おいしい魔法のとなえかた。(C:Drive.)

 時は現代、所は日本。どういう訳だかファンタジー世界と私たちの知る世界が融合しております。そんな世界ですから必然的に魔王の驚異なんてものもあったのですが、そこはそれ勇者もちゃんといまして世界は平和になったのでした。
 浮舟カヲル(変更不可)はそんな勇者パーティーのひとり。最後の戦いもどうにか生き残ったのですがアクシデントで数十年もの間、凍ったままでした。ちょっとした浦島太郎気分のカヲルは引く手あまたの教師として生きることに。
 ところが人生とは面白いもので、新しく赴任した学園で担当することになる教え子はかつての仲間の娘たちなのでした。危険な勇者や魔法使いにしたくないがゆえにカヲルは彼女たちを挫折させようとエロい授業を繰り返すのでした。

 新ブランドC:Drive.のデビュー作は魔女っ娘たちに授業と称してやらしいことをし倒そうというとてもわかりやすいアドベンチャー。
 初回特典は過去ブランドの「シス×みこ」まるまる1本。人によってかなり感想が分かれそうな初回特典です。
 購入動機は原画買いの一点勝負。シナリオその他には微塵も期待することなく買いました。

 ジャンルはパッケージによると魔法少女育成ちっくADV。ゲームの進行に対して特に変わったところはありません。右に向かって進むフローチャートのような授業予定表を順に選んでいくスタイルです。
 進行に関係ないところでは噂の新システムとして「あぁあぁあぁぁぁぁ…き、気持ちよすぎてぇおもわずふきでちゃうのよぉ~エフェクト」(正式名称)なるものが搭載されています。平たく言えばイベントCG上で漫画の吹き出しが出る演出のこと。より具体的にはエロ漫画のような。吹き出しは点滅して出たり消えたりします。また、Hシーンの進行度によってその形も大きさも中身も変化していきます。メッセージウインドウを消すと点滅は止まります。CG鑑賞モードでは現れません。試みとしてはなかなか面白いですが、これがエロ度の向上に役立っているかは微妙なところのような。

 足回りはほどほど。メッセージスキップは既読未読を判別して平均的なスピード。
 バックログは別画面にて行います。ホイールマウスに対応、ボイスのリピート再生も可能です。戻れる量はほどほど。ロード直後にも使用可能です。
 残念なことに本作は起動ディスクが必要になってます。エロ重視ゲーでこの措置はどうかと。このためにクリア後の起動確率もハードディスク内に残る確率もぐっと下がるでしょう。
 (追記)後日、ディスクレスパッチが配布されましたがちょっとした個人情報の他、美少女ゲームアワードのシリアルコードも入力せねばならず、とても面倒です。返事が来るまでも一日前後はみなくてはならないようですし。ないよりは遥かに良いものの、最初から起動ディスクなし、として欲しいところ。

 シナリオはエロのためにのみ存在します。上で書いたあらすじも全ては特定のシチュエーションを導き出すためもの。キャラクター描写も日常描写もほとんどなし。Hシーンに対するリアクションこそがヒロインの魅力の全てといっても過言ではありません。
 世界設定に関しても説明らしい説明は一切なく、付いてこれる人だけ付いて来るように、と言わんばかり。造語はバンバン飛び出しますし、その略語まで平然と使います。もしかしてどこかに副読本でもついているんでしょうか、というレベル。
 最初と最後にしか出番のないサブヒロインたちの方が不思議なことにしっかりとキャラが立っています。ついでにお話としても少しばかり(良くも悪くも)まともに。
 惹かれ合う過程とか期待するだけ無駄です。本作ではあり得ない要素かと思います。
 Hシーンはメインヒロイン3人にそれぞれ平等で10時間ずつ。他にも3P、4Pなどが用意されています。基本的なノリはエロ馬鹿、これに尽きるかと。「シス×みこ」を作ったブランドの後継ですからおしっこ成分も多めですが、あまり執拗な描写ではありません。サブヒロインたちはひとつずつしかないので期待は禁物です。

 CGは3人の原画家の個性がうまく引き出せています。個々のCGはもちろん、ヒロイン同士が絡む構図も違和感なく、それでいてしっかりと特徴を出せているかと(ヒロインごとに塗りが異なる)。エロさと込みで本作の売り足りえていると感じました。
 反面、立ちCGの方は明らかにレベルが下がります。原画家の異なるヒロインが並ぶと違和感ばかりが目立ってしまうことに。雰囲気も同じ作品とは思いにくいくらいに違ってしまっています。
 Hシーンの選択肢には「ムービー出し」なるものが出現。これは文字通り(?)おしっこや母乳の吹き出る様子をムービーで見るか、というもの。馬鹿ゲーらしいこだわりにいっそ感心します。

 音楽は意外にまともっぽい曲が用意されていて普通に聞く分には問題ないのですが、作品の特性を考えると相応しいとはあまり思えません。もっと弾けた曲の方が良かったのではないでしょうか。オープニングやエンディングテーマのように。
 ボイスは(シナリオやキャラ立ちを考えると)本作にはもったいないくらいの一流どころが用意されているので不安は一切ありません。問題はテキストに表示されることのないループボイス。これは主人公のセリフや地の文の時に流されるのですが、サイクルが短いのですぐに1周してしまって、結果的に同じセリフを何度も聞かされることになってあまり印象がよくありません。また、具体的な単語(それも最初に)が含まれているのも効果的とは言い難いと思います。

 まとめ。エロ重視のお手軽系作品。原画が気に入るかがかなり大きなウェイトを占めているかと思います。何気に声優も豪華ですがループボイスが配慮不足で無闇に損をしているような気がします。ついでにサブヒロインに期待しないことも重要。
 お気に入り:アルフィ、ミチル、ナゲット
 評点:70

 以下はキャラ別感想。ネタバレ、はないかな。







1、アリア・ルー・ガーネット
 正直なところ、メインの3人娘は出番のわりにさっぱりキャラが立っていない、あるいはテンプレートキャラなのでコメントに窮します。いきなりエロくなる、というのも全員同じだしなぁ。せめて外見程度には中身にも差をつけて欲しいものです。や、性格も違いはあるんですけど具体的な日常描写が何もないからねぇ。

2、リオ・ローズ・セレスタイン
 ツインテールで金髪と言えばツンデレであり、ツンデレと言えば青山ゆかりさんであります。もはや、これはエロゲーにおける定番中の定番。属性のない人はそろそろ飽きてきそうです。もう「Canvas~セピア色のモチーフ~」の桜塚恋くらいからですからねぇ。6年以上ですか。
 本作のツンデレさんは初期状態でもあまりにも簡単にデレ部が剥き出しになるので玄人の人には受けが悪そうです。負けず嫌いなところは十分だと思いますが。とっくに陥落しているのにいつまでもそれを認めないところとか。

3、ミイナ・レモングラス
 リオほどではありませんが、巨乳で天然とくればまきいずみさんはかなり固い配役です。倍率は1点台後半くらいになるでしょう。
 母乳のムービー出しはこの人だけの特権です。この馬鹿なアイデア(誉めてます)を出した人には社長賞くらいあげてもいいんじゃないでしょうか。やったもん勝ちデスヨ?

4、パティ・ムーン・ストーン
 えーと、いる意味がありますか? 富樫(解説&驚き)役なら主人公がいるし、Hシーンもないしねぇ。ま、メガネだからいいんですけど。

5、アルフィ・マリーゴールド
 同じ強気キャラでもリオとは性能が違います。短い尺ながらしっかりとキャラが立っており、会話も面白いです。何より生きざまそのものだけで十分勝負できます。
 主人公に対する執着に見られるような、人生かけたツン具合が素敵です。ボイドに落ちた時のやさぐれ姿もいい感じ。絶対こっちをメインヒロインにした方が面白くなったと思いますよ。
 ミチルはちゃん付け、ナゲットは呼び捨て、こんなあたりにも3人の微妙な関係が透けて見えるようで興味深い。普通ならミチルは単なる苛められキャラに見えるけれど、それだけではないということが窺える。
 模擬戦の結着の付け方も性格が出て良い感じ。3人娘を殺したくないから最後の一発を威嚇にしてしまうあたり漢らしいです。
 アルフィ役の新堂真弓さんが3人娘のエンディングテーマの作詞を全て手がけている、というのは妄想してみると随分と面白い。イライラしながら天才要素を刺激されつつ作詞するアルフィの姿が思い浮かびます。もちろん、フォローするミチルの姿も。しかし、リオのエンディングを歌う様子はどう考えても羞恥プレイの域だよなぁ。一体、何の因果で、と。

6、ミチル・スピノサ
 日本が舞台にもかかわらず日本人っぽいのは主人公のみ。ミチルも名前からすると日系っぽいですが、髪の色もスタイルも完全に外人です。マニュアルにある通り、ミチルのおっぱいはすごいです。もっと素材があれば、と思わずにいられません。アルフィの言からすると魔力タンクなのかも。
 3人娘に対する言動を見る限り、別段フォロー役という訳でもないようで。事実を淡々と忘れず付け加えるあたり、考えようによってはアルフィよりタチが悪いかも知れません。

7、ナゲット・クリノクロア
 髪の房にはちゃんと意味があったあたり驚きです。っていうか、こんなあたりでも3人娘はキャラ立ちで負けていると思います。しかも、無口、無感動要素まで備えているからねぇ。
 シナリオが終盤になるにつれボイスのボリュームが大きく、語彙も豊富になってくるところがポイント。ホント、初登場時なんて他のメンツのボイスをうるさいくらいにボリュームをあげないと聞こえないものねぇ。