みここ!(しとろんソフト)

 恋守町は恋の神様である巫女神を奉る3つの神社の同居する土地。巫女神祭を間近にひかえたある日、奇妙な生物を連れた黒髪の少女が和泉尊(変更不可)のもとにやってきた。なんと少女は巫女神であり、次代の巫女神に役目を譲りに来たのだという。しかも、それを選ぶ資格を持ったのが尊であり、その対象は幼なじみの巫女4人だというのだ。果たして尊は誰を選ぶのか。

 C:Driveから派生したしとろんソフトのデビュー作は「どこでもすきしていつでもすきして」の流れを組むアドベンチャー。
 購入動機は前作に未熟ながらも期待するだけのものを感じたため。
 初回特典はボーカル&サウンドトラック。予約キャンペーン特典は小冊子miracle love mix。早い話が自分同人誌。

 それほど重要なものではありませんが修正ファイルが出ています。

 ジャンルはパッケージによるといちゃいちゃしているまに奇跡が起こっちゃうADV。要するにいつものアドベンチャーですが、前作同様に序盤でヒロインを選んでそのまま各ルートに分岐するスタイルを踏襲しています。
 足回りは平均程度。メッセージスキップは既読未読を判別して標準的なスピード。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。ロード直後には使えませんが、以降はいつでも開始地点まで戻ることができます。
 引き続き残念なことに起動ディスクが必要です。

 シナリオはやはり、担当するライターによって大きく特色が分かれています。ただし、今回はあらかじめ分担が決められていたかのような綺麗な違いです。プレイヤーによって好みの方向性も分かれそうでむしろ、作品の売りにしてもいいかもしれないくらいハッキリしています。
 具体的には白神姉妹とそれ以外で、前者はテンポ重視と色物系Hシーンが多い。後者はシナリオ分量が多く、描写は丁寧ながらだれる面があり色物系Hシーンは少ない。どちらも一長一短と表現してよいかと思います。
 テキストは独特のノリがあり非常にハイテンション。ネタ色が強く、いかにもゲーム的な掛け合いなので人によっては楽しめたり、疲れたりと反応が大きく分かれそうです。
 惹かれあう過程はやや特殊。本作ではヒロインを選ぶまでの尺が増量されましたが、残念なことにそこでヒロインとの交流が描かれるのではなく、あらすじの設定を主人公に疑わせるためだけに消費しています。よって心よりも先に体が、という面は変わらないのですが基本的にヒロイン側の受け入れ態勢は最初から万全なので、結局は両思いと変わらず問題ないという複雑な状況に陥っています。これを工夫ととるか手抜きととるかは微妙なところ。ただし、武上小夜シナリオだけは例外です。そも知り合いではないのでしっかりと描かれていきます。
 Hシーンは一人当たり10以上と多いですが、エロ度は低く尺は短めです。

 CGは前作と比較して安定度は格段に上昇しましたが、その代償とばかりにデザインのバリエーションが減少したように見えます。脱がせ方もパターン通りというか似通ったものが多かったように感じました。
 立ちCGの表情変化は小さく、テキストの激しいノリに追従できていない感があります。
 Hシーンは本作でも1イベント1CGが基本です。2枚ある時は何らかの意味を持つシーンであることがほとんど。巫女ものにしては巫女服によるシーンはとても少なく、ほとんどのヒロインは半分もありません。その巫女服も馬鹿ゲー色が強いせいかコスプレにしか見えないデザインのものも(へそ出しとか)。また、設定として本作の袴はスカートだそうです。

 音楽はヒロイン毎のテーマ曲が基調となっているので場面にあまりそぐわない曲を使っていることがしばしばありました。
 曲そのものは作風に比べてパワー不足で存在感が薄かったように思います。レベル的にもちょっと芳しくないような。
 ボイスはヒロインのみフルボイス。主人公もヒロイン化した時にはボイスがつきます。各ヒロインともキャラに合致した演技構成が実践できていて好印象。中でも朱雀野華蓮役の風音さんのヨゴレ芸人のような力感あふれる演技は必聴ものです。惜しみない拍手を贈りたいほど。

 まとめ。地道な進歩が感じられる作品。それでもまだまだ惜しい要素の方が多く、今後に期待したいです。結局、掛け合いは共通ルートが一番、面白いのももったいないところ。物語が絡むとテキスト的面白さが半減してしまうのは課題にして欲しいです。巫女ものとしては期待しない方が無難かと思います。そのくらいの方が楽しめるかと。
 評点:65
 お気に入り:白神曖音

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、蒼衣心菜
 基本設定は良いと思うのですが、心菜というキャラクターの説明が致命的なまでに下手です。中盤を過ぎるまでお付き合いは順調そのものにしか見えないのに、実は全然そんなことなかったという、まさに青天の霹靂。発覚後も何がいけないのか、どうしていけなかったのかが大変わかりにくいです。心が結ばれる前に体が結ばれてしまう作品であること、その割に心菜と主人公はわかりあっている(ように見える)ことも無駄に状況を複雑でわかりにくいものにしていました。この2人の確執は周囲からするとまるで意味がわからないでしょう。
 また、これらの理由から関係性が変わることなく延々とグダグダやっているように見えてしまうところが減点ポイント。テンポが良かったはずなのにその恩恵を受け取りにくくなってしまっています。恋仲になる前となった後がきっちり分かれていると自然とメリハリもついてくるのですが。
 むっつりスケベなところは良い感じなんですけどねぇ。他シナリオの壊れ気味なテンションもキャラの幅が広くて正直とても魅力を感じました。

2、武上小夜
 3回目のHシーンで前張りお札が普通の下着になっている、なんてのはこのゲームにはどうでもいいことですな。
 ノリがハイテンションなゲームだけに恋人ではなく傍観者である時の方が楽しい人だったりします。この時点で変身を二段階、残している。この意味がわかるか? ってなキャラクター。個人的に一段階目はともかく二段階目は変わりすぎでついていけません。バカップルというよりもはや痴女の領域。だって理性でコントロール不可能なんだもん。

3、朱雀野華蓮
 本作一の勇者。風音さんの演技は世界一ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!! とか言いたくなるほどの絶妙なお仕事です。もはやヨゴレ芸人と言った方が正しいのかもしれません。このノリについてこれるかどうかが本作の試金石でしょう。
 この程度でナイムネとか言っていたら全国の微乳ヒロインのみなさんが黙っていないでしょう。ちゃんとありますよ?

4、白神曖音
 いつも強気で、人前では一見すると平然としているが実はとても恥ずかしがり屋というあたりが個人的にツボでした。主人公のお願いに弱いあたりも好印象。
 テンポの良いシナリオにお馬鹿なシチュエーションのHシーン、まともなエロさを備えたHシーン、互いの良さを引き出し合う様子などシンプルながらよくまとまっています。

5、白神陽菜乃
 残念ながら誉めるべきポイントがほとんど見当たりません。プレイヤーとして最初から陽菜乃を気に入ってないと厳しいものがあります。テキスト上でも主人公はひたすら押されている格好(そもそも陽菜乃に決めた時からして)でそれが最後まで続いてしまっています。シナリオで好きにさせてくれない、というのは痛恨です。