Magical Marriage Lunatics!!(MOONSTONE)

 牛尾勇太(変更不可)はどこにでもいる普通の少年だった。少なくとも本人はそう思っていた。ところが、ある日、不思議な目に遭ってから異世界の姫と名乗る美少女たちが次々と現れる。誰もがみんな勇太と契りを交わしたと言って。そんな状況に隣に住む幼なじみも黙ってはいられない。かくして勇太争奪戦の幕が切って落とされた。

 MOONSTONEの新作はハーレムな状況から始まるアドベンチャー。
 購入動機は一応はブランド買い。それも、かなり怪しくなってきましたが前作のファンディスク「Princess Evangile~W Happiness~」が予想よりも良かったこともあって取りあえず継続で。
 初回特典は特になし。予約キャンペーン特典はオリジナルサウンドトラック。

 ジャンルは標準的なアドベンチャー。ダイレクトなヒロイン選択方式です。
 足回りは代わり映えしません。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが、かなり遅めです。テキストが読めるくらいに。クリック後、システムボイスが終わってから始まるというのも地味にきついです。選択肢間が長いこともあって2周目以降のフラグ立てはなかなか面倒で時間がかかります。暇つぶし道具があった方が良いでしょう。
 バックログは別画面とウインドウの2種類が用意されています。ホイールマウスに対応(後者が起動)、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることができません。ブロック単位の管理のせいか、戻れる量は一定しておらず、そのせいでロード直後にもほぼ使用不可となります。
 もはや恒例となった時間差起動ディスクは本作でも健在です。およそ1週間後という忘れたころに来るので注意が必要です。個人的にはオールクリアしてこのゲーム感想のために起動したら要求されました。
 MOONSTONEでも前回の続きから始めるCONTINUE機能が搭載されました。これは便利なので一般的にももっと浸透してほしいです。

 シナリオは都合の良さが際立ちます。6人の婚約者候補の存在を筆頭に主人公にとても優しい、優しすぎる世界観が特徴です。その行動は全て肯定され、現実世界なら問題となる行動も全方向から褒めそやされます。必ず5人の婚約者候補を振ることになる訳ですが、罪悪感はゼロです。相手も不自然なほど、すんなり諦めて祝福してくれます。控えめに見ても主人公は魅力的な人間とは言い難く、現実との乖離に時折めまいを感じることもしばしばです。前作の主人公とは比較にもなりません。
 全編を通してまともなシナリオが用意されているとは言えず、萌えゲー的な嬉し恥ずかしな描写も乏しく、企画の動機を疑いたくなります。多めの分量も完全に逆効果です。この設定でハーレムルートがないのは承知していてもなお色々な意味で不自然に思えるほどでした。最もまともなのが共通シナリオの美琴(非ヒロイン)のミニシナリオであるあたりからも本作の歪さが窺えます。
 日常の掛け合いは潤いに乏しく、ハッキリ言って楽しさに欠けます。キャラがあまり立っていないのも関係しています。これという魅力をなかなか打ち出せないのですから。他愛ない会話が少なく、またそこに意味がないあたりも影響していると思います。ライターの素養として、こうした作品が向いていないのではないでしょうか。パッケージの「恋のバトル」とかどこにもありません。
 Hシーンは各ヒロイン4回ずつ。中には場所に困ったのかエピローグに用意されているヒロインも複数います。基本的に連戦が多いので尺は長いです。ただ、お世辞にもシチュエーション、テキストともエロいとは言えない上に、連戦は基本CGが変化しないのでテンポが悪くなりがちです。効果も上がっていないのではないでしょうか。主人公の動機に呆れるものが多いことも興を削ぐ要因になっています。

 CGは非常にクセが強く出ています。キャラクターによりますが立ちCGとイベントCGで基礎的な表情が異なるケースがそれなりに見受けられます。立ちCGはポーズ変化こそ用意されていますが、どれもあまりにも決めポーズ過ぎて見ていて落ち着かない気分にさせられます。特にサブキャラの渋谷めぐみはポーズがひとつしかないだけにそうした印象が強いです。また、一部キャラのSD表現的な表情が露骨に可愛くありません。ポーズ変化させることなく顔の輪郭の中だけでSD表現的な表情を用意するのはかなりのセンスが必要です。残念ながら本作はそれに失敗しています。
 イベントCGはイベントの少なさを実感させられるものが多いです。振り返った時にどんなイベントに用意されていたか思い出しづらく、また個性あるイベントCGに仕上がっているとも感じにくいです。Hシーンはシチュエーションも相まってかエロ度はもうひとつ。なぜか、人間ヒロインの白波瀬悠奈だけ非日常的なシチュエーションが多くエロ度も高めです。

 音楽はとても有名なウェディング曲をアレンジしたタイトル及びオープニング曲のインパクトが強いです。作品の内容がイメージしやすい良い曲だと思います。ただ、他の曲は総じておとなしく、個の主張が弱く感じられます。逆に言えばBGMに徹しているということかもしれません。
 ボイスは主人公のほか名前のないようなキャラにはありません。名前があってもないキャラもいます。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。DVD2枚組が嘘のような作品。呉氏が疲れているのか、ちょっと信じがたい出来です。これでは次回作はよほど魅力を感じる企画でないと厳しすぎます。物語らしい物語がなく、エロ重視の作品でももちろんない。ちょっとどうしたらいいのかわからない感じになってしまいました。ホントにどうしたんでしょうね。心配です。
 お気に入り:ルルーナ
 評点:55

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、ルーチェ・ヤミ・アスタリテ
 中央に立つヒロインとしては役者不足です。シナリオの方向性もひとりだけ暗いというのも頂けません。吸血鬼ヒロインとしての魅力という意味でもちょっと疑問符がつきます。
 立ちCGのSD的な表情が圧倒的に可愛くない。

2、天樹カリン
 引ったくりイベントに唖然としました。普通の人間の振りをしているのにバイクに走って追いついて押し倒すとかどういうこと。事情聴取もバッチリ受けましたって意味がわかりませんよ。
 終盤のHシーンでシーツを変えるのが面倒だから家を移動する、って意味がわかりませんでした。シーツを変える方が楽そうですけど。あといくら真夜中と言っても全裸で移動するんですか? 違うのならなおさら意味不明です。

3、ユリア・リン=ロード
 結局、意外性のない話になってしまったような。サキュバスが苦手な私のイメージを変えることはできませんでした。この手の話にありがちなお母さんの方がいい、ということもなかったのが残念。

4、美都之玉依姫
 共通シナリオの重さを感じさせる言動は前振りでもなんでもなく、ただのハッタリでした。
 正座で足が痺れる女神ってすごい微妙だなぁ。

5、ルルーナ
 菱形の口が大変よろしいです。もっとギャグっぽく大きいとさらに良かったと思います。トシちゃん@「マカロニほうれん荘」とかタマネギ@「パタリロ!」くらい。現状ではウインドウサイズでは判別不能なくらいに小さいです。
 本作の真打ち。魅力もしっかり打ち出せていたと思います。契りが絶対ではないというある種のアンチテーゼにもなっていたのではないでしょうか(まぁ、そうは言っても契りがあったから出会えたんですけど)。

6、白波瀬悠奈
 唯一の人間ヒロイン。そのせいか、Hシーンがひとりだけ特殊方向に突っ走っていて大笑い。
 時給1000円て舞台はどこなんでしょう。そりゃ身内に甘いに決まってますわ。ふざけるな。
 全然、互いのことを知らない幼なじみ同士に愕然。好みも知らなきゃ運動ができるかどうかも知らないってなぁ。
 悠奈のお母さんではなく自分の嫁を5人も探してくる主人公こそ死んだ方がいいと思います。能力持ってるくせに何年かけているんだか。これが無意識だってんだから怖いです。