲に変化がないため違和感を感じることなく混ざっています。ボーカル曲も3曲とファンディスクにしては豪華です。しかし、鑑賞モードではなぜか立ちCGの鑑賞モードとは違って旧曲は聞くことができません。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。今回も良質の仕事を各声優がしてくれています。以前とは演技が違うということもありません。

 まとめ。企画内容のわりに寂しいファンディスク。本編のコストパフォーマンスと本作の価格(税込み8190円)を考えると質量ともに物足りなさが際立ちます。4ヶ月の延期もそうした悪いイメージを助長してしまいました。もったいない感が強いです。ライターが実は2人になっているというのも影響を感じさせます。
 お気に入り:内海静奈
 評点:60

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、橋本優喜
 中身のないシナリオに泣けてきます。デートの時に何の意思表示もなく制服で現れたゆっきーが信じられませんでした。まっちゃんならばともかく。
 聖良がさんざんネタにしていながらもまるで成長したように見えないCGにもちょっと泣けました。
 Hしている以外に特に内容がないのも残念。

2、中西藍子
 なぜか中西藍子シナリオではなく、気がつけば妹さまを含めた3人シナリオに。まさに本末転倒。ファンの声を無視したととられても仕方ないと思います。せめて分岐であったなら。結局、どちらかと言えば伊東美琴エンドその2という感じになってしまいました。

3、毛内清美
 なぜかバニースーツによる静奈さんを含めた3Pなし。どういうことなのかスタッフに問い詰めたいほどでした。中西藍子シナリオでは伏線もなくあったというのに。
 主人公が好きという清美さんは全キャラ中で一二を争うほど違和感がありました。

4、三木真智子
 メガネのせいなのかどうなのか見事に巫女さんにジョブチェンジ。もはや何もかもが違う領域に。本編でまっちゃんを攻略したいと思った稀有な人はこれで納得しているのでしょうか。