メイドさんと大きな剣(May-Be SOFT)

 ごくごく平凡な日々を送っていた神楽堂槙人(変更可能)はある日、父親に告げられる。実は神楽堂家は日本に冠たる一大財閥で自分はそのひとり息子であると。一笑に付した槙人であったが、それならと荷物と地図を持たされて追い出されることに。
 果たして郊外の示された場所には巨大な屋敷があった。間違いなく神楽堂家。そして、槙人を出迎えたのは巨大な剣を背負ったメイドにして優等生のクラスメイトであった。

 May-Be SOFTの新作は読んで字の通りなアドベンチャー。メイド属性はありませんが、あかざ氏の原画目当てに購入。

 修正ファイルの類は出ていませんが、私の環境では音楽が原因で強制終了することが時折ありました。

 ジャンルはパッケージによるとご奉仕メイドさんと大剣バトルAVG。システム的にはおなじみのソレで特別に変わったところはありません。
 足回りは標準程度。メッセージスキップは既読未読を判別しますが速度の方はもう一歩。端的に言えば遅いです。使う機会はそれほどでもないとはいえ、選択肢間はそれなりに長く暇潰し道具が欲しくなるかと。
 バックログは別画面で行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。戻れる量はそれなりに多く、ロード直後にも使用できます。

 シナリオはちょっと変則風味。ジャンル名にもある大剣バトルの部分は尺も長く非常に読み応えあるものに仕上がっています。いわゆるシリアス系の作品にも引けをとらないレベルです。一方でバトル以外(個別ルート含む)はいつものメイビー流といっても通用しそうなお手軽な内容とボリューム。このふたつには歴然とした差があり、メイドさんと大剣よりもむしろこちらがミスマッチではないのかと思うくらい。
 ミスマッチを狙っているくらいですから当然、世界観は現代そのまま。そこに巨大な剣をしょったメイドさんが紛れ込んだ、そんな按配です。そのメイドさんは常識と非常識が入り交じった存在で、この作品ならではのメイドさん像を体現して見せてくれています。メイドなのに学園に通ったり、主人にタメ口をきいたり、そうかと思えばメイドとしての仕事は完璧だったり。真面目なのか不真面目なのかよくわからないメイドさんとのやりとりは意外にもなかなか面白いです。ただ、学園は舞台として添え物程度。メインは屋敷や電気街にあります。
 戦闘描写は前述したように読み物として十分なレベルにあるのですが、その名目はあくまでメイド同士のいわば練習試合であるため最終的には盛り上がりが足りず、飽きやすい面も。
 主人公はご主人様ということで日常から激しいセクハラ攻勢。扉が少しでも開いていたら迷うことなく覗くのは基本中の基本です。最終的にはご主人様特権を振りかざすことも。
 Hシーンは各ヒロインにばらつきがあり3~5回程度。ただ、ゲーム的にカウントしにくいところもあるので微妙ですが。ハーレムシナリオは存在しますが、おまけくらいに考えておいた方が無難です。

 CG要素は色々と頑張りが見られます。昨年9月に発売された「炎の孕ませ転校生」を皮切りにテックアーツ系ブランドのタイトルで搭載されているアニメーションはもちろん本作でも健在。これまではメッセージウインドウ部は除外扱いでしたが、遂にフル画面になりました。イメージ的には基本CGと差分CGの間が滑らかに動く感じです。
 「へんし~ん!」シリーズの局部サポートウインドウはご奉仕ウインドウと名を変えて今回も。名前を変えたのは伊達ではなくウインドウ内はアニメーションします。構図による角度フォローはもちろんですが、エロ度上昇にも貢献しているかと。
 ほとんどのHシーンでこの2つのアニメーションのうち、どちらかが用意されていて高い効果を上げています。
 戦闘演出には多彩な剣の軌跡CGを用意。対戦を盛りあげています。しかし、剣筋の素材は豊富でも人物の方はとても少なく苦しさが見え隠れ。せめてもう少しくらいは欲しいところ。戦闘中のアニメーションは必殺技のみ、過剰な期待は禁物です。
 立ちCGはポーズ変化は少なく、表情で勝負する方向性。その表現は大げさでSDっぽいものが多くを占めています。
 イベントCGは1枚1枚のクオリティは申し分ないのですが、如何せん枚数不足が目立ちます。差分を除いてしまうと剣やSDカットを含めても79枚しかないというのは原画家のファンとして少し寂しいです。

 音楽は硬軟とりまぜ場面に応じたものをしっかり用意。終わってみるまでわずか10曲(うち1曲はインスト)とは思いませんでした。戦闘の曲は特に力が入っていて耳に馴染みやすいです。
 ボイスは女性キャラのみフルボイス。主人公以外の男性キャラはほとんど登場しないのでそれほど大きな問題ではないかと。演技の方は特に問題なし。戦闘時の気合の入った声も悪くなく、脱力するなんてことはないと思います。
 ちなみに主人公はデフォルトネームのままだとボイスのフォローあり。

 まとめ。タイトル通りであり、そうでもない作品。大剣バトルとご奉仕シチュエーション、このまったり融合具合が本作の味。全体的には力を抜いて楽しむお手軽系の作品かと。アニメーションも含めて次作以降にも期待したくなります。
 お気に入り:行葉棗、環零那
 評点:72

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、御剣咲耶
 生い立ちゆえに二重人格っぽくなった彼女ですが、結局のところそういう今の生活をどう思っているのかよくわからない。まぁ、コンプレックスと言っても望みが高すぎるゆえによーわからんという感じですか。何を持ってバルムンクが相応しいかってのもわからない訳だし。
 メインヒロインゆえのエロ担当という役割はナイス。なぜか他のヒロインのイベントに出張して巻き込まれるようにHシーンに雪崩込むあたりがなんとも。優等生なのになぁ、とか思いながら見ると楽しいです。
 メイド喫茶のイベントは結構なんですが、制服が変わると咲耶なのか瑚乃葉なのかよくわかりません。ヘルプに来ているなんて言っていたしねぇ。
 どーでもいいですが、棗シナリオの時と魔剣躍進の理由が違うんですねぇ。

2、愛染理緒
 やはり、こういうコテコテの年上キャラは苦手です。他の3人と比べてプレイ意欲がすごい低くて苦労しました。理緒先生だけはお手軽シナリオで良かったと真剣に思ったくらいで。両刀使いなところもアレですが、能力的にひとり優遇されているイメージがあるのもねぇ。

3、行葉棗
 Hシーンのあるカットを戦闘でも使う唯一のヒロイン。理緒シナリオはびっくりしましたよ、そりゃもう。まぁ、確かにそういう絵に見えなくもないですが。
 苛められキャラであるからか、それともただひとり主人公より年下だからか思う存分セクハラされている感じです。序盤は性知識がほとんどなかったのにねぇ。罰掃除イベントやプールイベントなんかは馬鹿っぽくてお気に入りです。
 それにしても必殺技を見る限り、棗の流派は飛天御剣流ではないかというイメージが。どう見てもあの奥義のちょっと弱いバージョンって感じですよ五輪燕は。

4、環零那
 一番おいしいヒロインなんですがもう一歩、有効活用しきれていません。姉妹機だとか郁葉家のアナザーワンとかネタを膨らます要素はいくらでもあるだけにもったいないですな。他にも人と変わらない、ということを強調しすぎたために結果として他の3人と差別化があまりできなかったのは残念なところ。もうちょっとここだけは人と明らかに違うという部分があった方が良かったかも。
 一番の謎は食事ができるということですよねぇ。味も細かくわかるようだし、だからこそ料理もうまいということですか。そういやセリオはレシピ通りにしか作れないし、おいしいかどうかもわからない、という設定でしたな。もしかして食べた分はエネルギーにもなっているんでしょうか。はっ!? とするとトイレにも行ったりする可能性も。環家の技術と錬金術恐るべし。
 カラドボルグはもうちょっと仕込み機能があるとトイボックスの名の通りで良かったかと。3種類くらいではねぇ。