ミライカノジョ(PULL TOP LATTE)

 津々井孝也(変更不可)には違和感があった。いつもと変わらぬはずの日常。昔から一緒に歩んできた幼なじみたち。何の問題もないはず。それなのに何かを忘れているような気分になる。なぜなのか。答えは思わぬ人物が運んでくることになる。幼なじみの両親が営む喫茶店の雇われウェイトレス夕霧。孝也だけでなくみんなが信頼をよせる相手である彼女はなんと幼なじみが成長した姿なのだという。夕霧が語る事実とは。

 PULL TOP LATTEの新作は3Pに特化したアドベンチャー。
 購入動機は他に目ぼしいものがなかったのとコンセプトがやや気になったから。
 初回特典はオリジナルサウンドトラック。予約キャンペーン特典は録り下ろしドラマCD「カノジョたちがうっとりえっちに誘惑してくれるCD」。同梱のシリアルコードを使って夢のハーレムシーン自由自在パッチなんてのもありました。期間は毎度の1ヶ月限定。

 修正ファイルが出ています。あてなくてもクリア不可ではありませんが修正項目がかなり多いのでダウンロードした方がいいでしょう。個人的な環境では変更したコンフィグ項目がゲームを終了するとリセットされてしまう事態が発生。修正内容には何も書かれていませんが、これも改善しました。

 ジャンルは特に何の変哲もないアドベンチャー。
 足回りはまるで進歩がありません。というか、全く同じなんでしょうか。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることができません。シーンジャンプの機能が用意されていますが、なにぶん戻れる量がほんのわずかなのでほとんど意味がありません。ロード直後にも使用不可。また、ボイスの発声中に起動するとボイスが中断されてしまいます。

 シナリオは今回も良くない意味で予想を裏切ります。本作のコンセプトは「現在のカノジョと未来から来たカノジョと3人で恋するADV」です。パッケージにも書かれているので間違いありません。ここからも本作が3P特化であることがわかります。しかし、そのはずの流れに主人公が敢然と逆らいます。カノジョが2人といっても結局は同一人物。浮気には当たらない、というのが彼女たちの解釈です。ところが、それにもかかわらず主人公はそれでは不義理だから、とどちらかを選ぼうとします。あたかも普通の純愛アドベンチャーのように。下手をすれば本人の了承もなく未来から来たカノジョを帰そうとさえします。結果的に言えば3Pのシーンは多いものの、それは流されての結果だったり、時間制限の仕方のないもの、という扱いです。当然そこにはこだわりのようなものは一切なく、出来上がったものは売りとして厳しいものがあります。総合的にはどう見てもコンセプト通りとは言いにくいです。
 本作は一応、ループものになります。よって不正解の選択肢を選べばやり直しとなるのですが、正解とのテキストの差異はほんのわずか。しかし、ほとんど同じであっても既読文扱いされないため、スキップが効いてくれません。もともとのテキストが無味乾燥で非常に退屈なこともあってなかなかの苦痛です。正直、攻略サイトでも見ながらプレイするのが無駄にストレスを溜めなくて良いと思います。
 日常の掛け合いは事務的な会話が多く、盛り上がることがあまりありません。笑いの方も同様でちょっと期待するのは無理そうです。加えてループによる変化も極小であるため、せっかく違いがあっても見落としやすくなってます。
 惹かれ合う過程も4人中3人が昔から好き、である上に残った1人も事実上ありません。なので期待するだけ無駄な要素です。
 Hシーンは複数ライター制のためか、ヒロインによって数に差があります。3P特化ではありますが、2人のシーンも意外と多く用意されています。なんとなくでもフェチ系に属する作品としてはエロ度は低めです。純愛系の作品として見てもやっぱり低いことに変わりはありません。

 CGは本作の弱点とでも呼べる要素になっています。3人の原画家を用意して差分抜きで70枚しかありません。これはフルプライス作品として底割れしているといってもいいレベルでしょう。前作と比べても大きく下落しています。CG自体も昨今のレベルで考えるとあまり芳しくないカットが散見されます。そもそも起用した原画家も複数人を描くカットが得意という訳でもなさそうです。
 Hシーンはなぜか、ヒロインによって仕様に違いがあります。どうしてか瀬名乃々華だけが1シーン1枚となっていて、これを頑なに崩そうとしません。それでいて、他のヒロインは1シーン2枚が基本です。上述したヒロインによるシーン数の違いは主にここに理由があります。

 音楽は通常のシーンでもコメディっぽい曲が流れたり、とあまり状況にマッチしているとは言い難いことがしばしばありました。単純に笑いどころに該当するシーンがなかったのかもしれません。他にもBGMとして少し違和感を感じることもあり、相応しい曲が用意されているとはちょっと言いかねるところも。。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。演技の方は特に問題ありません。

 まとめ。テーマを軽視している作品。もしイベントCG枚数の少なさが3P特化のせいなのだとしたら本末転倒です。ひょっとしなくても原画家複数人制もあまり良い方に働いていないのではないでしょうか。ここ2作、信用を得るという言葉とは間逆のことをしているように感じます。
 お気に入り:特になし
 評点:50

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、垣屋小雪
 夕霧との対比のはずなんですが、おっぱいはテキストで言うほど小さくないですよね。現在の乃々華の方がなんだか、ね。小雪に限ったことではないですがキャラが弱いです。

2、夕霧
 デモとかでもどうしてこうなった、と書かれているのですが具体的には何も語られないんですよねぇ。ただ、主人公を失ったから、とだけ。それじゃ、この外見の変化の理由になっていないデスヨ。

3、瀬名乃々華
 だいぶうるさい感じ。素直になれないから見事にこじらせてます。

4、瀬名ののか(未来)
 似ているのにあからさまにこっちの方が可愛い。シナリオを考えるとこれはミスのような気がします。だってあくまでシナリオ的なメインは現在の方だものね。個人的にはリボンの色もこちらの方が良かったです。こちらはおっぱいに関しては疑惑を感じますね。わずか数ヶ月でこんなに大きくなりますか? リボンだけではなく、髪型も違うのに主人公は見分けがつかない設定なんでしょうか。セーラームーン世界的な。

5、籐野佳苗
 体験版をプレイした時はヒロインとは思いませんでした。よくあるサブキャラかな、と。過去の自分にがっかりされるあたりがすごく切ない。素直になるのがいい、と言っても全然、納得感を与えられないあたり悲しき人徳の持ち主です。

6、籐野かなえ(過去)
 手術とかを疑われるほど巨乳化に驚くのは当然。つーか、いかに建前とはいえ何年前なのよ。さらっと両親が別居しているようなネタを挟む謎っぷり。実態は違うのかもしれないけど、無駄に思わせぶりすぎるよ。

7、豊多唯月
 最後に登場という真打ちっぷりなのに主人公に存在に違和感が、みたいなことを言われる不憫な娘さん。本当に思い出しているんですか? お兄ちゃんなのに実の妹でも義妹でもないという中途半端ぶりが見事に小雪と被っています。ただでさえ、みんなキャラ立ちが弱いのに。