LOVELY×CATION2(hibiki works)

 学園の2年生に上がったのを期に独り暮らしをするようになった和久須響(変更可能)。その気ままぶりで町中を散策していたら神社でとんでもないことを宣言される。今すぐ人生の伴侶を作らなければとんでもない人生になると。すっかり真に受けた響は彼女探しをすることに。

 hibiki worksの新作はタイトル通り”2”ものAVG。
 購入動機は唯々月たすく氏の原画買い。1作目を買っていないことを考えると彩色の方向性もあるようです。
 予約キャンペーン特典は特製A4下敷き4枚組セット。初回特典はオリジナルサウンドトラックCDとA5壁掛けカレンダー。

 修正ファイルが出ています。わりと重要な内容も含まれているのでダウンロードしておきましょう。

 ジャンルは少しばかり変わったシステムを備えたADV。
 趣味同調システム。本作はマップ移動で得たアイテムで自らのパラメータを成長させていくゲームです。そのパラメータをヒロイン好みにしていくと様々な追加差分が見られるようになります。ただし、意外とわかりにくさを持っているシステムなので発動中はメッセージウインドウにパラメータに応じたアイコンが出現します。
 ラブリーコール。ヒロインが主人公のことを名前で呼んでくれるシステム。登録数には限りがありますが、愛称のようなものもあるので意外と多くの名前をフォローしています。プレイ中にオン・オフも自由にできます。ただし、バックログに反映させることはできません。
 ウォーキングトークシステム。ヒロインがまるで横を歩いているようにアニメーションしながら会話するシステム。思った以上にそれらしく、これまでなかったのが不思議に感じられます。しかし、日常会話用という感じで重要な心境の変化があった時や悪天候の時などにはありません。
 難易度変更可能で通常のほかイージモードも搭載されています。

 足回りは平均レベル。メッセージスキップは既読未読を判別して高速ですが、幾つかの場面で自然に止まりやすくなってます。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応(マップ画面時はアイコンからしか起動しません)、ボイスのリピート再生も可能ですがそれほど戻ることはできません。ロード直後でも使用できます。
 ウォーキングトークシステムのせいなのかは不明ですがNo waitがありません。

 シナリオは脆弱で物語性はほとんどありません。かろうじてある部分もお世辞にも良い出来とは言えず、ないと考えていた方がいいレベルです。起承転結など気にしない方がいいでしょう。
 基本的に都合の良いことしか起こらないため、ヒロインがマイナス方向の感情をほとんど見せません。喜怒哀楽の表現は幅が予想以上に狭いので事実上、喧嘩することはほぼありません。恋人との生活という意味ではいささか起伏に欠けます。
 4月~5月の話なのであまり学園行事がなく、イベントもそれに応じるためなんとも普通の日々が基本です。日常の掛け合いは後述する理由もあって盛り上がりません。そもそも多人数会話がなかなかないので。ヒロインとの1対1の会話がメインです。何気ない会話が充実しているのは良い感じですが、一方で取得アイテムに応じた会話が仕方ありませんが、とても不自然な感じです。イベント仕立てになっているものはまだいいですが、そうでないものはもうほとんど持ち物検査みたいになっています。実際、それを意図したようなアイテムと会話があります。
 惹かれ合う過程はなかなか苦しいです。描写そのものはあるのですが、上述したようにとても都合が良いため既定路線に見えてしまって、あまりそうとは見えにくくなっています。4人のヒロイン中3人が告白してそのままHシーンになだれ込むのも過程の乏しさを感じさせます。
 Hシーンは各ヒロイン9回以上。ゲーム性のある作品だけにノーヒントで最初から全て埋めるのは難しくなってます。特に特定のアイテムが必要になるシーンはわかりにくいです。尺はそれほど多くはなく、エロ度は純愛系にしてはなかなかエロくなっていますがヒロインによっても差があります。属性が大きく影響しているように感じます。

 CGはものすごい思い切りが感じられます。なんと立ちCGはヒロインしか存在しません。4人しかいないというのに、です。作品としてヒロイン以外はどうでもいいというこだわりなんでしょうか。登場人物がとても少ない作品ならばいざ知らず。サブキャラにもそれなりに出番があるため慣れるまではかなり戸惑います。ついでにイベントCGもほとんどヒロインだけしか描かれていません。申し訳程度に主人公がいるのみです。
 肝心の割り切ったヒロイン立ちCGは非常に良い出来です。衣装が多く、表情も実に多彩。立ちCG鑑賞モードの存在が嬉しくなるほど。
 Hシーンに重点が置かれているのとシステムの性質上、イベントCGを見ない期間というものが長く起きやすいです。ただし、全体のプレイ時間はそれほどでもないため、プレイがまずくともそれほど深刻な事態にはなりません。

 音楽は作品の方向性ゆえか、おとなしい感じの曲が多いです。BGMに徹している印象を受けます。また、シーンによってはあえて無音にしているような演出も見られます。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。立ちCGのないサブキャラもボイスだけはしっかりとあります。演技の方は特に問題なく、ラブリーコールの違和感は思ったよりも少なめです。しかし、頻度はそれほどでもないので慣れるまではいきなり言われて驚くことも。主人公の名字はデフォルトネームだとボイスのフォローがあります。

 まとめ。予想以上に限定的な作品。ヒロインとの交流のみ。それ以外は一切、期待しない方がよりイメージは良くなるでしょう。個人的に1は未経験ですが、2にしては物足りないように感じました。前提であるシステム部分にパワーを使いすぎているようにも見えます。
 お気に入り:韮崎日向、出水和琴
 評点:60

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、成川姫
 個人的には最も残念な娘さん。ボイスが夏野こおりさんでなければ本当に危ないくらいでした。個々はそうでもないと思うんですけど、それらが全て集まった時にとても残念な印象になってしまうと言いますか。シチュエーションしかり、構図しかり、終盤の山場しかり、男っぽい娘さん設定しかり。
 ニヤリな表情もあまり好きになれなかったですね。キャラが違って見えてしまいますし、良くない意味での嫌らしさみたいな表情に見えるので。他ヒロインと一緒にいる時に目撃されてこの表情をされるとホントに嫌だなー、という気分になってましたから。

2、韮崎日向
 すげぇ、悪いことをしている気分になれるヒロイン。お父さんがいい人すぎるだけに余計に! 手塩にかけて育てた娘を1ヶ月もかからずに落としてしまうなんて。後ろめたさが半端なかったです。告白→即Hもシナリオ的な工夫のなさだけでなく、倫理的にも一番の問題行動に見えました。なんでダッシュターボかけてんのよ、くらいのいたたまれなさでしたわ。サイクリングイベントでも日向に言われてますけど、主人公ってば嫌なら止める、って言っておいて実際には止めないからね! 主人公の罪深さは相当なもんだと思います。
 2人でひとつのパフェを食べることに何の抵抗もない様子はとても不思議でした。まだカップルになっていないのに。食べる条件よりもそっちの方が重要だと思うんだけどなぁ。
 大会に行かないで姫のいるレストランに行く主人公は何者かと思いました。別に見学できないってこともないはずなんですけど。よその学園でやる訳でもないし。
 1周目でサイクリングイベントが出なくて(クリア後のタイトル画面で丸わかり)、どんなパラメータやアイテムが必要なんだろう? と真剣に悩みました。2周目でもうまくいかず3周目でうまくいってまさか、でした。リボンをプレゼントしないだけってなぁ。今までと違う方向だけに絶対アイテムだと思ったのに。

3、吉野谷星音
 うん、理解しました。表情が出ない、ってのはエロゲーには重すぎるハンデですわ。イベントCGでも能面のような顔はいけません。ぜっかくの気合の入った背景とかあっても悲しくなってしまいます。かなりのシナリオ的な上手さが必要でしょう。彩りが足りないと感じてしまいますから。無口系クールキャラとは全く意味が違いますからね。向こうは感情が出ない訳ではないですから。しかも、最終的に特訓の甲斐もなくそのまんまというオチでは一体、何のために、という悲しさが。もうなんでもいいじゃん、っていう。作曲とかピアノとかも完全に意味不明。
 入学2ヶ月で子どもできました、はかなりの衝撃ですなー。親御さんの気持ちを考えると同情しますわ。まぁ、あんな性欲魔獣を野放しにしたのがいけないんでしょうね。間接的には神主のじーさんにも責任があると思います。この主人公、中学の時に彼女ができていたら毎年、子供をこさえて学校の伝説になったと思います。ボテ腹ゲーの主人公にこの上なく向いてますね。

4、出水和琴
 謎の特別扱いが光ります。インタビューで前作から年上キャラがひとりだけになった、というのが関係しているんでしょうか。1人だけ途方もなくイメージが良いです。イチャイチャライフを実感できた、と言い切れるのはこのシナリオだけですね。日向シナリオも悪くないですが、あれは同じアパートであることが逆に特別さを減じていると思います。ウォーキングトークに努力がいらないというあたりが。そのへん和琴シナリオは待ち伏せしてみたり、といったストーカー寸前の行為がギリギリですが良かったと思います。
 個人的に和琴先輩はエロかっただけに袴がスカート状なのが残念でした。Sになりきれない中途半端さが逆に目新しい感じで好ましかったです。大抵の作品は戸惑っているのは最初だけですぐにドSになじんでしまうので。