ものべの(Lose)

 医大生の沢井透(変更不可)は妹の夏葉と共に久しぶりに故郷に帰ってきた。そこは妖怪と人間が共存する茂伸村。懐かしくも大事な人々に優しく迎えられることで透は医師への想いをより強くする。ところが、夏祭の舞を見た夏葉に異変が起こる。わずか一晩で異常に成長したかと思えば翌日には元に戻ったり。果たして妹の身に何が起きているのか。

 Loseの新作は田舎と妖怪をモチーフにしたアドベンチャー。
 購入動機は体験版がそれなりにクオリティを感じさせるものだったため。
 初回特典はスペシャルサウンドトラック(2枚組)。予約キャンペーン特典はHシーン大増量!!ディスク。ただ、どちらもパッケージに同梱されているのでどっちがどっちという違いは事実上ありません。

 修正ファイルが出ています。それほど重要なものではありませんが、気になる方はあてておきましょう。

 ジャンルはアドベンチャーです。まぁ、たぶん。本作は選択肢がひとつしかありません。しかも、3本のシナリオのうち最後のものは2本目が終わると自動で始まります。正直ゲームと呼ぶには語弊があります。ひたすらにクリックを繰り返すのみなので。
 足回りはややクセがあります。メッセージスキップは既読未読を判別してくれますが、それほど早くはありません。ただ、本作ではメッセージスキップを使う機会はあまりないのでそれほど気になりません。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。かなり戻ることができてロード直後にも使用できます。
 本作はちょっと変わっていてセーブ、ロードという括りではなく、セーブデータという括りをしています。つまり、データを呼んでからそれをどうするのか決める形です。これが慣れるまでは意外ときわどく、通常の感覚でセーブしようとするとあっさりロードしてしまいます。上書きのアイコンも小さめなのでわかっているつもりでやってもロードしてしまう、なんてことが何度かありました(枠全体がロードでその中に上書きと削除のアイコンが小さく設置されている)。

 シナリオはシステム的な予定調和が強く感じられます。1本目と2本目を終えているから最後のシナリオがある、と書くと極めて妥当に感じられますが、それも内容によりけりです。シナリオ上での謎と呼べるものが1、2本目でほぼ全て明らかになってしまうため最後のシナリオは意義がとても弱くなってしまっています。
 読み物としても山場が消滅してしまうことで物足りなさを感じやすいです。加えて前述したように選択肢が出現しないことが薄々わかってしまうのでゲームオーバーやバッドエンドなどに対する緊張感がありません。これらは幾らでも工夫のしようがある点なのでとても残念に感じました。
 本作はどこか館モノっぽい面があります。同様のルールを採用しているとでもいいますか。舞台が陸の孤島となるせいか、そんなことを考えさせるイベントがチラホラと。どこか唐突さを感じさせるのもそんな感じ。
 日常の掛け合いは舞台である茂伸村での生活がよく伝わってきて好印象です。描写も丁寧で安心して読んでいられます。ただ、それだけにいささか退屈に感じる面があるのも確かです。特に3周目は仕切り直しとなるので強く感じやすくなっています。
 惹かれ合う過程はありません。ゲームが始まるずっと前に好感度がどうの、フラグがどうの、という話は終結しているので今さらそんな必要はありません。唯一の選択肢もそれとは関係ありません。○○ルートだから○○と結ばれる、というだけ。よってヒロインたちはライバルの足を引っ張ることを目的に会話することが多いです。
 Hシーンは標準だとそれほどでもないですが、件の大増量ディスクをインストールするとかなり増えます。ただ、あくまでも後日談なので、量があるだけにぶつ切り感が強いですし、ファンディスクではないのでIF的な試みもありません。つまり、本編の他に成長した夏葉とのシーンはないのです。
 尺は全体的にやや短め。相手に妖怪がいる以外はわりと普通のHシーンがほとんどです。エロ度も標準程度。

 CGはとても力が入っています。ヒロイン以外も手を抜くことなく、しっかりとデザインされていて落差のようなものを感じさせません。背景も同様で落ち着いた色彩で舞台となる茂伸村を描きあげています。
 立ちCGにもこだわりが感じられ、実によくお着替えします。ちょっともったいないのでは、というくらいに惜しみなく変わるので驚かされます。

 音楽はタイトルの時点でその実力を感じさせてくれます。サントラ2枚組は伊達ではないという完成度。田舎らしさを感じさせる曲の数々でしっとりと聞かせてくれます。単体でも十分に聞き応えがあります。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス。主人公は普段はボイスがありますが、お約束通りHシーンになるとなくなります。シーンの頭からなくなるのでたまに奇妙に感じることも。演技の方は実力派が揃っているので何も問題ありません。

 まとめ。とてももったいない作品。もうちょっと練るだけでぐんと良い作品になったのではないかと思えるだけに惜しいです。幅というものは大事です。
 お気に入り:夏葉(大人バージョン)
 評点:65

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。キャラ数多いですけど、書く気になるほど意味あるキャラは少ないです。めっかいとかホント意味ないよね。







1、すみ
 見た目通りの激しいロリ。とはいえ、体型の話で精神的には夏葉ほどのアレではありません。それでも、無駄に素直でないところは人を選びそうです。妖怪らしさがほとんど感じられないため、色々と拍子抜けする人もいそう。年齢も主人公と同じだし。

2、有島ありす
 良キャラのはずなのに損している印象。本作は自分のアピールがどこか小賢しく、その上、相手を貶める言動が基本なのでどうも魅力を感じる、という風になりません。イベント配置も悪い意味でそれを後押ししてしまっています。すみもそうですが、こんな感じでHシーンを量産されてもそりゃ、あまり嬉しくはならない訳ですよ。日常シーンの方が圧倒的に少ないんじゃね。

3、沢井夏葉
 おねえさんだから、という口癖に戦慄する。実際の想定年齢は幾つなんだ……。言葉の数々がある意味で完璧すぎて属性がないとどんどん距離感を感じるように。どうしてこの娘にナチュラルに女の色香を感じるのですか。沢井透は!?
 病気で大きくなるという設定がどうにも頂けない。ガチでロリな人にはそも不要だろうし、そうでない人には寸止めみたいなHシーンしかないあたり不完全燃焼すぎます。せっかく別枠があっても大きな夏葉の枠はないんですから。