ノラと皇女と野良猫ハート-Nora,Princess,and Stray Cat.-(HARUKAZE)
 
 半田ノラ(変更不可)には両親がいない。いるのは姉のような存在の夕莉シャチだけだ。しかし、母が残してくれた家には今も昔も多くの人たちが集まる。母の真似事で学童保育のような役割を地域で担っている。馬鹿だが面倒見は良かったからだ。ある日、ノラはとても大きな拾い物をしてしまう。それは今にも息絶えるのではないか、それにしてはすこぶる知識欲にあふれた冥界の皇女さまだった。

 HARUKAZEの第2弾は見事(?)地上波のCM放送も成し遂げた少しだけ不思議なアドベンチャー。
 購入動機は体験版が面白かったので。デビュー作は体験版のみで購入はしませんでしたが、少し心に引っかかっていました。
 初回特典はサウンドトラック、ファンブックに「ノラとと」台本。予約キャンペーン特典は複製色紙。

 修正ファイルが出ています。特に重要な内容ではないので当てずともクリア可能と思いますが、念のためダウンロードしておきましょう。

 ジャンルは毎度おなじみのアドベンチャー。
 足回りは平均レベル。メッセージスキップは既読未読を判別して高速です。次の選択肢へ飛ぶ機能と前の選択肢に戻る機能が用意されています。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能ですがほとんど戻ることはできません。この画面からシーンジャンプが可能ですが、戻れる分量が少ないのであまり意味はありません。ロード直後にも使用できます。

 シナリオはとてもクセが強いです。シナリオライターの個性と言っていいかと思いますが、色々と特徴があります。その最たるものがナレーションの実装。解説からツッコミまで幅広くこなします。プレイヤーには主に苦笑してもらうのが役目かと思われます。他にも個性的なキャラクターでもって想像しにくい掛け合いを展開するので遠くはもちろん、近くであってさえどこへ転がっていくかわかりません。笑いも少し変わった形で提供してくれます。これは長所であると同時に短所でもあるでしょうね。人によって好みが分かれそうです。
 日常会話は実に楽しめますが反面、物語は前振りに比べておとなしく寂しささえ感じます。うまくまとめきれていないのか散漫な印象を感じることもありました。中でも夕莉シャチシナリオは純粋に未完成ではないかと思えるほど尺、内容ともに他シナリオに比べて未熟さが際立っています。
 一風変わった「ネコのお考え」というミニシナリオが各所に挿入されます。基本的に息抜きにあたる内容で入る前に選択できたり、できなかったりします。
 Hシーンは純愛系にしてはなかなかのエロさ。その分、主人公が少しばかり別人っぽくもなりますが。

 CGはデビュー作から大幅に進化を遂げました。塗りが丁寧で作品のイメージを大きく向上させるだけのものがあります。立ちCGはその重要性をよく考えて練りに練ったのか完成度が素晴らしく高いです。高すぎて時に一部のイベントCGが負けているように感じてしまうほど。イベントCGは差分抜きで89枚と大作イメージからするといささか少なく感じてしまいます。同様にSDカットも15枚程度とかなり少なめです。
 Hシーンはテキスト以上にエロ度が高いですが、シチュエーション的には唐突なものがそこそこあります。

 音楽はサウンドトラックにするのもわかるくらい多くの曲が用意されています。多様な状況に対応するだけの種類がありますが、純粋に必要か、本作のイメージに合致しているか、という目線で見ると疑問に感じるものも少なくありません。
 ボイスは主人公を除いてフルボイス、と言いたいところですがラジオなど一部にボイスのないものがあります。演技は一様にレベルが高く、キャラクターの個性も相まって聞き応えがあります。中でも黒木未知役の遥そらさん、明日原ユウキ役の桐谷華さんの演技はちょっとくせになるくらい、いい味を出しています。次になんと言ってくれるかが楽しみでした。

 まとめ。サナギのような作品。芋虫がたくさんの栄養を得て、大器の片鱗を見せて脱皮しました。第3弾でどんな姿を見せてくれるのか、楽しみです。ちょっと急激に進化したところもあるのでそのあたりも地に足がついた感じになることでしょう。そう思って待ちたいと思います。
 お気に入り:黒木未知、明日原ユウキ、ノブチナ
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ要注意。







1、パトリシア・オブ・エンド
 このシナリオって作品によってはバッドやノーマルエンド扱いでもおかしくない。なんとも中途半端な感じが見え隠れしています。なんかすっきり解決した気がしないですからね。お母さんのこともスルー気味に終わってしまいましたし。
 ルーシアやユウラシアの扱いは良かったと思います。ルートがないまでもHシーンを望むプレイヤーは多かったでしょうから。

2、明日原ユウキ
 結局、なぜ彼女はギャルなのか、という部分に尽きるように思います。ポリシーがあるようにはあまり見えず、むしろその姿勢こそが様々な災いを呼んでいるように見えるだけに。
 そういや幼少時の毎朝、菓子パンの話も全く広がらずに終わりましたね。

3、黒木未知
 とてもいいキャラなんですけど、ノブチナやユウキの言う通り「おもーい」んですよねぇ。弁当食べるだけで小問を出してくる彼女はちょっとねぇ。面倒くさいですよ。自爆するところはすごく可愛らしいんですけどねぇ。もしかしなくても、「おもいけど可愛いキャラ」を狙っているんですかね。
 シニガミ稼業とかもう何を言っていいやら。

4、夕莉シャチ
 シナリオがアレなので陥没乳首は時間稼ぎではないか、とか思わず邪推してしまいます。普段は出番がけして多くないだけに照れまくる彼女になったシャチは可愛かったです。しかし、それだけに何もなく終わるのはねぇ。拍子抜け過ぎました。